この記事のポイント
- 義務を負うのは支払う日本側で、相手ではありません
- 合計税率は20.42・15.315・10.21パーセントです
- 納付は翌月10日、国外払いは翌月末日です
- 条約で下げるには支払日の前日までの届出書が要ります
まず結論:海外への支払は、払う側が差し引いて納めます
海外の取引先へ払うお金には、税金を差し引く義務がつくことがあります。
対象は所得税法161条1項が並べる「国内源泉所得」で、納める義務は支払う側にあります。
その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(所得税法212条1項)
相手が海外にいても、税金を納めるのは日本側の会社です。
ポイント
非居住者とは居住者以外の個人、外国法人とは内国法人以外の法人です(所得税法2条1項5号・7号)。国籍や通貨ではなく、この区分で決まります。

税率は、支払の中身で3つに分かれます
税率を決めているのは、所得税法213条1項です。
復興特別所得税が、所得税の額の2.1パーセント分だけ上乗せされます(復興財確法28条1項・2項)。
合計は、所得税の税率に1.021を掛けた率です。
| 支払の中身 | 所得税法161条1項 | 合計税率 |
|---|---|---|
| 人的役務の提供事業の対価 | 6号 | 20.42パーセント |
| 工業所有権・著作権等の使用料 | 11号 | 20.42パーセント |
| 不動産の賃借料 | 7号 | 20.42パーセント |
| 給与その他人的役務の提供に対する報酬 | 12号イ | 20.42パーセント |
| 貸付金の利子 | 10号 | 20.42パーセント |
| 配当等(上場株式等以外) | 9号 | 20.42パーセント |
| 債券・預貯金の利子等 | 8号 | 15.315パーセント |
| 土地等の譲渡対価 | 5号 | 10.21パーセント |
土地等の譲渡対価は、買った側が差し引きます。売主側の流れは海外在住者の不動産売却の記事をご覧ください。
令和9年分以後は、防衛特別所得税も併せて源泉徴収します(国税庁 タックスアンサー No.2884)。
補足
海外のクラウド利用料では、消費税の話が混ざりがちです。リバースチャージ方式と国外事業者申告納税方式は消費税の制度で、源泉所得税とは別です(消費税法2条1項8号の3・8号の4、国税庁 タックスアンサー No.6118)。両方を別に判定します。
納付期限は翌月10日、国外払いは翌月末日です
差し引いた税金は、徴収した月の翌月10日までに納めます。
国外から払う場合も、支払者が国内に事務所などを持つなら義務は残ります。
延びるのは、期限だけです。
この場合において、同項中「翌月十日まで」とあるのは、「翌月末日まで」とする。
(所得税法212条2項)
国外払いでも義務は消えず、期限が翌月末日になるだけです。
年2回にまとめる納期の特例は、給与等と退職手当等が対象です(所得税法216条1項)。使用料や役務の対価は入りません(納期の特例の記事)。

条約で下げるには、支払日の前日までの届出書が要ります
租税条約があれば、税率が下がったり免除されたりします(実施特例法3条の2第1項)。
届出書は源泉徴収義務者ごとに作り、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長へ出します(実施特例法施行省令2条・4条)。
非居住者等が支払を受ける日の前日までに税務署長へ届出書およびその添付書類(以下「届出書等」といいます。)を提出していない場合には、支払者は、支払の際、日本と締結している各租税条約に規定している限度税率を適用するのではなく、国内法に規定する税率によって源泉徴収を行います。
(国税庁 タックスアンサー No.2888)
届出書が間に合わなければ、条約の税率では計算できません。
注意
特典条項のある条約では、届出書だけでは足りません。特典条項に関する付表(様式17)と居住者証明書が必要です(同No.2888)。相手国の当局が出す書類なので、支払の直前では間に合いません。
手取り額で約束すると、税額は逆算します
「手取りでいくら」という契約は、海外の相手では珍しくありません。
その場合は、税込みの金額に逆算します。
給与等その他の源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合には、当該税引手取額を税込みの金額に逆算し、当該逆算した金額を当該源泉徴収の対象となるものの支払額として、源泉徴収税額を計算することに留意する。
