この記事のポイント
- 組合から受け取る分配金は、部屋と敷地を売った譲渡所得の対象です
- 自宅なら3,000万円控除を検討。住まなくなった後は期限があります
- 1,500万円控除などは土地等の部分が対象で、事業の計画などの要件があります
- 令和8年4月1日以後の譲渡から、取り壊して敷地を売る事業も特例の対象に加わりました
まず結論:分配金は、部屋と敷地を売った譲渡所得です
老朽化したマンションを、建物と敷地ごと売る仕組みがあります。
売却に参加した区分所有者は、組合から「分配金」を受け取ります。
根拠は、マンションの再生等の円滑化に関する法律(以下、マンション再生法)151条です。
区分所有者とは、マンションの部屋の持ち主のことです。
部屋と敷地の権利は、計画で定める権利消滅期日に組合へ移ります(同法149条)。
分配金は、部屋と敷地の権利を組合に移した対価として、譲渡所得の対象です。
租税特別措置法も、組合への土地等の移転を「譲渡」と書いています(31条の2第2項11号)。
自宅だった部屋なら、3,000万円控除の要件を確かめます。
建替えで新しい部屋を受け取る場合は、マンション建替えの税金の記事をご覧ください。

令和8年4月1日から、制度と税金の特例の対象が変わりました
令和8年4月1日に、法律の名前が「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」から改められました。
マンション再生法では、売却の手法は次の3つです(同法2条1項15号〜17号)。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| マンション敷地売却 | 建物と敷地をそのまま売る |
| マンション除却敷地売却 | 建物を取り壊して敷地を売る |
| 敷地売却 | 滅失したマンションの敷地を売る |
3つの事業を合わせて「マンション等売却事業」と呼びます(同法4条2項6号)。
建物と敷地を売る決議は、区分所有法64条の6の「建物敷地売却決議」です。
賛成は、区分所有者・議決権・敷地の持分の価格の各5分の4以上が原則です。
耐震性の不足などに当たれば、各4分の3以上です(同条・62条2項)。
改正前の法律では、特定要除却認定を受けたマンションが前提でした(108条1項)。
耐震性や防火性の不足などで除却が必要とされたものです(同法102条・106条1項)。
税金の特例も令和8年度に改正され、令和8年4月1日以後の譲渡から対象が広がりました。
同日前の譲渡は、従前の例によります(令和8年法律第12号附則37条)。
受け取るお金は、立場によって根拠が違います
参加したかどうかで、受け取るお金が分かれます。
| 立場 | 受け取るお金 | 根拠(マンション再生法) |
|---|---|---|
| 売却に参加した区分所有者(組合員) | 分配金 | 151条 |
| 参加しないと回答し、組合から売渡しを請求された区分所有者 | 時価で売り渡した代金 | 121条1項 |
| 組合員の区分所有権・敷地利用権以外の権利を失う人 | 補償金 | 153条 |
補足
組合員の区分所有者が受け取るのは分配金で、譲渡所得として扱います。
1,500万円控除と優良住宅地等の軽減税率は、土地等の部分が対象です。
これらを使うときは、分配金などを建物と土地(敷地利用権)に分けて計算します。

使える特例は、自宅かどうかと所有期間で変わります
自宅だった部屋は、最高3,000万円を差し引ける3,000万円控除を確かめます(措置法35条)。
住まなくなった部屋も、期限内の譲渡なら対象になり得ます。
期限は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日です。
| 特例 | 主な要件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 3,000万円控除(措置法35条) | 住んでいた家屋とその敷地。特別の関係がある人への譲渡でない | 前年・前々年に適用を受けていない |
| 居住用の軽減税率(措置法31条の3) | 売った年の1月1日で家屋・敷地とも所有期間10年超 | 3,000万円控除と重ねて使えます |
| 買換え特例(措置法36条の2) | 令和9年12月31日までの譲渡。居住10年以上・所有10年超、売却代金1億円以下など | 3,000万円控除・軽減税率と同時に使えません |
| 1,500万円控除(措置法34条の2第2項22号の2) | 通行障害既存耐震不適格建築物に当たるマンションの土地等。除却後の土地に新たなマンションを建てる計画がある事業 | 3,000万円控除を受ける部分には使えません |
| 優良住宅地等の軽減税率(措置法31条の2第2項11号) | 所有期間5年超の土地等。令和10年12月31日までの譲渡。計画に新たなマンションなどの記載がある事業 | 証明書類が必要。3,000万円控除などを受けると使えません |
通行障害既存耐震不適格建築物は、今の耐震基準に合わず、倒れると道路をふさぐおそれのある建物です。
対象は、耐震診断の結果の報告が義務づけられたもの(耐震改修促進法7条2号・3号)です。
計算の流れはマンション売却の税金の記事で説明しています。
所有期間と取得費で、税額は大きく変わります
長期か短期かは、売った年の1月1日の所有期間で判定します(タックスアンサーNo.3202)。
5年を超えれば長期で、税率は所得税15%、住民税5%です(No.3208)。
所得税に加わる復興特別所得税は2.1%です(令和9年分から1.1%+防衛特別所得税1%)。
相続した部屋は、原則として亡くなった方の取得日から数えます(No.3202)。
取得費は、購入代金などから建物の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費とすることができます(No.3258)。
資料の探し方は取得費が分からないときの記事にまとめています。
計算例
例:令和8年の譲渡で、分配金4,000万円。取得費2,800万円(減価償却費相当額を引いた後)、譲渡費用なし、所有期間5年超10年以下
譲渡益 4,000万円 - 2,800万円 = 1,200万円 ① 自宅で3,000万円控除を使う 1,200万円 - 1,200万円 = 0円 → 税額0円 ② 期限を過ぎて控除なし 1,200万円に課税 所得税180万円 + 復興特別所得税37,800円 + 住民税60万円 = 2,437,800円 ③ ①と同じく控除を使い、取得費は資料がなく5%(200万円) 4,000万円 - 200万円 - 3,000万円 = 800万円に課税 所得税120万円 + 復興特別所得税25,200円 + 住民税40万円 = 1,625,200円数値は一定の前提を置いた目安です。

