この記事のポイント
- 自社の広告のため取引先に看板・陳列棚・自動車を贈った費用は、原則として税務上の繰延資産です
- 償却期間は耐用年数の10分の7で、5年が上限、1年未満は切り捨てて月割りで償却します
- 1個・1組ごとに20万円未満なら、損金経理をすれば支出した期の損金になります
- 受け取る側は、専ら広告用の看板なら受贈益なし。広告目的が明らかな陳列棚などは3分の2と30万円で判定
まず結論:広告のため取引先に贈った看板や陳列棚の費用は、原則として繰延資産です
販売店へ、自社の広告になる看板や陳列棚、自動車を贈ることがあります。
この費用は原則として、払った期に全額を損金(税金の計算で差し引ける費用)にはできません。
税務上の繰延資産(効果が1年以上続く費用)として、数年に分けて償却します。
ただし、1個・1組ごとに20万円未満なら、決算で費用にして支出した期の損金にできます。
受け取った販売店にも、受贈益(ただで受け取った利益)の決まりがあります。
贈る側は償却期間と20万円、受け取る側は3分の2と30万円を確かめます。
繰延資産の全体像は、事務所の礼金と繰延資産の記事をご覧ください。

広告宣伝のために資産を贈った費用は、繰延資産の一つです
根拠は、法人税法施行令14条1項6号ニです。
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
(法人税法施行令14条1項6号ニ)
6号の費用は、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものです(同号)。
法人税基本通達8-1-8は、自社製品等の広告宣伝のための次の場合を挙げています。
- 看板・ネオンサイン・どん帳・陳列棚・自動車のような資産を、特約店などに贈った場合
- その資産を取得することを条件に、お金を贈った場合
- 贈った資産の改良などに充てるため、お金などを贈った場合
- 著しく低い対価で譲った場合(取得価額から譲渡価額を引いた額)
対象は贈与と著しく低い対価での譲渡で、取得を条件にお金を渡す形も含みます。
寄附金からは、広告宣伝の費用とされるべきものが除かれています(法人税法37条7項)。
償却期間は「耐用年数の10分の7」で、5年が上限です
償却期間は、次のとおりです。
その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)
(法人税基本通達8-2-3)
1年未満の端数は切り捨てます(同通達の注2)。耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一で決まります。
| 贈った資産(別表第一の区分) | 耐用年数 | 償却期間 |
|---|---|---|
| 看板・ネオンサイン(器具及び備品) | 3年 | 2年 |
| 広告用の構築物(金属造のもの) | 20年 | 5年 |
| 陳列だな・陳列ケース(冷凍機付・冷蔵機付) | 6年 | 4年 |
| 陳列だな・陳列ケース(その他) | 8年 | 5年 |
| 貨物自動車(運送事業用など・ダンプ式・総排気量0.66リットル以下の小型車を除く) | 5年 | 3年 |
償却は月割りで、最初の期は支出した日から期末までの月数で計算します(法人税法施行令64条1項2号)。
1か月に満たない端数は、1か月と数えます(同条4項)。
損金になるのは、償却費として損金経理(決算で費用に計上すること)した額のうち、償却限度額までです。(法人税法32条1項)
計算例
例1:3月決算の会社が、120万円の冷蔵機付き陳列ケースを令和8年10月15日に贈った場合
償却期間 6年 × 7/10 = 4.2年 → 4年(48か月) 最初の期の月数 10月15日〜翌年3月31日は5か月と17日 → 6か月 最初の期 1,200,000円 × 6/48 = 150,000円 翌期から 1,200,000円 × 12/48 = 300,000円(5期目は残りの150,000円)同じ日に買って贈り、毎期限度額まで損金経理するという一定の前提を置いた目安です。

1個・1組が20万円未満なら、支出した期の損金にできます
支出する金額が20万円未満なら、支出した期の損金にできます(法人税法施行令134条)。
条件は、支出した期に損金経理をすることです。
20万円未満かどうかは、贈った資産の1個又は1組ごとの金額で判定します。(法人税基本通達8-3-8)
注意
1台18万円の陳列棚を5台贈れば、合計90万円でも1台ごとには20万円未満です。ただし、1組で使うものは1組の金額で判定します。金額は税抜経理なら税抜、税込経理なら税込です。
