この記事のポイント
- 固定資産税・都市計画税の精算金は、譲渡価額(売却代金)に含めます
- 管理費・修繕積立金の日割り精算金は、国税庁の明示が見当たらず個別に判断します
- 維持・管理の費用は譲渡費用になりません。滞納分や戻らない積立金もこの点で確かめます
- 固定資産税の精算金を外した申告に、過少申告加算税も適法とした裁決があります
まず結論:固定資産税の精算金は売却代金に入れ、管理費等の精算金は契約で判断します
マンションを売ると、決済の日に売買代金のほかに精算金を受け払いすることがあります。
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算します(所得税法33条3項)。
精算金がどれに当たるかで、申告する金額が変わります。
固定資産税・都市計画税の精算金は、譲渡価額(売却代金)に含めます。
管理費・修繕積立金(以下「管理費等」)の日割りの精算金は、国税庁の公表資料に明示が見当たりません。
契約の定め方を確かめて、個別に判断します。

精算書のお金は、譲渡価額・譲渡費用・どちらでもないものに分けます
精算書(決済の日のお金の受け払いの明細)の項目は、次のように分けます。
No.は、国税庁のタックスアンサー(税の解説ページ)の番号です。
| 精算書の項目 | 譲渡所得での扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 売買代金 | 譲渡価額 | No.3214 |
| 固定資産税・都市計画税の精算金 | 譲渡価額に含める | No.3214・質疑応答事例・裁決 |
| 管理費・修繕積立金の日割り精算金 | 明示なし。個別に判断 | 契約の定め |
| 滞納管理費等の清算 | 譲渡費用に入れるのは難しいと考えられる | 通達33-7の注 |
| 戻らない修繕積立金 | 差し引けるとした記述なし。個別に判断 | 通達33-7の注 |
| 売るための仲介手数料 | 譲渡費用 | No.3255 |
買ったときの仲介手数料は、取得費(買った代金などの元手)に含まれます(No.3252)。
ほかの費用の扱いは費用の線引きの記事をご覧ください。
ポイント
見るのは、そのお金が譲渡の対価か、売るために直接かかった費用か、維持・管理の費用かです。
固定資産税の精算金は、名目にかかわらず売却代金の一部です
固定資産税の精算金は、税金の戻りではなく、売却代金の一部として扱われます。
固定資産税等(固定資産税と都市計画税)は、毎年1月1日の所有者に、その年度分が課されます。
年の途中で売っても、買主がその年度分の納税義務を負うことはありません。
そこで、引渡日以後の分を買主が負担すると契約で決めることがあります。
支払を受けた未経過固定資産税等に相当する額は、譲渡所得の収入金額に算入されます。
(国税庁 質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」)
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の令和6年2月13日の裁決も同じ結論です。
売主は、本来は買主が負担すべき税を立て替えたにすぎないと主張しましたが、退けられました。
審判所は精算金を譲渡の対価の一部と認め、過少申告加算税も適法としました。
過少申告加算税は、申告額が少なかったときに課される税です。
日割りの計算と税額への影響は固定資産税の精算金の記事で扱っています。

