この記事のポイント
- 区分は会社単位ではなく課税資産の譲渡等ごとに判定します
- 区分していない売上げは一番低いみなし仕入率になります
- 1種類で75パーセント以上ならその率を全体に使えます
- 届出は課税期間の初日の前日まで。やめるにも2年かかります
まず結論:区分は「会社ごと」ではなく「取引ごと」です
簡易課税の税額は、事業区分でほぼ決まります。
90パーセントと40パーセントでは、納める額がまるで違うからです。
国税庁は、判定の単位をこう書いています。
事業者が行う事業が第1種事業から第6種事業までのいずれに該当するかの判定は、原則として、その事業者が行う課税資産の譲渡等ごとに行います。
(国税庁 タックスアンサー No.6509「簡易課税制度の事業区分」)
「うちは小売業だから第二種」という決め方はできません。
同じ会社の中に、第二種と第五種の売上げが並ぶことがあります。

6つの区分と、みなし仕入率
みなし仕入率は、消費税法施行令57条に定められています。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 該当する事業(施行令57条5項・6項) |
|---|---|---|
| 第一種事業 | 90% | 卸売業。商品の性質・形状を変えずに事業者に販売する事業 |
| 第二種事業 | 80% | 小売業(第一種以外)。飲食料品の譲渡を行う農業・林業・漁業 |
| 第三種事業 | 70% | 農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売を含む)、電気・ガス・熱供給・水道業 |
| 第四種事業 | 60% | ほかのどれにも当たらない事業。飲食店業など |
| 第五種事業 | 50% | 運輸通信業、金融業・保険業、サービス業(飲食店業を除く) |
| 第六種事業 | 40% | 不動産業 |
第四種は「残り物」の区分です。
施行令57条5項6号は、これを「前各号に掲げる事業以外の事業をいう。」と定めています。
ポイント
卸売業と小売業の違いは、売る相手です。施行令57条6項は、卸売業を「他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業」としています。業務用の商品でも、事業者への販売だと帳簿等で明らかなら卸売業です。
迷いやすい境目は、加工賃と兼業です
いちばん判断が割れるのは、加工賃をもらう仕事です。
製造業等でも、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供は、第三種から除かれて第四種になります。
ところが、クリーニング業や自動車修理業は違います。
そもそも日本標準産業分類の大分類において、サービス業等に該当するものですから、簡易課税制度における事業区分は第五種事業に該当することになります。
(国税庁 質疑応答事例「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」)
加工賃だから第四種、とは限りません。
兼業も分かれます。同じ店でケーキを作って売り、店内でも飲食させる場合です。
国税庁は、店頭販売の部分(製造小売)は第三種、喫茶店営業として提供する部分(飲食サービス)は第四種としています。
自分で使っていた固定資産の売却も第四種です。建物については事業用の建物を売ったときの消費税で扱っています。

区分していないと、一番低い率になります
区分を怠ると、税額で損をします。
国税庁は、はっきり書いています。
2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合には、この区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します。
(国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」)
区分は、帳簿や請求書の作り方の問題です。
難しい計算ではなく、日々の記録のしかたを決めれば足ります。
補足
国税庁の質疑応答事例「事業の区分の方法」は、区分のしかたとして、帳簿等への記載、納品書・請求書・売上伝票の控え等への記載、レジペーパーの品番等の印字、一種類の事業だけを行う事業場ごとの集計を挙げています。記号での表示でも、事業の種類が判明すれば差し支えないとされています。
2種類以上あるときの計算 ― 原則法と75パーセント特例
原則法は、事業ごとの消費税額にみなし仕入率を掛けて合計する方法です。
特例を、国税庁はこう書いています。
2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができます。
(国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」)
計算例
例:小売業(第二種)3,000万円、サービス業(第五種)1,000万円の課税売上高
売上げに係る消費税額 30,000,000円 × 7.8% = 2,340,000円(第二種) 10,000,000円 × 7.8% = 780,000円(第五種)/合計 3,120,000円 原則法 2,340,000円 × 80% + 780,000円 × 50% = 2,262,000円(みなし仕入率72.5%)/納付 858,000円 75%特例 3,000万円 ÷ 4,000万円 = 75% → 第二種の80%を全体に適用 3,120,000円 × 80% = 2,496,000円/納付 624,000円(234,000円 少ない) 区分していない場合 3,120,000円 × 50% = 1,560,000円/納付 1,560,000円税抜き・標準税率で、対価の返還等や貸倒れはないものとした、一定の前提を置いた目安です。国税7.8パーセントのみで、地方消費税は含めていません。
区分するかどうかで、納付税額が93万6,000円も変わりました。
3種類以上なら、特定の2種類で75パーセント以上のときの特例もあります。

