この記事のポイント
- 法人税では、支出の事実と業務との関係を何で示すかが問われます
- 消費税は帳簿と請求書等の保存が原則で、帳簿だけで足りる取引は政令で定まります
- 立替払いは、相手先の書類に精算書や名簿を合わせて会社の支出だと示します
- 相当の理由なく相手先を帳簿に書かない支出は、使途秘匿金となるおそれがあります
まず結論:領収書がなくても、支出の中身を示せるかが分かれ目です
法人税では、領収書がないことだけで損金(税金の計算で差し引ける費用)から外れるわけではありません。
問われるのは、支出の事実と業務との関係を何で示すかです。
消費税の仕入税額控除(仕入れの消費税を差し引く仕組み)は、原則として帳簿と請求書等の保存が要件です。
法人税は「証拠の組み立て」、消費税は「書類の保存」と、見られる点が違います。

法人税では、業務に必要な支出かを記録で示します
法人税法22条3項は、損金に入れる額として、売上原価や販売費・一般管理費などを挙げています。
条文には、領収書があることという条件は書かれていません。
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)は、次のように判断しました。
内国法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる支出は、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきであり、支出のうち、費途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、損金の額に算入することができないというべきである。
(国税不服審判所 令和4年8月4日裁決)
電子マネーの購入代金を損金にした事案です。
関連会社へ渡したことがメールや管理表で確かめられた分は、売上原価として損金に入りました。
購入の事実はあっても、使い道を管理する書類がない分は、損金に入りませんでした。
ポイント
支払った記録だけでは足りず、何に使ったかまで示す必要がありました。平成27年12月期から平成31年2月期の事案です。
法人には、領収書などの保存義務があります(青色申告の法人は法人税法施行規則59条1項3号)。
期間は原則7年間です(タックスアンサーNo.5930)。
領収書の代わりに残す記録と、出金伝票の弱点
領収書がないときは、支払いを外から確かめられる記録を集めます。
- お金の動き ― 通帳の振込記録、振込金受取書、カード会社の利用明細
- 相手先の書類 ― 請求書、契約書、注文や納品のメール、再発行された領収書
- 社内の記録 ― 出金伝票、立替金精算書、打合せの目的や参加者のメモ
出金伝票は会社が自分で作る記録なので、振込記録など外の記録と組み合わせて残します。

消費税は、原則として帳簿と請求書等の両方の保存が要件です
ここでは本則課税(実際の仕入れから控除額を計算する方法)を前提にします。
消費税法30条7項は、帳簿と請求書等を保存しない仕入れの税額を、原則として控除しないと定めています。
ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
(消費税法30条7項ただし書)
自社で作る書類は、相手方の確認を受けた仕入明細書などでなければ、請求書等に当たりません(同条9項)。
出金伝票やカードの利用明細だけでは、原則として控除の根拠になりません。
カード会社の利用明細は、一般的に適格請求書に当たらないとされています(インボイスQ&A 問103)。
家賃の口座振替は、日付以外のインボイスの記載事項がある契約書と通帳の保存で足ります(同 問95)。
帳簿のみの保存で控除できるのは、政令などが定める次の取引です(同 問104)。
- 税込3万円未満の公共交通機関(船・乗合バス・鉄道等)の運賃
- 税込3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入
- 郵便ポストに出す、切手だけで支払う郵便
- 必要な事項が書かれ、使うときに回収される入場券など
- 役員や社員に支給する、通常必要な出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当
- 古物商・質屋・宅地建物取引業者などの、一定の仕入れ
補足
この場合も、帳簿に特例に当たる旨を書きます(例:3万円未満の鉄道料金)。取引によっては相手方の住所も要ります(同 問110)。一定の規模以下の事業者には、税込1万円未満の仕入れを帳簿のみで控除できる経過措置もあります。詳しくはインボイスの少額特例の記事をご覧ください。