(所得税基本通達181〜223共−4)
計算例
例1:海外の権利者に、著作権の使用料100万円を支払うとき
源泉徴収税額 1,000,000円 × 20.42% = 204,200円 相手に渡る金額 1,000,000円 - 204,200円 = 795,800円例2:同じ使用料を「手取り100万円」で約束したとき
税込みの金額 1,000,000円 ÷(1 - 0.2042)= 1,256,597.13…円 → 円未満切捨て 1,256,597円 源泉徴収税額 1,256,597円 × 20.42% = 256,597.10…円 → 256,597円 検算 1,256,597円 - 256,597円 = 1,000,000円 会社の負担増 1,256,597円 - 1,000,000円 = 256,597円徴収税額の1円未満は切り捨てます(国税通則法119条2項)。
手取りで約束すると、税金は会社の追加負担になります。

恒久的施設があるかどうかで、扱いが変わります
恒久的施設とは、国内の支店や工場などです。
建設工事の場所や、契約を結ぶ権限のある代理人も含みます(所得税法2条1項8号の4)。
条約に別の定めがあれば、条約の定めが優先します(同号ただし書)。
恒久的施設に帰せられる所得で、相手が税務署長の証明書を提示したときは源泉徴収が不要になります(所得税法214条1項、外国法人は同法180条1項)。
証明書の提示がなければ、支店があっても源泉徴収します。
つまずくのは、だいたいこの5つです
実際に多いのは、次の形です。
- 海外のソフトやクラウドの利用料をそのまま払う ― 使用料に当たれば11号です
- 海外に住む役員へ役員報酬を払う ― 国外の勤務でも対象です
- 海外の個人に業務委託する ― 給与に当たるかの判定が先です
- 届出書を出さずに条約の税率で計算する ― 国内法の税率で徴収されます
- 忘れたあとで相手に請求する ― 送金済みでは回収が難しいです
ふたつめは、条文が括弧書きで明記しています。
内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。
(所得税法161条1項12号イ)
みっつめの判定は、外注費と給与の区分の記事をご覧ください。
計算例
例3:204,200円の源泉徴収を忘れ、納税の告知を受けて納めたとき
計算の基礎となる税額 204,200円 → 1万円未満を切捨て(国税通則法118条3項) 200,000円 不納付加算税 200,000円 × 10% = 20,000円(同法67条1項) 告知を予知せず自分から納めた場合 200,000円 × 5% = 10,000円(同条2項) このほかに延滞税もかかります(同法60条1項5号)払ったあとで気づくと、税金と加算税を会社がかぶることになります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身でそろえられるのは、次の4点です。
- 海外への送金明細を1年分並べ、相手の名前と金額を書き出す
- 相手ごとに、個人か法人か、住んでいる国はどこかを確かめる
- 契約書と請求書を取り出し、何の対価かがわかる条項を抜き出す
- 相手の国と日本の間に租税条約があるかを調べる
ここから先は個別判断です。
同じ「コンサルティング料」でも、役務の提供地や条約の条文で結論が変わります。
海外の関係会社に人を出すときの負担金は、出向の給与負担金の記事もご覧ください。
税理士が入ると変わるのは、所得区分の判定と条約の手続です
ひとつめは、契約書を読んでの所得区分の判定です。161条1項のどの号かを決めます。
ふたつめは、条約の適用判定と届出書の作成です。様式を選び、支払日の前日までに出します。
みっつめは、納付書の作成と期限の管理です。国内払いと国外払いを分けます。
よっつめは、手取り約定のグロスアップ計算です。契約前に会社の負担額を出します。
いつつめは、調査での説明資料づくりです。契約書と送金記録、届出書の控えをそろえます。
源泉徴収は、払う前に判定しておかないと直せません。
小松公認会計士・税理士事務所では、契約書の確認から届出書の提出まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 海外のソフトウェアやクラウドの利用料も、源泉徴収が必要ですか?
