法人税・節税

雇用関係助成金の計上時期
入金日ではなく休業などの期か支給決定の期です

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

YouTubeチャンネルを見る →

この記事のポイント

  • 休業手当などの経費を補塡する給付金は、休業などがあった期に入れ、未確定なら見積ります
  • 定年の延長など雇用の改善による奨励金は、支給決定があった日の期の益金です
  • 固定資産の取得等に充てない助成金は、圧縮記帳も特別勘定も使えません
  • 雇用調整助成金などは消費税の課税の対象外で、売上と分けて扱います

まず結論:助成金を入れる期は、入金日ではなく通達の2つの形で決まります

厚生労働省の雇用関係の助成金は、受け取る会社の益金になります。

益金とは、法人税の計算で収益として数えるお金のことです。

どの期の益金にするかは、法人税基本通達2-1-42が2つの形に分けて定めています。

  • 休業手当・賃金・職業訓練費などの経費を補塡(穴埋め)する給付金 ― 休業などがあった日の期です。金額が決まっていなくても見積って入れます。
  • 定年の延長など、雇用の改善を図ったことで受ける奨励金 ― 支給決定があった日の期です。

どちらの形でも、入金した日は基準になっていません。

助成金を益金に入れる期は、入金日ではなく通達の形で決まります
助成金を益金に入れる期は、入金日ではなく通達の形で決まります

経費を補塡する給付金は、金額が未確定でも休業などがあった期に入れます

通達の本文は、休業などの事実があった期の益金とする定めです。

法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補塡するために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

(法人税基本通達2-1-42)

基準は、休業や職業訓練などの事実があった日です。

決算日に金額が決まっていなくても、見積って益金に入れます。支給決定や入金を待つ形ではありません。

雇用調整助成金は、休業手当の負担額などに助成率を掛けて支給されます。上限などの基準もあります(厚生労働省)。

人材開発支援助成金は、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です(厚生労働省)。

どちらも、通達の本文が挙げる経費と重なる部分があります。

雇用の改善による奨励金は、支給決定があった日の期です

雇用の改善による奨励金は、通達の注で支給決定の日の期とされています。

法人が定年の延長、高齢者及び身体障害者の雇用等の雇用の改善を図ったこと等によりこれらの法令の規定等に基づき交付を受ける奨励金等の額については、その支給決定があった日の属する事業年度の益金の額に算入する。

(法人税基本通達2-1-42(注))

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の方の正社員化などに取り組んだ事業主への助成です(厚生労働省)。

経費の補塡か、取組に対する奨励金かは、コースの支給要件を見て判断します。

通達の形益金に入れる期決算日に金額が未確定のとき
経費を補塡する給付金(本文)休業・就業・職業訓練などの事実があった日の期見積って入れる
雇用の改善による奨励金(注)支給決定があった日の期支給決定の日の期に入れる

申請日や入金日が同じでも、形が違えば益金に入れる期が変わることがあります。

経費を補塡する給付金か奨励金かで、益金に入れる期が分かれます
経費を補塡する給付金か奨励金かで、益金に入れる期が分かれます

決算をまたぐときは、入金を待たずに期を判定します

入金を待って入れると、本来の期の益金がもれることがあります。3月決算の例で確かめます。

計算例

例:3月決算の会社が、次の2つを受けた場合

助成金A(休業手当を補塡) 2月・3月の休業分。見込み額600,000円。5月申請・7月支給決定・8月入金 奨励金B(定年の延長による) 3月25日支給決定・4月15日入金。450,000円 3月期の益金に入れる額 600,000円(見積り)+ 450,000円 = 1,050,000円 2つとも入金の期に入れた場合 3月期の計上もれ 1,050,000円(翌期に同じ額が多くなります)

金額と日付は、一定の前提を置いた目安です。実際の見積額は、助成金ごとの計算方法で出します。

ほかにも次の失敗があります。

  • 決算日に金額が決まっていないため、助成金Aを入れなかった
  • 奨励金を、支給決定の前の期に申請額で未収入金(受け取る前のお金を資産に計上する科目)にした
  • 見積りの根拠(休業の日数や休業手当の額)を残していなかった

