この記事のポイント
- 前年・前々年に3,000万円控除などを受けていると、今年の売却では使えません
- 買換え・交換・譲渡損失の特例を受けた年も数えます(空き家の特例は除く)
- 例:令和7年に使ったら、次は令和10年の売却からです(ほかの要件も必要)
- 今回使うと翌年と翌々年は使えません。どの売却に使うかを比べます
まず結論:前年・前々年に特例を受けていると、3,000万円控除は使えません
前年か前々年に3,000万円控除などの特例を受けていると、今年の売却では使えません。
3,000万円控除は、マイホームを売った譲渡益から最高3,000万円を差し引ける特例です。
譲渡益は売値から買値(建物は減価償却後)と売る費用を引いた額です。
前項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、次に掲げる場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(次項の規定により適用する場合を除く。)又は第三十六条の二、第三十六条の五、第四十一条の五若しくは第四十一条の五の二の規定の適用を受けている場合を除く。)をいう。
(租税特別措置法35条2項)
かっこ書きの「次項」は、相続した空き家を売ったときの特例です。
転勤や住み替えで数年おきに家を売る方は、年の数え方で控除の可否が変わります。

数える特例は、3,000万円控除だけではありません
前年・前々年に数える特例は、特例ごとに決まっています。
| 今回使いたい特例 | 前年・前々年に受けていると使えない特例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 3,000万円控除 | 3,000万円控除(空き家の特例の分を除く)・買換え・交換・譲渡損失の2つの特例。買換え・交換は売った年も | 措置法35条2項・タックスアンサー No.3302 |
| 軽減税率の特例 | 軽減税率の特例 | 措置法31条の3第1項 |
| 買換えの特例 | 3,000万円控除(同上)・軽減税率・譲渡損失の2つの特例。売った年も | 措置法36条の2第1項 |
| 譲渡損失の2つの特例 | 3,000万円控除(同上)・軽減税率・買換え・交換の特例。損失の特例どうしには前年以前3年内などの制限も | 措置法41条の5・41条の5の2 |
買換えの特例は、譲渡益への課税を、買い換えた家を将来売るときまで繰り延べる特例です。
譲渡損失の特例は、売って損が出たときに、給与などの所得と差し引ける特例です。
損が出た売却で譲渡損失の特例を受けた年も、数える対象です。
軽減税率の特例は、売った年の1月1日で家と敷地を10年超持っていたときに税率を下げる特例です。
買換え・交換と譲渡損失の2つの特例は、令和9年12月31日までの売却などが対象です。
令和8年度改正で、令和7年12月31日から2年延びました。
補足
相続した家を売る「空き家の特例」で受けた分は、自宅の3,000万円控除の制限では数えません。空き家の特例の側には、別の制限があります。同じ被相続人から相続した家屋等で、既に受けていないことです(タックスアンサー No.3306)。同じ年に自宅と空き家を売ったときは、合わせて3,000万円が限度です(措置法通達35-7)。相続人が3人以上のときは、別の計算になります。
年の数え方:令和7年に使ったら、次は令和10年の売却からです
数えるのは、今回売った年の前年と前々年です。
| 2回目を売る年 | その前年・前々年 | 3,000万円控除 |
|---|---|---|
| 令和8年 | 令和7年・令和6年 | 使えない(前年に使用) |
| 令和9年 | 令和8年・令和7年 | 使えない(前々年に使用) |
| 令和10年 | 令和9年・令和8年 | 使える(ほかの要件を満たす場合) |
使った年の翌年と翌々年は使えず、3年後の年の売却からは、ほかの要件を満たせば使えます。
月数ではなく年で数えるため、1回目を売った月が違っても結論は同じです。
売った年は、原則として家を引き渡した日の年です。
契約の効力が生じた日の年で申告することも、納税者の選択でできます(所得税基本通達36-12)。
年末をまたぐ売却は、どちらの年になるかで控除の可否が変わることがあります。

数字で見る:売る年が1年違うと、税額が317万円変わる例です
同じ譲渡益でも、売る年によって3,000万円控除を使えるかが変わります。
計算例
例:令和7年に1回目の売却で3,000万円控除を使用。同じ年に買った2軒目を、譲渡益800万円で売る
令和9年に売る:前々年に使ったため、3,000万円控除は使えない 所得税 800万円 × 30% = 2,400,000円 復興特別所得税 2,400,000円 × 1.1% = 26,400円 防衛特別所得税 2,400,000円 × 1% = 24,000円 住民税 800万円 × 9% = 720,000円 合計 3,170,400円 令和10年に売る:800万円 - 800万円(控除)= 0円 → 税額 0円2軒目は、売った年の1月1日で所有期間が5年以下の短期譲渡として計算しています。
3,000万円控除は、所有期間の長短に関係なく使えます(タックスアンサー No.3302)。
令和9年分以後は、令和8年度改正で復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わります。
数値は、ほかの所得や控除を考えない、一定の前提を置いた目安です。
空けた家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象です。
売る年を遅らせる前に、住まなくなった自宅の期限の記事で数え方を確かめてください。

