この記事のポイント
- 仕入れた商品の取得価額は、購入代価に引取運賃・関税などの付随費用を加えた額です
- 検収・選別や販売所間の移送などの費用は、合計が購入代価のおおむね3%以内なら含めないことができます
- 不動産取得税・登録免許税・借入金の利子なども、含めないことができる費用です
- 期末在庫に付随費用を入れ忘れると、その期の所得が少なく計算されます
まず結論:仕入れた商品の取得価額には、運賃や関税も含めます
会社が売るために仕入れた商品は、税金の計算では棚卸資産と呼ばれます。
商品・製品・仕掛品・原材料などが当たります(法人税法2条20号)。
期末に残った棚卸資産の金額は、その期の所得の額を左右します。
その取得価額は、購入代価に引取運賃や関税などの付随費用(仕入れに伴う費用)を加えた額です。
合計が少額なら、含めないことができる費用もあります。
期末の在庫に付随費用を入れ忘れると、その期の所得が少なく計算されます。

取得価額は「購入代価+購入のための費用+直接要した費用」です
買った商品の取得価額は、法人税法施行令32条1項1号が定めています。
当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
(法人税法施行令32条1項1号イ)
引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税は、購入代価に加えます。
引取運賃は引き取りの運賃、荷役費は積み下ろしなどの費用です。
関税のうち、延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・重加算税は除きます(関税法2条1項4号の2)。
消費や販売に回すために直接かかった費用も加えます。
当該資産を消費し、又は販売の用に供するために直接要した費用の額
(同号ロ)
計算例
例1:商品2,000個を1個2,000円で輸入し、期末に500個残った場合
購入代価 2,000個 × 2,000円 = 4,000,000円 付随費用 引取運賃160,000円 + 関税120,000円 + 運送保険料20,000円 = 300,000円 取得価額 4,000,000円 + 300,000円 = 4,300,000円(1個あたり2,150円) 期末在庫 500個 × 2,150円 = 1,075,000円 購入代価だけで計算すると 500個 × 2,000円 = 1,000,000円(75,000円少ない)金額は一定の前提を置いた目安です(仕入れは1回・期首の在庫なし)。
期末在庫の単価の出し方は、評価方法によって変わります。棚卸資産の評価方法の記事にまとめています。
検収や移送などの費用は、合計が少額なら含めないことができます
通達は、一部の費用について少額の場合の扱いを定めています。
購入した棚卸資産の取得価額には、その購入の代価のほか、これを消費し又は販売の用に供するために直接要した全ての費用の額が含まれるのであるが、次に掲げる費用については、これらの費用の額の合計額が少額(当該棚卸資産の購入の代価のおおむね3%以内の金額)である場合には、その取得価額に算入しないことができるものとする。
(法人税基本通達5-1-1)
対象は、次の3つの費用です。
- 買入事務、検収、整理、選別、手入れ等に要した費用
- 販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用
- 特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用
少額かどうかは、事業年度ごと、種類・品質・型が同じ棚卸資産ごとに判定できます(同通達の注1)。
3つめ以外の保管費用(保険料を含む)は、取得価額に算入しないことができます(同通達の注2)。
ポイント
少額の扱いの対象は、上の3つの費用です。引取運賃や関税は、この3つに挙がっていません。
計算例
例2:例1の仕入れに、検収などの費用がかかった場合
購入代価の3% 4,000,000円 × 3% = 120,000円 ケースA 検収・選別50,000円 + 販売所間の移送運賃40,000円 = 90,000円(2.25%)→ 含めないことができる ケースB 検収・選別80,000円 + 販売所間の移送運賃160,000円 = 240,000円(6%)→ 取得価額に含める金額は一定の前提を置いた目安です。「おおむね」とあるため、3%に近いときは個別の判断になります。
検収などの費用の合計が購入代価のおおむね3%を超えるときは、取得価額に含めます。

不動産取得税や借入金の利子なども、含めないことができます
一部の税金と利子は、含めないことを選べます。
次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得又は保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しないことができる。
(法人税基本通達5-1-1の2)
例として挙がっているのは、次の6つです。
- 不動産取得税
- 地価税
- 固定資産税及び都市計画税
- 特別土地保有税
- 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
- 借入金の利子
関税は施行令32条1項1号イに挙がっているので、取得価額に含めます。
「算入しないことができる」なので、含めるか含めないかを選べる定めです。
自社で作った製品は、原材料費・労務費・経費の合計が出発点です
製造業の製品は、施行令32条1項2号で取得価額を決めます。
当該資産の製造等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
(法人税法施行令32条1項2号イ)
これに、消費や販売のために直接要した費用を加えます(同号ロ)。
適正な原価計算で出した原価なら、その額を取得価額とみなします(同条2項)。
製造後の検査・移管・長期保管の費用にも、少額の扱いがあります。
合計が製造原価のおおむね3%以内なら、含めないことができます(法人税基本通達5-1-3)。
通達5-1-4は、製造原価に算入しないことができる費用を13項目挙げています。
事業税・特別法人事業税や借入金の利子などです。
製造業の取得価額は、原価計算の方法と結びついています。
補足
工場の機械など、減価償却資産の付随費用はこの記事では扱いません。減価償却資産の付随費用の記事をご覧ください。