期ずれ(計上する期のずれ)は、2期の合計が同じでも、各期の所得を変えます。

入金を待って計上すると、休業などがあった期の益金がもれることがあります
入金を待って計上すると、休業などがあった期の益金がもれることがあります

固定資産に充てない助成金は、圧縮記帳も特別勘定も使えません

補助金の圧縮記帳は、補助金でもらったお金に、その期は税金がかからないようにする処理です。対象は次のものです。

固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの

(法人税法42条1項)

条文は、これを「国庫補助金等」と呼びます。

期末までに返還不要が確定しないときに課税を先送りする特別勘定(43条1項)も、対象は同じです。

休業手当・賃金・訓練費に充てる助成金は、どちらの要件にもあたりません。設備の取得に充てる部分があれば、その部分を別に確かめます。

平成3年12月2日の裁決は、雇用開発のための特別奨励金を国庫補助金等にあたらないとしました。

事業所の整備費用は支給額の限度の基準にすぎず、固定資産の取得等のみに充てる要件はないとされました。当時の規定での判断です。

注意

労働局などは、申請内容が事実と異なると、支給した助成金の返還を求めます(厚生労働省)。返還が決まったときの処理は、理由と時期を確かめて決める個別判断です。

設備の補助金で使う要件は、補助金の圧縮記帳の記事で扱っています。

消費税は課税の対象外です。賃上げ促進税制の計算にも関わります

消費税では、政策目的の助成金は、商品の代金のような「対価」にあたりません。

事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。

(消費税法基本通達5-2-15)

同じ通達の注は、「これらの雇用調整助成金等は、資産の譲渡等の対価に該当しない。」と明記しています。

法人税では益金、消費税では課税の対象外と、税目で扱いが分かれます。

補足

給与に充てる助成金は、賃上げ促進税制の計算にも関わります。給与に充てるため受ける補助金等は、給与等の支給額から差し引きます。雇用調整助成金など(雇用安定助成金額)は、控除の対象になる増加額の上限の計算でだけ差し引きます。根拠は租税特別措置法42条の12の5と同法関係通達42の12の5-2などです。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

決算の前に、ご自身で整えられるのは次の4点です。

  1. 受けた助成金と申請中の助成金を、名称とコースごとに一覧にする
  2. 休業・訓練などの日、申請日、支給決定日、入金日を表に並べる
  3. 申請書類の写しと支給決定の通知を、まとめて保存する
  4. 会計ソフトで、助成金の消費税区分を不課税にする

申請書類の写しなどは、支給決定日の翌日から5年間の保存が求められます(厚生労働省)。

通達の本文の形か注の形かの判定と、見積額の出し方は、個別判断です。

返還の可能性があるときや、賃上げ促進税制を使うときも、事実に応じて判断が分かれます。

なお、助成金の申請書の作成や提出の代行は、社会保険労務士の業務です(社会保険労務士法2条1項)。

申請の手続と、受け取った後の税務の判断は分けて考えます
申請の手続と、受け取った後の税務の判断は分けて考えます

税理士が入ると変わるのは、計上する期の判定と決算への反映です

小松公認会計士・税理士事務所では、助成金を受ける会社の決算で次の作業を行います。

ひとつめは、助成金ごとの判定です。支給要件から通達の本文か注かを判定し、メモに残します。

ふたつめは、見積額の算定です。決算日までの休業や訓練の実績から出し、未収入金で計上します。

みっつめは、翌期の確認です。支給決定と入金の時に、見積額との差を確かめて処理します。

よっつめは、消費税と賃上げ促進税制への反映です。消費税の区分と、給与等の支給額や上限の計算を確かめます。

いつつめは、資金繰りへの反映です。入金の予定を資金繰り表に入れます(補助金の資金繰りの記事も参考になります)。

むっつめは、税務調査への備えです。通達・支給要件・通知書をそろえ、計上の根拠を説明資料にまとめます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

小松公認会計士・税理士事務所 代表

小松 優馬公認会計士・税理士

  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
  • 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
  • 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます

YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる

初回相談は無料です。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 雇用調整助成金の支給決定が決算日の後でした。前の期に入れる必要がありますか?

