この記事のポイント
- 取得の日が違う部分は、部分ごとに長期・短期を判定します
- 後から買い取った持分は、買い取った日から数えます
- 改良・改造をしても、所有期間は元の取得の日から数えます
- 売却代金と取得費を部分ごとに分ける根拠が必要です
まず結論:取得の日が違う部分は、部分ごとに長期・短期を判定します
1回の売却でも、税率が1つとは限りません。
所有期間は、取得の日の翌日から数えるからです。
前項に規定する所有期間とは、当該個人がその譲渡をした土地等又は建物等をその取得(建設を含む。)をした日の翌日から引き続き所有していた期間として政令で定める期間をいう。
(租税特別措置法31条2項)
後から買い足した部分は、買い足した日が取得の日です。
取得の日が違えば、同じ土地の中でも長期と短期に分かれることがあります。
国税庁も「税金の計算も別々に行います」としています(タックスアンサー No.3202)。
1月1日で5年を数える判定は、短期・長期の判定の記事で扱いました。

共有持分を後から買い取ったときは、持分ごとに数えます
兄弟や元の配偶者から持分を買い取り、単独名義で売る例があります。
もともとの持分と買い取った持分は、取得の日が別です。
名古屋国税局の文書回答事例(平成24年12月11日)に、次の見解があります。
当該土地のうち売買により取得した共有持分に対応する部分については、当該居住者が売買により取得した時の取得価額及び取得の時期を基に、当該居住者に対して当該居住者の所有期間中の価値の増加益に係る譲渡所得の課税が行われる。
(名古屋国税局 文書回答事例「一筆の土地の共有持分を別個の時期に相続と売買により取得し…」照会者の見解。回答は「貴見のとおりで差し支えありません」)
この事例は、取得費の計算についての照会です。相続した持分の概算取得費を、売却代金を持分の割合で分けた額の5%としています。売った年の1月1日に、どちらの持分も所有期間5年超の長期でした。
この回答は名古屋国税局としての見解です。
買い取った持分は、買い取った日と買い取った金額で計算します。
国税庁の質疑応答事例も、妻の持分を5年前に買い受けた家屋で、所有期間を持分ごとに分けています。
共有のまま売る場合は共有不動産の売却の記事をご覧ください。
全部を長期で申告すると、税額が170万円あまり違う例です
短期は所得税30%・住民税9%です(タックスアンサー No.3211)。
長期は所得税15%・住民税5%です(同 No.3208)。
令和8年分の復興特別所得税は、所得税額の2.1%です。令和9年分からは、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%です。
計算例
例:土地の持分2分の1を平成26年5月20日に1,500万円で購入。残り2分の1を令和4年6月10日に2,000万円で買い取り、令和8年10月に全体を6,000万円で売却(譲渡費用200万円)
判定日 令和8年1月1日 平成26年の持分 → 5年超で長期/令和4年の持分 → 5年以下で短期 売却代金と譲渡費用は、持分の割合で2分の1ずつに分ける 長期部分 3,000万円 - 1,500万円 - 100万円 = 1,400万円 所得税 210万円+復興特別所得税 44,100円+住民税 70万円 = 2,844,100円 短期部分 3,000万円 - 2,000万円 - 100万円 = 900万円 所得税 270万円+復興特別所得税 56,700円+住民税 81万円 = 3,566,700円 部分ごとの合計 6,410,800円 全部を長期とみた場合 2,300万円 × 20.315% = 4,672,450円 差額 6,410,800円 - 4,672,450円 = 1,738,350円数値は目安で、特別控除は考えていません。
全部を長期で申告すると、短期部分の税額が足りなくなります。

底地や隣地を買い足した土地も、部分ごとに判定します
借地の上に家を建て、あとから底地を買い取る例があります。
底地とは、借地権が設定されている土地です。
借地権その他の土地の上に存する権利(以下「借地権等」という。)を有する者が当該権利の設定されている土地(以下「底地」という。)を取得した場合には、その土地の取得の日は、当該底地に相当する部分とその他の部分とを各別に判定するものとする。
(所得税基本通達33-10)
隣の土地を買い増して一体で使っていた場合も、買った時期は別々です。
取得の日は、買った土地は原則として引渡しを受けた日です(所得税基本通達33-9)。
短期と長期が混ざると、売却代金を分ける必要が出ます。
総合課税の譲渡所得には、次の通達があります。
それぞれの譲渡資産の収入金額は、当該譲渡に係る収入金額の合計額をそれぞれの譲渡資産の当該譲渡の時の価額の比によりあん分して計算するものとし、
(所得税基本通達33-11)
ポイント
33-11は、所得税法33条3項の総合課税の譲渡所得の定めです。底地を買い取った土地は、所得税基本通達33-11の3が分け方を定めています。売却代金に、底地を取得した時の「底地の価額÷更地の価額」を掛けた額が底地部分です。取得費の分け方は、同38-4の3が定めています。持分や隣地の分け方を直接定めた通達は、当事務所の確認範囲では見当たりません。時価の比で分けるなら、時価の根拠を用意します。
改良や改造をしても、所有期間は元の取得の日から数えます
リフォームをした建物でも、所有期間は数え直しになりません。
その取得後改良、改造等を行った土地建物等について措置法第31条第2項に規定する所有期間を判定する場合における同項に規定する「その取得をした日」は、その改良、改造等の時期にかかわらず、当該土地建物等の取得をした日によるものとする。
(租税特別措置法関係通達31・32共-6)
3年前の大規模リフォームでも、建物を20年前に買っていれば長期です。
一方、改良費は取得費に加えます。リフォーム費用と取得費の記事をご覧ください。
注意
「増築」を名指しした通達や質疑応答事例は、当事務所の確認範囲では見当たりません。増築部分を元の建物と一体とみるかは、工事の規模や登記を見た個別判断です。