贈った資産が滅失した(なくなった)ときは、償却し残した額をその期の損金にします。
根拠は法人税基本通達8-3-6です。
受け取った側は、専ら広告用の看板なら受贈益なし、広告目的の陳列棚などは3分の2で計算します
法人が資産をただで受け取ると、原則として益金(税金の計算上の収益)になります(法人税法22条2項)。
メーカーなどから受け取った資産は、法人税基本通達4-2-1が次のように扱います。
| 受け取った資産 | 益金に入れる額(経済的利益) |
|---|---|
| 看板・ネオンサイン・どん帳のように、専ら広告宣伝に使うもの | なし |
| 広告目的が明らかな自動車・陳列棚・陳列ケース・冷蔵庫・容器、見本と明らかなモデルハウスなど | メーカーの取得価額の3分の2から支払額を引いた額。同じメーカーからの合計が30万円以下ならなし |
| それ以外の資産 | メーカーの取得価額から支払額を引いた額 |
自動車は、車体の大部分に一定の色を塗り、メーカーの製品名や社名を表示したものです。
陳列棚などは、製品名や社名の広告が目的と明らかなことが前提です。
計算例
例2:メーカーの取得価額が120万円の陳列ケースを、無償で受け取った場合
1,200,000円 × 2/3 = 800,000円 → 30万円を超えるため800,000円が益金例3:同じケースを、販売店が60万円払って受け取った場合
800,000円 - 600,000円 = 200,000円 → 30万円以下のため経済的利益はなし広告目的が明らかで、同じメーカーから他に受け取っていないという一定の前提を置いた目安です。
お金を受け取って自分で買う場合も、同じ扱いです(法人税基本通達4-2-2)。
補足
国税庁の質疑応答事例は、1個12万円の化粧棚を4個受け取った例です。3分の2の合計32万円は30万円を超えるので受贈益とし、取得価額は1個8万円です。10万円未満で貸付けに使わなければ、損金経理で一時に損金算入できます(法人税法施行令133条)。

消費税は、償却に合わせず、買った日の課税期間で控除します
繰延資産に係る課税仕入れ(消費税のかかる仕入れ)は、買った日の課税期間で控除の対象です。
根拠は消費税法基本通達11-3-4です。
ポイント
個別対応方式は、仕入れを用途で分けて控除額を計算する方法です。この方式では、贈る資産の仕入れは原則として「共通して要するもの」です。根拠は消費税法基本通達11-2-17です。
失敗パターン:処理の誤りにつながる5つの形
次の5つは、贈る前に資料と計算の手順を決めておけば防ぎやすい誤りです。
- 1個20万円以上の看板を、全額その期の広告宣伝費にする ― 損金になるのは償却限度額までです。
- 償却期間を耐用年数のままにする ― 10分の7で、5年が上限、端数は切り捨てます。
- 1組で使う陳列棚を、1台ずつに分けて判定する ― 判定は1個又は1組ごとです。
- 受け取った陳列ケースを、看板と同じく受贈益なしとする ― 広告目的なら3分の2と30万円の判定です。
- 消費税の控除を、償却に合わせて毎年に分ける ― 買った日の課税期間で控除します。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
贈る前にご自身で整えられるのは、次の4点です。
- 贈与か、自社の所有のまま貸すのかを、契約書や覚書で確かめる
- 1個・1組ごとの金額を、請求書で確かめる
- 資産の種類から、耐用年数の区分を当てはめる
- 贈った日・相手先・設置場所を記録する
何を1組とみるか、著しく低い対価に当たるかは、事実で判断が分かれます。
お金で渡す形、寄附金や交際費との区分、消費税の区分は個別判断が要ります。

税理士が入ると変わるのは、区分の根拠と償却の管理です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
ひとつめは、1個・1組ごとに、繰延資産か一時の損金かを区分することです。
ふたつめは、耐用年数の当てはめと、償却期間・月割りの償却額の計算です。
みっつめは、償却の管理表の作成と、決算書・申告書への反映です。
よっつめは、仕入税額控除の時期と、個別対応方式での区分の確認です。
いつつめは、受け取る側の3分の2の計算・30万円の判定と、資産の処理の確認です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 取引先に看板を贈った費用は、全額その期の広告宣伝費にできますか?
