法人税・節税

法人の暗号資産の期末時価評価
対象外になるものと評価損益の計算方法

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 活発な市場がある暗号資産は原則として期末に時価で評価し、自己の計算で持つ分の差額を所得に入れます
  • 市場のないもの・自社発行で制限が続くものは原価法、一定の譲渡制限付きは選択制(選ばなければ原価法)
  • 売却や交換の損益は原則として約定日の期に入れ、原価は届出がなければ移動平均法で出します
  • 時価は期末日の最終の売買の価格などで計算し、評価損益は翌期に戻します(洗替え)

まず結論:市場がある暗号資産は、原則として期末に時価で評価します

会社が持つ暗号資産(仮想通貨)は、法人税では「短期売買商品等」に含まれます(法人税法61条1項)。

期末に持つもののうち、活発な市場があるものは、原則として時価で評価します(同条2項1号)。

自己の計算で持つ分は、帳簿価額との差額(評価損益)を益金・損金に入れます(同条3項)。

国税庁FAQは、価格変動のリスクを会社が負うかで自己の計算かを見ています(3-1-6〜3-1-8)。

益金・損金は、税金の計算上の収入と費用です。

対象になると、売っていなくても値上がり分が所得に加わります。

ただし、令和5年度・令和6年度の改正で、原価法(帳簿価額のまま評価)になる区分ができました。

市場がある暗号資産は、原則として期末に時価評価します
市場がある暗号資産は、原則として期末に時価評価します

時価評価の対象は「活発な市場がある暗号資産」です

次の3つをすべて満たす暗号資産を、「市場暗号資産」といいます(法人税法施行令118条の7第1項)。

  • 価格や交換比率が継続的に公表され、相場の決定に重要な影響を与えている
  • 公表に足りる十分な数量と頻度で、継続的に取引されている
  • 公表が自社以外の者によるか、取引が主に自社の計算によるものでない

価格が取引所・販売所ごとに著しく違えば、通常は活発でないとされます(FAQ 3-1-4)。

時価評価するかは、取得や保有の目的ではなく、市場の有無と区分で決まります(61条1項・2項)。

自社発行や譲渡制限付きのものは、原価法になる場合があります

市場があっても、区分によっては時価評価しません(61条2項)。

区分期末の評価条文
市場暗号資産(下の区分以外)時価法61条2項1号
市場暗号資産である特定譲渡制限付暗号資産(自己発行を除く)時価法か原価法を選ぶ(選ばなければ原価法)同項2号
特定自己発行暗号資産、自己発行の特定譲渡制限付暗号資産、市場暗号資産以外原価法同項3号

自己発行とは、自社が発行し、発行の時から持ち続けている暗号資産です(61条2項1号ロ)。

特定自己発行暗号資産は、そのうち発行の時から譲渡制限が続く一定のものです(同号ロ)。

制限は、一定の技術的措置か信託によります(施行令118条の7第3項)。

特定譲渡制限付暗号資産は、移転制限を付けた一定の暗号資産です(61条2項1号イ)。

協会を通じた公表のための手続も要件です(施行令118条の7第2項)。

自己発行でない特定譲渡制限付暗号資産は、時価法を選んで届け出なければ原価法です。

届出の期限は、次の節の届出と同じです(施行令118条の9第1項)。

補足

令和8年度税制改正の大綱には、法人の期末評価を変える項目はありません。令和8年7月23日公布の改正法で、61条1項は金融商品取引法2条49項を引く形になります。施行は、公布から1年以内の政令で定める日です。

