この記事のポイント
- 私用の分を会社が負担すると原則として役員給与になり、毎月おおむね一定でなければ損金になりません
- 業務の分は、借上げの契約書と運行記録で説明できるようにします
- 借上料は原則として社長の雑所得。同族会社の役員は20万円以下でも申告が要ります(還付の方を除く)
- 会社に売るなら時価が基準。高く買い取ると差額は役員給与になります
まず結論:社長の車は「業務の分」と「私用の分」を分けて扱います
社長名義の車を会社の仕事に使うとき、会社が払うのは借上料(車を借りる対価)と車の費用です。
私用の分まで会社が払うと、その分は原則として社長への役員給与になります。
また、借上料は社長個人の所得になり、少額でも申告が要る場合があります。

車の費用は「走った分の費用」と「持ち続ける費用」に分けて考えます
どの費用も、私用に対応する分を会社が負担しないことが出発点です。
| 費用の種類 | 例 | 分け方の考え方 |
|---|---|---|
| 走った分に応じた費用 | ガソリン代・高速代・出張先の駐車場代 | 業務と私用の移動を、記録で分けます |
| 車を持ち続ける費用 | 自動車税・任意保険・車検代・修理代・自宅の駐車場代 | 割合で分けるか、借上料の額に含めて決めます |
| 借上料 | 車を借りる対価 | 契約書で額を決めます。社長の所得です |
ポイント
会社がどの費用をどこまで負担するかは、借上げの契約書に書いておきます。契約と実際の支払いがそろっていることが、説明の土台になります。

私用の分を会社が払うと、役員給与になります
会社が社長個人の費用を負担すると、その額は原則として役員給与になります。
通達は、役員への経済的な利益(お金以外の形の得)の例に次の形を挙げます。
役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額
(法人税基本通達9-2-9(10))
定期同額給与など3つの形に当たらない役員給与は、損金になりません(タックスアンサーNo.5211)。
損金とは、法人税の計算で差し引ける費用です。
毎月おおむね一定の経済的な利益は、定期同額給与に当たります(法人税基本通達9-2-11)。
年1回払う自動車税の私用の分のように、毎月おおむね一定でない負担は損金になりません。
社長の側でも、この利益は原則として給与所得になります(タックスアンサーNo.2508)。
会社には、源泉徴収の義務も生じます(所得税法183条1項)。
計算例
例1:会社が車の費用を年500,000円払い、記録で業務の割合が分かる場合
業務の割合 7,200km ÷ 12,000km = 60% 業務の分 500,000円 × 60% = 300,000円 私用の分 500,000円 - 300,000円 = 200,000円私用の分を会社が負担したままだと、役員給与として扱われます。数字は一定の前提を置いた目安で、60%は割合の基準ではありません。
経済的な利益の全体像は、社長の私的な支出の記事にまとめています。
借上料は社長の雑所得になり、20万円以下でも申告が要る場合があります
車は不動産・船舶・航空機のどれでもないため、借上料は不動産所得に当たりません(所得税法26条1項)。
通達は、次の所得を業務に係る雑所得の例に挙げています。
動産(法第26条第1項《不動産所得》に規定する船舶及び航空機を除く。)の貸付けによる所得
(所得税基本通達35-2(1))
社会通念上、事業といえる程度でなければ、車の借上料は業務に係る雑所得です。
所得は、借上料から必要経費を差し引いて計算します(所得税法35条2項2号)。
給与を1か所から受ける人は、給与以外の所得が20万円以下なら、原則として申告が要りません。
ただし、同法121条1項には次のただし書があります。
ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
(所得税法121条1項)
同族会社の役員などが会社から資産の賃貸料を受け取ると、20万円以下でも申告が要ります。
確定申告で税金が還付になる人は除かれます。
役員の親族なども同じ扱いです(タックスアンサーNo.1900・No.1901)。
注意
例えば借上料が月10,000円なら年120,000円です。所得が20万円以下でも、同族会社の役員は申告が必要です(還付になる人を除く)。金額は一定の前提を置いた目安です。
業務の分は、契約書と運行記録で示します
法人税基本通達9-2-9(9)は、旅費などの名目で払ったお金も経済的な利益に挙げます。
対象は「その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの」です。
業務に使ったことを、後から説明できる形で残しておくことが大切です。
例えば、次の書類と記録をそろえておきます。
- 借上げの契約書 ― 借上料の額、会社が負担する費用の範囲、事故のときの扱い
- 運行記録 ― 日付・行き先・用件と、走行前後のメーターの数字
- 領収書 ― 給油や駐車場の領収書に、行き先と用件を書き添えたもの

