この記事のポイント
- 年払いの保険料は、資産計上の判定→短期前払費用の判定の順で、その期の損金が決まります
- 最高解約返戻率50%超・期間3年以上の定期保険・第三分野保険は、原則一定期間は一部を資産に計上します
- 損金の部分は、1年以内の分を毎期続けて処理すれば、払った期の損金にできます
- 加入した期だけの年払いは継続を欠くおそれがあり、解約返戻金は益金になります
まず結論:年払いの保険料は「資産計上」→「短期前払費用」の順に判定します
年払いの保険料がその期の損金(税金の計算で差し引ける費用)になるかは、2段階で決まります。
第1段階は、保険料のうち資産に計上する部分があるかです。
第2段階は、払った1年分を、その期の分として扱えるかです。
決算の前に「年払いで入れば今期の経費になります」と勧められても、この順に確かめます。
年払いにしただけで、払った1年分がその期の損金になるとは限りません。
この記事は、令和元年7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険の扱いです(国税庁FAQ Q1)。

第1段階:保険料のうち、資産に計上する部分があるかを決めます
資産に計上する部分があるかは、保険の種類と返戻率などで決まります。
定期保険は、一定期間内に亡くなった場合にだけ保険金が出る生命保険です。
第三分野保険は、病気やけがなどで保険金や給付金が出る保険です(タックスアンサーNo.5364)。
区分の主な基準は、最高解約返戻率(解約したときに戻る割合の最も高い値)です。
契約時に示された解約返戻金相当額を、それまでの保険料の合計で割ります(9-3-5の2の注1)。
| 区分 | 当てはまる保険 | 保険料の扱い |
|---|---|---|
| 9-3-5の2 | 保険期間3年以上で、最高解約返戻率が50%超 | 資産計上期間は、その期の分の一定割合を資産に計上し、残りを損金 |
| 9-3-5 | 返戻率50%以下の保険など。返戻率70%以下で、1人あたりの年換算保険料相当額の合計が30万円以下の保険も含む | 原則として、期間の経過に応じて損金 |
| 9-3-5の(注)2 | 保険期間を通じて解約返戻金のない短期払の保険で、1人あたりその期に払った保険料の合計が30万円以下 | 払った期の損金にできる |
(法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2)
年換算保険料相当額とは、保険料の総額を保険期間の年数で割った額です(9-3-5の2の注1ハ)。
資産計上の割合の一覧は、法人保険の通達改正の記事にまとめています。
解約返戻金のない短期払の特例は、令和元年10月8日以後の契約が対象です(FAQ Q1)。
注意
受取人が被保険者や遺族で、役員や部課長など特定の人(親族を含む)だけを被保険者にしている場合です。保険料はその役員などへの給与になります(9-3-5の(2)・9-3-5の2の注6)。
保険期間3年以上で最高解約返戻率が50%を超える保険は、原則、一定期間は一部が資産です。
第2段階:損金の部分は、短期前払費用の条件で払った期に寄せられます
損金の部分は、短期前払費用の条件を満たせば、払った期の損金にできます。
決算の直前に1年分を払っても、当期に対応するのは期末までの分だけです。
翌期の分は、原則として前払費用として資産に計上します(タックスアンサーNo.5380)。
前払費用とは、続けて受けるサービスの代金のうち、期末にまだ受けていない分です。
例外が、短期前払費用の取扱い(法人税基本通達2-2-14)です。
支払った日から1年以内に受けるサービスの前払いが対象です。
毎期続けて、払った期の損金にしていることが条件です。
要件の全体は、短期前払費用の要件の記事にまとめています。
年払いについて、国税庁のFAQは次のように答えています。
支払日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合(例えば、保険料を年払としている場合)において、その支払額に相当する金額を継続して支払日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その金額を当期分支払保険料の額とすることは認められます。
(国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」Q2)
当期分支払保険料とは、払った保険料のうち、その期に対応する部分の額です(9-3-5の2の注1ロ)。
年払いの1年分を、その期の分として扱ってよいという意味です。
