この記事のポイント
- 取得の日は登記の日で決まらず、請負で建てたなら引渡しを受けた日です
- 未登記の増築部分の代金も取得費に入れ、建物は償却費相当額を引きます
- 自宅の3,000万円控除と違い、10年超の軽減税率は登記事項証明書の添付が定められています
- 相続した建物は取得の日と取得費を引き継ぎます(限定承認を除く)。表題登記の期限も確認します
まず結論:未登記でも、取得の日と取得費は登記でなく事実で決まります
この記事では、表題登記がない建物を「未登記」と呼びます。表題登記とは、建物の所在や床面積などを最初に記録する登記です。
増築した部分だけが未登記のこともあります。譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算します。
取得の日と取得費は、登記の日付ではなく、建てた時期と支払った代金で確かめます。
一方、特例の添付書類と売却の手続では、登記の有無で違いが出ます。

取得の日は建て方で決まり、登記をした日では決まりません
工務店などが建てた家は、次の日が取得の日です。
(3) 他に請け負わせて建設等をした資産については、当該資産の引渡しを受けた日とする。
(所得税基本通達33-9)
所有期間は、取得をした日の翌日から数えます(租税特別措置法31条2項)。
売った年の1月1日で5年を超えれば長期、5年以下なら短期です(同法31条1項・32条1項)。所得税率は原則、長期15%・短期30%です。
表題登記をした日を、取得の日と取り違えないようにします。表題部には「登記原因及びその日付」と「登記の年月日」が別に記録されます(不動産登記法27条)。
国税庁の手引きは、建築年月日を登記事項証明書で確認できるとしています。未登記の建物には、その証明書がありません。
工事請負契約書・領収書・引渡しの書類で、時期と金額を確かめます。
表題登記で所有権を証する資料も手がかりです(不動産登記事務取扱手続準則87条1項)。建築確認と検査の証明、建築請負人の証明、固定資産税の納付証明などです。
取得費は建築代金と増築代金の合計から、償却費相当額を引きます
未登記の増築部分の代金も、取得費の計算に入れる対象です。取得費は次のとおり定められています。
譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
(所得税法38条1項)
国税庁も、建築代金や改良費を取得費に含めています(No.3252)。建物は値下がり分(償却費相当額)を引きます。
事業に使っていない建物の算式です。
建物の取得価額×0.9×償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)
(国税庁 タックスアンサー No.3261)
償却率は木造で0.031です。経過年数の6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨てます。限度は取得価額の95%です。
計算例
例:工務店が建てた木造の自宅(未登記)。平成18年3月15日引渡し、代金2,000万円。令和8年8月20日に売却
経過年数 20年5か月 → 端数を切り捨てて 20年 償却費相当額 20,000,000円 × 0.9 × 0.031 × 20 = 11,160,000円 建物の取得費 20,000,000円 - 11,160,000円 = 8,840,000円 誤り:売る前の表題登記の年月日(令和8年6月1日)から数えると、取得費は11,160,000円過大数値は一定の前提を置いた目安で、土地の取得費は別に加えます。
取得後に増改築がある場合は「計算が異なります」と国税庁の手引きにあり、個別に確かめます。
売った金額の5%を取得費とする方法(No.3258)は、取得費が分からないときの記事で扱っています。

3,000万円控除と軽減税率では、求められる書類が違います
3,000万円控除の添付書類に、登記事項証明書は挙がっていません。
対象は、住んでいる家とその敷地などです(租税特別措置法35条)。住まなくなった家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ります。
前年・前々年に適用を受けていないことなども要件です。親子や夫婦などに売った場合は使えません(No.3302)。
住んでいたかは、生活の拠点だったかを日常生活の状況などで総合判定します(措置法通達31の3-2)。
添付書類は譲渡所得の内訳書です。契約日の前日の住民票の住所と所在地が違う場合などは、戸籍の附票の写し等も出します(No.3302)。
一方、売った年の1月1日で所有期間10年超の家の軽減税率の特例は違います。登記事項証明書の添付が定められています(租税特別措置法施行規則13条の4)。
ポイント
計算例の家は、売った年の1月1日で所有期間が19年を超えます。家屋が未登記なら、その登記事項証明書はありません。軽減税率の特例を使うなら、表題登記をするかを売る前に確かめます。
売る前に、表題登記の義務と登記の段取りを確かめます
表題登記がない建物には、申請義務が定められています。
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
(不動産登記法47条1項)
登記済みの建物を増築したときも同様です。床面積が変われば、1か月以内に変更の登記を申請する定めです(同法51条1項)。
正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料の定めがあります(同法164条1項)。
法務局は、新築の建物に表題登記と所有権の保存の登記が必要と案内しています。買主は、登記をしないと第三者に権利の取得を主張できません(民法177条)。
誰がいつ登記するかは、売買契約の前に決めておきます。
相続した未登記の建物は、取得の日と取得費を引き継ぎます
相続した建物は、被相続人の取得の日と取得費を引き継ぎます。相続人が引き続き所有していたとみなされます(所得税法60条1項)。
限定承認に係る相続は除かれます。被相続人が建てた家は、引渡しを受けた日などが取得の日です(所得税基本通達33-9・No.3270)。
相続で取得した未登記の建物にも、不動産登記法47条1項の定めがあります。
登記されている土地は、相続登記の申請義務があります(同法76条の2)。期限は原則として、相続の開始と取得を知った日から3年以内です。