管理費・修繕積立金の日割り精算金は、契約の定めを確かめて判断します
管理費等の精算金は、明示した公表資料が見当たらず、契約を見て判断します。
国土交通省のマンション標準管理規約では、当月分を徴収日までに一括で徴収します(60条1項)。
月の途中で引き渡すと、その月の分は売主が払い終えていることがあります。
引渡日以後の分を買主が負担する契約なら、その日割り額を売主が受け取ります。
令和6年の裁決は、次の考え方を示しています。
資産の譲渡の対価として収入すべき金額については、その名目いかんにかかわらず、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるべきであると解するのが相当である。
(国税不服審判所 令和6年2月13日裁決)
管理費等の精算金が譲渡の対価に当たるかは、契約の定め方を見て個別に判断します。
計算例
例:令和8年6月16日に引き渡し、売買代金4,000万円の場合
固定資産税等の年税額150,000円(1月1日起算・引渡日以後は買主負担の契約) 精算金 150,000円 × 199日 ÷ 365日 = 81,780円(円未満切捨て) 譲渡価額 40,000,000円 + 81,780円 = 40,081,780円 管理費等(月30,000円・6月分は売主が支払済み)の日割り 30,000円 × 15日 ÷ 30日 = 15,000円 → 含めるかは個別に判断金額は一定の前提を置いた目安です。起算日や端数の扱いは、売買契約の定めによります。
補足
投資用で管理費等を必要経費にしてきた場合は、精算金の扱いを不動産所得の側でも確かめます。
戻らない修繕積立金と滞納分の清算は、維持・管理の費用かが分かれ目です
戻らない修繕積立金や滞納分の清算を、譲渡費用とした国税庁の記述は見当たりません。
標準管理規約には、次の定めがあります。
組合員は、納入した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。
(国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)60条7項)
実際の扱いは、そのマンションの管理規約で確かめます。
税務では、維持・管理の費用は譲渡費用になりません。
譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する。
(所得税基本通達33-7の注)
管理費等は、「敷地及び共用部分等の管理に要する経費」に充てる費用です(標準管理規約25条1項)。
東京地裁平成26年4月25日判決は、保有期間中の固定資産税等を維持管理の費用としました。
譲渡費用にも取得費にも当たらないとした判断で、管理費等を直接判断したものではありません。
戻らない修繕積立金を譲渡所得の計算で差し引けるかは明示が見当たらず、個別に判断が分かれます。
滞納分は、管理組合が買主にも請求できます(区分所有法8条・標準管理規約26条)。
そのため、決済の日に滞納分を清算することがあります。
清算した滞納分も、所有期間の管理費等の支払いです。
通達の注に照らすと、譲渡費用に入れるのは難しいと考えられます。
滞納分を買主が肩代わりするなら、収入金額となる経済的な利益に当たるかを確かめます(No.3214)。
精算金で気をつけたいのは、次の5つの書き方です
誤ると、収入金額の不足や、根拠のない費用の計上になります。
- 固定資産税の精算金を入れない ― 裁決の事案では過少申告加算税も課されました
- 精算金を、納めた固定資産税と相殺する ― 固定資産税は譲渡費用になりません(No.3255)
- 戻らない修繕積立金を譲渡費用に入れる ― 差し引けるとした国税庁の記述は見当たりません
- 滞納分の清算額を譲渡費用に入れる ― 所有していた期間の管理費等の支払いです
- 精算金を、不動産所得と譲渡所得の両方に入れる ― 同じお金を二度数えることになります
注意
令和7年分以降用の内訳書3面には「修繕費、固定資産税などは譲渡費用にはなりません。」とあります。各欄の書き方は内訳書の書き方の記事をご覧ください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
精算書の項目を書き出して分けるところまでは、ご自身で進められます。
- 売買契約書で、固定資産税等と管理費等の精算の定めを確かめる
- 精算書の項目を、受け取ったお金と払ったお金に分ける
- 固定資産税等の精算金を売買代金に足し、譲渡価額を出す
- 仲介手数料など、売るための費用の領収書をそろえる
管理費等の精算金、滞納分の肩代わり、投資用の不動産所得との関係は、契約と事情で結論が変わります。

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- 売買契約書と精算書から、譲渡価額・取得費・譲渡費用を振り分ける
- 固定資産税等の精算金の入れ忘れと、相殺の誤りを確かめる
- 管理費等の精算金と滞納分の扱いを契約から判断し、根拠を残す
- 投資用では、その年の不動産所得の申告とあわせて重複を防ぐ
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よくある質問(FAQ)
Q1. マンションを売ったときの固定資産税の精算金は、譲渡所得の収入になりますか?
なります。譲渡から年末までの固定資産税・都市計画税の相当額は、譲渡価額に算入されます(No.3214)。令和6年2月13日の裁決も、譲渡の対価の一部と判断し、過少申告加算税を適法としました。
Q2. 管理費・修繕積立金の日割りの精算金も、売却代金に含めますか?
この精算金を名指しした国税庁の公表資料は見当たりません。裁決は、譲渡の対価として収入すべき金額は名目にかかわらず総収入金額に算入されるとしています。精算金が譲渡の対価に当たるかは、契約の定め方を見て個別に判断します。
Q3. 売却しても修繕積立金は戻ってきません。譲渡費用にできますか?
戻らない修繕積立金を譲渡費用や取得費に含めるとした国税庁の記述は見当たりません。所得税基本通達33-7の注は、資産の維持又は管理に要した費用は譲渡費用に含まれないとしています。扱いは個別に判断が分かれます。
Q4. 滞納していた管理費を決済の日に清算しました。譲渡費用になりますか?
清算した滞納分は、所有していた期間の管理費等の支払いです。通達33-7の注に照らすと、譲渡費用に入れるのは難しいと考えられます。売主が払うべき滞納分を買主が払う取り決めなら、収入金額に含まれるかも確かめます(No.3214)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法33条3項、所得税基本通達33-7、国税庁タックスアンサー No.3214・No.3252・No.3255、国税庁質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」、国税不服審判所の令和6年2月13日裁決、東京地裁平成26年4月25日判決(税務訴訟資料第264号-86)、建物の区分所有等に関する法律8条、国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正)25条1項・26条・60条1項・7項、令和7年分以降用の譲渡所得の内訳書(土地・建物用)3面の注記の内容を扱っています。管理費・修繕積立金の日割り精算金を譲渡価額に含めるかどうかの結論、戻らない修繕積立金が共用部分の改良に使われた場合の扱い、投資用マンションで管理費・修繕積立金を不動産所得の必要経費にする時期と要件、滞納分の遅延損害金の扱い、固定資産税等の精算金の起算日と端数の扱いの一般論、買主側の取得価額、消費税、そのほかの取得費・譲渡費用の費目、特例の要件、税額の計算と税率、住民税は扱っていません。各マンションの管理費等の扱いは、そのマンションの管理規約によります。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は売買契約と精算書の定めによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm
- 国税庁 質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/10.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例(令和6年2月13日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/134/04/index.html
- 国税庁 所得税基本通達「法第33条《譲渡所得》関係」(33-7)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- 国土交通省「マンション標準管理規約」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
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