この記事のポイント
- 売る時に住んでいる自宅なら、住み続けても3,000万円控除の対象になり得ます
- 買主が親子・夫婦や自分の会社などだと、3,000万円控除も軽減税率も使えません
- 法人に時価の2分の1未満で売ると、時価で売ったものとされます
- 家賃は譲渡所得から引けず、買戻し特約付きは契約の中身で扱いが分かれます
まず結論:売る時に住んでいる自宅なら、住み続けても3,000万円控除の対象になり得ます
売る時に住んでいる自宅なら、売った後に借りて住み続けても、3,000万円控除の対象になり得ます。
ただし、買主が親子・夫婦や自分の会社などなら使えません。
リースバックとは、自宅を売った後も買主から借りて住み続ける取引です。
譲渡所得とは、売った金額から取得費と譲渡費用(売る費用)を引いたもうけです。取得費は買った金額などで、建物は減価償却費相当額を引いた額です。
3,000万円控除は、譲渡所得から最高3,000万円を引ける特例です。
リースバックに特有の取扱いは国税庁の公表資料に見当たらず、一般の規定を当てはめる個別判断です。

「住んでいる家屋」かどうかは、売る時の生活の拠点で判断します
対象は、生活の拠点として使っている家屋です(租税特別措置法35条2項)。
暮らしの実態や入居の目的などを総合して判定します(措置法通達31の3-2・35-6)。
特例のためだけに入居した家、新築期間中の仮住まい、別荘などは対象外です(同通達)。
前年・前々年にこの特例を受けていないことなどの要件もあります(タックスアンサー No.3302)。
売った後に借りて住み続けることを理由に対象外とする定めは、措置法の条文と通達に見当たりません。
基本の要件は、3,000万円特別控除の記事で整理しています。
買主が親子・夫婦や自分の会社などだと、3,000万円控除も軽減税率も使えません
「特別の関係がある人」に売ると、どちらの特例も使えません(措置法35条2項1号・31条の3第1項)。
「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(国税庁 タックスアンサー No.3302)
配偶者と、親・子・孫などの直系血族は、生計が別でも当たります(措置法施行令20条の3第1項1号)。
本人や配偶者・直系血族などが株式の50%超を持つなど、支配関係にある会社も当たります(同項5号)。
兄弟などの親族が買い、売った後にその家で一緒に住むと、特別の関係に当たります。
同居かどうかは、売った後の状況で判定します(措置法通達31の3-20)。
軽減税率の特例は、売った年の1月1日で家屋と敷地をともに10年超持っていたことなどが要件です。
3,000万円控除と重ねられ、6,000万円以下の部分は所得税10%です(No.3305)。

法人に時価の2分の1未満で売ると、時価で売ったものとされます
買主が法人なら、売買価格と時価の差を確かめます。
土地や建物の売却先が法人であり、しかも売却価額が時価の2分の1を下回っている場合は、売った土地や建物の時価を収入金額として譲渡所得が計算されます。
(国税庁 タックスアンサー No.3217)
根拠は所得税法59条1項2号と同施行令169条で、「みなし譲渡」と呼ばれます。
条文は法人の種類を限定しておらず、リースバック会社でも同じです。
計算例では、売る相手と価格で、税額が0円から約569万円まで変わります。
計算例
例:時価4,000万円の自宅(取得費1,200万円・売った年の1月1日で所有5年超・譲渡費用なし)
A 第三者のリースバック会社に3,600万円:譲渡益2,400万円 ≦ 3,000万円控除 → 税額0円 B 自分の会社に3,600万円:控除なし 2,400万円 × 20.315% = 4,875,600円 C 自分の会社に1,800万円(時価の2分の1未満):時価4,000万円で計算 2,800万円 × 20.315% = 5,688,200円 20.315% = 所得税15% + 復興特別所得税(所得税の2.1%)+ 住民税5%2.1%は、令和9年分から復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれ、合計は同じです。数値は一定の前提を置いた目安で、実際の税額は時価・取得費・所有期間などで変わります。
親族との価格の決め方は、親族間売買の記事で扱っています。
買戻し特約付きは、売買か担保かを契約書で確かめます
売買か借入金の担保かで、売った年の申告が変わります。
買戻し特約は、売主が代金などを返して、売買を解除できる特約です(民法579条)。
借入金の担保として形式的に売るものは「譲渡担保」です。
ポイント
所得税基本通達33-2の要件は3つです。①契約書に、売主が従来どおり使うことを書く。②通常の利子かそれに当たる使用料の定めを書く。③担保だけが目的である旨の申立書を、債務者と債権者の連署で出す。満たせば譲渡はなかったものとされます。後で要件を欠くなどすると、その時に譲渡があったものとされます。
形式上、買戻条件付譲渡又は再売買の予約とされているものであっても、上記のような要件を具備しているものは、譲渡担保に該当する。
(所得税基本通達33-2(注))
途中解約できないなどの「リース取引」を条件に売る場合も、注意が要ります。
実質が金銭の貸借と認められると、売買はなかったものとされます(所得税法67条の2第2項)。
買い戻したときの扱いも含め、契約書の条項を読んだうえでの個別判断です。
売った後の家賃は譲渡所得から引けず、住宅ローン控除は年末残高で決まります
家賃は、譲渡所得の計算で差し引けません。
売った金額から差し引く費用は、取得費と譲渡費用です(所得税法33条3項)。
譲渡費用は、仲介手数料など売るために直接かかった費用です(No.3255)。
住むための家賃は家事上の経費(生活費)で、事業の必要経費にもなりません(所得税法45条1項1号)。
事業に使う部分の家賃は、所得税法施行令96条の要件を満たせば必要経費になり得ます。
住宅ローン控除は、12月31日のローン残高をもとに計算します(措置法41条2項)。
売却代金で完済すれば年末残高はなく、その年から控除額はありません。
買い戻しや住み替えで新たに受ける控除にも、時期の制限があります(措置法41条21項)。
制限の中身や過去の控除との関係は、住宅ローン控除との併用の記事で整理しています。

