法人税・節税

免税事業者からの仕入れは令和8年10月から70%控除
経過措置の要件と計算例

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 本則課税の会社が未登録の相手から仕入れると、令和8年10月1日以後の分は70%控除です
  • 令和10年10月から50%、令和12年10月から30%で、令和13年9月30日に終わります
  • 要件は経過措置の対象である旨を書いた帳簿と、区分記載請求書等の保存です
  • 令和8年10月1日以後に始まる期から、同じ相手からの税込1億円超の部分は対象外です

まず結論:未登録の相手からの仕入れは、令和8年10月1日以後の分から70%控除です

免税事業者など登録していない相手は、インボイス(適格請求書)を出せません。

その相手からの仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。

仕入税額控除は、仕入れで払った消費税を納める消費税から引く仕組みです。

ただし一定期間は、消費税相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。

令和8年10月1日以後の仕入れは80%から70%に下がりました(改正前は50%の予定)。

その後は50%、30%と縮みます。同じ相手からの上限額も、税込10億円から1億円に下がりました。

この記事は、仕入れの税額を実額で引く本則課税(一般課税)の会社向けです。

取引先がインボイスを登録しているかどうかで、会社の消費税は変わります
取引先がインボイスを登録しているかどうかで、会社の消費税は変わります

割合は、仕入れを行った時期で決まります

令和8年度改正で、期間が2年延び、割合が段階的に下がります。

仕入れの時期控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%

(平成28年改正法附則52条・53条、国税庁インボイスQ&A問113)

本経過措置の適用に当たって用いる割合は、適用しようとする課税仕入れの時期で判断することとなります。

(国税庁インボイスQ&A問113-3)

サービスは原則として全部が完了した日、商品は原則として引渡しの日が基準です。

令和8年9月21日に始まり10月20日に完了したサービスは、完了日で判断して70%です(同問)。

1年分の前払いは、短期前払費用の記事をご覧ください。

外注先が未登録だと、納める消費税はこれだけ増えます

引けなくなった税額の分だけ、納める消費税が増えます。

計算例

例1:本則課税の法人が、未登録の外注先に毎月税込330,000円(年3,960,000円)を払う

登録している相手なら引ける税額 3,960,000円 × 10/110 = 360,000円 80%の時期 360,000円 × 80% = 288,000円(増える納税額 72,000円) 70%の時期 360,000円 × 70% = 252,000円(増える納税額 108,000円)

例2:同じ外注費で、3月決算の令和9年3月期(令和8年4月〜令和9年3月)

4月〜9月分 1,980,000円 × 10/110 × 80% = 144,000円 10月〜3月分 1,980,000円 × 10/110 × 70% = 126,000円 期の合計 270,000円(全部80%なら288,000円。差は18,000円)

金額は、国税(支払額×7.8/110×割合)と地方消費税(その78分の22)の合計です。

(附則52条1項・53条1項、地方税法72条の83)

支払額は登録の有無で同じ、税率10%、毎月末に完了とした、一定の前提を置いた目安です。

この例では、80%から70%への変更だけで年36,000円の負担増です。

控除できる割合が80%から70%に下がると、引ける税額が減ります
控除できる割合が80%から70%に下がると、引ける税額が減ります

要件は、帳簿の書き方と請求書等の保存です

経過措置には、所定の事項を書いた帳簿と請求書等の保存が必要です(問113)。

帳簿には、通常の記載事項に加えて、次の記載が要ります。

原則的な記載事項に加え、例えば、「80%控除対象」「免」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となります。

(国税庁インボイスQ&A問113)

令和8年10月1日以後の仕入れにも、この旨の記載が要ります(附則53条1項)。

請求書等には、区分記載請求書等と同じ5つの事項が必要です(同問)。

  • 書類の作成者の氏名または名称
  • 取引の年月日
  • 取引の内容(軽減税率の対象なら、その旨)
  • 税率ごとに合計した税込金額
  • 書類を受け取る会社の名称

受け取った側が追記できるのは、軽減税率の対象である旨と税率ごとの合計額だけです(同問)。

同じ相手から税込1億円を超える部分は、経過措置を使えません

7・5・3割控除については、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年又は事業年度で1億円(改正前:10億円)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて適用できません。

