法人税・節税

法人の2割特例はいつまで?
終わったあとの本則・簡易の選び方と届出期限

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 法人が2割特例を使えるのは令和8年9月30日を含む課税期間までです
  • 次の期は本則課税か簡易課税です。3割特例は個人事業者だけの制度です
  • 最後の期に2割特例を使えば、次の期から簡易課税を使う届出をその期の申告期限までに出せます
  • 簡易課税は原則2年間続くため、2期分の見込みで本則と比べます

まず結論:法人の2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間で終わります

2割特例は、インボイス登録で課税事業者になった法人などが、売上の消費税額の2割を納める計算方法です。

使えるのは、令和8年9月30日を含む課税期間(法人は原則として事業年度)までです。

次の期からは、仕入れの税額を実額で引く本則課税か、業種ごとの割合で計算する簡易課税です。

最後の期に2割特例を使えば、次の期から簡易課税を使う旨の届出を、次の期の申告期限まで出せます。

法人の2割特例は令和8年9月30日を含む期まで
法人の2割特例は令和8年9月30日を含む期まで

「最後の期」は、決算月によって変わります

令和8年9月30日を含む期が、2割特例を使える最後の期です(平成28年改正法附則51条の2第1項)。

事業年度が12か月の法人なら、次のとおりです。

決算月2割特例を使える最後の期次の期/簡易課税の届出期限
3月令和8年4月1日〜令和9年3月31日令和9年4月1日〜令和10年3月31日/令和10年5月31日
9月令和7年10月1日〜令和8年9月30日令和8年10月1日〜令和9年9月30日/令和9年11月30日
12月令和8年1月1日〜12月31日令和9年1月1日〜12月31日/令和10年2月29日

表は、最後の期に2割特例を使い、申告期限の延長を受けていない場合です。

2割特例は、インボイス登録(課税事業者の選択を含む)がなければ免税事業者だった期が対象です。

基準期間(原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える期などは使えません。

3割特例は個人事業者の制度で、法人は使えません(平成28年改正法附則51条の3第1項)。

個人の場合は個人事業主の2割特例と3割特例の記事をご覧ください。

次の期の簡易課税は、その期の申告期限まで届け出られます

簡易課税の届出書は、使いたい期が始まる前日までが原則です(タックスアンサー No.6505)。

2割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限まで(2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する場合、その翌課税期間中)に、消費税簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます(28改正法附則51の2⑥)。

(国税庁の2割特例の概要ページ)

期限は令和8年度改正で「末日」から「申告期限」に延びました(令和8年法律第12号)。

申告期限は、原則として期末の翌日から2か月以内です(消費税法45条1項)。

申告期限の延長の特例を受ける法人は、延長後の期限までです(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

届出書には、その期から簡易課税を適用する旨を書きます(附則51条の2第6項)。

この特例は、2割特例を実際に使った期の次の期だけが対象です。

ポイント

次の期の決算後に、その期の実績で本則と簡易を比べられます。ただし、簡易課税は翌期も原則として続きます。

帳簿を締めてから本則と簡易を比べられます
帳簿を締めてから本則と簡易を比べられます

本則と簡易は、仕入れの割合とインボイスで比べます

売上に比べて仕入れが多い期ほど、本則課税の納税額は少なくなります。

簡易課税は、売上の税額にみなし仕入率を掛けた額を、仕入れの税額とみなします。

みなし仕入率は業種ごとに決まり、サービス業は50%、卸売業は90%です(消費税法施行令57条1項)。

区分は簡易課税の事業区分の記事をご覧ください。

計算例

例:サービス業だけを営む3月決算の法人(第5種事業・みなし仕入率50%)

令和10年3月期 売上(税抜)9,000,000円・仕入れ(税抜)2,000,000円 簡易課税 9,000,000円 × 10% × (1 - 50%) = 450,000円 本則課税 (9,000,000円 - 2,000,000円) × 10% = 700,000円 (参考)同じ数字で2割特例なら 9,000,000円 × 10% × 20% = 180,000円

令和11年3月期(売上は同じ)に9,000,000円(税抜)の設備を1件買った場合

仕入れ(税抜)11,000,000円 → 簡易課税 450,000円の納付/本則課税 200,000円の還付 2期の合計 簡易課税 900,000円の納付/本則課税 500,000円の納付

国税と地方消費税の合計です。

税率10%・非課税売上なし・仕入れは全額インボイスありとした、一定の前提を置いた目安です。

1期目は簡易が250,000円少なく、2期の合計では本則が400,000円少なくなります。

この例の前提では、仕入れ(税抜)が売上(税抜)の50%を超える期は、本則のほうが少なくなります。

本則では、免税事業者などからの仕入れは、税額の一部しか引けません。

令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%です(平成28年改正法附則53条1項1号)。

非課税の売上があると、本則でも仕入れの税額を全部は引けないことがあります。

個別対応方式と一括比例配分方式の記事で扱っています。

補足

令和9年4月1日から2年間、飲食料品の税率を国・地方合計で1%にする改正案があります。法案の成立が前提です(国税庁「消費税率引下げ特設サイト」)。飲食料品を売る法人には、簡易課税の計算や届出の時期の特例も予定されています。