つまずきやすいのは、この5つの場面です
金額が変わる誤りは、申告漏れや払いすぎにつながります。
- 先に転居して期限を過ぎる ― 3,000万円控除と居住用の軽減税率の対象から外れます
- 分配金を建物と土地に分けない ― 特例の対象額を出せません
- 1,500万円控除を当然使えると考える ― 建物と事業の計画の要件があります
- 特例を重ねて使えると考える ― 優良住宅地等の軽減税率は、3,000万円控除などと併用できません
- 購入時の資料を捨ててしまう ― 取得費が5%になりかねません
注意
敷地売却は、決議、組合の設立、分配金取得計画の認可と手続が続きます。先に転居したときは、住まなくなった日からの期限と、権利消滅期日の年を照らし合わせてください。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
書類をそろえるところまではご自身でできますが、特例の選び方は個別判断です。
- 購入時の売買契約書と、仲介手数料などの領収書を探す
- 決議の内容と、分配金取得計画の通知(分配金の額・権利消滅期日)を保管する
- 転居した場合は、住まなくなった日が分かる書類を残す
- 参加しなかった場合は、売渡し請求の書面と代金の記録を保管する
ここから先は、建物と土地への分け方、特例の選択、証明書類の確認です。
ポイント
3,000万円控除は、一定の書類を添えて確定申告をして受けます(タックスアンサーNo.3302)。控除で税額が0円になる場合も、申告が必要です。

税理士が入ると変わるのは、特例の選び方と申告の根拠です
ひとつめは、購入時の資料で取得費と減価償却費相当額を確定することです。
ふたつめは、分配金を建物と土地に分け、特例ごとの対象額を出すことです。
みっつめは、使える特例の要件と組み合わせを比べることです。
よっつめは、転居日と権利消滅期日から、期限と所有期間を確かめることです。
いつつめは、内訳書と添付書類をそろえ、確定申告書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、組合の通知と購入時の資料を拝見し、申告まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. マンション敷地売却で受け取る分配金に、税金はかかりますか?
分配金は、部屋と敷地の権利を組合に移した対価で、譲渡所得の対象です。売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いた利益に課税されます。自宅だった部屋なら、3,000万円控除などの要件を確かめます。
Q2. 先に引っ越しても、3,000万円控除は使えますか?
住まなくなった家屋も、期限内の譲渡なら対象になり得ます。期限は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日です。ほかの要件も必要です(タックスアンサーNo.3302)。権利消滅期日の年と照らし合わせてください。
Q3. 1,500万円控除は、どのマンションでも使えますか?
対象は、耐震改修促進法7条2号・3号の通行障害既存耐震不適格建築物に当たるマンションの土地等です。除却後の土地に新たなマンションを建てる計画のある事業に限ります。分配金の取得か、組合の売渡し請求による買取りが対象です。3,000万円控除を受ける部分には使えません。
Q4. 反対して売渡しを請求された場合も、譲渡所得になりますか?
組合の請求(マンション再生法121条1項)で時価で売り渡すと、譲渡所得の対象です。自宅なら3,000万円控除の要件を確かめます。優良住宅地等の軽減税率と1,500万円控除の条文にも、この請求が挙がっています。ほかの要件も満たす必要があります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。マンションの再生等の円滑化に関する法律2条1項・4条2項6号・121条1項・149条・151条・153条、改正前のマンションの建替え等の円滑化に関する法律102条・106条1項・108条1項、建物の区分所有等に関する法律62条2項・64条の6、租税特別措置法31条の2第2項11号・同条4項・31条の3・34条の2第1項・第2項22号の2・35条・36条の2、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則37条、建築物の耐震改修の促進に関する法律7条、国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度 税制改正のあらまし」、国税庁タックスアンサー No.3202・No.3208・No.3258・No.3302・No.3305・No.3355の内容を扱っています。分配金がどの年の譲渡になるかの判定、分配金を建物と土地に分ける方法、建物の減価償却費相当額の計算式、1,500万円控除と優良住宅地等の軽減税率の証明書類と財務省令・政令で定める計画の要件、組合以外からの売渡し請求による譲渡と特例の関係、借家人などが受け取る補償金の課税、軽減税率を使う場合の住民税、令和8年3月31日以前に手続が始まった事業の経過措置、建替え・建物の更新の権利変換の税金、相続した部屋の取得費と取得時期の細目は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は分配金の額・取得費・譲渡費用・所有期間・特例の要件によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 マンションの再生等の円滑化に関する法律https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000078
- e-Gov法令検索 租税特別措置法https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度 税制改正のあらましhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/r08aramashi.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258 取得費が分からないときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
マンション敷地売却の分配金は、受け取る前に使える特例を確かめませんか
分配金の税金は、自宅だったか、何年持っていたか、建物と土地の内訳、事業の計画で変わります。代表税理士が、組合からの通知と購入時の資料を拝見し、取得費の根拠と使える特例を整理します。確定申告まで一貫して担当します。転居や権利消滅期日の前に、資料がそろった段階でご相談ください。
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