この記事のポイント
- 全員が一律に使え、金額が著しく多額でなければ課税しない扱いがあります
- 役員だけが対象の形は、課税しない扱いから外れます。従業員のいない会社は要注意です
- 入会金は法人会員なら資産計上、個人会員なら会員本人の給与が原則です
- 社長個人の会費は役員給与に当たり得ます。毎月一定なら損金の余地があり、源泉徴収が要ります
まず結論:社長だけが使うジム代は給与に、全員が一律に使える形なら福利厚生費になり得ます
スポーツクラブやジムの費用を会社が払うと、使った人は「経済的利益」を受けます。
経済的利益とは、お金ではなく、サービスなどの形で受け取る得のことです。
国税庁は、福利厚生施設の利用による得も、原則は給与の収入金額としています。
根拠はタックスアンサーNo.2508です。例外として、課税しない扱いが通達にあります。
分かれ目は、全員が一律に使えるか、役員だけになっていないか、金額が著しく多額でないかです。
この扱いから外れると、会社の支出は福利厚生費ではなく給与になります。

課税しない扱いの根拠は、所得税基本通達36-29です
施設の費用を会社が負担したときの扱いは、次の通達にあります。
使用者が役員若しくは使用人に対し自己の営む事業に属する用役を無償若しくは通常の対価の額に満たない対価で提供し、又は役員若しくは使用人の福利厚生のための施設の運営費等を負担することにより、当該用役の提供を受け又は当該施設を利用した役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合又は役員だけを対象として供与される場合を除き、課税しなくて差し支えない。
(所得税基本通達36-29)
除かれるのは、金額が著しく多額な場合と、役員だけを対象とする場合の2つです。
「著しく多額」に当たる金額の基準は、通達には書かれていません。
福利厚生サービスの事例で、国税庁は次のように答えています。
契約施設を利用した場合の一般料金と割引料金の差額については、全従業員等が一律に供与を受けるものである限り、課税しなくて差し支えありません(所得税基本通達36-29)。
(国税庁 質疑応答事例「カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合」)
同じ事例では、旅行やレジャー用品の代金をポイントで補助するメニューは給与等とされました。
使う人だけに供与され、個人が負担すべき費用の補塡と認められたためです。
個人の会費を会社が肩代わりする形は、同じ考え方で給与とされる余地があります。
ポイント
国税庁は、課税しない福利厚生とするには役員・従業員にとって均等であることが要るとしています。地位や報酬額に比例してポイントを配る制度は、全体が課税対象です。現金に換えられる形も同じです(質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」)。
入会金と会費は、法人会員か個人会員かで行き先が変わります
入会金の扱いは、法人税基本通達9-7-13の2が定めています。対象のクラブは次のとおりです。
宿泊施設、体育施設、遊技施設その他のレジャー施設を会員に利用させることを目的とするクラブでゴルフクラブ以外のもの
(法人税基本通達9-7-13の2)
スポーツクラブやフィットネスジムは、体育施設を会員に使わせるクラブとして、これに当たり得ます。
入会金には、ゴルフクラブの入会金の通達(9-7-11・9-7-12)が準用されます。
- 法人会員 ― 入会金は資産に計上します。記名式で、名義人の役員などが専ら業務と関係なく使うときは、その人の給与です。
- 個人会員 ― 入会金は、会員である役員や使用人の給与です。例外は、無記名式の法人会員制度がないため個人会員で入った場合です。会社が資産に計上し、業務の遂行上必要と認められれば、その経理が認められます。
有効期間が決まっていて、脱退しても入会金が返らないクラブもあります。
その入会金は、繰延資産(数年に分けて費用にする支出)として償却できます。給与とされる入会金は除かれます。
年会費や月会費の扱いは、同じ通達の注にあります。
年会費その他の費用は、その使途に応じて交際費等又は福利厚生費若しくは給与となることに留意する。
(法人税基本通達9-7-13の2(注))
会費は、契約の名義だけでなく、使い道で交際費等・福利厚生費・給与に分かれます。
所得税では、入会金が会社の資産なら会費は課税せず、給与なら会費も給与です。
利用ごとの料金は、特定の人が負担すべきなら給与です(所得税基本通達36-34の3)。
注意
法人会員の入会金は、資産に計上するのが通達の原則です。払った年の福利厚生費に一度に入れる前に、繰延資産に当たるかも含めて確かめます。ゴルフ会員権は、ゴルフ会員権の入会金の記事で扱っています。

