この記事のポイント
- 「住んでいた家」かは、住民票ではなく生活の拠点かどうかで判定します
- 住民票を別の借家に置いたまま、住んでいた事実を示せず否認された裁決があります
- 契約日の前日の住民票の住所が売った家と違う場合などは、戸籍の附票の写しなどを添えます
- 売る前に住民票だけ移しても、暮らしが伴わず否認された裁決があります
まず結論:住民票を移していなくても、住んでいた家なら対象になり得ます
住民票を移していない家でも、3,000万円の特別控除を使える場合があります。
この控除は租税特別措置法35条の特例で、対象は「その居住の用に供している家屋」などです。
住んでいたかどうかは、住民票の住所ではなく、生活の拠点かどうかで判定します。
前年・前々年に同じ特例を受けていないことなど、ほかの要件も必要です(No.3302)。
No.は国税庁のタックスアンサー(税の解説)の番号です。
ただし契約日の前日の住民票の住所が売った家と違えば、住んでいたことを示す書類を添えます。

判定の基準は「生活の拠点」で、暮らしの事情を総合して見ます
国税庁の通達は、住んでいる家を次のように定めています。
その者が生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいい
(租税特別措置法関係通達31の3-2)
そのうえで、次の事情などを総合して判定します。
- 本人と、配偶者など同居が通常の家族の、日常生活の状況
- その家に住み始めた目的
- その家の構造と設備の状況
この通達は、35-6により3,000万円控除にも準じて使われます。
ポイント
通達の注は、住んだ期間が短くても、入居の目的が一時的でなければ仮住まいなどに当たらないとします。

住民票を別の場所に置いたまま、否認された裁決があります
住民票を移さずに住んでいたと主張して、否認された公表裁決があります。
平成28年3月16日裁決の事案では、売主は住民票を別の借家に置いていました。
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)は、次のように解しました。
措置法第35条第1項に規定する「居住の用に供している家屋」とは、譲渡者が、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていた家屋をいうものと解され
(国税不服審判所 平成28年3月16日裁決。当時の規定による事案)
売ったのは家の建つ土地で、家は売却後に取り壊されました。次の事実などから、その家は生活の本拠ではないとされました。
- その家は、ガスと水道の使用実績がなく、電気の使用量もごくわずかだった
- 窓ガラスが割れたままで、近隣の住民は人の住める建物ではなかったと述べていた
- 住民票・登記の住所・確定申告書の住所欄が、いずれも借家の住所だった
- 借家の賃貸借契約書の入居者欄に、本人の名前があった
住民票を借家に置いた理由の説明も、その家に住んでいたことを積極的に示すものではないとされました。
家が2つある場合は、主たる住まいの判定の記事をご覧ください。
売る前に住民票だけ移すと、特例目的の入居とされることがあります
反対に、売る前に住民票だけを移しても、特例を使えないことがあります。
国税庁は、適用しない家屋として次のものなどを挙げています。
(1)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2)居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
(国税庁 タックスアンサー No.3302)
注意
平成11年3月15日裁決は、売る家へ住民票を移した届出を、特例のための事実の仮装としました。その住民票の写しと、契約日を書き換えた契約書の写しを添えた申告は、重加算税の対象とされました。重加算税は、事実を隠したり偽ったりして申告したときの加算税です(国税通則法68条1項)。
住まなくなった家を売る期限は、住まなくなってから3年目の年末までの記事で扱っています。
確定申告では、契約日の前日の住民票の住所で添える書類が変わります
添える書類は、売買契約日の前日に住民票がどこにあったかで変わります。
3,000万円控除は、申告書に書き、決められた書類を添えた場合に限り使えます。
根拠は措置法35条12項で、書類は同法施行規則18条の2が定めています。
国税庁の案内は次のとおりです。
マイホームの売買契約日の前日においてそのマイホームを売った人の住民票に記載されていた住所とそのマイホームの所在地とが異なる場合などには、戸籍の附票の写し、消除された戸籍の附票の写しその他これらに類する書類でそのマイホームを売った人がそのマイホームを居住の用に供していたことを明らかにするものを、併せて提出してください。
(国税庁 タックスアンサー No.3302)
基本の書類は、譲渡所得(売却のもうけ)の内訳書です。住民票の写しは、案内の提出書類に挙がっていません。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村が作る書類で、住所と住所を定めた日が記録されます。
記録は、住民票の記載にあわせて直されます(住民基本台帳法16条・17条・19条)。
| 住民票の状況 | 契約日の前日の住民票の住所 | 内訳書のほかに添えるもの |
|---|---|---|
| 売った家に住み、住民票もその家 | 売った家と同じ | 住所が異なる場合に当たらない |
| 先に新居へ引っ越し、住民票も移した | 新居の住所 | 戸籍の附票の写しなど |
| 住民票を一度も売った家に移していない | 別の住所 | 附票などに類する書類で、住んでいたことを示す |
住民票を一度も移していなければ、附票では示せず、何で示すかが個別の判断になります。
補足
比べるのは、引渡しの日ではなく、売買契約日の前日の住所です(施行規則18条の2第2項1号ロ)。契約日の前日までに住民票を新居へ移していれば、住所が異なる場合に当たります。

