この記事の答え
- 希望者全員が受けられ、受けた全員の費用を会社が払う、一般的な人間ドック程度なら、給与にしない扱いです
- 社長や役員だけを対象にする形は給与とされるおそれがあり、役員の分は損金にならないおそれがあります
- 国税庁の事例と通達に、金額の目安はありません。著しく多額な検査は、給与とされるおそれがあります
会社が払った人間ドックの費用は、経費になりますか
社長や社員の人間ドックの費用を、会社が払うことがあります。この費用は、受ける人の範囲と内容によって、福利厚生費にも給与にもなります。
分かれ目は、希望者全員が受けられ、全員の費用を会社が払う形か、内容が一般的な人間ドック程度かです。

この記事では、国税庁の質疑応答事例をもとに、給与と福利厚生費の分かれ目を説明します。
福利厚生費とは、社員などのために会社が負担する費用のことです。福利厚生費になれば、役員の分も含めて会社の経費にできます。一方、給与とされると、受けた人に所得税がかかります。社長の分が給与とされると、会社の税金が増えることもあります。
国税庁の質疑応答事例と通達をもとにした目安です。事実が違えば、扱いが変わることがあります。
福利厚生費にできるのは、どんな形ですか

国税庁の資料で給与にしなくてよいとされたのは、下の図2の左の3つがそろう形です。
国税庁の質疑応答事例の会社は、社内規程を設けていました。役員と社員の全員に、年2回の健康診断を行っていました。さらに、35歳以上の希望者全員に、2日間の人間ドックを受けさせていました。検診は会社と契約した医療機関で行い、検診料は会社が負担していました。
国税庁の資料は、その理由も示しています。理由は、雇い主に、人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることなどです。
受けた人のうち、一部の人の費用だけを会社が払う形は、この事例とは違います。対象の決め方と費用の払い方の両方を、事例の形にそろえることが大切です。
給与にしない形(国税庁の事例)
- 一定の年齢以上の希望者は、役員も社員も全員受けられる
- 受けた人全員の費用を、会社が負担する
- 内容は、一般的に実施されている人間ドック程度
給与とされるおそれがある形
- 役員や特定の地位の人だけを対象にする
- 費用の額が著しく多額
ポイント
図2の左の形で、役員も社員と同じ条件で受けるなら、役員の分も所得税で課税されない形です。この形で、会社が給与として処理していなければ、法人税でも給与として扱われません。
食事や社員旅行の線引きは、福利厚生の線引きの記事をご覧ください。
社長や役員だけを対象にすると、どうなりますか

社長や役員だけを対象にした人間ドックの費用は、その人への給与とされるおそれがあります。
注意
たとえば、社員8人の会社のA社長は、会社の費用で毎年人間ドックを受けていました。A社長の会社は、社員には案内をしていませんでした。この形は、国税庁の資料の「役員だけを対象」に当たり、給与とされるおそれがあります。会社が社員にも同じ条件で案内していれば、事例に近い形になります。
役員の給与とされると、法人税の扱いも変わります。会社が役員の費用を負担する形の給与は、毎月おおむね一定のものを除き、原則として損金になりません。損金とは、法人税の計算で差し引ける費用のことです。年1回の人間ドック代は、損金にならないおそれがあります。
さらに、給与とされた分は、会社が所得税を源泉徴収して納めます。源泉徴収とは、給与を払う会社が、所得税を預かって国に納める仕組みです。
部長以上の社員だけを対象にする形も、給与とされるおそれがあります。特定の地位の人だけが対象になるからです。社員の分が給与とされたときも、会社は源泉徴収をします。
全員が受けられる形でも、費用の額が著しく多額なら、課税しない扱いから外れます。たとえば、社長だけが一般的な人間ドックを大きく超える高額な検査を受ける形は、注意が必要です。社長の個人的な支出を会社が払う場合は、役員給与になる支出の記事をご覧ください。
どこまで自社で進められますか

規程の下書きと、記録の準備までは、自社で進められます。
- 対象(年齢・役員と社員)と検査の内容を、規程に書く
- 対象の全員に案内した記録を残す
- 医療機関の請求書と、受けた人の一覧を保存する
ここから先の、自社の形が国税庁の事例に当たるかどうかは、個別の判断です。たとえば、社員がいない会社で社長だけが受ける場合は、事例と事実が違います。検査の内容が高額な場合も、内容と金額を見て個別に判断します。
補足
国税庁の質疑応答事例は、照会の事実を前提にした一般的な回答です。事実が違えば、違う課税関係になることがあります。
小松公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の代表が直接担当します。法人の税務顧問と決算申告の両方をお引き受けしています。日々の税務相談では、規程の対象・費用の払い方・検査の内容を、国税庁の資料と照らします。決算では、役員の分を給与として扱うかを確かめてから申告します。やり取りは全国オンラインで完結し、来所は要りません。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 対象を35歳以上のように、年齢で区切ってもよいですか?
国税庁の事例は、35歳以上の希望者全員が受けられ、受けた全員の費用を会社が負担する形です。この形で、給与として課税する必要はないとされています。年齢で区切るときも、その年齢以上の希望者は全員受けられることが前提です。
Q2. 人間ドックの費用に、金額の上限はありますか?
国税庁の事例と通達は、金額の目安を示していません。基準は、一般的に実施されている人間ドック程度かどうかです。通達では、利益の額が著しく多額な場合は、課税しない扱いから外れます。
Q3. 社員の分が給与とされたら、会社の経費になりませんか?
社員への給与は、原則として損金になります。ただし、役員と特殊の関係のある社員の給与のうち、不相当に高額な部分は損金になりません。給与とされた分は、会社が源泉徴収をします。
Q4. 食事やスポーツクラブの費用も、同じ考え方ですか?
項目ごとに、国税庁の取扱いが違います。食事・社員旅行は福利厚生の線引きの記事、スポーツクラブはスポーツクラブの記事をご覧ください。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法28条・36条・183条、法人税法22条・34条・36条、法人税法施行令69条1項2号、所得税基本通達36-29、法人税基本通達9-2-9・9-2-10・9-2-11、国税庁の質疑応答事例「人間ドックの費用負担」、タックスアンサーNo.2508・No.5202・No.5211の内容を扱っています。法律で義務付けられた健康診断の細目、社員がいない会社や家族だけの会社での扱い、役員や社員の家族の検診費用、使用人兼務役員の扱い、現金で補助・精算する形やカフェテリアプラン、医療機関に払う検診料の消費税、医療費控除、源泉徴収税額の計算と納付の手続き、規程の文例は扱っていません。記事中の社長の例は説明のための架空の例で、実際の扱いは会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)「人間ドックの費用負担」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-29)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5202 役員等に対する経済的利益https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5202.htm
- e-Gov法令検索 法人税法(第22条・第34条・第36条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索 所得税法(第28条・第36条・第183条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
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