この記事のポイント
- 評価損は原則損金不算入です。例外は政令の事実+損金経理がそろったときです
- 発行会社の資産状態の著しい悪化で価額が著しく下がり、回復の見込みがないことが必要です
- 増資の直後は、債務超過が続いていても原則として評価損の事実がないとされます
- 清算中や解散・適格合併の見込みがある100%グループの国内会社の株式は対象外です
まず結論:非上場株式の評価損は、2つの関門と損金経理がそろったときに損金になります
出資先の赤字が続き、株の価値がほとんどない。この評価損を損金にできるかを整理します。
法人税では、資産の評価損は原則として損金になりません(法人税法33条1項)。
損金とは、税金の計算で差し引ける費用のことです。
例外は同条2項です。政令が定める事実が生じ、損金経理で帳簿価額を減らしたときに損金になります。
損金経理とは、確定した決算で費用や損失として経理することです(同法2条25号)。
非上場株式(取引所の相場のない株式)について、政令は次の事実を定めています。
イに規定する有価証券以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。
(法人税法施行令68条1項2号ロ)
これに準ずる特別の事実も対象です(同号ハ)。
発行会社の資産状態の著しい悪化と、株の価額の著しい低下。この2つがそろうことが基本の条件です。
土地や設備の評価損は固定資産の評価損の記事で扱っています。

1つめの関門は、発行会社の資産状態の「著しい悪化」です
資産状態の著しい悪化に当たる事実を、通達9-1-9が2つ示しています。
ひとつめは、株を取得して相当の期間がたった後に、発行会社で法的な手続が始まった場合です。
特別清算開始の命令、破産手続・再生手続・更生手続の開始の決定があったときです。
ふたつめは、1株当たりの純資産価額(資産から負債を引いた額を株数で割った額)の比較です。
当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。
(法人税基本通達9-1-9(2))
比べる相手は、株を取得した時の純資産です。赤字が続いているだけでは、この基準に当たるとは限りません。
純資産がマイナス(債務超過)のときは、マイナスの額をもとに比べます(同(注)2)。
2回以上の取得や発行会社の増資などがあれば、取得時の純資産を修正して比べます(同(注)1)。
2つめの関門は、株の価額の「著しい低下」と回復の見込みです
株の価額が著しく下がったかは、上場株式などの通達9-1-7を準用して判定します(9-1-11)。
当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。
(法人税基本通達9-1-7)
回復の見込みは、発行会社の業況なども踏まえ、期末の時点で判断します(同(注)2)。
期末の価額は、売買実例・類似会社の株価・純資産価額などから求めます(9-1-13)。
財産評価基本通達の例による価額も、条件つきで認められます(9-1-14)。
損金にできるのは、評価換え直前の帳簿価額と期末の価額との差額までです(法人税法33条2項)。
計算例
例:子会社の設立時に1,000万円(200株)を出資した場合
取得時の1株当たり純資産 50,000円(出資額と同じと仮定) 期末の1株当たり純資産 15,000円 純資産の下落率 (50,000円 - 15,000円)÷ 50,000円 = 70% 期末の価額(仮定) 15,000円 × 200株 = 3,000,000円 帳簿価額の50% 10,000,000円 × 50% = 5,000,000円 損金にできる上限 10,000,000円 - 3,000,000円 = 7,000,000円期末の1株当たり純資産が35,000円なら、下落率は30%です。1つめの関門を越えません。
金額は一定の前提を置いた目安です。回復の見込みがなく、清算などの予定もないと仮定しています。

100%グループの会社の株式は、使えない場合が決まっています
完全支配関係には、除外の定めがあります(法人税法33条5項)。100%の親子や、同じ株主が100%を持つ会社どうしの関係です。
この関係がある国内の会社のうち、次の会社の株式は評価損の対象外です。
- 清算中の会社
- 解散(合併による解散を除く)をすることが見込まれる会社
- 完全支配関係がある他の会社との間で、適格合併を行うことが見込まれる会社
(法人税法施行令68条の3第1項)
100%子会社でも、清算・解散・適格合併の見込みがなければ、この除外には当たりません。
グループ通算制度を使う会社は、他の通算法人の株式(一部を除く)も対象外です(法人税法33条5項)。
グループ内の取引全般はグループ法人税制の記事で扱っています。
ポイント
子会社への貸付金などの金銭債権は、評価損の対象になりません(通達9-1-3の2)。貸付金を放棄して支援する場合は、子会社への債権放棄の記事で扱っています。
否認された2つの裁決は、どちらも子会社への増資の後でした
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の公表裁決を2つ見ます。
- 増資の翌期の例(平成22年5月24日裁決) ― 債務超過の子会社に5,000万円を増資しました。会社は、増資後の純資産と比べて47.4%下がったと主張しました。審判所は、増資直前の純資産を加味して取得時の純資産を修正しました。下落は約13.1%にとどまり、評価損は認められませんでした。
- 追加出資を決めていた例(平成21年4月2日裁決) ― 外国子会社の事案です。2つの50%基準は満たしていました。ただ期末までに、取締役会が追加出資と再建策を決めていました。審判所はこれも含めて回復の見込みを判断し、評価損を認めませんでした。
どちらも当時の規定による事案です。通達は、増資の直後を次のように定めています。
その増資後における当該発行法人の株式については令第68条第1項第2号ロ《市場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に掲げる事実はないものとする。
(法人税基本通達9-1-12)
増資の直前に債務超過で、増資後も解消していなくても同じです(同通達)。
ただし、増資から相当の期間の後に改めて事実が生じれば別です(同ただし書)。
平成22年の裁決は、相当の期間を通常少なくとも1〜2年と考えられるとしました。客観的に明確な事情があれば、例外的に翌期もあり得るとしています。
増資の直後は原則として事実がないとされます。期末に決まっていた再建策を判断に含めた裁決もあります。
注意
決算で帳簿価額を減らしていなければ、損金経理になりません。過去に否認された評価損否認金がある資産の扱いは別です(通達9-1-2)。同じ銘柄は、増資前の株と後の株を分けずに判定します(2つの裁決)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
決算の前にご自身で集められる資料は、次の4つです。
- 出資した時の発行会社の決算書(取得時の純資産がわかるもの)
- 発行会社の直近の決算書と、期末までの業況がわかる資料
- 増資・追加取得の日付・株数・払込金額の一覧
- 清算・解散・合併の予定と、追加出資など支援の予定のメモ
回復の見込みの判断と、期末の価額をどの方法で出すかは、個別の判断になります。
増資から相当の期間がたったかどうかも、業況の推移によって分かれます。