会社名義に変えるなら、時価で売買し、私用の扱いも決め直します
会社に売るときは、時価(その時点の車の価額)を基準に値段を決めます。
| 項目 | 借り上げる | 会社が買い取る |
|---|---|---|
| 会社の費用 | 借上料と、業務の分の車の費用 | 減価償却費(車の代金を年数で分けた費用)と車の費用 |
| 社長の税金 | 借上料は原則として雑所得 | 売った代金の課税を別に確かめる |
| 私用に使うとき | 私用の分を会社が払うと原則として役員給与 | 無償で私用に使うと原則として現物給与(お金以外の形の給与。タックスアンサーNo.2508) |
時価より高く買った場合、通達は次の額を経済的な利益に挙げます。
役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額
(法人税基本通達9-2-9(3))
時価より高く買い取ると、差額は役員への経済的な利益として役員給与になります。
不当に高く買った場合、実質的な贈与と認められた額は取得価額から除かれます(同7-3-1)。
計算例
例2:時価1,200,000円の車を、会社が1,500,000円で買い取った場合
差額 1,500,000円 - 1,200,000円 = 300,000円(役員給与) 車の取得価額 1,500,000円 - 300,000円 = 1,200,000円差額の全額が実質的な贈与と認められた前提の、一定の目安です。
この300,000円は毎月一定の利益ではないため、定期同額給与に当たらず損金になりません。
買い取った中古車の耐用年数は、中古の社用車の耐用年数の記事をご覧ください。
指摘につながるのは、たとえば次の5つの形です
次の形は、役員給与や申告漏れの指摘につながります。
- 契約書がない ― 車の費用を会社がすべて払っている
- 私用のガソリン代 ― 休日や家族の外出の給油まで会社のカードで払う
- 年払いの費用 ― 自動車税や任意保険を全額払い、私用の分を分けていない
- 社長の申告漏れ ― 借上料が20万円以下だからと申告していない
- 高すぎる買取価格 ― 時価を確かめずに、高い値段で車を買い取る
どれも、会社の費用と社長個人の費用の線引きがあいまいな形です。
補足
会社を作らずに事業をしている方の車の費用の分け方は、家事按分の記事をご覧ください。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
借り上げを始める前に、ご自身で整えられるのは次の4点です。
- 車検証で、車の所有者と使用者の名義を確かめる
- 会社の仕事で車を使う場面と頻度を書き出す
- 借上料と、会社が負担する費用の範囲を契約書にする
- 運行記録を付け始め、私用の分は社長個人で払う
会社が私用の分を立て替えたときは、社長個人から会社へ精算してもらいます。
借上料の額、費用の割合、借り上げか買い取りかは、使い方の事実で変わる個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、契約・記録・申告がそろうことです
小松公認会計士・税理士事務所では、社長の車を会社で使う前から次の作業を行います。
ひとつめは、借上料と会社が負担する費用の範囲を決める契約書の確認です。
ふたつめは、月ごとに業務の分を集計できる運行記録の様式づくりです。
みっつめは、車の費用を業務の分と私用の分に分けて記帳する帳簿の整理です。
よっつめは、借上料の雑所得を計算し、社長個人の確定申告書に反映することです。
いつつめは、会社に売る場合の時価の資料集めと、取得価額の試算です。
むっつめは、契約書と記録で業務の分を説明する、税務調査の想定問答の準備です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社長個人の車のガソリン代を、会社の経費にできますか?
会社の業務で走った分は、会社の費用として扱います。私用の分まで会社が払うと、原則として役員給与になります。役員の個人的費用の負担に当たるためです(法人税基本通達9-2-9(10))。休日や家族の外出の給油は私用の分です。運行記録で業務の分を示します。
Q2. 会社から受け取る車の借上料は、社長の確定申告が必要ですか?
車の借上料は、事業といえる程度でなければ業務に係る雑所得です(所得税基本通達35-2)。同族会社の役員などは、20万円以下でも申告が必要です(タックスアンサーNo.1901)。ただし、確定申告で税金が還付になる人は除かれます。
Q3. 自動車税や任意保険を、会社が全額払ってもよいですか?
社長名義の車の費用のうち、私用の分を会社が負担すると、原則として役員給与になります。自動車税など年払いの私用分は、毎月おおむね一定でなく損金になりません(法人税基本通達9-2-11)。業務の分との割合は、契約書と記録で決めておきます。
Q4. 社長の車を会社に売るときは、いくらにすればよいですか?
時価(その時点の車の価額)が基準です。時価より高く買うと、差額は経済的な利益として役員給与になります(法人税基本通達9-2-9(3))。不当に高い場合、実質的な贈与と認められた額は取得価額から除かれます(同7-3-1)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税基本通達9-2-9((3)(9)(10))・9-2-11・7-3-1、所得税法26条1項・35条2項・121条1項・183条1項、所得税基本通達35-2、タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」・No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」・No.1901「同族会社の役員で確定申告の必要な人」・No.2508「給与所得となるもの」の内容を扱っています。借上料の相場や額の決め方、業務と私用の割合の目安と分け方の基準、同族会社の判定、所得税法施行令262条の2の要件の細目、法人税基本通達9-2-10(給与としない経済的な利益)の当てはめ、源泉徴収税額の計算、社長側の必要経費の計算、社長が会社に車を売ったときの社長側の課税、会社が時価より安く買い取った場合の処理、中古車の耐用年数と減価償却費の計算、消費税(借上料や車の費用の仕入税額控除)、名義変更に伴う自動車関係の税金と手続、通勤手当の非課税、リース契約、事故の際の保険金の扱い、個人事業主の家事按分、加算税・延滞税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、業務の割合や時価は車の使い方や状態によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款「経済的な利益の供与」(9-2-9〜9-2-11)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係(35-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/09.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1901「同族会社の役員で確定申告の必要な人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1901.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2508「給与所得となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm
- e-Gov法令検索「所得税法」(26条・35条・121条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
社長の車を会社で使う前に、契約書と記録の形を決めませんか
社長個人の車を会社の業務に使うとき、私用の分まで会社が負担すると原則として役員給与になります。その負担は、毎月おおむね一定でなければ損金になりません。借上料は原則として社長の雑所得です。同族会社の役員などは、20万円以下でも、還付になる場合を除き確定申告が要ります。代表税理士が、契約書の確認、運行記録の様式づくり、帳簿の業務分と私用分の整理を行います。社長個人の確定申告や、会社に売る場合の時価と取得価額の試算まで通して対応します。借り上げを始める前、または車を会社に売る前の段階でご相談ください。
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