この記事のポイント
- 評価損は原則として損金不算入です(法人税法33条1項)
- 例外は政令が定める事実+損金経理の2つがそろったときです
- 旧式化・償却不足は理由になりません(通達9-1-17)
- 使えないときの受け皿は有姿除却の検討です
まず結論:固定資産の評価損は、原則として損金になりません
法人税法33条1項は、評価換えで帳簿価額を減額しても損金に算入しないと定めています。
例外が同条2項です。
その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
(法人税法33条2項)
必要なのは「政令が定める事実」と「損金経理による帳簿価額の減額」の2つです。

損金になるのは、政令が定める5つの事実があるときだけです
「政令が定める事実」は限定列挙で、固定資産は5つだけです。
三 固定資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が一年以上にわたり遊休状態にあること。
ハ 当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと。
ニ 当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと。
ホ イからニまでに準ずる特別の事実
(法人税法施行令68条1項3号)
| 号 | 事実 | 会社の言葉にすると |
|---|---|---|
| イ | 災害による著しい損傷 | 水害で機械が壊れた |
| ロ | 1年以上の遊休状態 | 去年から止めたままだ |
| ハ | 他の用途への転用 | 工場を倉庫に回した |
| ニ | 所在場所の状況の著しい変化 | 周りの環境が変わった |
| ホ | イからニまでに準ずる事実 | 4つに似た事情がある |
この5つのどれにも当てはまらなければ、時価がいくら下がっていても損金になりません。
「旧式化した」「償却不足がある」は理由になりません
ご相談で多い2つが、通達で正面から否定されています。
9-1-17は、価額の低下が次の事実に基づく場合には33条2項の適用がないとしています。
(1) 過度の使用又は修理の不十分等により当該固定資産が著しく損耗していること。
(2) 当該固定資産について償却を行わなかったため償却不足額が生じていること。
(3) 当該固定資産の取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと。
(4) 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること。
(法人税基本通達9-1-17)
「新型が出て旧式になった」も「償却を止めていて簿価が高い」も、理由にはできません。
償却を止める判断は法人の減価償却をしない選択の記事で扱います。

遊休は「1年以上」、時価は「譲渡されるとしたら」で測ります
よく使うのはロの遊休状態です。取得してから一度も使っていない資産は、ホで拾われます。
令第68条第1項第3号ホ《固定資産の評価損の計上ができる事実》に規定する「イからニまでに準ずる特別の事実」には、例えば、法人の有する固定資産がやむを得ない事情によりその取得の時から1年以上事業の用に供されないため、当該固定資産の価額が低下したと認められることが含まれる。
(法人税基本通達9-1-16)
減額できる上限は、事業年度終了の時の時価までです。
その時価は、その資産が使用収益されるものとして譲渡される場合に通常付される価額です(同9-1-3)。
ポイント
機械や建物は、再取得価額をもとに旧定率法で償却したとした場合の未償却残額によることも認められます(同9-1-19)。計算の単位は土地は一筆ごと、建物は一棟ごとです(同9-1-1)。
土地の含み損は、地価が下がっただけでは評価損にできません
地価の下落そのものは、施行令68条1項3号のイからホまでに掲げられていません。
「買ったときより相場が下がった」は、それだけでは評価損の事実になりません。
下がった原因がニの「所在する場所の状況が著しく変化したこと」に当たるかで判断します。
注意
会計で減損損失を計上しても、その額がそのまま損金になるわけではありません。3号の事実がなければ全額を別表四で加算します。
補足
土地を長期間貸して権利金を受け取り、賃貸後の価額が帳簿価額に満たなくなった場合は、別の定めで減額できます(同9-1-18)。評価損とは根拠が違います。