失敗パターン:特例が使えない・税金が増える5つの場面
次の5つは、特例の可否や税額が変わる場面です。
- 自分の会社に売って借りた ― 3,000万円控除も軽減税率も使えません
- 兄弟などの親族に売り、一緒に住み続けた ― 特別の関係に当たります
- 法人に時価の2分の1未満で売った ― 時価で売ったものとして計算されます
- 家賃を譲渡費用に入れた ― 売るために直接かかった費用ではありません
- 売った年も住宅ローン控除を受けた ― 年末残高がなければ控除額はありません
注意
計算例のAのように税額0円でも、譲渡所得の内訳書などを添えた確定申告が必要です(No.3302)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
契約書と資料の確認はご自身でできますが、特例と時価の判断は個別です。
- 買主が、親子・夫婦や自分たちが支配する会社などに当たらないか確かめる
- 売る時点で、その家が生活の拠点になっているかを確かめる
- 売買価格と時価の差を、査定書や近くの取引事例で確かめる
- 契約書で、買戻し特約・家賃・解約の条件を読む
時価の見方、買戻し特約の性質、住宅ローン控除との調整は個別判断です。
補足
自分や親族が株主の同族会社(3人以下の株主グループで50%超を持つ会社など)への売却も注意します。価格が2分の1以上でも、所得税法157条で時価計算されることがあります(所得税基本通達59-3)。
税理士が入ると変わるのは、契約前の判定と申告書への反映です
小松公認会計士・税理士事務所では、契約前の判定から申告までを一貫して担当します。
ひとつめは、契約書案と査定書から、買主との関係と時価の根拠を確かめることです。
ふたつめは、買戻し特約と賃貸借の条項から、売買か担保かを見極めることです。
みっつめは、売る相手や価格ごとの税額を試算して比べることです。
よっつめは、内訳書と申告書第三表に反映し、適正申告をすることです。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. リースバックで売った後も住み続けると、3,000万円控除は使えませんか?
売る時に住んでいる自宅であることなどの要件を満たせば、対象になり得ます。売った後に借りて住むことを理由に対象外とする定めは、措置法の条文と通達に見当たりません。ただし、リースバックに特有の取扱いは国税庁の公表資料に見当たらず、個別判断です。
Q2. 子どもや自分の会社に売って、家賃を払って住むことはできますか?
売買はできますが、特例には制限があります。配偶者・直系血族や、自分たちが支配する会社に売ると、3,000万円控除も軽減税率も使えません。法人に時価の2分の1未満で売れば、時価で売ったものとして計算されます。
Q3. 売った後に払う家賃は、税金の計算で差し引けますか?
譲渡所得の計算では差し引けません。譲渡費用は売るために直接かかった費用で、住むための家賃は家事上の経費だからです。事業に使う部分の家賃は、所得税法施行令96条の要件を満たせば必要経費になり得ます。
Q4. 買戻し特約が付いていると、売ったことにならないのですか?
買戻し特約は、売買を解除できるように売買契約に付ける特約です(民法579条)。ただし、借入金の担保として形式的に売った場合は別です。所得税基本通達33-2の要件を満たし申立書を出せば、譲渡はなかったものとされます。どちらかは契約書による個別判断です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条・31条の3・35条・41条、同施行令20条の3・23条、所得税法33条・45条・59条・67条の2・157条、所得税法施行令96条・169条、地方税法附則34条、復興財確法13条、防衛財確法5条の9、民法579条、措置法通達31の3-2・31の3-20・31の3-22・35-6、所得税基本通達33-2・59-3、国税庁タックスアンサーNo.3217・No.3255・No.3302・No.3305の内容を扱っています。リースバックに特有の取扱いは国税庁の公表資料で確認できなかったため、本記事は一般の規定を当てはめた解説です。買戻しを実行したときの課税関係、買い戻した家屋での住宅ローン控除の適用、過去に受けた住宅ローン控除の扱い、買主である法人側の課税、譲渡担保の申立書の書き方、リース取引に当たるかどうかの細目、所得税法157条の適用基準、時価の算定方法、確定申告書の記載や添付がなかった場合の取扱い(措置法35条13項)、軽減税率の特例を受ける場合の住民税の税率、短期譲渡所得の税率、住民税の申告手続、消費税・相続税・贈与税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は時価・取得費・譲渡費用・所有期間・買主との関係によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3217 時価より低い価額で売ったときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3217.htm
- 国税庁 措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係(31の3-20 特殊関係者に対する譲渡の判定時期)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/07.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-2 譲渡担保に係る資産の移転)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- e-Gov法令検索 租税特別措置法https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
リースバックの契約前に、3,000万円控除が使えるかを確かめませんか
リースバックは、買主との関係、価格と時価、買戻し特約と家賃の条件で、使える特例と税額が変わります。代表税理士が、契約書案と査定書から特例の可否を判定します。売る相手や価格ごとの税額を試算し、譲渡所得の内訳書と確定申告書まで一貫して作成します。契約を結ぶ前の段階でご相談ください。
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