片方が赤字なら、長期と短期の間で差し引きます
部分ごとに分けると、片方だけ損になることがあります。
計算の順番は、措置法の通達にあります。
その年中に譲渡した資産を分離短期譲渡所得の基因となる資産及び分離長期譲渡所得の基因となる資産に区分して、これらの資産の区分ごとに、それぞれの総収入金額から当該資産の取得費及び譲渡費用の合計額を控除して譲渡損益を計算する。
(租税特別措置法関係通達31・32共-2)
短期の損失は長期の譲渡益から、長期の損失は短期の譲渡益から差し引きます。
控除しきれない損失は、原則として生じなかったものとみなされます。
土地建物の譲渡損失は、原則として給与などとは差し引けません。
つまずくのは、だいたいこの5つです
- 買い取った持分まで、元の取得の日で長期にした ― 短期部分の税額が不足します
- 買い取った持分の代金を取得費に入れていない ― 取得費が過少になります
- 売却代金を根拠なく短期側に少なく配分した ― 配分の説明ができません
- リフォームしたから短期だと思い込んだ ― 所有期間は元の取得の日からです
- 底地の買取りの日を確かめていない ― 底地部分だけ短期になることがあります

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で用意できるのは、次の4点です。
- 登記事項証明書で、持分や土地ごとの受付年月日と原因を書き出す
- それぞれの売買契約書で、引渡しの日と代金を確かめる
- 増築やリフォームの工事請負契約書と領収書をそろえる
- 売った年の1月1日に、部分ごとに5年を超えているか数える
売却代金を時価の比で分けるか、増築部分をどう扱うかで結論が変わります。
税理士が入ると変わるのは、部分ごとの洗い出しと按分の根拠です
ひとつめは、登記簿と契約書から部分ごとの取得の日を洗い出す作業です。
ふたつめは、部分ごとの取得費の確定です。買い取った代金と改良費を振り分けます。
みっつめは、売却代金と譲渡費用の按分です。按分の方法と根拠を書面に残します。
よっつめは、長期と短期に分けた計算を申告書の計算明細に反映する作業です。
いつつめは、片方が赤字のときの差し引きの確認です。
小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 後から買い取った持分も、元の持分と同じ日から数えますか?
数えません。所有期間は取得をした日の翌日から数えます(租税特別措置法31条2項)。名古屋国税局の文書回答事例は、売買で取得した持分についてその取得の時期と取得価額を基に計算する見解を認めています。買い取った持分は、買い取った日から数えます。
Q2. リフォームや改造をすると、所有期間は数え直しになりますか?
なりません。租税特別措置法関係通達31・32共-6は、改良、改造等を行った土地建物等の取得をした日を「その改良、改造等の時期にかかわらず」元の取得をした日としています。増築を名指しした通達は確認できず、増築は個別判断です。
Q3. 長期と短期が混ざるとき、売却代金はどう分けますか?
総合課税の譲渡所得では、所得税基本通達33-11が譲渡の時の価額の比で按分するとしています。持分の場合、名古屋国税局の文書回答事例は、概算取得費の計算で売却代金を持分の割合で分けています。底地を買い取った土地は、所得税基本通達33-11の3の算式で分けます。それ以外で時価の比を使うときは、時価の根拠を用意します。
Q4. 短期部分が赤字で、長期部分が黒字のときはどうなりますか?
短期の損失は長期の譲渡益から差し引きます(租税特別措置法関係通達31・32共-2)。控除しきれない損失は生じなかったものとみなされます。部分ごとに損益を出してから差し引くので、先に部分ごとの計算が必要です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条1項・2項、32条1項、所得税法33条3項、所得税基本通達33-9・33-10・33-11・33-11の3・38-4の3、租税特別措置法関係通達31・32共-2・31・32共-6、国税庁質疑応答事例「家屋の所有期間が異なる場合における居住用財産の軽減税率の特例の適用範囲」、名古屋国税局文書回答事例(平成24年12月11日)、国税庁タックスアンサー No.3202・No.3208・No.3211の内容を扱っています。増築部分が「改良、改造等」に当たるかの結論、土地建物の分離課税における売却代金の按分方法の結論、租税特別措置法施行令20条が定める所有期間の計算の細目、相続や贈与で取得した部分の取得の日の引継ぎ、買換えや交換の特例で取得した資産の取得の日、居住用財産の3,000万円特別控除や軽減税率の特例の要件、概算取得費、建物の減価償却費相当額の計算、課税所得金額と税額の端数処理、住民税の内訳、共有物分割の課税関係は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得価額・譲渡価額・譲渡費用・按分の方法によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》・第32条《短期譲渡所得の課税の特例》共通関係(31・32共-2を収録)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/01.htm
- 国税庁 措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》・第32条《短期譲渡所得の課税の特例》共通関係(31・32共-6を収録)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/02.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-9・33-10・33-11を収録)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- 名古屋国税局 文書回答事例「一筆の土地の共有持分を別個の時期に相続と売買により取得し当該土地の単独所有者となった者が当該土地を譲渡した場合における譲渡所得の取得費の計算について」https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/bunshokaito/joto-sanrin/121211/index.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(31条・32条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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後から買い取った持分や買い足した底地・隣地は、元の土地と取得の日が違い、部分ごとに長期と短期を判定します。全部を長期で申告すると、短期部分の税額が足りなくなります。代表税理士が、登記簿と契約書から部分ごとの取得の日と取得費を洗い出し、売却代金の按分の根拠を整えて、長期と短期に分けた計算を申告書に反映します。売買契約を結ぶ前にご相談ください。
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