この記事のポイント
- 経費になる売上原価は年初の在庫+年間の仕入−年末の在庫で計算します
- 棚卸しは12月31日が原則で、できないときは多少前後した日に数えて12月31日の在庫を計算します
- 評価方法を届け出ていなければ、最終仕入原価法で単価を付けます
- 年末の在庫を数え忘れると所得が少なく計算され、申告を直す必要が出る場合があります
まず結論:物販の在庫は、12月31日に数えて金額にします
物販では、仕入れた額がそのまま経費になるわけではありません。
経費になるのは売上原価(売れた商品の仕入れの額)で、次の算式で出します。
売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高
(国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」)
年末の棚卸高は、12月31日に持っている在庫の金額です(所得税法47条1項)。
年末の在庫を数えないと売上原価が大きくなり、所得が少なく計算されます。

年末から申告までに、在庫についてすることは4つです
| 時期 | すること |
|---|---|
| 12月31日 | 在庫を数え、棚卸表(品名・数量・単価・金額の一覧)にまとめる |
| 開業した年分の確定申告期限まで | 評価方法(単価の付け方)を届け出る |
| 翌年分から変えるなら、翌年3月15日まで | 評価方法の変更の承認を申請する |
| 申告の後 | 棚卸表と数量のメモを保存する(青色申告7年・白色申告5年) |
確定申告の期限は、原則として翌年3月15日です(タックスアンサーNo.2020)。
年末の在庫の金額だけ、その年の所得が変わります
年末の在庫は、売上原価から差し引く金額です。
計算例
例:売上600万円、年初の在庫50万円、本年の仕入400万円、年末の在庫80万円の場合
数えた場合の売上原価 50万円+400万円−80万円=370万円 売上から売上原価を引いた額 600万円−370万円=230万円 数えなかった場合の売上原価 50万円+400万円−0円=450万円 売上から売上原価を引いた額 600万円−450万円=150万円(80万円少ない)金額は一定の前提を置いた目安です。売上原価以外の経費は同じとしています。
仕入高には、代金をまだ払っていない掛け買いの仕入れも含みます(収支内訳書の書き方)。
年初の在庫は、前の年の12月31日の在庫です。
数え忘れは、その年だけでなく、翌年の売上原価にも響きます。

棚卸しは12月31日に、種類・品質・型ごとに数えます
棚卸し(在庫の数量を実地に調べること)は、12月31日が原則です(所得税基本通達47-25)。
多忙で年末にできないときは、年末から多少前後した日に数えても差し支えありません(国税庁の手引き)。
その場合は、棚卸日との間の売上や仕入れから12月31日の在庫を計算し、方法を明らかにします(同)。
商品出入帳(入荷と出荷の記録)で、毎日の在庫量を明らかにする方法もあります。
毎年一定の時期に実地で確かめていれば、出入帳から年末の在庫を計算できます(同)。
その場合は、年末の実地の棚卸しを省略できます。
- 12月31日の出荷の後に、種類・品質・型ごとに分けて数える
- 品名と数量をメモに書き、棚卸表にまとめる
- 自宅のほか、倉庫や預け先にある商品も書き出す
- 年末前後に出荷した商品を、売上と在庫の両方に入れていないか確かめる
売上は原則として、商品を引き渡した日の年分です(所得税基本通達36-8)。
販売を任せて預けた商品(委託販売)の売上は、原則として預け先が売った日です(同36-8)。
まだ売れていない預けた商品も、数え漏れがないよう確かめます。
ポイント
まだ使っていない梱包材などの消耗品も、棚卸しの対象です。ただし、通常の年に比べて特に増えていなければ、省略しても差し支えありません(国税庁の手引き)。
単価は届け出た方法で付け、届出がなければ最終仕入原価法です
単価の付け方(評価方法)は、届け出た方法によります。
届け出ていなければ、最終仕入原価法で評価します(所得税法施行令102条1項)。
年末に一番近い時期に仕入れた単価に、年末の数量を掛ける方法です(国税庁の手引き)。
例えば、最後の仕入単価が2,500円の商品が30個残れば、75,000円です。金額は一定の前提を置いた目安です。
先入先出法などは、開業した年分の確定申告期限までの届出で選べます(同令100条2項)。
変更は、変えたい年の3月15日までに承認を申請します(同令101条2項)。令和8年分から変える申請の期限は、過ぎています。
計算の例は、法人向けの評価方法の記事で紹介しています。
値下がりを反映できる低価法は、青色申告の方だけが選べます(同令99条1項)。
単価には、仕入れの送料など購入のための費用も含めます(同令103条1項1号)。
含める費用の範囲は、法人向けの付随費用の記事で解説しています。
破損や棚ざらし、流行遅れで、通常の販売価額では売れない商品もあります。
区別して、12月31日現在の処分可能価額で評価することもできます(同令104条)。
単に相場が下がっただけでは当たりません(所得税基本通達47-24)。