対価の中身で決まります。著作権等の使用料に当たり、国内で業務を行う者が支払うものであれば所得税法161条1項11号の国内源泉所得となり、20.42パーセントで源泉徴収します。消費税のリバースチャージ方式は別の制度で、そちらを処理しても源泉所得税の判定は残ります。契約書の条項で判定します。
Q2. 海外に住む役員に役員報酬を払っています。国外の勤務なら対象外ですか?
対象外にはなりません。所得税法161条1項12号イは、国内での人的役務の提供に基因するものを国内源泉所得としたうえで、括弧書きで「内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。」としています。したがって20.42パーセントで源泉徴収します。
Q3. 租税条約の届出書を出し忘れました。もう条約の税率は使えませんか?
支払時は国内法の税率で源泉徴収することになります(国税庁 タックスアンサー No.2888)。ただし後日、届出書とともに還付請求書(様式11)を支払者経由で税務署長に提出して、差額の還付を請求する道があります。特典条項のある条約では付表と居住者証明書も必要です。
Q4. 源泉徴収を忘れて納めました。相手に払ってもらえますか?
所得税法222条1項は、徴収しなかった税額に相当する金額を、その後に支払う金額から控除し、または相手に支払を請求できるとしています。ただし送金が済んで取引も終わっていると、実際の回収は難しくなります。不納付加算税と延滞税も会社の負担になります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条・161条・164条・180条・212条・213条・214条・216条・221条・222条、復興財確法28条、国税通則法60条・67条・118条・119条、租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律3条の2、同法の施行に関する省令2条・4条、消費税法2条・4条・5条、所得税基本通達181〜223共−4・181〜223共−5、国税庁タックスアンサーNo.2884・No.2885・No.2888・No.6118、国税庁リーフレット「非居住者等への支払がある場合、ご確認ください!」(令和7年9月)の内容を扱っています。個々の租税条約の限度税率と条文、居住者・非居住者の判定(所得税法施行令14条・15条)、恒久的施設の範囲を定める政令の詳細、組合契約に基づく利益の配分(所得税法161条1項4号)、匿名組合契約に基づく利益の分配、公的年金等や生命保険契約に基づく年金、事業の広告宣伝のための賞金、芸能人等の役務提供報酬に係る特例(租税特別措置法41条の22)、上場株式等の配当等の税率の特例(同法9条の3)、非居住者等が行う確定申告と外国税額控除、法人税における外国法人課税、個人住民税の取扱い、令和9年分以後の防衛特別所得税の税率、支払調書・法定調書の提出、延滞税の実際の割合の計算は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は支払の内容・相手の居住地国・条約の適用によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(161条・212条・213条・214条・216条・222条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(28条)https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000117
- e-Gov法令検索「国税通則法」(60条・67条・118条・119条)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- e-Gov法令検索「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令」(2条・4条)https://laws.e-gov.go.jp/law/344M50000048001
- 国税庁 タックスアンサー No.2884「非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2884.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第181条から第223条まで(源泉徴収)共通関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/28/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6118.htm
海外への送金がある会社は、払う前に源泉徴収の判定をしませんか
非居住者や外国法人への支払は、国内源泉所得に当たれば支払う側が税金を差し引いて納めます。税率は20.42パーセント・15.315パーセント・10.21パーセントの3つで、納付期限は翌月10日、国外払いは翌月末日です。租税条約で下げるには、支払日の前日までに届出書を出しておく必要があります。送金してから気づいても、相手からの回収はほぼできません。代表税理士が、契約書からの所得区分の判定、条約の適用判定と届出書の作成、納付書の作成と期限の管理、手取り約定のグロスアップ計算まで、通して対応します。最初の送金の前にご相談ください。
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