この場合、資産に計上する割合は、その1年分の全額に掛けて計算します。
計算例
例:3月決算の会社が、3月1日に加入し、1年分の保険料1,200,000円を払った場合
前提 全期払・保険期間10年・受取人は会社。3月の1か月分が当期の分 A 9-3-5の保険・原則 1,200,000円 × 1/12 = 100,000円が損金 A 9-3-5の保険・短期前払費用 1,200,000円が損金 B 返戻率50%超70%以下 資産 1,200,000円 × 40% = 480,000円 B の損金 1,200,000円 - 480,000円 = 720,000円 C 返戻率70%超85%以下 資産 1,200,000円 × 60% = 720,000円 C の損金 1,200,000円 - 720,000円 = 480,000円BとCは、短期前払費用を続けて適用し、資産計上期間の1年目にある前提です。
年換算保険料相当額は1,200,000円で、30万円を超えます。金額は一定の前提を置いた目安です。
Aでは翌期から毎期1,200,000円で同じですが、保険期間の最後の期に逆の差が出ます。
ポイント
短期前払費用で寄せられるのは、損金になる部分の時期です。資産に計上する部分を損金に変える取扱いではありません。
前納や短期払で、先の期間の保険料までまとめて払う場合は扱いが変わります。
一定期間分の保険料の額の前払をした場合には、その全額を資産に計上し、資産に計上した金額のうち当該事業年度に対応する部分の金額について、本文の取扱いによることに留意する。
(法人税基本通達9-3-5の2の注4)
FAQ Q2は、前納金を払った場合や短期払の場合を、この例に挙げています。

失敗パターン:資産計上の部分の損金算入と、一度きりの年払い
決算前の加入では、次の4つの場面で損金の額がずれます。
- 資産に計上する部分まで損金にする ― 例のBで全額を損金にすると、480,000円が過大です。
- 加入した期だけ年払いで処理する ― 2-2-14は、毎期続けて同じ処理をすることが条件です。
- 決算日までに保険料を払っていない ― 2-2-14は、支払った日の属する期の取扱いです。
- 短期払・前納の保険料に当てはめる ― 先の期間の分は、9-3-5の(注)2の特例を除き、いったん資産に計上します。
国税庁の質疑応答事例は、継続的な支払を前提条件としています。
利益が出た期だけまとめて1年分を払う、利益操作のための支出は排除すべきとしています。
加入した期だけ年払いで処理すると、継続の条件を欠くとされるおそれがあります。
補足
解約すると、受け取った解約返戻金はその期の収益(益金)になります(法人税法22条2項)。決算前に損金を増やしても、解約する期に益金が立ちます。資産に計上してきた額との関係は、法人保険の出口の記事で解説しています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
加入の前に、ご自身で確かめられるのは次の4点です。
- 設計書で、保険期間・払込期間・各年の解約返戻金を確かめる
- 被保険者が誰か、保険金や給付金の受取人が会社か本人かを確かめる
- 同じ人を被保険者にした、ほかの保険の契約を書き出す
- 保険料を払う日が決算日の前か、翌期も年払いを続けられるかを確かめる
返戻率は、パンフレットの標準例でなく、個々の契約の設計書等の金額で計算します(FAQ Q4)。
ここから先は、契約の中身によって判断が分かれます。
区分の判定、ほかの契約との30万円の合算、資産計上期間の数え方は個別判断です。
契約内容を変えると、区分を判定し直すことがあります(9-3-5の2の注5・FAQ Q11)。

税理士が入ると変わるのは、区分の判定と毎期の処理の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、加入の前後に次の作業を行います。
- 設計書から最高解約返戻率・保険期間・払込期間を読み取り、区分を判定する
- 被保険者ごとに、ほかの契約を含めた30万円の判定表を作る
- 加入する期と翌期以後について、損金と資産計上額を試算する
- 年払いを続ける前提で、毎期の処理の方法を決めて記録に残す
- 給与になる契約かを確かめ、役員報酬とあわせて整理する
- 解約する期の益金を見込み、出口の時期とあわせて検討する
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よくある質問(FAQ)
Q1. 決算月に年払いで加入すれば、1年分の保険料はすべて今期の損金ですか?