休業手当などの経費を補塡する給付金なら、休業などがあった日の期の益金です。決算日に金額が確定していなくても、見積って入れます(法人税基本通達2-1-42)。支給決定や入金を待つ扱いではありません。

Q2. キャリアアップ助成金は、いつの期に入れますか?

法人税基本通達2-1-42の注は、雇用の改善による奨励金を支給決定があった日の期の益金とします。正社員化などの取組への助成がこれにあたるかは、コースの支給要件を確かめて判断します。

Q3. 返還を求められるかもしれない助成金も、益金に入れるのですか?

返還不要が確定しないときは、特別勘定という経理があります(法人税法43条1項)。その対象は、固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等です。休業手当や賃金に充てる助成金には使えず、通達の期に益金に入れます。返還時の処理は個別に判断します。

Q4. 助成金に消費税はかかりますか?

特定の政策目的のための給付金は、資産の譲渡等の対価にあたりません(消費税法基本通達5-2-15)。同じ通達の注は、雇用調整助成金等も対価に該当しないと明記しています。課税売上に含めず、不課税として区分します。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税基本通達2-1-42(本文・注)、法人税法42条1項・43条1項、国税不服審判所の平成3年12月2日裁決、消費税法基本通達5-2-15、タックスアンサーNo.5927-2「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)」、租税特別措置法42条の12の5、租税特別措置法関係通達42の12の5-2、社会保険労務士法2条1項、厚生労働省の雇用調整助成金・人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金の各案内と雇用関係助成金のリーフレットの内容を扱っています。各助成金の支給要件・助成率・上限額・申請期限、個々の助成金やコースが通達の本文と注のどちらにあたるかの判定、見積額の具体的な算定方法、見積額と確定した支給額に差が出たときの処理、助成金を返還するときの損金算入の時期、不正受給の場合の納付命令や延滞金の扱い、設備の取得に充てる補助金の圧縮記帳の要件、賃上げ促進税制の適用要件・控除率・適用期限、地方公共団体が独自に交付する助成金、個人事業主が受ける助成金の所得税の扱い、法人住民税・法人事業税の扱いは扱っていません。紹介した裁決は当時の規定による事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

雇用関係の助成金を受けたら、決算の前に計上の期を確かめませんか

雇用関係の助成金は、入金した日を基準に益金に入れるものではありません。休業手当などの経費を補塡する給付金は、金額が未確定でも休業などがあった期に入れます。雇用の改善による奨励金は、支給決定があった期の益金です(法人税基本通達2-1-42)。決算をまたぐときは、見積りの計上もれや、支給決定前の未収計上に注意が要ります。代表税理士が、通達の本文か注かの判定、見積額の算定と未収入金の計上、消費税の区分を確かめます。賃上げ促進税制の計算、資金繰り表への反映、税務調査に備えた根拠資料の整理まで対応します。申請の手続は社会保険労務士の業務のため、弊所は受け取る会社の税務と決算を担当します。決算の前にご相談ください。

無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り

決算と申告だけのご依頼は、決算申告のみのプランをご覧ください。

小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

関連記事

法人決算・顧問の料金
法人決算・税務顧問 ご相談受付中

法人決算・顧問の料金を約60秒で確認

業種・売上規模・記帳の状況を選ぶだけ。概算がその場で分かります

法人 60秒見積り

雇用関係の助成金の計上時期と決算のご相談

初回相談は無料です。代表が直接ご対応します。

法人顧問サービスの詳細を見る
法人60秒見積り 個人60秒見積り または自動見積りをせずに無料相談を申し込む