原則として繰延資産です(法人税基本通達8-1-8)。償却期間は耐用年数の10分の7(5年が上限・1年未満切捨て)です(同8-2-3)。器具及び備品の看板なら2年です。ただし、1個・1組ごとに20万円未満なら、損金経理で支出した期の損金です(法人税法施行令134条)。
Q2. 償却費は、毎期どのように計算しますか?
繰延資産の額を償却期間の月数で割り、その期の月数を掛けます(法人税法施行令64条1項2号)。最初の期は、支出した日から期末までの月数です。1か月未満の端数は1か月と数えます(同条4項)。損金になるのは、償却費として損金経理した額のうち、この限度額までです。
Q3. メーカーから陳列ケースを無償でもらいました。益金になりますか?
広告が目的と明らかなら、経済的利益はメーカーの取得価額の3分の2から払った額を引いた額です。同じメーカーからの合計が30万円以下なら、経済的利益はないものとされます。目的が明らかでなければ、取得価額から払った額を引いた額です(法人税基本通達4-2-1)。
Q4. 贈る看板を買ったときの消費税は、償却に合わせて控除しますか?
償却に合わせて分けません。繰延資産に係る課税仕入れは、仕入れを行った日の課税期間で控除します(消費税法基本通達11-3-4)。個別対応方式では、贈る資産の仕入れは原則として「共通して要するもの」です(同通達11-2-17)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条24号・22条2項・32条1項・37条7項、法人税法施行令14条1項6号ニ・64条1項2号・4項・133条・134条、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一、法人税基本通達4-2-1・4-2-2・8-1-8・8-2-3・8-3-6・8-3-8、消費税法基本通達11-2-17・11-3-4、国税庁の質疑応答事例「少額の広告宣伝用資産の一時償却」の内容を扱っています。自社の所有のまま貸し出す資産の減価償却、著しく低い対価に当たるかの判定基準、何を1組とみるかの細目、看板が器具及び備品と構築物のどちらに当たるかの判定、中古資産の耐用年数、分割払いの場合の扱い、限度額を超えて費用にした額の翌期以後の扱い、適格組織再編成による引継ぎ、受け取った資産の取得価額と償却方法、中小企業者等の少額減価償却資産の特例と一括償却資産、交際費・寄附金・売上割戻しとの区分の細目、お金で渡す場合や低い対価で譲る場合と受け取った側の消費税、個人の販売店の所得税の扱い(所得税基本通達36-18・36-19)、申告書の明細書の書き方は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、償却期間や受贈益の額は資産の種類と取引の事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(14条・64条・133条・134条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第1節「繰延資産の意義及び範囲等」(8-1-8)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第2節「繰延資産の償却期間」(8-2-3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_02.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第3節「償却費の計算」(8-3-6・8-3-8)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_03.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第4章第2節第1款「広告宣伝用資産等の受贈益」(4-2-1・4-2-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/04/04_02_01.htm
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自社の広告のため取引先に贈った看板・陳列棚・自動車の費用は、原則として税務上の繰延資産です。償却期間は耐用年数の10分の7で、5年が上限、1年未満は切り捨てます。1個又は1組ごとに20万円未満なら、損金経理をすれば支出した期の損金になります。受け取った販売店では、専ら広告宣伝に使う看板などは経済的利益がありません。広告目的が明らかな陳列棚などは、メーカーの取得価額の3分の2から支払額を引いて判定します。同じメーカーからの合計が30万円以下なら、経済的利益はないものとされます。代表税理士が、契約書と請求書の確認から償却額の計算、申告書への反映まで通して対応します。仕入税額控除の時期と、受け取る側の受贈益の計算も確かめます。資産を贈る前の段階でご相談ください。
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