この記事のポイント
- 非上場株式の個人株主への配当は、会社が20.42%を差し引き、払った月の翌月10日までに納めます
- 令和9年1月1日以後に生ずる所得から内訳が変わりますが、合計の率は同じです
- 支払確定から1年を経過しても未払なら、その日に払ったとみなし源泉徴収します
- 配当は損金になりません。支払調書は少額配当を除き、支払確定日から1か月以内です
まず結論:社長への配当は、20.42%を差し引いて翌月10日までに納めます
社長やご家族の株主に配当を払う会社は、税金を差し引いて国に納めます。これを源泉徴収といいます。
非上場の会社の配当では、差し引く率は合計20.42%です。住民税は差し引きません。
差し引いた税は、配当を払った月の翌月10日までに納めます。
配当は利益の分配で、法人税の計算で損金になりません。
少額の配当を除き、税務署へ支払調書(支払の内容を知らせる書類)も出します。

配当は損金にならず、払える額にも上限があります
法人税法22条5項は、「法人が行う利益又は剰余金の分配」を資本等取引と定めています。
資本等取引に当たる配当は、損金(税金の計算で差し引ける費用)になりません(同条3項)。
会社法では、配当は原則として、その都度、株主総会の決議で決めます(会社法454条1項)。
決議では、配当の総額、株主への割当て、効力を生ずる日を定めます。
配当で渡す金銭の総額は、効力を生ずる日の分配可能額を超えてはなりません(同法461条1項)。
分配可能額は、配当に回せる上限です。純資産額が300万円を下回る会社は、配当ができません(同法458条)。
社長が役員報酬で受け取る場合は、役員報酬の設計の記事をご覧ください。
源泉徴収の率は合計20.42%です。令和9年からは内訳が変わります
非上場株式の配当の所得税は、「その金額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額」です。根拠は所得税法182条2号です。
これに所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります(復興財確法28条2項)。
令和8年度改正で、令和9年1月1日以後に生ずる所得から内訳が変わります。
| 税の種類 | 令和8年12月31日以前に生じた所得 | 令和9年1月1日以後に生ずる所得 |
|---|---|---|
| 所得税 | 20% | 20% |
| 復興特別所得税 | 所得税額の2.1% | 所得税額の1.1% |
| 防衛特別所得税 | なし | 所得税額の1% |
| 合計 | 20.42% | 20.42% |
合計の率は20.42%のままです。国税庁は、計算方法に変更は生じないとしています。
計算例
例:1株1,000円の配当(前回の基準日から1年)。社長800株・奥様150株・長男50株
社長 800,000円 × 20.42% = 163,360円(手取り 636,640円) 奥様 150,000円 × 20.42% = 30,630円(手取り 119,370円) 長男 50,000円 × 20.42% = 10,210円(手取り 39,790円) 納める額 163,360円 + 30,630円 + 10,210円 = 204,200円 内訳(令和8年12月31日以前に生じた所得) 所得税200,000円 + 復興特別所得税4,200円 内訳(令和9年1月1日以後に生ずる所得) 所得税200,000円 + 防衛特別所得税2,000円 + 復興特別所得税2,200円金額は一定の前提を置いた目安です。1円未満の端数が出たときは、切り捨てます。

納付は払った月の翌月10日まで。1年払わないと払ったとみなされます
その支払の際、その利子等又は配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(所得税法181条1項)
源泉徴収をするのは、実際に配当を払うときです。口座への振替なども、支払に当たります(所得税基本通達181〜223共-1)。
納付は、e-Taxのキャッシュレス納付か、「配当等の所得税徴収高計算書」(納付書)で行います。
配当は、年2回にまとめて納める納期の特例の対象外です(所得税法216条)。
未払の配当には、別の定めがあります。
支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。
(所得税法181条2項)
注意
未払のままなら、1年を経過した日に源泉徴収し、その月の翌月10日までに納めます。この分は納付書を別に作り、摘要欄に「1年経過配当分」と書きます(国税庁)。
支払調書は、支払の確定した日から1か月以内に出します
配当を払う会社は、株主ごとに支払調書を作ります(所得税法225条1項2号)。
支払金額、支払の確定した日、株主の個人番号などを書き、合計表と一緒に税務署へ出します。
期限は、支払の確定した日から1か月以内です(同項)。
書面で出すときの様式は、令和8年8月に変わりました。
個人への少額配当は、支払調書が要りません。1回の金額が、10万円×配当計算期間の月数÷12以下の配当です。
配当計算期間は、前回の配当の基準日(株主名簿で権利者を決める日)の翌日から、今回の基準日までです。
月数は暦で数え、1か月未満の端数は1か月とし、12か月を上限とします。
年1回の配当なら10万円、6か月ごとの配当なら5万円が基準です。根拠は、租税特別措置法8条の5と同法施行令4条の3第3項です。
計算例の長男の5万円は基準以下で、支払調書は要りません。