自社発行や譲渡制限付きは、区分で評価が変わります
自社発行や譲渡制限付きは、区分で評価が変わります

売却損益は原則として約定日の期に入れ、原価は届出がなければ移動平均法です

譲渡損益は、原則として「その譲渡に係る契約をした日」の期に入れます(法人税法61条1項)。

引渡しの日で継続して計上する方法も、条件付きで認められます(法人税基本通達2-1-21の12)。

売った分の原価は、移動平均法か総平均法で出した単価で計算します(施行令118条の6第1項)。

移動平均法は買うたびに、総平均法は期の分をまとめて平均単価を出します。

方法を届け出なければ、移動平均法で計算します(同条8項)。

方法は、種類ごと、かつ区分ごとに選んで届け出ます(同条4項・5項)。

期限は、その種類を初めて取得した期の確定申告書の提出期限です(同条5項)。

仮決算の中間申告書を出すなら、その提出期限です。

個人は、選ばなければ総平均法です(FAQ 1-1)。個人の申告は暗号資産の確定申告の記事で解説しています。

方法の変更は、棚卸資産の評価方法の変更と同じ承認の手続です(同条7項)。

数字で見る:平均法の違いと期末の時価評価

平均法の違いで変わるのは、譲渡益と評価損の内訳です。

計算例

例:3月決算の会社が、市場暗号資産A(他社発行・譲渡制限なし)を自己の計算で売買(期首の保有なし)

5月に2単位を20,000,000円、12月に1単位を13,000,000円で購入(手数料込み) 9月に1単位を12,500,000円で売却。期末日の最終の売買の価格は1単位9,500,000円

移動平均法

譲渡原価 20,000,000円÷2単位=10,000,000円 → 譲渡益 2,500,000円 期末の帳簿価額 10,000,000円+13,000,000円=23,000,000円 時価 9,500,000円×2単位=19,000,000円 → 評価損 4,000,000円

総平均法(届出をした場合)

単価(20,000,000円+13,000,000円)÷3単位=11,000,000円 譲渡益 1,500,000円/期末の帳簿価額 22,000,000円 → 評価損 3,000,000円 合計(譲渡益-評価損)はどちらも △1,500,000円

金額は一定の前提を置いた目安です。売却の手数料は考えていません。

期末の時価は「期末日の最終の売買の価格」で計算し、翌期に戻します

時価評価金額は、種類ごとに、次の価格に数量を掛けた金額です(施行令118条の8第1項3号)。

当該事業年度終了の日における当該暗号資産の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格)

(法人税法施行令118条の8第1項3号)

この価格は、相場に重要な影響を与える価格を継続的に公表する者(公表者)が公表したものです(同号)。

交換比率に相手の暗号資産の価格を掛けた金額による方法もあります(同項4号)。

決算作業をする日ではなく、期末日の価格が基準です。

ポイント

期末日の価格は、公表者名・日付が分かる画面やデータで保存すると、後で根拠を示せます。

評価損益は、翌期に反対の益金・損金を入れて戻す「洗替え」をします(施行令118条の10第1項)。

計算例の移動平均法なら、翌期に評価損4,000,000円を益金に入れます。

翌期首の帳簿価額は23,000,000円です(同条4項)。

期末日の価格は、公表者名と日付つきで記録します
期末日の価格は、公表者名と日付つきで記録します

失敗例:期末の処理で誤りになる5つの場面

  • 売っていない分を帳簿価額のまま残す。時価法の区分を自己の計算で持つなら、評価損益を入れます。
  • 決算書にない評価損益を、申告でも入れない。61条3項は、決算での処理を条件にしていません。
  • ロックアップ中・貸付け中を外す。FAQの例では、いずれも対象です(3-1-6・3-1-7)。
  • 届出なしで総平均法を使う。届出は種類と区分ごとです。新しい種類を買った期の期限に注意します。
  • 交換や支払いを譲渡として扱わない。円に換えていない交換や支払いも、譲渡に当たります(FAQ 3-1-1)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で準備できるのは、次の4点です。

  1. 期末日に持つ暗号資産を、種類・数量・保管場所ごとに書き出す
  2. 期中の購入・売却・交換・支払いの履歴を、約定日つきで取り出す
  3. 期末日の価格を、公表者名と日付つきで保存する
  4. 過去に出した届出書の控えを探す

次の点は、事実によって判断が分かれます。

  • 活発な市場があるか(取引量の少ない種類や、分散型取引所で取引される種類)
  • 自己発行・譲渡制限付きの要件と、時価法・原価法の選択
  • 複数の取引所で価格が違うとき、どの公表者の価格を使うか
  • 借り入れた暗号資産や信用取引の扱い

