この記事のポイント
- 土地を500万円以下で売ると、譲渡所得から100万円を控除できます(国税庁タックスアンサーNo.3226)
- 所有5年超・特別な関係にない相手など6要件を満たし、市区町村長の確認書が必要です
- 適用期限は令和10年12月31日まで3年延長。他の譲渡所得の特例との併用はできません
まず結論:売値500万円以下の空き地なら、100万円引ける可能性があります
相続した田舎の土地や使っていない駐車場跡地など、固定資産税がかかる空き地を手放すと、譲渡所得から100万円を控除できる特例があります。正式名称は「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」(措法35の3)です。
国税庁タックスアンサーNo.3226は「その年の低未利用土地等の譲渡に係る譲渡所得の金額から100万円を控除することができます。その譲渡所得の金額が100万円に満たない場合には、その譲渡所得の金額が控除額になります。」と説明しています。利益が100万円に届かないときは、その利益の分だけが控除額になり、赤字になることはありません。
長期譲渡所得の税率は20.315パーセント(所得税・復興特別所得税15.315パーセント+住民税5パーセント)。100万円を引ければ、単純計算で約20万円の差になります。売値が数百万円の土地では税額の大きな割合を占めます。
対象になる土地・ならない土地
この特例の対象は「低未利用土地等」と呼ばれます。かみくだいて言えば、使われていない土地や、周りに比べて利用の程度が著しく低い土地です。
該当するかどうかを最終的に決めるのは、市区町村が確認書を出すかどうかです。ご自身で「低未利用だろう」と判断しても、確認書が出なければ使えません。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 都市計画区域内にある | この特例の前提条件です。市区町村で確認できます |
| 都市計画区域外にある | 対象外です。まずここで判定が終わります |
| 使っていない空き地・空き家の跡地 | 低未利用土地等に当たる可能性があります |
| 周りに比べて利用の程度が著しく低い土地 | 同じく可能性があります。判断は市区町村が行います |
| ご自身が住んでいる自宅の敷地 | 通常は「使われている土地」です。自宅の売却は3,000万円特別控除など別の特例を検討します |
| 売った後も誰も使わない土地 | 「売却後に利用がされること」が要件のため、対象になりません |
補足
「使われる予定」まで含めて考える特例です
放置された土地を活用してもらう仕組みのため、買った人がその土地を使うことまで要件に入っています。利用予定は市区町村への確認時に聞かれます。
6つの要件をチェックする
国税庁タックスアンサーNo.3226が挙げる主な要件は次の6つです。ひとつでも欠けると使えません。
| # | 要件 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 1 | 都市計画区域内にある低未利用土地等であること | 市区町村の都市計画担当窓口で区域を確認します |
| 2 | 売った年の1月1日において、所有期間が5年を超えること | 登記事項証明書や過去の売買契約書で取得日を確認します |
| 3 | 売った相手が、配偶者や直系血族など特別な関係にある人でないこと | 親子間・夫婦間の売買は対象外になります |
| 4 | 売った金額が、上にある建物等の対価を含めて500万円以下であること(一定の場合は800万円以下) | 土地と建物を合計した金額で判定します |
| 5 | 売却後にその低未利用土地等の利用がされること | 買主の利用予定を確認しておきます |
| 6 | 市区町村長の確認をした書類があること | 土地がある市区町村の窓口に手続きを確認します |
要件2「所有期間5年超」の数え方に注意
判定日は売った年の1月1日です。売った日ではありません。
判定日は「売った年の1月1日」で、売った日ではありません。例えば令和3年6月取得・令和8年10月売却なら実所有5年4か月でも、令和8年1月1日時点は4年7か月で要件未達です。売却を令和9年に回せば令和9年1月1日で5年7か月となり要件を満たします。売る時期を1か月ずらすだけで結論が変わることがあります。
要件4「500万円以下」は合計額で見ます
判定は土地だけでなく、その土地の上にある古家などの対価を含めた合計額で見ます。「土地450万円・古家50万円」で合計500万円なら範囲内です。市街化区域内など一定の場合は800万円以下です。
要件3「特別な関係にある人」に売っていないか
配偶者や直系血族など特別な関係にある人への売却は対象外です。「子どもに買ってもらう」という進め方では使えません。
適用期限は令和10年12月31日まで延びました
国税庁タックスアンサーNo.3226は令和7年4月1日現在の法令に基づき、適用期間は「令和2年7月1日から令和7年12月31日までの間」と表示されたままですが、その後の税制改正で延長されました。
「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除」について、その適用期限が令和10年12月31日まで3年延長されました(措法35の3①)。
この資料は令和8年3月31日付で公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」等に基づき、令和8年5月1日現在の法令により作成されたものです。タックスアンサーの画面に「令和7年12月31日まで」と書かれていても、実際には令和10年12月31日まで使えます。
ポイント
令和8年8月時点で残り期間は令和10年12月31日まで。相続した土地を持て余しているなら早めの検討をおすすめします。
数値例:450万円で売った空き地
計算例
例:譲渡価額450万円(建物なし)・取得費不明のため概算取得費(譲渡価額の5パーセント)・譲渡費用20万円・所有5年超で要件を満たす場合
概算取得費 = 450万円 × 5パーセント = 22万5,000円 譲渡所得 = 450万円 - 22万5,000円 - 20万円 = 407万5,000円 特別控除100万円を引くと = 307万5,000円課税長期譲渡所得は1,000円未満切り捨てですが、今回は生じません。
| 項目 | 特例を使わない場合 | 特例を使う場合 |
|---|---|---|
| 課税長期譲渡所得 | 407万5,000円 | 307万5,000円 |
| 所得税・復興特別所得税(15.315パーセント・100円未満切捨) | 62万4,000円 | 47万900円 |
