不動産譲渡所得

不動産売却の印紙税はいくら?
売買契約書の軽減税率と、譲渡費用になる印紙代

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 記載金額10万円超で令和9年3月31日までに作る不動産の売買契約書は、印紙税が軽減されます
  • 相手方の署名押印などがある「写し」も課税。2通なら2通分、仲介業者が持つ控えも同じです
  • 売主が負担した印紙税は譲渡費用。購入時の印紙税は取得費です(業務用資産などを除く)
  • 貼り忘れの過怠税は原則3倍。調査で過怠税の決定を予知する前に申し出れば1.1倍です

まず結論:売買契約書の印紙税は、記載金額と通数で決まります

土地や建物を売るときに交わす売買契約書には、印紙税がかかります。

印紙税は、契約書や領収書など、決められた20種類の文書にかかる税金です。

売買契約書は「不動産の譲渡に関する契約書」で、国税庁の区分では第1号の1文書です。

税額は、契約書に書かれた契約金額(記載金額)で決まり、1通ごとにかかります。

令和9年3月31日までに作る売買契約書で、記載金額が10万円を超えるものは、税額が軽減されています。

平成二十六年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に作成される印紙税法別表第一第一号の物件名の欄1に掲げる不動産の譲渡に関する契約書

(租税特別措置法91条1項)

納める義務は作った人にあり、売主と買主が共同で作れば連帯して負います(印紙税法3条)。

土地や建物の売買契約書は、印紙税の第1号の1文書に当たります
土地や建物の売買契約書は、印紙税の第1号の1文書に当たります

税額表:本則と、令和9年3月31日までの軽減後の税額

記載金額が1,000万円を超え5,000万円以下なら、軽減後は1通1万円です。

本則は、印紙税法が定めるもともとの税額です。

記載された契約金額本則の税額軽減後の税額
1万円未満非課税非課税
1万円以上10万円以下200円200円(軽減の対象外)
10万円を超え50万円以下400円200円
50万円を超え100万円以下1,000円500円
100万円を超え500万円以下2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下6万円3万円
1億円を超え5億円以下10万円6万円
5億円を超え10億円以下20万円16万円
10億円を超え50億円以下40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円
契約金額の記載のないもの200円200円(軽減の対象外)

(印紙税法別表第一、租税特別措置法91条1項、タックスアンサー No.7101・No.7108)

5,000万円ちょうどは「以下」に入るため1万円、5,000万円を超えると3万円です。

軽減の対象は、土地や建物などの不動産の譲渡(売買、交換など)に関する契約書です。

地上権や土地の賃借権の譲渡の契約書(第1号の2文書)は対象外です(国税庁「印紙税の手引」)。

建物と定期借地権をまとめて売る契約書は、合計額で軽減後の税額を見ます(No.7108)。

補足

令和8年度の税制改正でも、この期限は変わっていません(令和8年10月時点)。令和9年4月1日以後に作る契約書は、その時点の法令で税額を確かめてください。

売主と買主が1通ずつ持てば2通分。署名押印のある仲介業者の控えも課税です

署名押印した契約書を売主と買主が1通ずつ持てば、印紙税は2通分かかります。

一方を「写し」「副本」と書いても、契約の成立を証明する目的なら同じです。

一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。

(国税庁 タックスアンサー No.7120)

相手方の署名や押印、正本と相違ない旨の証明などがある写しも、課税対象です。

署名押印も証明もない単なるコピーは、課税対象になりません。

仲介業者が、売主と買主の署名押印のある控えを持つ場合も課税されます。

仲介人自身は不動産の譲渡に係る契約当事者ではありませんから、不動産売買契約の当事者である甲(売主)と乙(買主)が連帯して納税義務を負うことになります。

(国税庁 質疑応答事例「契約当事者以外の者に提出する文書の取扱い」)

計算例

例:令和9年3月31日までに作る4,800万円の売買契約書(軽減後は1通1万円)

売主と買主の2通 1万円 × 2通 = 2万円 仲介業者の控えを加えた3通 1万円 × 3通 = 3万円 (参考)本則の税率なら3通 2万円 × 3通 = 6万円

一定の前提を置いた目安です。印紙代の負担者は、契約書の定めで確かめます。

国税庁は、電磁的記録(電子データ)は課税対象の文書に含まれないとしています。電子契約は印紙税と電子契約の記事で扱っています。

仲介業者が持つ、売主と買主の署名押印がある控えも課税文書です
仲介業者が持つ、売主と買主の署名押印がある控えも課税文書です

売主が負担した印紙代は譲渡費用、購入時の印紙税は取得費です

売主が負担した印紙代は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引けます。

譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(No.3255)。

譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。

国税庁は、その主なものに「印紙税で売主が負担したもの」を挙げています。

修繕費や固定資産税など、維持や管理のための費用は譲渡費用になりません。

その不動産を買ったときに納めた印紙税は、取得費(購入代金など)に含まれます(No.3252)。

ただし、業務に使う資産の場合や、事業所得などの必要経費に入れたものは含まれません。

ポイント

譲渡所得の内訳書(令和7年分以降用)の3面には、譲渡費用の欄に「収入印紙代」の行があります。売主の負担額を、その行の支払金額に書きます。

費用の線引き全体は、取得費と譲渡費用の線引きの記事をご覧ください。

売主が負担した印紙代は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引きます
売主が負担した印紙代は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引きます