区分の判定と方法の選択は、取引の実態を見て決める個別判断です。

区分と方法は、資料を見ながら個別に判断します
区分と方法は、資料を見ながら個別に判断します

税理士が入ると変わるのは、区分の判定と根拠資料の整理です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • 種類・区分ごとの一覧と、譲渡原価・評価損益・翌期の戻しの計算
  • 期末日の価格の根拠資料の整理
  • 平均法・時価法を選ぶ届出の要否と期限の確認、届出書の作成
  • 自己発行・譲渡制限付きの要件の確認(契約書・技術的措置の資料)
  • 申告書への反映と、税務調査に備えた計算過程の保存

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 長く持つつもりの暗号資産でも、期末に時価評価が必要ですか?

法人税法61条は、暗号資産を保有の目的で区別していません。市場暗号資産を自己の計算で持つなら、原則として評価損益を所得に入れます。ただし、自社発行で制限が続くものは原価法です。一定の譲渡制限付きは選択制で、選ばなければ原価法です。

Q2. ステーキングでロックアップした暗号資産も時価評価しますか?

国税庁FAQは、自社発行でなく移転制限もない市場暗号資産の例で、対象としています(3-1-6)。価格変動のリスクを会社が負い、自己の計算で持つと考えるためです。借り入れた暗号資産は、一般に評価損益の計上は不要としています(3-1-8)。

Q3. 総平均法で計算したいときは、何をすればよいですか?

種類ごと、かつ区分ごとに、所轄税務署長へ書面で届け出ます(施行令118条の6第4項・5項)。期限は、その種類を初めて取得した期の確定申告書の提出期限です。仮決算の中間申告書を出すなら、その提出期限です。届出がなければ移動平均法です(同条8項)。移動平均法から変えるときは、変える期の開始の日の前日までに承認を申請します(同条7項)。

Q4. 令和8年度の税制改正で、法人の暗号資産の扱いは変わりましたか?

令和8年度税制改正の大綱で暗号資産を扱うのは、個人の課税と消費税です。法人の期末評価を変える項目はありません。令和8年7月23日公布の改正法では、61条1項の定義が金融商品取引法を引く形に改められます。施行は、公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日です。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法61条1項〜3項、法人税法施行令30条・118条の6第1項・4項・5項・7項・8項・118条の7第1項〜3項・118条の8第1項3号・4号・118条の9第1項・118条の10第1項・4項、法人税基本通達2-1-21の12を扱っています。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)の1-1・3-1-1・3-1-3・3-1-4・3-1-6〜3-1-8、国税庁「令和5年度法人税関係法令の改正の概要」「令和6年度法人税関係法令の改正の概要」、令和8年度税制改正の大綱、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)による法人税法61条1項の改正も扱っています。暗号資産信用取引とみなし決済損益(法人税法61条7項〜9項)、暗号資産のデリバティブ取引、区分変更等によるみなし譲渡(同条6項)、適格組織再編、DEXで取引される暗号資産の評価、一時的に必要な暗号資産の譲渡原価、自己発行暗号資産の取得価額、令和5年度・令和6年度改正の適用時期と経過措置は扱っていません。マイニング・ステーキング・レンディングの報酬の計上、電子決済手段、消費税、会計基準上の処理、法人税額の計算、個人の暗号資産の課税(令和8年度改正の分離課税を含む)も扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の損益は取引の内容と期末の価格によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

会社が持つ暗号資産の期末評価と届出を、決算前に確かめませんか

会社が持つ暗号資産のうち、活発な市場があるものは原則として期末に時価で評価します。自己の計算で持つ分は、売っていなくても評価損益が所得に入ります。自社発行で制限が続くものなどは原価法で、一定の譲渡制限付きは選択制です(選ばなければ原価法)。総平均法や時価法を選ぶには、期限までの届出が要ります。代表税理士が、種類と区分ごとの一覧、譲渡原価と評価損益の計算を行います。期末価格の根拠資料、届出の期限の確認、申告書への反映まで通して対応します。決算日を迎える前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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