間違えると、控除がなくなったり加算税がかかったりします
住民票と住まいが違うときの誤りは、税額に直結します。
- 使えないと思い込み、特例を書かない ― 書いて添えなければ控除は適用されません(35条12項)
- 住んでいたことを示せない ― 否認され、過少申告加算税も適法とされた裁決があります
- 住民票だけ移して特例を使う ― 契約書の日付の書き換えとあわせ、重加算税を適法とした裁決があります
税務署長がやむを得ない事情を認め、後から書類を出した場合に限り使える定め(同条13項)もあります。
計算例
例:令和8年中に売却。売った年の1月1日で所有期間5年超、譲渡所得の金額2,400万円
住んでいたと認められた場合 控除2,400万円(上限3,000万円)→ 課税される譲渡所得 0円 認められなかった場合の所得税 2,400万円 × 15% = 3,600,000円 復興特別所得税 3,600,000円 × 2.1% = 75,600円 住民税 2,400万円 × 5% = 1,200,000円 税額の差 4,875,600円(加算税・延滞税は含みません)No.3208の税率による、一定の前提を置いた目安です(ほかの特例は使わない前提)。
住んでいた事実を示せるかどうかで、数百万円の差が出ることがあります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
日付と記録を時系列にそろえるところまでは、ご自身で進められます。
- 住民票を移した日と、実際に引っ越した日を書き出す
- 売買契約日を確かめ、その前日の住民票の住所を確認する
- 戸籍の附票の写しを取り、住所の記録を確かめる
- 電気・ガス・水道の使用量や郵便物の届け先など、暮らしの記録を集める
単身赴任中の家は、単身赴任中のマイホーム売却の記事で扱っています。
生活の拠点と言えるか、附票で示せないときに何を添えるかは、事実で結論が変わります。

税理士が入ると変わるのは、住んでいた事実の整理と添付書類です
頼むと変わるのは、住んでいた事実の組み立てと、添える書類の準備です。
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 住民票の異動・引っ越し・契約・引渡しの日付を整理する
- 契約日の前日の住民票の住所を確かめ、添える書類をご案内する
- 附票で示せない期間の、住んでいたことを示す資料を組み立てる
- 控除を使える場合と使えない場合の税額を試算する
- 譲渡所得の内訳書と申告書を作成し、提出する
資料の共有から申告まで、全国どこからでもオンラインで完結します。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 住民票を移さないまま住んでいた家を売りました。3,000万円控除は使えますか?
使える場合があります。判定は住民票ではなく、生活の拠点として使っていたかで行います(措置法関係通達31の3-2・35-6)。暮らしの状況、入居の目的、家の構造と設備などを総合して見ます。前年・前々年に同じ特例を受けていないことなど、ほかの要件も必要です。
Q2. 確定申告で、住民票の写しを添える必要はありますか?
国税庁の案内(No.3302)の提出書類に、住民票の写しは挙がっていません。基本は譲渡所得の内訳書です。売買契約日の前日の住民票の住所と売った家の所在地が異なる場合などは、戸籍の附票の写しなど、住んでいたことを示す書類も添えます。
Q3. 住民票を一度も売った家に移していません。戸籍の附票で足りますか?
戸籍の附票には、住民票の記載にあわせて住所と住所を定めた日が記録されます(住民基本台帳法17条・19条)。住民票を移していなければ、売った家の住所は載りません。施行規則は「その他これらに類する書類」も挙げますが、何で示すかは個別の判断です。
Q4. 売る前に住民票だけ売る家へ移せば、控除を使えますか?
特例を受けることだけが目的の入居や、一時的な目的の入居と認められる家屋には適用されません(No.3302)。住民票を移した届出を事実の仮装とした裁決があります(平成11年3月15日裁決)。その写しと、契約日を書き換えた契約書の写しを添えた申告への重加算税は適法とされました。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法35条1項・2項・12項・13項、租税特別措置法施行規則18条の2第1項1号・第2項1号、租税特別措置法関係通達(山林所得・譲渡所得関係)31の3-2・35-6、住民基本台帳法16条・17条・19条、国税通則法68条1項、国税庁タックスアンサーNo.3302・No.3208、国税不服審判所の平成11年3月15日裁決(裁決事例集No.57)・平成28年3月16日裁決の内容を扱っています。家が2つ以上ある場合の主たる家屋の判定と判定の時点、単身赴任など配偶者等だけが住む家屋の扱い、住まなくなった家屋を売る期限の数え方、生計を一にする親族が住む家屋の扱い、「その他これらに類する書類」に当たる具体的な書類、住民票の異動の届出の手続、更正の請求や期限後申告での特例の扱いと「やむを得ない事情」の中身、過少申告加算税・重加算税・延滞税の税率と計算、10年超の軽減税率の特例、住宅借入金等特別控除との関係、令和9年分以後の所得税に係る付加税の取扱いは扱っていません。紹介した裁決は、いずれも当時の規定による事案です。記事中の計算例は令和8年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・ほかの所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係(31の3-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/06.htm
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行規則」(18条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000040015
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成28年3月16日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/102/07/index.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成11年3月15日裁決・裁決事例集No.57)https://www.kfs.go.jp/service/JP/57/17/index.html
住民票と住まいが違う家を売る前に、住んでいた事実と添付書類を確かめませんか
3,000万円の特別控除で「住んでいた家」に当たるかは、住民票ではなく生活の拠点かどうかで判定されます。ただし、売買契約日の前日の住民票の住所が売った家と違う場合などは、戸籍の附票の写しなど、住んでいたことを示す書類を申告書に添えます。住民票を別の場所に置いたまま、住んでいた事実を示せずに否認された裁決もあります。代表税理士が、日付の整理、添える書類のご案内、税額の試算、譲渡所得の内訳書と申告書の作成・提出まで担当します。売買契約の前に、60秒見積りで料金をご確認のうえお申し込みください。
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