数字で見ると、法人税は555万円動きます
計算例
例1:資本金1,000万円の会社。評価損の前の所得3,000万円
評価換え直前の帳簿価額 30,000,000円 事業年度終了の時の価額 5,000,000円 損金となる額 30,000,000円 - 5,000,000円 = 25,000,000円 評価損なし 8,000,000円 × 15% + 22,000,000円 × 23.2% = 6,304,000円 評価損あり 5,000,000円 × 15% = 750,000円 法人税の減少額 5,554,000円年800万円以下は15%、超える部分は23.2%です。
計算例
例2:例1が否認された場合(取得価額5,000万円・定額法・償却率0.100)
別表四 加算 固定資産評価損否認 25,000,000円 別表五(一) 評価損否認金 25,000,000円 翌期の償却限度額 50,000,000円 × 0.100 = 5,000,000円 翌期の会計上の償却費 5,000,000円 ÷ 6年 = 833,333円 損金になる償却費 833,333円(損金経理額が限度)否認されると、税務上の帳簿価額は減額がなかったものとみなされます(法人税法33条6項)。
会計の簿価を下げた分だけ償却費も小さくなります。
その償却不足を理由に評価損を主張することも、9-1-17(2)でできません。

否認されるのは、だいたいこの5つです
現場でよく見る形です。
- 稟議書や取締役会議事録はあるが、損金経理をしていない ― 33条2項は帳簿価額の減額を求めます
- 1年以上の遊休を示す資料がない ― 電気や保守契約の停止の記録です
- 会計の減損損失をそのまま損金にした ― 政令の事実がなければ全額加算です
- 土地の含み損を評価損にした ― 地価の下落は3号に掲げられていません
- 旧式化・陳腐化を理由にした ― 9-1-17(4)で否定されています
否認の理由は「時価の出し方」よりも「事実の当てはめ」と「損金経理の有無」です。
修繕した分の扱いは修繕費と資本的支出の記事をご覧ください。
評価損が使えないときは、有姿除却を検討します
使うのをやめた設備なら、解体していなくても除却損にできる取扱いがあります(法人税基本通達7-7-2)。
| 手当て | 根拠 | 要件の中心 | 損金の額 |
|---|---|---|---|
| 固定資産の評価損 | 法人税法33条2項・施行令68条1項3号 | 5つの事実と損金経理 | 帳簿価額と期末の時価との差額まで |
| 有姿除却 | 法人税基本通達7-7-2 | 使用を廃止し、今後事業の用に供する可能性がないこと | 帳簿価額から処分見込価額を控除した額 |
| 棚卸資産の評価損 | 施行令68条1項1号 | 災害による損傷・著しい陳腐化など | 帳簿価額と期末の時価との差額まで |
まだ使うなら評価損、もう使わないなら有姿除却です。
要件と資料の残し方は有姿除却の記事で扱っています。
在庫の値下がりは棚卸資産の評価損の記事をご覧ください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
決算の前にご自身で用意できるのは4点です。
- 固定資産台帳を出し、使っていない資産に印を付ける
- 止めた月がわかる記録を探す(電気、保守契約、保険の異動)
- 同型の中古品の相場や下取りの見積書を集める
- 会計で減損損失を計上したものがないか試算表で確かめる
どの事実に当てはまるかの判断は、ここから先の個別判断です。
評価損か有姿除却かの選択も、資料の内容で変わります。
税理士が入ると変わるのは、事実の当てはめと時価の疎明です
ひとつめは、施行令68条1項3号のイからホまでのどれに当たるかの当てはめです。
ふたつめは、時価を疎明する資料の整備です。下取りの見積書、査定書、取引事例を集めます。
みっつめは、損金経理の仕訳と帳簿価額の減額です。金額を計算し、期末までに帳簿に入れます。
よっつめは、別表四と別表五(一)の記載です。認められない部分は評価損否認金として引き継ぎます。
いつつめは、有姿除却との比較検討です。両方の損金の額を試算して選びます。
むっつめは、調査で聞かれる点の想定問答です。いつ止めたか、なぜ使わないか、時価の出し方を文書にします。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 機械が旧式になって使い道がありません。評価損にできますか?