社長や社員の立替払いは、精算書と証拠をそろえます
社員が立て替えると、レシートの宛名が社員名になることがあります。
そのままでは、会社で控除できないのが原則です(インボイスQ&A 問94-2)。
ただし、社員の所属が分かる名簿などもあわせて保存すれば、控除できるとされています。
名簿などで社員を特定できないときは、社員が作った立替金精算書も保存します。
取引先に立て替えてもらった経費は、支払先の適格請求書と立替金精算書などを保存します(同 問94)。
社員に支給する国内出張の旅費・日当は、通常必要な部分なら帳簿のみで控除できます(同 問107)。
通常必要かどうかは、所得税が非課税となる範囲で判定します。海外出張の分は、原則として課税仕入れになりません。
社長の立替も、業務の支出であることを精算書と証拠で示します。
社長個人のための支出を会社が負担すると、社長への経済的な利益とみられるおそれがあります。
役員給与には、経済的な利益を含みます(法人税法34条4項)。扱いは社長の私的な支出の記事で解説しています。
失敗パターン:記録に「誰に・何のために」が書かれていません
- 帳簿の摘要が「店名+○月分」だけ ― 先の裁決では、商品の内容が分かる記載ではないとされました。請求書に明細も付いておらず、仕入税額控除が認められませんでした。
- 交際費の名目で使い道を書かない ― 次の通達があります。
法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない。
(法人税基本通達9-7-20)
得意先などとの1人当たり1万円以下の飲食費は、交際費から外せます。
ただし、書類の保存が条件です(租税特別措置法61条の4第8項)。
書類には、参加者の氏名と関係、人数、店名と所在地などを書きます(同法施行規則21条の18の4)。
注意
相当の理由なく、相手方の氏名・住所と支出の事由を帳簿書類に書かない支出があります。これは使途秘匿金となり、支出額の40%が法人税に加算されます(租税特別措置法62条1項・2項)。取引の対価として相当な支払いと明らかなものは除かれます。秘匿のためでないと税務署長が認めれば、含めないこともできます(同条3項)。
計算例
例1:税込33,000円の消耗品の領収書をなくし、再発行もほかの請求書等もない場合
控除できない消費税等 33,000円 × 10/110 = 3,000円例2:相手先を帳簿書類に書かない300,000円の支出が、使途秘匿金に当たる場合
法人税への加算 300,000円 × 40% = 120,000円例1は本則課税・標準税率10%で全額控除できる会社、例2は除外に当たらない場合の目安です。
相手先を書けない支出は、払う前に扱いを確かめることが大切です。要件は使途秘匿金の記事をご覧ください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
領収書がないと気づいたら、ご自身で次の4点を進めます。
- 支払先に、領収書や請求書の再発行を頼む
- 通帳・カードの利用明細・注文のメールなど、外の記録を集める
- 出金伝票か精算書に、日付・支払先・内容・金額・領収書がない理由を書く
- 立替分は、レシートの原本を精算書に添付して精算する
業務に必要な支出と説明できるか、税目ごとにどう扱うかは個別判断です。
交際費か、社長への給与か、使途秘匿金に当たるかも、事実によって分かれます。
税理士が入ると変わるのは、証拠の組み立てと帳簿の書き方です
小松公認会計士・税理士事務所では、領収書のない支出について次の作業を行います。
ひとつめは、証拠の整理です。振込記録・明細・メールを並べ、業務との関係を説明する資料にします。
ふたつめは、仕訳と摘要の見直しです。相手先・内容・目的が分かる書き方にそろえます。
みっつめは、消費税の判定です。帳簿のみで控除できる取引かを分け、申告書に反映します。
よっつめは、立替精算の様式づくりです。精算書の項目と、レシートや名簿の保存の流れを決めます。
いつつめは、交際費・役員給与・使途秘匿金に当たるおそれの点検と、税務調査の想定問答の準備です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 領収書をなくした経費は、会社の損金にできませんか?
法人税法22条3項は、領収書があることを損金の条件としていません。ただし、業務の遂行上必要な支出かが問われます。令和4年8月4日裁決は、使い道を確認できず業務との関係が不明な支出を、損金に入らないとしました。振込記録だけでなく、使い道が分かる記録も残します。
Q2. 出金伝票があれば、消費税の仕入税額控除はできますか?
本則課税では、帳簿と請求書等の保存が原則の要件です(消費税法30条7項)。自社で作る出金伝票は、相手方の確認を受けた仕入明細書などでなければ請求書等に当たりません。税込3万円未満の公共交通機関の運賃など、帳簿のみで足りる取引は別です。
Q3. 社員が立て替えたレシートの宛名が社員名です。会社で控除できますか?
そのままでは控除できないのが原則です。ただし、社員の所属が分かる名簿などもあわせて保存すれば、控除できるとされています。名簿などで特定できなければ、社員が作った立替金精算書も保存します(インボイスQ&A 問94-2)。
Q4. 相手先を言えない支払いは、どう扱われますか?
相当の理由なく、相手方の氏名・住所・事由を帳簿書類に書かない支出は使途秘匿金になります。支出額の40%が法人税に加算されます(租税特別措置法62条)。取引の対価として相当と明らかなものなどは除かれます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条3項・34条4項、法人税法施行規則59条1項3号、法人税基本通達9-7-20、租税特別措置法61条の4第6項・第8項・62条1項から3項、同法施行令37条の5第1項、同法施行規則21条の18の4、消費税法30条7項から9項、消費税法施行令49条1項、消費税法施行規則15条の4、タックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間」・No.6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」の問94・問94-2・問95・問103・問104・問107・問110、国税不服審判所の令和4年8月4日裁決の内容を扱っています。簡易課税制度・2割特例を選択している場合の扱い、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置、少額特例の対象者・適用期間・判定単位の細目、実費精算の出張旅費を会社が直接支払ったものと同視し得る場合の扱い、帳簿書類の保存期間が10年間となる事業年度、電子取引データの保存要件、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例、帳簿書類の不備による青色申告の承認の取消し、社長の私的な支出が役員給与となる場合の要件と源泉徴収、交際費等の損金不算入額の計算、使途秘匿金の支出額そのものの損金算入の可否、推計による経費の認定、加算税・延滞税は扱っていません。紹介した裁決は、インボイス制度の開始前の事業年度・課税期間の事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・34条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「消費税法」(30条)https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問104「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/104.pdf
- 国税庁 同Q&A 問94-2「従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/94-2.pdf
- 国税不服審判所 公表裁決事例等の紹介(令和4年8月4日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/128/03/index.html
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領収書がない経費は、法人税では支出の事実と業務との関係を何で示すかが問われます。消費税では、帳簿と請求書等の保存が原則として求められます。帳簿だけで足りるのは、税込3万円未満の公共交通機関の運賃など政令で定める取引です。代表税理士が、証拠の整理、仕訳と摘要の見直し、消費税の判定まで通して対応します。立替精算の様式づくりや、交際費・使途秘匿金に当たるおそれの点検も行います。決算や申告の前の段階でご相談ください。
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