この記事のポイント
- 建物だけが減価償却の対象です。内訳がないと取得費が決まりません
- 最優先は契約書の消費税額から逆算する方法です(土地に消費税はかかりません)
- 次点は「建物の標準的な建築価額表」、3つ目は固定資産税評価額の比率です
- 方法で結果が変わるため、選んだ理由を説明できる形にします
まず結論:なぜ土地と建物を分ける必要があるのか
建物だけが、古くなった分(減価償却)の計算対象だからです。内訳が決まらないと、取得費(買ったときにかかったお金)も決まりません。
利益は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除」で計算します。国税庁タックスアンサーNo.3261は建物の取得費は購入代金などの合計額から、値下がり分(減価償却費相当額)を差し引いた金額と説明しています。土地は価値が減らないため、購入代金がそのまま取得費になります。
契約書が「土地建物一括で4,000万円」としか書かれていないと、建物の値段が分からず値下がり分も計算できないため、按分(割り振り)が必要になります。
ポイント
按分の方法は3つです。①契約書の消費税額から逆算②建物の標準的な建築価額表③固定資産税評価額の比率。この順に優先します。
取得費そのものが分からない場合は不動産売却で取得費がわからない?概算取得費5%で損しないための合理的算定法を、費目の区分は測量費・取壊し費用は取得費?譲渡費用?不動産売却でかかった費用の線引きをご覧ください。
方法①:契約書の消費税額から建物の値段を逆算する(最優先)
契約書に消費税額が書いてあれば、最も確実な方法です。土地の売買・貸付けには消費税がかかりません(国税庁タックスアンサーNo.6201)。消費税額は建物の分にしかかからないため、そこから建物の値段を逆算できます。
建物本体の価額 = 契約書に記載された消費税額 ÷ 購入当時の消費税率
建物の価額(税込)= 建物本体の価額 + 消費税額
土地の価額 = 購入総額 − 建物の価額(税込)
大事なのは「買った当時の」税率を使うことです。
- 平成元年4月:3%
- 平成9年4月1日:5%
- 平成26年4月1日:8%
- 令和元年10月1日:10%
今の10%で計算すると、建物の値段を小さく見積もりすぎます。
平成15年に4,000万円(税込)で購入、契約書の消費税額が100万円(税率5%)だった例です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 建物本体の価額 | 100万円 ÷ 5% | 20,000,000円 |
| 建物の価額(税込) | 2,000万円 + 100万円 | 21,000,000円 |
| 土地の価額 | 4,000万円 − 2,100万円 | 19,000,000円 |
自宅など事業用でない資産は、消費税込みの2,100万円が建物の取得価額になり、ここから値下がり分を差し引きます。
方法②:国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を使う
契約書に消費税額がない場合や、消費税が始まる前に買った場合は、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」(建築年と構造ごとの建築費目安)を使います。
国税庁の確定申告書等作成コーナーによれば、契約で土地と建物の価額が区分されていないときは、区分の一方法としてこの表で建物の取得価額を算定できるとされています。
ただし次の場合は使いません。
- 契約書等で価額が区分して記載されている場合
- 建物の消費税が判明し、消費税率で割り戻して価額が把握できる場合
方法①が使えるなら方法①を優先します。「有利な数字になるから」という理由で選ぶものではありません。
表は建築年・構造ごとの1平方メートルあたり単価×床面積で取得価額を出し、購入総額から引いた残りが土地の値段です。単価は国税庁の表でご確認ください。
方法③:固定資産税評価額の比率で按分する
評価額が分かる場合は、その比率で購入総額を分けます。国税庁の取扱いでは次の順です。
- 契約で価額が分かれていれば、その金額による
- 分かれていなくても売主側の記録等で確認できれば、それによる
- どちらも確認できないときは買った時点の時価の比で按分する
方法①と同じ物件(購入総額4,000万円)で、固定資産税評価額が土地1,500万円・建物900万円だった例です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 土地の割合 | 1,500万円 ÷ 2,400万円 | 62.5% |
| 建物の割合 | 900万円 ÷ 2,400万円 | 37.5% |
| 土地の価額 | 4,000万円 × 62.5% | 25,000,000円 |
| 建物の価額 | 4,000万円 × 37.5% | 15,000,000円 |
方法①では建物2,100万円、方法③では1,500万円。同じ物件でも600万円の差が出ました。
注意
「有利なほうを選ぶ」という発想は危険です。結果が変わる以上、選び方に理由が必要です。当事務所は理由を説明できる形で計算し、根拠資料を保管します。
按分のあとにやること――建物の値下がり分の計算
建物についてだけ、値下がり分(減価償却費相当額)を差し引きます。国税庁タックスアンサーNo.3261の式は次のとおりです。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
償却率は自宅など仕事に使っていない資産のための償却率で、構造ごとに決まっています。値下がり分として引ける上限は、取得価額の95%です。
賃貸などの事業用建物は、経費にしてきた減価償却費の合計額を差し引きます。自宅期間と賃貸期間が混ざる物件は期間ごとに分けて計算します。賃貸用不動産の売却は賃貸用マンション・アパートを売却したときの譲渡所得 3,000万円控除が使えない場合の計算で解説しています。
取得費が決まれば、次は特例の判定と税額計算です(マンションを売却したら税金はいくら?計算手順と手取りシミュレーションの考え方)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 契約書に土地と建物の金額が書いてあれば、そのまま使ってよいですか?
原則としてその金額を使います。ただし実態とかけ離れた分け方は無条件には認められません。極端な契約は根拠を確認してください。
Q2. 消費税の金額が契約書に書いていません。総額表示の場合はどうなりますか?
方法①は使えません。建物の標準的な建築価額表や、買った当時の評価額の比で分ける方法を検討します。個人間売買など消費税がない取引では、そもそも消費税額自体がありません。
Q3. 按分は売却時の固定資産税評価額でもよいですか?
買ったときの値段を分けるものなので、原則として買った当時の評価額の比を使います。売った時点の評価額では値動きが混ざり実態から離れます。資料がなければ、別の方法を使った理由を説明できるようにします。
Q4. マンションでも土地と建物を分ける必要がありますか?
必要です。所有権には敷地利用権(土地の持分)が含まれ、建物の分だけが値下がり分の計算対象です。分譲時のパンフレットや価格表に内訳があることが多いので、まず資料を探してください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。按分方法の選択は資料の残り方や取得の経緯によって結論が変わり、記載の数値例は前提を置いた試算です。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3261「建物の取得費の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3252「取得費となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国税庁タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」(土地の譲渡および貸付け)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「標準的な建築価額による計算とは」https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru_sp/socat2/socat21/scid1203.html
- 国税庁「建物の標準的な建築価額表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/joto/pdf/001.pdf
- 国税庁「土地等と建物等を一括取得した場合の土地等の取得価額の区分」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/joto-sanrin/091116/09.htm
- 財務省「消費税率の引上げと使途の明確化」(消費税率の推移)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d05_1.pdf
この記事のお悩みは、小松公認会計士・税理士事務所にご相談ください
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
按分の方法選びから申告までお任せください
土地と建物の按分は、選ぶ方法によって取得費が数百万円変わることがあります。当事務所では残っている資料を確認したうえで、税務署に説明できる方法を選び、根拠資料とあわせて申告書を作成します。契約書が手元にあるかどうかにかかわらず、まずは無料相談で状況をお聞かせください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り