受け取る社長側は、原則として確定申告で総合課税です
非上場の会社の配当は、総合課税(他の所得と合算して税額を計算する方法)の対象です。
申告分離課税や、少額配当以外の申告不要は選べません(タックスアンサーNo.1330)。
確定申告では、源泉徴収された税を差し引けます。配当控除(所得税額から差し引く控除)も受けられます。
配当控除は、課税総所得金額等が1,000万円以下なら、配当所得の10%です(No.1250)。
少額配当は所得税の申告不要を選べますが、源泉徴収税額は差し引けず、住民税では総合課税です。
ポイント
計算例の社長なら、配当控除は80万円×10%=8万円です。課税総所得金額等が1,000万円以下の前提で、控除は算出税額が限度です。長男の5万円は、申告しなければ10,210円が差し引かれたままです。申告して還付を受けることもできます。
株主が会社の場合の扱いは、会社が受け取った配当の記事で解説しています。
源泉徴収と支払調書の誤りにつながる5つの形
次の形は、納付漏れや期限遅れ、支払調書の判定の誤りにつながります。
- 差し引かずに全額を振り込む ― 20.42%分が、翌月10日までに納められないままになります。
- 給与のように半年分をまとめて納める ― 配当は納期の特例の対象外です。期限を過ぎると、延滞税や不納付加算税などを負担することがあります。
- 未払の配当を1年以上そのままにする ― 1年を経過した日に払ったものとみなされます。
- 未払の配当を株主が放棄する ― その時に払ったものとして源泉徴収するのが原則です。例外は、会社の債務超過が相当期間続き、払えないと認められる場合です。
- 中間配当にも10万円の基準を使う ― 6か月ごとの年2回の配当なら、基準は5万円です。
4つめの根拠は、所得税基本通達181〜223共-2です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
配当の前に、ご自身で整えられるのは次の4点です。
- 株主名簿で、基準日の株主と持株数を確かめる
- 株主総会の議事録に、配当の総額・割当て・効力を生ずる日を書く
- 株主ごとに配当額×20.42%を計算し、差し引いた残りを振り込む
- 翌月10日の納付期限と、1か月以内の支払調書の期限を予定表に入れる
分配可能額の計算と、配当をいくらにするかは、決算書と株主構成を見て決める個別判断です。
未払配当の扱い、年をまたぐ配当の内訳、役員報酬との組み合わせも、事実に応じて判断が分かれます。
税理士が入ると変わるのは、配当額の根拠と期限の管理です
小松公認会計士・税理士事務所では、配当の前後に次の作業を行います。
ひとつめは、上限の確認です。決算書から分配可能額と純資産額を確かめ、配当できる範囲を示します。
ふたつめは、税額の計算表です。株主ごとの源泉徴収税額と手取額を一覧にします。
みっつめは、議事録の確認です。決議で定めるべき事項がそろっているかを見ます。
よっつめは、書類の作成です。納付書と支払調書・合計表を作り、それぞれの期限を管理します。
いつつめは、ご家族の確定申告です。配当控除と源泉徴収された税の差し引きまで確かめます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 株主が社長1人だけの会社でも、配当から源泉徴収が要りますか?
要ります。会社は配当の支払の際に所得税を差し引き、その月の翌月10日までに納めます(所得税法181条1項)。非上場株式の配当は合計20.42%で、住民税は差し引きません(No.1330)。差し引いた残りを株主に払います。
Q2. 配当を決めたのに、資金が足りず払えていません。源泉徴収はいつですか?
源泉徴収は、実際に払うときに行います。ただし、支払の確定した日から1年を経過しても払わないと、その日に払ったとみなされます。その月の翌月10日までに納めます(所得税法181条2項)。納付書の摘要欄には「1年経過配当分」と書きます。
Q3. 令和9年から、配当の源泉徴収の率は変わりますか?
合計は20.42%のままです。令和9年1月1日以後に生ずる所得から、内訳が変わります。復興特別所得税が所得税額の1.1%に下がり、防衛特別所得税(同1%)が加わります。国税庁は計算方法に変更は生じないとし、手元の納付書もそのまま使えるとしています。
Q4. 家族が受け取った少額の配当も、確定申告に入れるのですか?
1回の金額が、10万円×配当計算期間の月数÷12以下の配当は少額配当です。少額配当は、所得税の確定申告をしないことを選べます(租税特別措置法8条の5)。その場合、源泉徴収された税は差し引けず、配当控除もありません(No.1330・No.1250)。住民税では総合課税です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法181条1項・2項・182条2号・216条・225条1項2号、租税特別措置法8条の5第1項1号・3項、同法施行令4条の3第3項、法人税法22条3項・5項、会社法454条1項・458条・461条1項、復興財確法28条2項、防衛財確法5条の26、所得税基本通達181〜223共-1・181〜223共-2、タックスアンサーNo.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」・No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」、国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」・同Q&A、「納付書の記載のしかた(配当等の所得税徴収高計算書)」の内容を扱っています。上場株式等の配当、株主が法人・非居住者・外国法人である場合の源泉徴収、みなし配当、現物配当、種類株式、中間配当の決議の手続、分配可能額の計算の細目、準備金の計上、違法配当の責任、支払の確定した日と1年を経過した日の具体的な判定、年をまたぐ配当の内訳の判定、設立後最初の配当の配当計算期間、配当所得の年分の判定、住民税の申告と配当控除の住民税分、給与所得者の確定申告不要(所得税法121条)の要件、不納付加算税・延滞税の額、配当と役員報酬の有利不利の比較は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(181条・182条・225条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0026005-024_02.pdf
- 国税庁「納付書の記載のしかた(配当等の所得税徴収高計算書)」https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/gensen/080623/02_02.htm
- 国税庁「F1-9 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書(同合計表)」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100023.htm
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