すべてとは限りません。最高解約返戻率50%超の定期保険・第三分野保険(保険期間3年以上)は、原則一定期間は一部が資産です。根拠は法人税基本通達9-3-5の2です。損金の部分も、1年以内の分を毎期続けて処理することが条件です(2-2-14・国税庁FAQ Q2)。
Q2. 加入後に、月払いから年払いへ変えると区分は変わりますか?
払込方法の変更(月払を年払に変更する場合等)は、原則として「契約内容の変更」に当たりません。区分を判定し直す場面ではないということです(国税庁FAQ Q11)。ただし、年払いの分を払った期の損金にするには、毎期続けることが条件です(2-2-14)。
Q3. 解約返戻金のない短期払の医療保険に、年払いで入った場合はどうなりますか?
保険期間を通じて解約返戻金のない短期払の保険には、特例があります(9-3-5の(注)2)。1人あたりその期に払った保険料の合計が30万円以下なら、払った期の損金にできます。令和元年10月8日以後の契約が対象で、給与になるものは除きます。医療保険・がん保険の記事で詳しく解説しています。
Q4. 最高解約返戻率は、どの資料で確かめますか?
契約時に保険会社から示された、各期間の解約返戻金相当額で計算します。パンフレットの標準例ではなく、保険設計書等に記載される個々の契約の金額です(国税庁FAQ Q4)。生存給付金などは解約返戻金相当額に含め、契約者配当は原則として含めません(国税庁FAQ Q7)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項、法人税基本通達2-2-14・9-3-5・9-3-5の2、国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」(Q1・Q2・Q4・Q7・Q11)、タックスアンサーNo.5364・No.5380、質疑応答事例「短期前払費用の取扱いについて」の内容を扱っています。令和元年7月8日前(解約返戻金のない短期払の保険は令和元年10月8日前)に契約した保険の取扱い、養老保険・定期付養老保険、最高解約返戻率85%超の区分の資産計上期間と割合の細目、取崩期間の計算、契約内容の変更があった場合の再判定と精算、転換・払済保険への変更、特約の保険料、「ごく少額の払戻金」の範囲、前納制度の細目、給与となる保険料の役員給与・源泉徴収・生命保険料控除の扱い、解約返戻金と資産計上額の差額の計算、損害保険料、消費税、法人税額・地方税額への影響、加算税・延滞税は扱っていません。保険商品の比較や、特定の保険への加入を勧める記事ではありません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の損金の額は契約の内容と会社の処理によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」(Q1・Q2・Q4・Q7・Q11)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/teikihoken_FAQ/index.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-5・9-3-5の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第2節第2款「販売費及び一般管理費等」(2-2-14)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm
- 国税庁 質疑応答事例「短期前払費用の取扱いについて」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/02/03.htm
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
決算前の保険の年払い、加入の前に損金の額を確かめませんか
年払いの保険料がその期の損金になるかは、資産計上と短期前払費用の2段階で決まります。資産計上の対象は、保険期間3年以上で最高解約返戻率50%超の定期保険・第三分野保険です。原則、一定期間は保険料の一部を資産に計上します。損金の部分も、支払日から1年以内の分を毎期続けて処理することが条件です。代表税理士が、設計書の読み取りと区分の判定を行います。加入する期と翌期以後の損金の試算、毎期の処理の決め方まで通して対応します。保険の設計は会社ごとに異なります。加入を申し込む前の段階でご相談ください。
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