外注先が免税事業者だと本則で引ける税額が減ります
外注先が免税事業者だと本則で引ける税額が減ります

簡易課税を選ぶと、原則2年間は本則に戻れません

簡易課税は、2期分の見込みで決めます。

やめる届出書は、効力発生から2年を経過する日を含む期の初日以後に出せます(消費税法37条6項)。

事業を廃止した場合は除きます。

効力は出した期の次の期からなので(同条7項)、12か月決算なら原則2期続きます。

簡易課税や2割特例では、通常、還付は生じません(国税庁インボイスQ&A問117-2)。

1期目の数字だけで選ぶと、2期目の設備投資で還付を受けられないことがあります。

注意

基準期間の課税売上高が5,000万円を超える期は、簡易課税を使えません(消費税法37条1項)。本則の期に高額特定資産を仕入れると、届出書を出せない期間があります(同条3項)。高額特定資産は、1件1,000万円以上(税抜)の棚卸資産や建物・設備などです。

損につながるのは、次の5つの場面です

期限の数え違いと、届出書の確認漏れが損につながります。

  • 最後の期を本則課税で申告した ― 次の期は特例の対象外で、期が始まる前日までの届出が要ります。
  • 申告期限を過ぎて届出書を出した ― その期は簡易課税を使えず、本則課税で申告します。
  • 以前の簡易課税の届出書が残っていた ― 本則にするには、期が始まる前日までのやめる届出が要ります。最後の期に効力が生じた届出書があると、原則として次の期は本則にできません。
  • 1期目の数字だけで選んだ ― 2期目に設備投資をしても、原則として本則に戻れません。
  • 免税事業者などからの仕入れを全額控除した ― 令和10年9月30日までは70%です。

いずれも、期限の前に事実と数字を確かめておくことが対策になります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で整えられるのは、次の5点です。

  1. 決算月から、2割特例の最後の期と次の期を書き出す
  2. 最後の期の申告で、2割特例を使う予定かを確かめる
  3. 簡易課税の届出書を以前に出していないか、控えで確かめる
  4. 2期分の売上・仕入れ・設備投資の見込みを並べる
  5. 仕入れ先や外注先がインボイス発行事業者かを確かめる

事業区分の判定と2期分の試算は、事実によって結論が変わる個別判断です。

申告期限の延長や高額特定資産の有無でも、期限と選べる方法が変わります。

2期分の試算を並べて期限までに決めます
2期分の試算を並べて期限までに決めます

税理士が入ると変わるのは、比べる範囲と期限の管理です

小松公認会計士・税理士事務所では、最後の期から次の作業を行います。

ひとつめは、決算月と延長の有無から、届出の期限を日付で示す期限表の作成です。

ふたつめは、最後の期の申告書への2割特例の付記です(附則51条の2第3項)。

みっつめは、本則と簡易の納税額を、次の期とその次の期の合計で比べる試算です。

よっつめは、事業区分の割り付けと、仕入れ先・外注先の登録状況の確認です。

いつつめは、届出書の作成と提出です。適用する期の記載を確かめ、控えを残します。

むっつめは、申告書の作成と、本則なら70%控除の仕入れの帳簿での区分です。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 3月決算の法人は、いつまで2割特例を使えますか?

事業年度が12か月なら、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの期が最後です。2割特例は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む各課税期間で使えます。ただし、登録や課税事業者の選択がなければ免税事業者だった期が対象です。

Q2. 法人も3割特例を使えますか?

使えません。3割特例は、個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年・令和10年に含まれる課税期間が対象です(平成28年改正法附則51条の3第1項)。法人は2割特例が終わったあと、本則課税か簡易課税で申告します。

Q3. 2割特例のあと、簡易課税の届出書はいつまでに出せばよいですか?

原則は、使いたい期が始まる前日までです。2割特例を使った期の次の期は、その期から適用する旨を書いた届出書をその期の申告期限までに出せば足ります(次の期が令和8年10月1日以後に終わる場合)。延長の特例を受ける法人は延長後の期限です。

Q4. 本則課税と簡易課税は、どう比べればよいですか?

本則は仕入れの税額を実額で、簡易は売上の税額にみなし仕入率を掛けた額を引きます。この記事の例の前提では、仕入れが売上の50%を超える期は本則が少なくなります。簡易課税は原則2年間続き、通常は還付も生じないため、2期分で比べます。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2第1項・3項・6項、51条の3第1項、53条1項、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則90条1項、消費税法2条1項14号・9条1項・19条1項2号・37条1項・3項・5項〜7項・45条1項・45条の2第1項、消費税法施行令57条1項、タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」・No.6501「納税義務の免除」、国税庁インボイスQ&A問114・問115・問117・問117-2の内容を扱っています。表の期限は、事業年度が12か月で、申告期限の延長を受けていない場合の例です。2割特例の適用除外の細目(特定期間、新設法人、相続・合併・分割、調整対象固定資産、金地金等、国外事業者)、課税期間の短縮、インボイス発行事業者の登録の取りやめ、簡易課税の事業区分の判定と2種類以上の事業の計算、本則課税の課税売上割合と個別対応方式、7割控除の帳簿の記載要件と1億円の上限、申告期限の延長の特例の要件と具体的な期限、高額特定資産による届出の制限期間の計算、災害等による届出の特例、中間申告、申告書の様式、飲食料品の税率引下げ(令和8年9月15日閣議決定の大綱による改正案で、法案の成立が前提)の細目、法人税・地方税への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の納税額は売上・仕入れの内容や事業区分によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

2割特例のあとの消費税、本則か簡易かを期限内に決めませんか

法人の2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。最後の期に2割特例を使えば、次の期から簡易課税を使う届出書を、その期の申告期限まで出せます。ただし簡易課税は原則2年間続き、通常は還付も生じないため、2期分の見込みで本則と比べることが欠かせません。代表税理士が、決算月からの期限表、2期分の試算、事業区分と仕入れ先の確認、届出書の作成と提出、申告書への反映まで通して対応します。最後の期の申告を迎える前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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