不動産譲渡所得

未成年の子が相続した不動産を売るとき
特別代理人と子どもの確定申告

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 売買契約は親権者が子を代表して結びます。18歳からは本人が契約します
  • 母と子で遺産分割をするなど、利益がぶつかる場面は特別代理人が要ります
  • 譲渡所得は子ども本人が申告。相続なら原則、取得費と取得時期を引き継ぎます
  • 売った年は子の合計所得金額が増え、親の扶養控除が外れることがあります

まず結論:契約は親権者が子を代表し、申告は子ども本人がします

未成年の子が持つ不動産の売買契約は、親権者が子を代表して結びます。

親と子の利益がぶつかる場面では、家庭裁判所に特別代理人の選任を求めます。

特別代理人とは、決められた行為に限り、親に代わって子を代理する人です。

売って生じた譲渡所得は子ども本人の所得です。申告は子どもの名前でします。

譲渡所得とは、売った金額から買った金額と売る費用を引いたもうけです。

成年は18歳です(民法4条)。18歳からは、子ども本人が自分で契約します。

18歳成年の改正民法は、令和4年4月1日施行です。

子どもの名義の不動産も、売る手続きは親権者が子に代わって進めます
子どもの名義の不動産も、売る手続きは親権者が子に代わって進めます

売買の契約は、親権者が子を代表して結びます

買主との契約は、親権者が子の法定代理人として結ぶのが基本です。

親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

(民法824条)

子が法定代理人の同意を得て、自分で契約する方法もあります(民法5条1項)。

父母の双方が親権者なら、売却も原則として父母が共同して行います(民法824条の2第1項)。

補足

令和8年4月1日施行の改正民法で、離婚後も父母の双方が親権者となる場合があります(民法819条)。その場合も、売却は原則として2人で行います。

親と子の利益がぶつかる場面では、特別代理人が要ります

親と子の利益がぶつかる行為を「利益相反行為」といい、親は子を代理できません。

親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(民法826条1項)

裁判所のQ&Aは、外形からみて親の利益で子の不利益になる行為と説明します。

例は次のとおりです。

  • 夫が亡くなり、妻と未成年の子で遺産分割協議をする
  • 1人の親が、複数の未成年の子の代理人として遺産分割協議をする
  • 親の借入れの担保として、子の不動産に抵当権を設定する

子ども同士の利益がぶつかる行為も同じです(民法826条2項)。

母と子が共同相続人なら、遺産分割協議の段階で特別代理人が要ります。

代金の分け方を親子で決めるときも、一方が多く受け取れば他方が減ります。

その前に、特別代理人が要るかを確かめます。

項目裁判所の案内
申立てをする人親権者、利害関係人
申立先子の住所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分(子1人につき)と連絡用の郵便切手
主な書類子と親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、遺産分割協議書案など

特別代理人に資格は要りません。子との関係や利害関係の有無などで適格性が判断されます。

遺産の分け方を決める前に、特別代理人の選任が要るかを確かめます
遺産の分け方を決める前に、特別代理人の選任が要るかを確かめます

譲渡所得は子ども本人の所得で、取得費は亡くなった方から引き継ぎます

売って利益が出れば、持ち主である子ども本人に譲渡所得の税金がかかります。

長期譲渡所得を定める租税特別措置法(措置法)31条1項も、「個人が、その有する土地」等が対象です。

相続した不動産は、亡くなった方(被相続人)の取得費と取得の時期を引き継ぎます。

居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。

(所得税法60条1項。1号の相続からは、限定承認に係るものが除かれています)

取得費は、被相続人が買ったときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

所有期間も、被相続人の取得の時から、売った年の1月1日までで判定します。

根拠は国税庁のタックスアンサー No.3270です。

5年を超えていれば長期譲渡所得で、税率は原則として所得税15%・住民税5%です(No.3208)。

所得税には復興特別所得税が加わり、令和9年分からは防衛特別所得税も加わります。

計算例

例:12月31日時点で17歳の子が、父から相続した土地を令和8年中に3,000万円で売却。父が令和2年以前に取得し、購入代金などは1,800万円、譲渡費用は100万円。子にほかの所得はない

長期譲渡所得の金額 3,000万円 -(1,800万円 + 100万円)= 1,100万円 父の購入資料がなく5%を使う場合の取得費 3,000万円 × 5% = 150万円 その場合の金額 3,000万円 -(150万円 + 100万円)= 2,750万円

数値は、一定の前提を置いた目安です。

5%を使うと、この例では所得が1,650万円多くなります。

売った年は、親の扶養控除の対象から外れることがあります

子の合計所得金額が増えると、親の扶養控除の対象から外れることがあります。

扶養親族の要件の一つが、合計所得金額が一定額以下であることです(所得税法2条1項34号)。

年分扶養親族の合計所得金額の要件
令和7年分58万円以下
令和8年分以後62万円以下(令和8年度改正。令和8年12月1日施行)