年末の在庫の誤りは、申告を直す手間につながります
次の誤りは、後から申告を直すことにつながります。
- 年末の在庫を数えず、仕入れた額を全部経費にした ― 所得が少なく計算されます。
- 前の年の年末の在庫を、年初の在庫に入れなかった ― 所得が多く計算されます。
- 届出のない方法で単価を付けた ― 最終仕入原価法で直されることがあります(所得税法施行令102条)。
- 白色申告なのに低価法を使った ― 低価法は青色申告の方だけの方法です(同令99条1項)。
- 仕入れの送料を単価に入れなかった ― 年末の在庫が小さくなり、所得が少なく計算されます。
税額が少なすぎたら、修正申告で直します(タックスアンサーNo.2026)。
多すぎたら、原則として法定申告期限から5年以内なら、更正の請求ができる場合があります(同)。
注意
誤りに気づいたら、できるだけ早く修正申告をします。調査の事前通知の前に自主的に行えば、過少申告加算税はかかりません。納付の日までの延滞税は、あわせて納めます(No.2026)。
棚卸表と数量のメモは、申告の根拠として保存しておきます。
保存期間は青色申告7年・白色申告5年です(所得税法施行規則63条1項・102条4項)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
年内にご自身で進められるのは、次の4つです。
- その年の仕入れの請求書・納品書を、月ごとにそろえる
- 12月31日に在庫を数え、品名と数量のメモを残す
- 評価方法の届出書の控えがあるか探す
- 前の年の申告書で、年末の在庫の金額を確かめる
単価の付け方と、売れ残りや預けた商品の扱いは、個別の判断が要ります。
付随費用の範囲、年をまたぐ売上との境目、過去の年の直し方も同じです。
補足
現金主義の特例(入出金の時点で計上する特例)を受ける青色申告の方は、棚卸しが要りません。一定の要件と届出が必要です(所得税法施行規則56条2項、同施行令195条・197条)。
年末にすることの全体は、個人事業主が年末にやることの記事にまとめています。
税理士に頼むと変わるのは、仕入・在庫・売上の記録のつながりです
小松公認会計士・税理士事務所では、物販の個人事業主の申告で次の作業を行います。
- 12月31日の前に、棚卸表の様式と数え方をご案内
- 仕入れの記録・年末の在庫・売上の数量のつき合わせ
- 評価方法の届出の有無の確認と、必要な届出書の作成
- 単価と売上原価の計算、青色申告決算書・収支内訳書への記入
- 前の年の在庫に誤りがあった場合の、修正申告・更正の請求の検討
- 確定申告書の作成と電子申告、控えのお渡し
全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。事業所得の単価は、売上の規模で決まります。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
通常料金での計算例です。事業の売上が300万円以下(事業所得39,000円)で、その他控除セット6,000円を使う方です。32,000円+39,000円+6,000円=77,000円(税込84,700円)です。消費税の申告が不要な場合の、一定の前提を置いた目安です。
記帳代行もご依頼の場合は、基本8,000円(税込8,800円)が加わります。1仕訳80円(税込88円)の分は、申告書の作成後にご請求します。ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 12月31日に棚卸しができないときは、どうすればよいですか?
多忙で年末にできないときは、年末から多少前後した日に数えても差し支えありません(国税庁の手引き)。その場合は、棚卸日と12月31日の間の売上や仕入れから、12月31日現在の在庫を計算します。計算の方法も、明らかにしておきます。
Q2. 評価方法を届け出た覚えがありません。単価はどう付けますか?
届け出ていなければ最終仕入原価法で評価します(所得税法施行令102条1項)。開業した年分の確定申告期限までなら、ほかの方法を届け出られます(同令100条2項)。その後に変えるには、変えたい年の3月15日までに承認を申請します(同令101条2項)。
Q3. 売れ残って値下がりした商品は、安く評価してよいですか?
単に相場が下がっただけでは、評価を下げる特例に当たりません(所得税基本通達47-24)。破損や棚ざらし、流行遅れなどで、通常の販売価額では売れない商品もあります。その商品は、12月31日現在の処分可能価額で評価することもできます。低価法は、届け出た青色申告の方だけが使えます。
Q4. 梱包用の段ボールや緩衝材も、棚卸しで数えますか?
まだ使っていない包装材料なども、棚卸しの対象です(国税庁の手引き)。ただし、通常の年に比べて特に増えていないものは省略できます。毎年ほぼ一定量を買って使う包装材料は、買った年の経費にする扱いもあります。継続してその扱いにしていることが条件です(所得税基本通達37-30の3)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法47条1項、所得税法施行令99条・100条・101条・102条・103条1項・104条・195条・197条、所得税法施行規則56条2項・63条1項・102条4項、所得税基本通達36-8・37-30の3・47-24・47-25、国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」、手続案内「A1-17 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続」「A1-21 所得税の棚卸資産の評価方法の変更承認申請手続」、タックスアンサーNo.2020「確定申告」・No.2026「確定申告を間違えたとき」、弊所の料金表の内容を扱っています。先入先出法・総平均法・移動平均法・売価還元法の具体的な計算、評価方法の変更が承認されない場合の基準、低価法の時価の算定、特別な評価方法の承認、少額のため取得価額に含めないことができる付随費用の判定、運送中の商品(未着品)の評価、製造業の原価計算と製品・仕掛品の評価、消費税の税込経理・税抜経理による棚卸高の違い、売り物を自分や家族で使ったときの収入金額、年の途中で亡くなった場合や出国した場合の棚卸し、現金主義の特例の要件と届出の細目、新たに青色申告者となる年の1月1日の棚卸し、会社員の副業(雑所得)の在庫の扱い、法人の棚卸資産、修正申告の加算税の割合と延滞税の計算、青色申告特別控除の要件、住民税・個人事業税・国民健康保険料への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は仕入の時期・数量・単価や経費の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(47条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(99条〜104条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/025.pdf
- 国税庁 所得税基本通達〔棚卸資産の取得価額の特例(令第104条関係)〕〔棚卸しの手続〕(47-22〜47-25)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
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