税理士が入ると変わるのは、50%判定の根拠と期末の価額の計算書です
小松公認会計士・税理士事務所では、決算の前に次の作業を行います。
ひとつめは、取得時と期末の純資産の比較表です。増資などがあれば修正計算をします。
ふたつめは、期末の価額の計算書です。通達9-1-13・9-1-14から方法を選んで計算します。
みっつめは、回復の見込みの検討です。計画や支援の予定を確かめ、説明資料にします。
よっつめは、損金経理の仕訳と申告書への反映です。帳簿価額の減額を決算に入れます。
いつつめは、増資・債権放棄など支援策との順番の検討です。計上する期と合わせて試算します。
むっつめは、税務調査の想定問答です。比較表・計算書・取締役会の議事録をそろえます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 出資先が何年も赤字です。評価損を計上できますか?
赤字が続くだけでは足りません。目安は、期末の1株当たり純資産が取得時よりおおむね50%以上下がることなどです(通達9-1-9)。あわせて価額の著しい低下と、回復の見込みがないことが必要です(9-1-11)。決算での損金経理も要ります。
Q2. 債務超過の子会社に増資した期に、評価損を計上できますか?
増資の後は、債務超過が続いていても原則として評価損の事実はないとされます(通達9-1-12)。相当の期間がたった後に改めて事実が生じた場合は別です。その期間を、平成22年5月24日の裁決は通常少なくとも1〜2年と考えられるとしています。
Q3. 100%子会社の株式でも評価損は計上できますか?
計上できる場合があります。除外は、清算中や、解散・グループ内の適格合併の見込みがある100%グループの国内会社の株式です。根拠は法人税法33条5項と施行令68条の3です。グループ通算制度を使う会社は、他の通算法人の株式(一部を除く)も対象外です。
Q4. 申告書の上で減算すれば、評価損を損金にできますか?
原則としてできません。法人税法33条2項は、損金経理により帳簿価額を減額したときに損金算入を認めています。損金経理は、確定した決算で費用や損失として経理することです。過去の評価損否認金がある資産には、通達9-1-2の扱いがあります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条25号・33条1項・2項・5項、法人税法施行令68条1項2号・68条の3、法人税基本通達9-1-2・9-1-3の2・9-1-7・9-1-9・9-1-11・9-1-12・9-1-13・9-1-14、国税不服審判所の平成21年4月2日・平成22年5月24日の各裁決の内容を扱っています。上場株式など市場有価証券等の評価損の判定(施行令68条1項2号イ、通達9-1-8)、売買目的有価証券、外国法人の株式の資産状態の判定(通達9-1-10)、企業支配株式等の時価(通達9-1-15)、更生計画・再生計画による評価換えと資産評定(法人税法33条3項・4項)、通算法人の除外の細目(初年度離脱通算子法人・通算親法人)、完全支配関係の判定の細目、評価損否認金がある資産の翌期以後の扱い(法人税法33条6項)、財産評価基本通達の例による評価の条件と計算方法、子会社の清算・合併時の株式と欠損金の扱い、債権放棄・寄附金の判定、法人税額・加算税・延滞税の計算、会計基準上の減損処理は扱っていません。紹介した裁決はいずれも当時の規定による事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の判定と金額は取得時と期末の純資産、期末の価額、回復の見込みによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(2条・33条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(68条・68条の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第3款「有価証券の評価損」(9-1-7から9-1-15の2まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_03.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第1款「通則」(9-1-1から9-1-3の3まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_01.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成22年5月24日裁決、裁決事例集No.79)https://www.kfs.go.jp/service/JP/79/25/index.html
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子会社や取引先の非上場株式の評価損は、条件がそろったときに損金になります。発行会社の資産状態の著しい悪化で価額が著しく下がり、回復の見込みがなく、損金経理をしたときです。増資の直後は原則として評価損の事実がないとされます。期末までに決まった再建策を、回復の見込みの判断に含めた裁決もあります。清算中や解散・適格合併の見込みがある100%グループの国内会社の株式は対象外です。代表税理士が、純資産の比較表、期末の価額の計算書、回復の見込みの検討資料を作ります。損金経理と申告書への反映、支援策との順番の試算まで通して対応します。期末の決算に入れる必要がありますので、決算月の前にご相談ください。
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