この記事のポイント
- 店舗や賃貸部分のある家を売ったとき、3,000万円の特別控除は「住んでいた部分」だけが対象です
- ただし、住んでいた部分が家全体のおおむね90パーセント以上なら、建物全体に控除を使えます
- 割合は床面積をもとに計算し、建物と土地のそれぞれで判定します
- 毎年の「事業用の割合」と食い違う主張は通りにくいため、過去の申告書の確認が大切です
まず結論:控除が使えるのは「住んでいた部分」だけです
1階が店舗、上階が自宅という「併用住宅」を売ったとき、3,000万円の特別控除は建物全体に使えるのでしょうか。答えは次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.3452)。
特例の適用を受けることができるのは、店舗併用住宅のうち自分の居住の用に使っていた部分に限られます。
なお、居住の用に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上であるときは、全体を居住の用に使っていたものとしてこれらの特例の適用を受けることができます。
まずは「自宅部分は何割か」を計算することが第一歩です。
自宅部分の割合は「床面積」で計算します
割合は床面積をもとに計算します。建物は「自宅として使っていた床面積の割合」、土地はその割合に応じます(措置法通達31の3-7)。
- 建物の図面・登記事項証明書
- 固定資産税の課税明細書
- 毎年の確定申告の「事業用の割合」
注意
毎年「事業用30パーセント」で経費計上した家を、売却時だけ「自宅は95パーセント」と主張するのは通りにくい話です。過去の申告との一貫性が問われます。売る前にご確認ください。
「おおむね90パーセント以上」なら全体に使えます
自宅部分の割合がおおむね90パーセント以上なら、建物・土地の全体を自宅として扱えます(措置法通達31の3-8)。細かい按分計算の前に、まず90パーセントに届いていないかを確認しましょう。
税額はどれくらい変わる?——数字で見てみましょう
計算例
前提:売却価格5,000万円、取得費など1,400万円 → 売却益3,600万円。所有10年超、税率20.315パーセントとします。
ケース1:自宅部分が75パーセントの場合
自宅部分の売却益:3,600万円 × 75パーセント = 2,700万円 → 3,000万円控除で税金ゼロ 店舗部分の売却益:3,600万円 × 25パーセント = 900万円 → 控除なし 税額 = 900万円 × 20.315パーセント = 約183万円自宅部分で余った控除枠300万円(3,000万円−2,700万円)は、店舗部分に回せません。
ケース2:自宅部分が92パーセントの場合
おおむね90パーセント以上 → 建物全体を自宅として扱えます 売却益3,600万円 - 3,000万円 = 600万円 税額 = 600万円 × 20.315パーセント = 約122万円割合が17ポイント違うだけで、税額は約61万円変わりました。
住まなくなってから売る場合は「いつの状態」で判定?
転勤や施設入居のあと、自宅部分を賃貸に出してから売ることもあります。いつの時点の使い方で割合を判定するのでしょうか。
答えは「住まなくなった時の直前」の使い方です(措置法通達31の3-7(注))。あとから賃貸に回しても割合は減りません。
ただし、転用部分について別の特例(収用や事業用資産の買換えなど)を使う場合は扱いが変わります。個別にご確認ください。
賃貸併用住宅で、特に気をつけたい3つのこと
1. 賃貸部分は「買った値段」が目減りしています
賃貸部分は毎年の申告で減価償却費を経費にしてきたはずです。売却益の計算では、その分だけ建物の取得費が小さくなります。過去の申告書の減価償却の明細は必ず保管してください。
2. 賃貸・店舗部分の売却には消費税の話が出ることがあります
個人でも事業用の建物を売ると消費税の対象になることがあります。該当しそうな方は別途ご確認ください。
3. 「分けて売る」ときは要注意です
建物を区分して一部だけ売る場合、残った部分が独立した住まいとして使えるかで扱いが変わり得ます(措置法通達31の3-10)。分ける前にご相談ください。
売る前に集めておきたい資料
| 資料 | 何に使うか |
|---|---|
| 建物の図面・登記事項証明書 | 床面積・割合の確認 |
| 固定資産税の課税明細書 | 土地の割合、価格の目安 |
| 過去の確定申告書(決算書・収支内訳書) | 事業用割合・減価償却費の実績 |
| 買ったときの契約書・領収証 | 取得費(土地と建物の内訳も) |
| リフォーム・増改築の契約書と領収証 | 取得費に足せる支出の確認 |
| 売ったときの契約書・仲介手数料の領収証 | 売却価格と売却にかかった費用 |
とくに過去の申告書は、割合の一貫性を示すために欠かせません。手元になければ税務署で閲覧・写しの交付を受けられます。
併用住宅の売却について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 1階が店舗、2階と3階が自宅です。3,000万円控除は建物全体に使えますか?
原則は自宅部分だけです(国税庁タックスアンサーNo.3452)。おおむね90パーセント以上なら建物全体に使えます。まず床面積で割合を計算してください。
Q2. 自宅部分の割合は、どうやって計算しますか?
床面積をもとに計算します(措置法通達31の3-7)。図面・固定資産税の課税明細書・過去の事業用割合を参考にします。過去の申告と食い違う主張は説明を求められます。
Q3. 自宅部分で3,000万円を使い切れませんでした。余った枠を店舗部分に使えますか?
使えません。控除は自宅部分の売却益から引くものです。売却益3,600万円のうち自宅部分が2,700万円ならそこはゼロになりますが、残り900万円(店舗部分)はそのまま課税されます。
Q4. 転勤で家を離れたあと、自宅部分も賃貸に出してから売りました。自宅部分はゼロになりますか?
なりません。判定は「住まなくなった時の直前」の使い方で行います(措置法通達31の3-7(注))。収用や買換えなど別の特例を使う場合は扱いが変わります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.3452およびNo.3302は、いずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。措置法通達31の3-7が定める按分の算式は通達上図で示されており、本記事では算式そのものを転載せず考え方を説明しています。本記事の数値例では居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例を考慮しておらず、所有期間や過去の特例適用状況によって税額は変わります。事業用部分の譲渡に係る消費税、および賃貸部分の減価償却費の計算は本記事では扱っていません。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3452.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて 措置法第31条の3関係(31の3-1・31の3-7・31の3-8・31の3-10)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/06.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 租税特別措置法35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)・31条の3(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)https://elaws.e-gov.go.jp/
「何割が自宅か」で、税額が数十万円変わります
店舗や賃貸部分のある家の売却は、自宅部分の割合の出し方で結論が変わります。図面・固定資産税の明細・過去の申告書をご用意いただければ、割合の考え方と特例が使えるかを整理してご説明します。売る前のご相談を歓迎します。代表税理士が直接ご対応します。
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