期末在庫の付随費用は、入れ忘れても入れすぎても所得の額がずれます
期末在庫の金額は、売上原価を通じて所得の額を左右します(法人税法22条3項1号・29条1項)。
問題になる場面を4つ挙げます。
- 運賃や関税を経費にして、在庫の単価に入れていない(例1では所得が75,000円過少)
- 3%の判定に、引取運賃や関税まで混ぜている(対象は通達5-1-1の3つの費用だけ)
- 3%を超えるのに、検収などの費用を経費にしている(例2のケースBは240,000円を含める)
- 仕入れと関係のない費用まで在庫に乗せている(在庫が多くなり、所得が多く計算される)
期末在庫の誤りは翌期の期首在庫に引き継がれ、翌期の所得の額にも影響します。
注意
資金繰りの悪化から、過去の期に在庫を過大に計上する粉飾をしていた会社の事案があります。その分を、後の期に廃棄損としてまとめて損金にしました。しかし、その期に生じた損失ではないとして、認められませんでした(平成18年11月21日裁決)。
在庫の金額の誤りは、後の期にまとめて損失にすれば済むとは限りません。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
付随費用の拾い出しまでは、社内の資料で進められます。
- 仕入の請求書や輸入の書類から、運賃・保険料・手数料・関税を拾い出す
- 拾い出した費用を、どの仕入れ(品目・時期)の分か対応させる
- 検収・選別・移管・長期保管の費用を集計し、購入代価の何%かを出す
- 不動産取得税や借入金の利子を含めるかどうか、決めた扱いを記録する
ここから先は、事実によって判断が分かれます。
ある費用が「購入のために要した費用」に当たるかは、費用ごとに見ます。
3%に近いときの判断、評価方法との組み合わせ、製造業の原価計算も同じです。
過去の期の誤りに気づいたときの直し方は、特に個別の判断が要ります。

税理士が入ると変わるのは、在庫の単価の根拠と決算の手順です
小松公認会計士・税理士事務所では、決算の前に次の作業を行います。
- 仕入・輸入の書類から付随費用を拾い出し、仕入れごとの対応表を作る
- 通達5-1-1の3%判定を、事業年度・種類ごとに集計する
- 税金や利子を含めるかを検討し、決めた扱いを記録に残す
- 届け出た評価方法に沿って、期末在庫の単価を計算する
- 製造業では、原価計算と製造原価に含めない費用の扱いを確かめる
- 税務調査に備えて、付随費用の集計表と単価の計算表をそろえる
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 輸入した商品の関税は、在庫の金額に含めますか?
含めます。法人税法施行令32条1項1号イが、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税を挙げています。ただし、関税のうち延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・重加算税は除きます。関税法2条1項4号の2が定める附帯税です。
Q2. 検収や販売所間の移送の費用も、すべて在庫に含めるのですか?
原則は含めます。例外の対象は、検収・選別等の費用と、販売所等の間の移管の運賃等です。特別の時期に販売するなどのための長期保管の費用も、例外の対象です。合計が購入代価のおおむね3%以内なら、含めないことができます(法人税基本通達5-1-1)。
Q3. 倉庫の保管料は、在庫の金額に含めますか?
特別の時期に販売するなどのため長期にわたって保管する費用は、3%の判定の対象です。それ以外の保管費用は、保険料を含めて、取得価額に算入しないことができます。法人税基本通達5-1-1の注2が定めています。
Q4. 仕入れの資金を借りた利子や不動産取得税は、在庫に含めますか?
含めないことができます。法人税基本通達5-1-1の2は、不動産取得税・登録免許税・借入金の利子などを挙げています。棚卸資産の取得や保有に関連して支出したものでも、算入しないことができる費用です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条20号・22条3項1号・29条1項、法人税法施行令32条1項・2項、関税法2条1項4号の2、法人税基本通達5-1-1・5-1-1の2・5-1-3・5-1-4、国税不服審判所の平成18年11月21日裁決の内容を扱っています。棚卸資産の評価方法の種類・選定・届出、評価損、購入代価が確定していない場合の見積りと調整(法人税基本通達5-1-2)、期末に運送中の商品(未着品)の扱い、合併・分割などで受け入れた棚卸資産、デリバティブ取引に係る棚卸資産、製造原価に算入しないことができる費用のうち本文で挙げた以外の項目、製造間接費の配賦、副産物・作業くずの評価、お客様へ発送する運賃など個別の費目の当てはめ、消費税の経理方式と輸入に係る消費税の扱い、減価償却資産の取得価額、修正申告・更正の請求の手続と期間制限、法人税額への影響額と加算税・延滞税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の取得価額は取引の内容と会社の処理によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(32条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索「法人税法」(2条20号・22条・29条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 法人税基本通達 第5章第1節第1款「購入した棚卸資産」(5-1-1・5-1-1の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_01_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第5章第1節第2款「製造等に係る棚卸資産」(5-1-3・5-1-4)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_01_02.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成18年11月21日裁決・裁決事例集No.72 404頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/72/22/index.html
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