| 住民税(5パーセント) | 20万3,750円 | 15万3,750円 |
| 合計 | 82万7,750円 | 62万4,650円 |
差額は20万3,100円。端数処理をしない単純計算では、100万円 × 20.315パーセント = 20万3,150円です。売値450万円に対して手取りが20万円変わる。売値の4パーセント以上にあたります。
上記は所得税・復興特別所得税を100円未満切り捨てで計算した目安です。住民税は自治体計算のため端数が異なることがあります。
手続きの流れと、つまずきやすいところ
この特例は要件を満たしていれば自動的に適用されるものではありません。順番を間違えると使えなくなります。
1. 入口は税務署ではなく市区町村です
要件のひとつが「市区町村長の確認をした書類」です。確認書は土地がある市区町村が発行し、様式や時期は自治体で異なります。売買契約の段階で一度連絡しておくと安全です。
2. 他の特例と重ねて使うことはできません
タックスアンサーNo.3226は、「収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど、他の譲渡所得の課税の特例の適用を受けないこと」を要件としています。複数の候補があるときは、どれを使うのがいちばん有利かを先に比べる必要があります。合計の限度額という別の論点もあり、詳しくは譲渡所得の特別控除の合計限度額の記事をご覧ください。
3. 買った値段が分からないときの取り扱い
相続した古い土地では取得費が分からないことがよくあります。その場合は売った金額の5パーセントを取得費とみなす概算取得費で計算できます(国税庁タックスアンサーNo.3258)。当時の資料が残っていれば実際の取得費を使えることもあり、取得費が分からないときの記事もご覧ください。
4. 確定申告で「使う」と書かなければ適用されません
タックスアンサーNo.3226は「確定申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、一定の書類を添付する必要があります。」としています。確認書・記載・添付の3つがそろって初めて100万円が引けます。
5. 売る年を決める前に試算しておく
所有期間の判定日は「売った年の1月1日」、適用期限は令和10年12月31日。売る年をいつにするかが結論を左右します。売買契約を結ぶと年をずらせないため、契約の前に試算しておくことが適正申告の近道です。
低未利用土地の売却について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 売った金額が500万円ちょうどでも使えますか?
使える可能性があります。判定は建物等の対価を含めた合計額で行うため、500万円ちょうども500万円以下に含まれます。契約書で分けて書いていても合計で判定されます。
Q2. 空き家の3,000万円特別控除と一緒に使えますか?
同じ譲渡で重ねて使うことはできません。収用等の特別控除や事業用資産の買換え特例も同様です。有利な特例は契約前の試算でご確認ください。
Q3. 親から相続した土地ですが、所有期間5年超の要件は満たしますか?
相続で取得した土地は、亡くなった方の所有期間を引き継いで判定します。名義変更から5年未満でも要件を満たす場合があり、判定日は売った年の1月1日です。
Q4. 買った値段が分からない古い土地でも使えますか?
使える可能性があります。買った値段が不明な場合は、売った金額の5パーセントを取得費とする概算取得費で計算できます(国税庁タックスアンサーNo.3258)。当時の資料が残っていれば実際の取得費を使えることもあります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.3226は令和7年4月1日現在の法令等に基づくものであり、本文の適用期間は「令和7年12月31日まで」と表示されていますが、令和8年3月31日公布の「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」により、この特例の適用期限は令和10年12月31日まで3年延長されています(国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度税制改正のあらまし」)。「一定の場合は800万円以下」とされる場合の具体的な要件、低未利用土地等に該当するかどうかの詳細な判定基準、および市区町村長の確認書の名称・様式・申請手続の詳細については、本記事では扱っていません。市区町村により取扱いが異なる場合がありますので、土地がある市区町村の窓口にご確認ください。本記事の数値例は、所得税および復興特別所得税15.315パーセント・住民税5パーセントで計算した目安であり、住民税の実際の通知額とは端数が異なることがあります。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3226「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3226.htm
- 国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度税制改正のあらまし」(令和8年5月・令和8年5月1日現在の法令による)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/r08aramashi.pdf
- 国税庁タックスアンサー No.3223「譲渡所得の特別控除の一覧表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3223.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 租税特別措置法35条の3(低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除)https://elaws.e-gov.go.jp/
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所有期間の判定日は売った年の1月1日。適用期限は令和10年12月31日。売る年をいつにするかで結論が変わることがあります。契約を結んでしまうと、あとから調整はできません。検討の段階でご相談いただければ、使える特例と税額の見込みを整理してお示しします。代表税理士が直接ご対応します。
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