失敗の例:取り違えると税額や手続に響く6つの場面
次の取り違えは、税額や手続に響きます。
- 「登記の年月日」を取得の日にした ― 計算例では取得費が11,160,000円多くなります
- 未登記の増築部分の代金を入れ忘れた ― 取得費が少なくなります
- 増築代金を足したが、償却費相当額を引いていない ― 取得費が多くなります
- 相続した建物を、相続の日から数えた ― 長期を短期と誤ることがあります
- 未登記のまま、軽減税率を見込んだ ― 家屋の登記事項証明書がありません
- 登記を避けて家を取り壊した ― 3,000万円控除に取壊しの要件が加わります
注意
取り壊した家の敷地は、譲渡契約を取壊しの日から1年以内に結ぶ必要があります。売るのは、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。取り壊してから契約まで、貸駐車場などに使っていないことも要件です(No.3302)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資料集めはご自身でできますが、計算と特例の判断は個別です。
- 工事請負契約書・領収書・振込の記録、引渡しや建築確認の書類を探す
- 固定資産税の納付の記録をそろえる
- 契約日の前日の住民票の住所が売る家と違うなら、戸籍の附票の写しを取る
- 相続した家なら、被相続人の契約書や領収書も探す
ここから先は、資料と事情で結論が変わります。増築部分の償却費相当額、代金が不明な部分、特例の要件と書類(空き家の特例を含む)、登記の時期です。
補足
法務省は、表題登記の相談先に土地家屋調査士、相続登記の相談先に司法書士を案内しています。

税理士が入ると変わるのは、取得の日と取得費の根拠づくりです
ひとつめは、契約書と引渡しの書類から、取得の日と代金を確定することです。
ふたつめは、償却費相当額を計算し、増築部分の扱いを確かめることです。
みっつめは、3,000万円控除などの要件を確かめ、添付書類の一覧を作ることです。
よっつめは、登記と売買・申告の日程を並べ、計算を内訳書と申告書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 未登記の家でも、3,000万円の特別控除は受けられますか?
自宅の3,000万円控除(措置法35条)は、建物の登記も登記事項証明書の添付も求めていません。住んでいた家か、前年・前々年に適用がないかなど、要件をすべて満たすかで判断します。契約日の前日の住民票の住所が所在地と違う場合などは、戸籍の附票の写しも出します。
Q2. 表題登記をした日が、建物の取得の日になりますか?
表題登記をした日で決まるものではありません。所得税基本通達33-9では、請け負わせて建てた建物は引渡しを受けた日が取得の日です。自ら建てたなら建設の完了日です。所有期間はその翌日から数え、売った年の1月1日で5年を超えるかで長期・短期を判定します。
Q3. 増築部分の工事代金が分からないときは、どうなりますか?
まず、工事の契約書・領収書・振込の記録で金額と時期を確かめます。売った金額の5%を取得費にする方法(No.3258)は、増築部分だけに使えるとは限りません。取得後に増改築がある場合の償却費相当額は、国税庁も「計算が異なります」としており、個別判断です。
Q4. 相続した未登記の家を売るとき、何に気をつけますか?
表題登記がない建物(区分建物を除く)の所有権を取得した人には、申請義務があります。期限は所有権の取得の日から1か月以内です(不動産登記法47条1項)。税金では、被相続人の取得の日と取得費を引き継ぎます(限定承認を除く)。相続の日から数えないよう注意します。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法38条・60条、所得税基本通達33-9、租税特別措置法31条・31条の3・32条・35条、同法施行規則13条の4・18条の2、租税特別措置法関係通達31の3-2、不動産登記法27条・47条・51条・76条の2・164条、不動産登記事務取扱手続準則87条、民法177条、国税庁タックスアンサー No.3252・No.3258・No.3261・No.3270・No.3302・No.3305、国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」の内容を扱っています。増築部分の償却費相当額の計算方法と所有期間の判定、建物の代金が分からない場合の推計の方法、建物の標準的な建築価額表の使い方、事業や貸付けに使っていた建物の取得費、相続した空き家の特例と相続税の取得費加算の特例の要件、配偶者居住権がある建物の取得費、未登記の家屋で軽減税率の特例の添付書類をどう用意するか、表題登記・所有権の保存の登記・相続登記の手続と費用、登記費用の税務上の扱い、税額と住民税の計算は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は建築代金・構造・取得の日・譲渡の日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-9 資産の取得の日)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3261 建物の取得費の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- e-Gov法令検索 不動産登記法https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
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