届出は「初日の前日まで」。やめるにも2年かかります
簡易課税は届出を出した人だけが使え、期限は課税期間の初日の前日までです。
基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下であることも要ります。
注意
いったん選ぶと、すぐにはやめられません。消費税法37条6項は、事業を廃止した場合を除き「同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ」不適用の届出書を提出できないとしています。翌期に大きな設備投資を予定しているなら、選ぶ前に検討が必要です。設備投資との関係は課税事業者選択届出書と2年・3年のしばりで扱っています。
届出は、期が始まる前に出すものです。
例外もあります。国税庁は、2割特例・3割特例を受けた事業者が翌課税期間に係る確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間から適用できるとしています。くわしくは2割特例と3割特例の記事をご覧ください。
指摘を受けやすいのは、この5つです
指摘は、だいたい同じ形で起きます。
- 全売上げを1つの区分でまとめていた ― 一番低い率になります
- 製造業の加工賃を第三種にしていた ― 第三種から除かれます
- サービス業の加工賃を第四種にしていた ― この場合は第五種です
- 機械や車両の売却代金を入れ忘れた ― 第四種の課税売上げです
- 事業者向けの販売を第二種で通した ― 帳簿等で明らかなら第一種です
いちばん多いのは、1つめです。
後から帳簿を作り直しても、当時の記録がなければ区分を主張しにくくなります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で進められるのは、次の4点です。
- 直近1年の売上げを、取引の内容ごとに書き出す
- 売る相手が事業者か消費者かを、請求書や納品書で確かめる
- 固定資産の売却や、加工賃・修理代の売上げを拾い出す
- それぞれの金額を集計し、全体に占める割合を出す
ここから先は個別判断になります。
区分の当てはめは、日本標準産業分類の大分類を基礎に判定します。同じ業種名でも、取引の実態で結論が変わります。
原則法と特例のどちらが有利かも、売上構成を組み替えないと分かりません。
税理士が入ると変わるのは、記録の設計です
ひとつめは、売上げの棚卸しです。取引の類型ごとに、該当する区分を割り付けます。
ふたつめは、記録方法の設計です。請求書の様式やレジの品番を、区分が残る形に直します。
みっつめは、有利判定です。原則法と75パーセント特例の両方を計算し、金額で比べます。
よっつめは、届出の管理です。適用開始と不適用の期限を、期首前に逆算して押さえます。
区分は、申告書を作るときではなく、請求書を出すときに決まります。
小松公認会計士・税理士事務所では、記録方法の設計から申告書の作成まで続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 事業区分は会社ごとに1つ決めるのですか?
いいえ、取引ごとです。国税庁は「事業者が行う事業が第1種事業から第6種事業までのいずれに該当するかの判定は、原則として、その事業者が行う課税資産の譲渡等ごとに行います」としています。同じ事業者の中に、複数の区分の売上げが並ぶことがあります。
Q2. 売上げを区分していないと、どうなりますか?
一番低いみなし仕入率になります。国税庁は「その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します」としています。区分の方法は、帳簿への記載、請求書や売上伝票の控えへの記載、レジペーパーの品番の印字などが挙げられています。
Q3. 第四種事業とは、どんな事業ですか?
ほかのどれにも当たらない事業です。消費税法施行令57条5項6号は「前各号に掲げる事業以外の事業をいう。」としています。国税庁は具体例として飲食店業を挙げ、自己において使用していた固定資産の譲渡も第四種事業に該当するとしています。
Q4. 簡易課税をやめたいときは、いつ届出をしますか?
やめたい課税期間の初日の前日までです。ただし消費税法37条6項により、事業を廃止した場合を除き、届出の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できません。選ぶ前に、2期分の見通しを立てておく必要があります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。消費税法29条・37条、消費税法施行令57条、国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」・No.6509「簡易課税制度の事業区分」・No.6517「卸売業とされる事業」、国税庁質疑応答事例「事業の区分の方法」「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」「製造小売と喫茶店を兼業している場合の取扱い」の内容を扱っています。国税庁の質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分」による個別業種の当てはめ、飲食店の持ち帰り販売の区分、デパートのテナントやサービス料の取扱い、消費税法基本通達の本文、災害等により届出が間に合わなかった場合の特例(コード6630・6632)の要件、2割特例・3割特例そのものの制度内容、本則課税と簡易課税のどちらが有利かの判定は扱っていません。数値例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は売上構成・対価の返還等・貸倒れ・適用税率によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「消費税法」https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
- e-Gov法令検索「消費税法施行令」https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360
- 国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.6509「簡易課税制度の事業区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm
- 国税庁 質疑応答事例「事業の区分の方法」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/20/01.htm
事業区分の割り付けを、期が始まる前に決めませんか
簡易課税の税額は、事業区分で決まります。売上げを区分していなければ、一番低いみなし仕入率で計算することになります。区分は申告書を作るときではなく、請求書やレジの記録を作るときに決まります。代表税理士が、売上げの棚卸し、区分の割り付け、請求書や帳簿の記録方法の設計、原則法と75パーセント特例の有利判定、届出期限の管理まで、通して対応します。届出を出す前にご相談ください。
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