この記事の答え
- 転勤などで単身赴任中でも、配偶者や子どもが住む家なら3,000万円控除を使える場合があります。
- 赴任が終わればその家で暮らすと認められる人が対象です。違う人も、売る期限内なら使える場合があります。
- 5年を超えて持っていた家で利益2,000万円なら、税額の差は約406万円です(目安)。
自分が住んでいない家でも、3,000万円控除は使えますか

単身赴任中で自分が住んでいなくても、配偶者や子どもが住む家なら、使える場合があります。3,000万円控除は、マイホームを売った利益から最高3,000万円を差し引ける特例です。
この特例は、原則として、持ち主本人が今住んでいる家を売るときに使います。ただし国税庁は、次の2つに当てはまれば、本人が住んでいなくても使えると説明しています。
- 本人が、転勤や転地療養(療養のための転居)などの事情で、配偶者や子どもと離れて単身で暮らしている
- その事情がなくなれば、配偶者や子どもが住むその家で、一緒に暮らすと認められる
ここでいう配偶者や子どもは、本人と同居するのが通常の人です。以下では「家族」と呼びます。
質問3が「はい」でも、赴任先にも自分の家がある人は、主として住まいに使っていた1軒だけが対象です。本人が持ち主として住んだことのない家は、対象になりません。売ると決めた後の質問3の判定は、個別の判断です。
このほかの条件もあります。全体の条件は、3,000万円控除の基本の記事で確かめてください。
特例を使えるかどうかで、税金はいくら違いますか

5年を超えて持っていた家で利益が2,000万円なら、税額の差は約406万円です。会社員のAさんの例で、目安を見てみます。
Aさんは、転勤で単身赴任中に、妻と子どもが住む自宅を売りました。Aさんが家と土地を持っていた期間は、売った年の1月1日で5年を超えています。
Aさんの売却の利益は2,000万円です。利益とは、売った金額から、買ったときの代金などと売るための費用を引いた金額です。
利益2,000万円に税率20.315%(所得税など15.315%、住民税5%)を掛けた、一定の前提を置いた目安です。ほかの特例や所得控除は考えていません。
Aさんが特例を使えるときは、利益の全部を差し引けるので、この利益にかかる税金は0円です。
注意
税金が0円になる人も、書類を添えて確定申告をしなければ、この特例は使えません。
「自分は住んでいないから」と特例を書かずに申告すると、図2の差がそのまま負担になります。
条件に当たらない人や、赴任先にも家がある人はどうなりますか

家族も引っ越した人や図1の質問2・3が「いいえ」の人には、売る期限があります。赴任先にも家がある人は、対象が1軒になります。
使える場合がある
- 家族も引っ越した人、図1の質問2・3が「いいえ」の人:本人が住まなくなった日から3年を経過する日が入る年の12月31日までに売る
- その期限を過ぎた人:生計を一にする親族が住み続け、本人の今の住まいは本人の持ち家でない(国税庁の通達の取扱い)
使えない
- 売る期限を過ぎ、親族の扱いにも当たらない
- 赴任先にも自分の家がある:主な住まいでないほうの家を売る
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人に売る
- 前年か前々年に同じ特例などを受けた
質問2・3が「いいえ」の人も、本人が住まなくなった日から同じ期限までに売れば、使える場合があります。家族が住み続けていても、同じ期限です。たとえば、本人が令和5年4月に住まなくなった場合の期限は、令和8年12月31日です。
家族も引っ越した人も、この期限を確かめます。本人が先に出た人は、家族が出るまで質問2・3が「はい」なら、家族が出た日から数える場合があります。
その期限を過ぎた人は、別の扱いを確かめます。本人が持ち主として住んだ家に、生計を一にする親族(生活費を共にする親族)が住み続けている場合です。これは法律でなく、国税庁の通達の取扱いです。親族が住まなくなった日などから1年を過ぎる前に売ること、決められた書類を添えることなども条件です。
赴任先にも自分の家がある人は、好きなほうを選べず、主として住まいに使っていた1軒だけが対象です。質問2・3が「いいえ」の人の元の家が主な住まいかどうかは、本人が住まなくなった時の状況で判定します。
どんな失敗がありますか

自分の住まいに当たるかどうかは、住民票の住所だけでは決まりません。国税庁は、本人と家族の暮らしぶり、入居の目的、家の設備などを総合して判定するとしています。
失敗の例
- 平日に泊まったと主張したマンションの例。ある人は、平日はマンションに泊まっていたと主張しました。しかし、週末は家族のいる家で過ごし、電気・ガス・水道の使用はごくわずかでした。国税不服審判所は、暮らしの中心は家族のいる家だと判断しました。マンションの売却に特例は認められませんでした(平成5年の判断)。
- 貸していた家へ本人だけ移ったと主張した例。ある人は、転勤中に家を勤務先の社宅として貸しました。本社に戻った後、本人だけがその家へ移ったと主張しました。しかし、週に4〜5日は家族のいる社宅で過ごしていました。審判所は、その家を暮らしの中心とは認めませんでした(昭和56年の判断)。
どこまで自分で確かめられますか