どの売却に使うか:今回使うと、翌年と翌々年の売却では使えません
今回3,000万円控除を使うと、翌年と翌々年の売却では使えません。
3,000万円控除は、確定申告書に適用を受ける旨を書き、書類を添付した場合に限り適用されます。
使うかどうかは、売った年ごとの申告で決まります(措置法35条12項)。
そのため、翌年か翌々年に次の売却が見込まれるなら、どちらに使うかを比べる余地があります。
次の売却の譲渡益の方が大きいなら、今回は使わずに次に回す選択も比べる対象です。
比べるのは2回の売却の税額の合計で、今回使わなければ今回の譲渡益に税金がかかります。
ポイント
旧宅で3,000万円控除を受けた時期によっては、新居の住宅ローン控除を受けられません。入居した年とその前年・前々年、入居した年の翌年から3年目までが対象です(No.3302)。比べ方は3,000万円控除と住宅ローン控除の選び方の記事で扱っています。
なお、売る家で住宅ローン控除を受けていたことは、35条2項が挙げる特例に入っていません。
前年・前々年の制限で、見落としたくない5つの場面
数える特例や売った年を取り違えると、税額が変わります。
- 前々年を数えていない ― 前年に使っていなくても、前々年に使っていれば使えません
- 損失の特例を数えていない ― 譲渡損失の特例を受けた年も数えます
- 年末の引渡しで年がずれた ― 引渡日と契約日のどちらの年かで変わります
- 小さな譲渡益に使った ― 後から撤回できず、翌年・翌々年は使えません
- 新居の住宅ローン控除を失った ― 旧宅で控除を受けた時期によります
注意
使えない年に3,000万円控除を差し引いて申告すると、後から税額を直すことになります。先の例では、令和9年の売却で控除すると3,170,400円の税額が抜け落ちます。
家を2軒持つときの判定は、どちらがマイホームかの記事で扱っています。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
使える年かどうかは、過去2年分の申告書の控えでご自身でも確かめられます。
- 過去2年分の確定申告書の控えで、譲渡所得の特例を受けたかを確かめる
- 今回の売却の引渡し予定日が、どの年になるかを確かめる
- 空けた家なら、住まなくなった日と売却の期限を書き出す
- 新居に住み始めた年と、住宅ローン控除の有無を書き出す
ここから先は、資料と見込みで結論が変わります。
どの売却に特例を使うか、売る年をずらすか、新居の住宅ローン控除とどちらを取るかです。

税理士が入ると変わるのは、適用歴の確認と年ごとの試算です
ひとつめは、過去の申告書から、特例を受けた年と条文を一覧にすることです。
ふたつめは、売る候補の年ごとに、使える特例と税額を試算することです。
みっつめは、年末をまたぐ売却で、引渡日と契約日のどちらの年で申告するかを比べることです。
よっつめは、新居の住宅ローン控除への影響を、控除額と並べて比べることです。
いつつめは、選んだ特例を確定申告書と譲渡所得の内訳書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、売る時期を決める前の試算から適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 去年は使っていません。一昨年に使っていても使えないのですか?
使えません。措置法35条2項は、前年または前々年に3,000万円控除などを受けている場合を除いています。令和7年に使ったなら、令和8年と令和9年の売却では使えません。令和10年の売却からは、ほかの要件を満たせば使えます。
Q2. 前回の売却で損が出て、譲渡損失の特例を受けました。今回は3,000万円控除を使えますか?
特例を受けた年が今回売る年の前年か前々年なら、使えません。譲渡損失の特例を受けた年も、3,000万円控除の制限で数えるためです(措置法35条2項)。損が出ても、この特例を受けていなければ、この制限には当たりません。
Q3. 親の家を相続して空き家の特例を使いました。翌年の自宅の売却に影響しますか?
空き家の特例で受けた分は、自宅の3,000万円控除の制限では数えません(措置法35条2項)。タックスアンサー No.3302 も、空き家の特例による適用を除くと書いています。自宅の売却のほかの要件は、別に満たす必要があります。
Q4. 新居で住宅ローン控除を受けたいです。旧宅の売却で3,000万円控除を使ってよいですか?
ほかの要件を満たせば使えます。ただし、旧宅で受けた時期によっては、新居の住宅ローン控除を受けられません。対象は、入居した年とその前年・前々年です。入居した年の翌年から3年目までに受けた場合も同じです(タックスアンサー No.3302)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法35条(1項・2項・3項・12項)、31条の3第1項、32条1項、36条の2第1項、36条の5、41条(住宅借入金等特別控除のうち3,000万円控除等との調整の規定)、41条の5、41条の5の2、地方税法附則35条、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の5・5条の9(いずれも令和9年分以後の改正後の規定を含みます)、所得税基本通達36-12、措置法通達35-7、国税庁タックスアンサー No.3302・No.3305・No.3306・No.3355・No.3370・No.3390・No.3211、質疑応答事例「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用の撤回の可否」の内容を扱っています。譲渡損失の特例の繰越控除を受けている年の数え方、3,000万円控除のその他の要件(特別の関係がある人への譲渡、家屋の取壊しや災害の場合など)、2つ以上の家屋を持つ場合の判定、軽減税率・買換え・交換・譲渡損失・空き家の各特例の個別の要件と計算、住宅借入金等特別控除の要件と控除額、同じ年に複数の不動産を売った場合の控除の上限、住まなくなった日からの期限の日の数え方、特例を使わずに申告した後で適用を求める手続、取得費と譲渡費用の計算、令和9年分以後の申告書の記載方法、指定都市の住民税の内訳は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は譲渡益の額、所有期間、売った年、他の所得や控除によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3211 短期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(令和9年1月1日施行版・e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000069/20270101_508AC0000000012
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(令和9年1月1日施行版・e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000117/20270101_508AC0000000012
次の売却で3,000万円控除が使えるか、売る年を決める前に確かめませんか
3,000万円控除は、前年・前々年に受けた特例で使える年が決まります。代表税理士が、過去の申告書から特例を受けた年を確かめます。そのうえで、売る年ごとの税額と新居の住宅ローン控除への影響を並べて試算します。売買契約や引渡しの日を決める前に、ご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り