それだけではできません。法人税基本通達9-1-17は、機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していることを、評価損を計上できない例として挙げています。使用を廃止して今後事業の用に供する可能性がないなら、有姿除却(同7-7-2)の検討に移ります。
Q2. 取締役会で評価損の計上を決議しました。申告で減額すれば損金になりますか?
なりません。法人税法33条2項は、損金経理によりその帳簿価額を減額したときに限って損金算入を認めています。決議や稟議書だけでは足りず、期末までに帳簿価額を減額する処理が必要です。ただし過去に否認された評価損否認金がある資産に施行令68条1項の事実が生じた場合は、申告調整で損金に算入した額を損金経理をしたものとして扱う取扱いがあります(同9-1-2)。
Q3. 会計で減損損失を1,000万円計上しました。全額が損金になりますか?
なるとは限りません。税務で損金になるのは、法人税法施行令68条1項3号のイからホまでの事実がある場合に限られます。事実がなければ全額を別表四で加算し、別表五(一)に評価損否認金として残ります。その資産の税務上の帳簿価額は、減額がなかったものとみなされます(法人税法33条6項)。
Q4. 土地の時価が取得時の半分になりました。差額を損金にできますか?
地価の下落そのものは、法人税法施行令68条1項3号のイからホまでに掲げられていません。下落の原因が、ニの「当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと」に当たるかどうかで判断します。なお評価損の是否認を計算する単位は、土地は一筆ごと(一体として事業の用に供される一団の土地等はその一団)です(法人税基本通達9-1-1)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法31条1項・33条1項・2項・6項・66条1項、法人税法施行令48条の2・68条1項、租税特別措置法42条の3の2、法人税基本通達9-1-1・9-1-2・9-1-3・9-1-16・9-1-17・9-1-18・9-1-19・7-7-2、国税庁タックスアンサーNo.5759「法人税の税率」の内容を扱っています。更生計画認可の決定による評価換え(法人税法33条3項)、再生計画認可の決定等による資産評定に基づく評価損(同条4項、法人税法施行令68条の2)とその明細記載・書類添付の要件(同条7項・8項)、完全支配関係がある法人の株式等の除外(同条5項)、有価証券の評価損(法人税法施行令68条1項2号、法人税基本通達9-1-7から9-1-15の2まで)、棚卸資産の評価損の個別の判定(同1号、通達9-1-4から9-1-6の11まで)、繰延資産の評価損(同4号)、法的整理の事実(通達9-1-3の3)、金銭債権の取扱い(通達9-1-3の2)、借地権の設定等による土地等の帳簿価額の一部損金算入(法人税法施行令138条)、有姿除却の具体的な要件と処分見込価額の見積り、固定資産の減損に係る会計基準の内容、適用除外事業者や通算法人に係る税率の特例、所得の金額が年10億円を超える事業年度の税率、地方法人税・法人住民税・法人事業税の取扱い、個人事業者の資産の評価損は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は帳簿価額・時価・その事業年度の所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(31条・33条・66条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(48条の2・68条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(42条の3の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第4款「固定資産の評価損」(9-1-16から9-1-19まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_04.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第1款「通則」(9-1-1から9-1-3の3まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第2款「棚卸資産の評価損」(9-1-4から9-1-6まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_02.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第7節第1款「除却損失等の損金算入」(7-7-1・7-7-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_07_01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
使っていない設備、評価損にできるかどうかを決算の前に確かめませんか
固定資産の評価損は、原則として損金になりません。損金になるのは、法人税法施行令68条1項3号のイからホまでの事実が生じ、かつ損金経理により帳簿価額を減額したときだけです。機械装置の旧式化や償却不足では計上できず、土地の含み損も地価が下がっただけでは事実に当たりません。もう使わない資産なら、有姿除却のほうが実額で損金にできる場合があります。代表税理士が、固定資産台帳の確認、どの事実に当たるかの当てはめ、時価を疎明する資料の整備、損金経理の仕訳と別表四・別表五(一)の記載、有姿除却との比較検討まで、通して対応します。期末までに帳簿へ入れる必要がありますので、決算月の3か月前を目安にご相談ください。
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