判定は、原則としてその年の12月31日の現況で行います(タックスアンサー No.1180)。

子の合計所得金額には、長期譲渡所得の金額も含まれます(措置法31条3項1号)。

扶養控除の対象は、12月31日現在で16歳以上の子です。

計算例の子は合計所得金額1,100万円で62万円を超え、親は扶養控除38万円を受けられません。

特別控除を使う場合は、売った年の合計所得金額の記事をご覧ください。

注意

親の年末調整や確定申告で、要件を外れた子を扶養親族のまま扱うと、扶養控除を多く受けたことになります。売った年は、勤務先に出す書類の扶養親族の欄も確かめます。

相続した不動産の取得費と取得の時期は、原則として亡くなった方から引き継ぎます
相続した不動産の取得費と取得の時期は、原則として亡くなった方から引き継ぎます

気をつけたいのは、この5つの場面です

次の5つは、手続きや税金に響く場面です。

  • 特別代理人なしで、母が子の分まで遺産分割協議をする ― 母は子を代理して協議できません
  • 2人の子の代理を、親1人で引き受ける ― 複数の未成年の子の代理も、利益相反行為の例です
  • 審判の後で、協議の内容を変える ― 審判に記載がない行為は、特別代理人も代理できません
  • 子の譲渡所得を申告しない、または親の申告に入れる ― 申告するのは子ども本人です
  • 売った代金を、親が自分のために使う ― 代金は子の財産です

親権者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、子の財産を管理します(民法827条)。

代金を親が使うと、子から親への贈与などとして税金の問題になることがあります。

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です(No.4402)。

代金の分け方と贈与税は、売却代金と贈与税の記事をご覧ください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

事実と資料の確認はご自身でできますが、利益相反の判断と申告の中身は個別です。

  1. 契約日と、その年の12月31日に、子が何歳かを確かめる
  2. 戸籍で、誰が親権者かを確かめる
  3. 被相続人が買ったときの契約書と領収書を探す
  4. 遺産分割が済んでいるか、誰の名義で売るかを確かめる

利益相反行為に当たるか、協議書案の内容、特例、扶養への影響は、事情で変わります。

ポイント

母と子が共同相続人なら、子の側として協議に加わるのは、選任された特別代理人です。特別代理人の任務は、家庭裁判所で決められた行為が終わると終了します。

親が認知症のときの売却は、認知症の親の自宅の記事をご覧ください。

売った年は、子どもの申告と親の扶養控除をあわせて確かめます
売った年は、子どもの申告と親の扶養控除をあわせて確かめます

税理士が入ると変わるのは、取得費の根拠と申告する人の整理です

ひとつめは、被相続人の購入時の資料を探し、取得費と取得の時期の根拠を整えることです。

ふたつめは、遺産分割の案ごとに、子どもの譲渡所得を試算することです。

みっつめは、子ども本人の確定申告書を作り、申告と納税の期限を管理することです。

よっつめは、売った年の親の扶養控除を見直し、年末調整や申告に反映することです。

いつつめは、代金の入金先と使い道を、子の財産として記録に残すことです。

協議書や申立書の作成は、弁護士・司法書士などと分担します。

小松公認会計士・税理士事務所では、取得費の確認から適正申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 未成年の子の名義の不動産は、親が売ってよいですか?

親権者は、子の財産に関する法律行為について子を代表します(民法824条)。父母の双方が親権者なら、原則として共同して行います(民法824条の2)。親と子の利益がぶつかる行為には特別代理人が要ります。18歳以上の子は本人が契約します。

Q2. 特別代理人は、どんなときに必要ですか?

親と子、または子ども同士の利益が相反する行為をするときです(民法826条)。裁判所は、母と未成年の子で行う遺産分割協議を例に挙げています。申立先は子の住所地の家庭裁判所で、収入印紙は子1人につき800円分です。

Q3. 子どもが売った不動産の譲渡所得は、誰が申告しますか?

持ち主である子ども本人が、本人の名前で申告します。相続で取得した不動産は、原則として被相続人の取得費と取得の時期を引き継ぎます。根拠は所得税法60条1項とタックスアンサー No.3270です。限定承認に係る相続は、引継ぎから除かれます。

Q4. 子どもが不動産を売ると、親の扶養控除はどうなりますか?

令和8年分以後は、子の合計所得金額が62万円を超えると扶養親族に当たりません。令和7年分は58万円です。長期譲渡所得の金額も合計所得金額に含まれます。扶養控除は12月31日現在で16歳以上の子が対象で、一般の控除額は38万円です。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。民法4条・5条・819条・824条・824条の2・826条・827条、所得税法2条1項34号・34号の2・60条1項・84条、租税特別措置法31条1項・3項1号、裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」と家事事件のQ&A、国税庁タックスアンサー No.1180・No.3208・No.3270・No.4402、国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」の内容を扱っています。個別の行為が利益相反行為に当たるかの判断、特別代理人を立てずにした協議の効力、特別代理人の候補者の選び方と審理の期間、遺産分割協議書と申立書の書き方、未成年後見人がいる場合の手続き、限定承認をした場合の取得費、3,000万円の特別控除などの特例、子どもの所得税・復興特別所得税・防衛特別所得税・住民税の具体額、親の税額の増加額、住民税・国民健康保険料・児童手当などへの影響、相続税(未成年者控除を含む)と贈与税の計算、子どもの確定申告書の署名と提出の方法は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得費・譲渡価額・譲渡費用・所有期間によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

未成年のお子さまの不動産を売る前に、手続きの順番と申告を確かめませんか

未成年のお子さまが相続した不動産の売却では、確かめることが3つあります。特別代理人が要るか、取得費を裏づけられるか、ご両親の扶養控除にどう響くかです。代表税理士が、被相続人の購入時の資料から取得費の根拠を整えます。お子さま本人の確定申告と、ご両親の扶養控除の見直しまで一貫して担当します。売買契約や遺産分割の前に、資料がそろった段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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