社長1人の会社では、ジムを使えるのが役員だけになります
従業員がいない会社では、ジムを使えるのは役員だけです。
この形は、通達36-29の「役員だけを対象として供与される場合」に当たり得ます。
指摘を受けるおそれがあるのは、次の処理です。
- 社長個人の名義の会費を、福利厚生費で処理している
- 法人会員にしたが、規程も周知もなく、使うのは社長と家族だけ
- 役職に応じて、使える回数や補助の額に差をつけている
- ジム代を、現金の手当として渡している
- 給与に当たる分を、源泉徴収していない
社長個人の会費は、本来は社長が負担する費用です。
会社が払うと、個人的費用の負担として役員給与に当たり得ます(法人税基本通達9-2-9(10))。
役員給与が損金(税金の計算で差し引ける費用)になるかは、毎月の額が一定かで分かれます。
役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当し、損金の額に算入されますが、その他のものは定期同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。
(国税庁 タックスアンサー No.5202)
計算例
例:社長1人の会社が、社長個人名義のジムの費用を1年間払った場合
入会金 11,000円(1回きり) 月会費 13,200円 × 12か月 = 158,400円(毎月同じ額) 社長の給与の収入金額に加わる額 11,000円 + 158,400円 = 169,400円 法人税で損金にならない額 11,000円(入会金は毎月一定ではありません) 月会費158,400円は、定期同額給与として損金になる余地があります金額は一定の前提を置いた目安で、源泉徴収税額・消費税は省きました。
損金になる余地があっても、社長の給与として源泉徴収が要る点は変わりません。
役員への経済的利益の全体像は、役員の経済的利益の記事にまとめています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身でできるのは、次の4点です。
- 契約書と会則で、法人会員か個人会員か、記名式か、有効期間と入会金の返還を確かめる
- 福利厚生の規程に、対象者(役員と従業員の全員)、使い方、会社の負担の範囲を書く
- 規程の内容を、掲示やメールで全員に知らせる
- だれがいつ使ったかの利用記録を、月ごとに残す
利用記録は後からまとめず、使ったその月に残すことが大切です。
一方で、金額が著しく多額に当たるか、使い道が私的かは、事実に応じた判断です。
家族の利用、入会金の資産計上か償却か、定期同額給与に当たるかも、個別の検討が要ります。
補足
所得税で課税されない役員の経済的利益は、給与として経理しなければ、法人税でも給与になりません。根拠はタックスアンサーNo.5202と法人税基本通達9-2-10です。全員が一律に使え、著しく多額でない形なら、役員の利用分も福利厚生費と説明できる余地があります。食事・社員旅行・人間ドックの線引きは福利厚生の線引きの記事をご覧ください。

税理士が入ると変わるのは、契約の形と処理の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、契約の前から次の作業を行います。
ひとつめは、契約書と会則による入会金と会費の扱いの判定です。
ふたつめは、対象者・使い方・会社の負担の範囲を定めた規程の作成です。
みっつめは、利用記録の点検です。役員に偏っていないかを確かめます。
よっつめは、給与に当たる分の源泉徴収と、定期同額給与に当たるかの確認です。
いつつめは、損金にならない額の申告書への反映です。
むっつめは、規程と記録を使った税務調査の想定問答の準備です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社長1人の会社で、ジムの会費を福利厚生費にできますか?
従業員がいなければ、使えるのは役員だけです。所得税基本通達36-29は、役員だけを対象として供与される場合を課税しない扱いから除いています。社長の給与として扱う前提で、源泉徴収と定期同額給与に当たるかを確かめるのが基本です。
Q2. 法人会員で契約すれば、福利厚生費になりますか?
名義だけでは決まりません。全員が一律に使えるか、金額が著しく多額でないかを見ます。記名式の法人会員でも、名義人の社長が専ら業務と関係なく使う場合があります。その入会金は社長の給与です(法人税基本通達9-7-13の2・9-7-11)。
Q3. ジムの入会金は、払った年の経費になりますか?
法人会員の入会金は資産に計上するのが原則です(法人税基本通達9-7-13の2・9-7-11)。有効期間が決まっていて脱退時に返らないクラブなら、繰延資産として償却できます。個人会員の入会金は、原則として会員本人の給与です。
Q4. 社長個人の月会費を会社が払うと、損金になりませんか?
社長への経済的利益として役員給与に当たり得ます。毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金になる余地があります(タックスアンサーNo.5202)。入会金のような1回きりの分は損金になりません。いずれも社長の給与として源泉徴収が要ります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税基本通達36-29・36-34の3、法人税基本通達9-7-11・9-7-12・9-7-13の2・9-2-9・9-2-10、国税庁タックスアンサーNo.2508「給与所得となるもの」・No.5202「役員等に対する経済的利益」、国税庁の質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」「カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合」の内容を扱っています。会社が払う会費について、スポーツクラブを名指しした国税庁の資料は確認できませんでした。個人事業主のスポーツクラブの会費を家事費とした公表裁決はあります(平成31年3月28日裁決)。本記事は通達の一般的な要件に当てはめた解説です。「著しく多額」に当たる金額の水準、家族会員や家族の利用の扱い、繰延資産とした入会金の償却期間と少額の場合の扱い、会費の消費税の扱い、源泉徴収税額と不納付の場合の加算税、定期同額給与の改定時期との関係、交際費等に当たる場合の損金不算入額の計算、社会保険料への影響、条文そのものの解説は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の結論は契約の内容と利用の実態によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-29・36-34の3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第7節第3款「会費及び入会金等の費用」(9-7-11〜9-7-13の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2508「給与所得となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm
- 国税庁 質疑応答事例「カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/37.htm
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ジムの会費は、全員が一律に使える形で、金額が著しく多額でなければ課税しない扱いがあります。役員だけが使う形や社長個人の会費は給与となる場合があり、源泉徴収と損金算入の判定が要ります。代表税理士が、契約書と会則の確認、福利厚生の規程の作成、利用記録の点検を行います。給与に当たる分の源泉徴収の確認と、申告書への反映まで通して対応します。契約や入会の前の段階でご相談ください。
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