過怠税や申告の誤りにつながる失敗

印紙を貼り忘れると、過怠税(貼り忘れなどのときに徴収される税)がかかります。

原則は、納めなかった印紙税の額とその2倍の合計、つまり3倍です(印紙税法20条1項)。

調査で過怠税の決定を予知する前に自分から申し出ると、1.1倍に軽くなります(同条2項)。

印紙は契約書を作る時までに貼り、契約書と印紙の模様にかけて消します(同法8条)。

消印をしないと、その印紙の額面と同じ額の過怠税がかかります(同法20条3項)。

計算例

例:記載金額5,200万円の売買契約書(軽減後は1通3万円)で、売主の1通に貼り忘れた

調査で指摘された場合 3万円 × 3 = 9万円 予知する前に申し出た場合 3万円 × 1.1 = 33,000円 貼ったが消印していない場合 額面3万円と同じ3万円

いずれも一定の前提を置いた目安です。

  • 自分の保管分に貼っていない ― 2通とも課税文書です
  • 仲介業者の控えに貼っていない ― 売主と買主が連帯して納税義務を負います
  • 印紙代を譲渡費用に入れていない ― 売主の負担分は譲渡費用です
  • 業務用の物件の購入時の印紙税を取得費に入れた ― 取得費に含まれません

注意

斜線を引いたり「印」と書いたりしただけでは、消印になりません。消印は、作成者や代理人、使用人などの印章か署名で行います(印紙税法施行令5条、質疑応答事例)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

通数の確認と税額表の当てはめはご自身でできますが、例外の判断は個別です。

  1. 契約書を何通作り、誰が持つか(売主・買主・仲介業者)を確かめる
  2. 記載金額と作成日を、税額表に当てはめる
  3. 印紙を貼り、契約書と印紙にかけて消印する
  4. 売主が負担した印紙代の金額と支払日を控えておく

ここから先は、資料と事情で結論が変わります。

借地権付きの物件、代金を変える変更契約書、電子と紙が混ざる契約、業務用の物件などです。

代金を変える変更契約書も、記載金額が10万円超なら軽減の対象です(質疑応答事例)。

ただし記載金額は、増額か減額かなどで変わります(印紙税法別表第一の通則4ニ)。

契約の前に、契約書を何通作り、誰が持ち、どちらが負担するかを確かめます
契約の前に、契約書を何通作り、誰が持ち、どちらが負担するかを確かめます

税理士が入ると変わるのは、印紙代の根拠と申告への入れ方です

税理士は、契約書の確認から申告書への反映までを、一続きで点検します。

ひとつめは、契約書の通数と保管者、負担者を確かめ、売主の負担分を特定することです。

ふたつめは、購入時の契約書を見て、取得費に入る印紙税かを確かめることです。

みっつめは、変更契約書や借地権の有無を確かめ、記載金額と税額を点検することです。

よっつめは、貼り忘れが見つかったとき、印紙税不納付事実申出書の提出を検討することです。

いつつめは、内訳書3面の「収入印紙代」から確定申告書まで、金額を反映することです。

内訳書の各面の書き方は、譲渡所得の内訳書の記事で扱っています。

小松公認会計士・税理士事務所では、契約書の確認から譲渡所得の適正申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産の売買契約書の印紙税は、いくらですか?

契約書に書かれた契約金額で決まります。令和9年3月31日までに作る契約書は、記載金額が10万円超なら軽減されます(租税特別措置法91条)。軽減後は、1,000万円超5,000万円以下で1通1万円、5,000万円超1億円以下で3万円です。

Q2. 売主と買主で2通作るとき、印紙は2通とも必要ですか?

契約の成立を証明する目的で作った文書なら、2通とも課税されます。「写し」「副本」と書いても、相手方の署名押印などがあれば同じです。署名押印や証明のない単なるコピーは、課税対象になりません(タックスアンサー No.7120)。

Q3. 印紙を貼り忘れたら、どうなりますか?

原則として、納めなかった印紙税の3倍の過怠税がかかります(印紙税法20条1項)。調査で過怠税の決定を予知する前に、印紙税不納付事実申出書で申し出れば1.1倍です。貼っても消印しなければ、印紙の額面と同じ額の過怠税がかかります。

Q4. 売主が払った印紙代は、確定申告で差し引けますか?

譲渡所得の計算で譲渡費用になります。国税庁は、譲渡費用の主なものに「印紙税で売主が負担したもの」を挙げています(No.3255)。譲渡所得の内訳書の3面にも、「収入印紙代」の行があります。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。印紙税法3条・8条・20条および別表第一(第1号文書、課税物件表の適用に関する通則4ニ)、印紙税法施行令5条、租税特別措置法91条1項、国税庁タックスアンサーNo.7101・No.7108・No.7120・No.7131・No.3252・No.3255、国税庁質疑応答事例「写、副本、謄本等と表示された契約書の取扱い」「契約当事者以外の者に提出する文書の取扱い」「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」「印紙の消印の方法」「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」、国税庁「印紙税の手引」(令和8年6月)、国税庁「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」(令和7年分以降用)の内容を扱っています。第1号の2文書から第1号の4文書(地上権・土地の賃借権・消費貸借・運送)と第2号文書(建設工事の請負)の税額、手付金や残代金の領収書(第17号文書)、消費税額等を区分して記載した場合の記載金額、災害の被災者が作成する契約書の非課税措置、変更契約書の記載金額の詳しい判定、誤って納めた印紙税の還付、電子契約の詳しい取扱い、過怠税を譲渡所得の計算でどう扱うか、令和9年4月1日以後に作成する契約書の税率、法人や不動産業者が売主となる場合の扱いは扱っていません。国税庁の質疑応答事例は、照会に係る事実関係を前提とした回答です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は契約書の記載内容と通数によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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印紙税は、契約書を作る時までに納める税金です。何通作り、誰が持ち、どちらが負担するかで、売主が納める額と譲渡費用に入れる額が変わります。代表税理士が、売買契約書の案と購入時の契約書を確認します。譲渡費用と取得費に入れられる印紙代を確かめ、譲渡所得の申告まで一貫して担当します。契約書の案が届いた段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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