事実を書き出すところまでは、ご自身でできます。次の4つを、売買契約の前に整理してください。
- 家を離れた日と、その理由(赴任の辞令など)
- 家族がその家に住み続けた期間
- 赴任先などに、ほかの自分の家があるか
- 売買契約日の前日の、住民票の住所
次の3つは、個別の判断が必要です。
- その家で一緒に暮らすと認められるか
- 2軒のどちらが主な住まいか
- いつを「住まなくなった日」とするか
新しい家で住宅ローン控除を使う予定の人は、併用の制限も確かめてください。
税理士が入ると変わること
小松公認会計士・税理士事務所では、赴任の辞令や家族の暮らしの資料から、条件に当たるかを確かめます。特例を使える場合と使えない場合の税額を並べて試算します。確定申告に添える書類をご案内し、申告書を作成して提出します。
売買契約の前にご相談いただくと、売る時期と期限の関係まで確かめられます。
単身赴任中のマイホーム売却について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 単身赴任が何年も続いていても、3,000万円控除は使えますか?
使える場合があります。国税庁の案内や通達に、赴任の年数の上限は書かれていません。事情がなくなれば、その家で配偶者や子どもと暮らすと認められるかで判断します。
Q2. 住民票を赴任先に移していても使えますか?
使える場合があります。住民票だけでは決まらず、暮らしの実態などから判定します。売買契約日の前日の住民票の住所が売る家と違う場合などは、戸籍の附票の写し(住所の履歴の記録)なども添えます。くわしくは住民票の記事へ。
Q3. 赴任先の家と、配偶者や子どもが住む家を両方売ると、3,000万円ずつ引けますか?
引けません。2つ以上のマイホームを持っているときは、主として住まいに使っていた家だけが対象です。控除額も、同じ年の売却を合わせて3,000万円が限度です。夫婦の共有名義の家は、共有者ごとに判定し、控除は1人につき最高3,000万円です。
Q4. 海外赴任で日本に住所がなくなった場合も同じですか?
使える場合があります。ただし、国内の単身赴任とは別の確認も必要です。たとえば、買主が代金から10.21%を源泉徴収する場合があります。くわしくは海外在住のまま売却した場合の記事をご覧ください。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。単身赴任中の家を売ったときに3,000万円控除を使えるかどうかの主な点を扱っており、特例の要件の全部を説明したものではありません。海外へ転勤して非居住者となった場合、家屋を取り壊して土地だけを売る場合、家屋と土地の所有者が異なる場合などは、別の確認が必要です。本記事の計算例は、一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。具体的な判断は税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3317「配偶者等だけが住んでいるマイホームを売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3317.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3314「過去に居住していたマイホームを売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3314.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3308「共有のマイホームを売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2879「非居住者等から土地等を購入したとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2879.htm
- 国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「同一年中に居住用財産を2回譲渡した場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/02.htm
- 国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「居住の用に供している家屋を2以上有する場合」(焼失した家の敷地と今の家を同じ年に売った事例。控除額の限度の資料)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/03.htm
- 国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/08.htm
- 国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「生計を一にする親族の居住の用に供していた家屋を譲渡した場合の租税特別措置法関係通達31の3-6(4)の取扱い」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/09.htm
- 租税特別措置法関係通達31の3-2(居住用家屋の範囲)・31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)・31の3-9(「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定時期)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/06.htm
- 租税特別措置法関係通達35-6(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱いの準用)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti35/01.htm
- 所得税基本通達2-47(生計を一にするの意義)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01/07.htm
- 福岡国税局「マイホームを売却した場合の特例チェックシート」(令和7年分用)https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/topics/joto_zoyo_r07/pdf/03.pdf
- 国税不服審判所 平成22年1月26日裁決(裁決事例集No.79。居住用財産の譲渡損失の特例の事案)https://www.kfs.go.jp/service/JP/79/22/index.html
- 国税不服審判所 平成4年1月20日裁決(裁決事例集No.43 468頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/43/39/index.html
- 国税不服審判所 平成5年6月25日裁決(裁決事例集No.45 323頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/45/25/index.html
- 国税不服審判所 昭和56年1月29日裁決(裁決事例集No.21 237頁。昭和57年法律第8号による改正前の規定による事案)公表裁決事例要旨「居住用財産の判定」https://www.kfs.go.jp/service/MP/12/0102060200.html
- 租税特別措置法35条1項・2項・12項・13項e-Gov法令検索、租税特別措置法施行令20条の3第1項・第2項・23条1項・2項e-Gov法令検索、租税特別措置法施行規則18条の2第2項1号e-Gov法令検索
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条(令和8年分は2.1%。令和8年法律第12号附則88条1項により、令和9年分以後は1.1%)e-Gov法令検索
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