(国税庁「令和8年度税制改正特集」)

1億円の上限は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からです。(令和8年法律第12号附則90条3項)

事業年度が1年の3月決算なら、令和9年4月1日に始まる期からです。

令和6年10月1日〜令和8年9月30日に始まった期は、10億円で判定します。

(国税庁インボイスQ&A問113)

簡易課税や2割特例で申告する期には、この経過措置は関係しません

簡易課税は、売上の消費税額を基に仕入れの税額を計算する制度です(タックスアンサーNo.6505)。

財務省・公正取引委員会などのQ&Aも、簡易課税ならインボイスがなくても控除できるとしています。

2割特例も同様です(同Q&A Q5)。法人の2割特例は、令和8年9月30日を含む期までです(インボイスQ&A問114)。

次の期の選び方は、法人の2割特例のあとの記事をご覧ください。

ポイント

一定規模以下の会社の税込1万円未満の仕入れは、令和11年9月30日まで帳簿の保存だけで控除できます。この少額特例を受ける仕入れには、経過措置は適用しません(附則53条の2)。

取引先に登録をお願いするときは、一方的な通告にしないことです

課税事業者になるよう頼むこと自体は、独占禁止法上問題となるものではないとされています。

課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は取適法上、問題となるおそれがあります。

(財務省・公正取引委員会などのQ&A Q7)

取適法は、製造委託などの代金の支払の遅延等を防ぐ法律です。同じQ&Aは、次の行為も問題となりうるとしています。

  • 取適法の対象取引で、免税事業者であることを理由に発注時の代金を減らすこと
  • 相手が課税事業者になったのに、増える消費税分を協議せずに価格を据え置くこと

同じQ&Aは、相手の仕入れ等の消費税も考慮し、双方納得で価格を決める形を示しています。

その形なら、価格が下がっても独占禁止法上問題とならないとされています。

登録のお願いは、一方的な通告にせず協議します
登録のお願いは、一方的な通告にせず協議します

失敗につながるのは、次の5つの場面です

  • 帳簿に経過措置の旨がない ― 通常の仕入れと同じ税区分で入力すると、記載が欠けます。
  • 請求書の記載が足りない ― 作成者の名称や年月日は、受け取った側が追記できません。
  • 割合を支払日で選ぶ ― 令和8年9月中に完了したサービスは、原則として10月に払っても80%です。
  • 税区分を80%のまま使う ― 令和8年10月1日以後の仕入れを80%で計算すると過大です。
  • 上限を超えた部分にも使う ― 令和8年10月1日以後に始まる期は、1億円超の部分が対象外です。

注意

帳簿や請求書等の記載が欠けると、その仕入れに経過措置を使えないおそれがあります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で確かめられるのは、次の4点です。

  1. 外注先・事務所の家主・仕入先の登録番号を、国税庁の公表サイトで確かめる
  2. 未登録の相手ごとに、事業年度の税込の支払額を集計する
  3. 会計ソフトの税区分が、仕入れの時期に合った割合かを見る
  4. 未登録の相手の請求書に、5つの記載事項があるかを見る

仕入れの時期の判定と取引条件の見直しは、契約の中身で結論が変わる個別判断です。

取引先ごとの支払額と税区分を確かめます
取引先ごとの支払額と税区分を確かめます

税理士が入ると変わるのは、影響額の把握と帳簿の整え方です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

ひとつめは、取引先ごとの登録状況の確認と、期ごとの負担増の試算です。

ふたつめは、会計ソフトの税区分の設定と、帳簿の記載の点検です。

みっつめは、未登録の相手の請求書の記載事項の点検です。

よっつめは、取引条件を話し合う前に、影響額を示す資料の作成です。

いつつめは、本則課税と簡易課税の比較と、届出の期限の管理です。

むっつめは、割合と上限を確かめたうえでの申告書への反映です。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 令和8年10月より前に始まった期でも、10月以後の仕入れは70%ですか?

はい。割合は課税仕入れを行った時期で判断します(国税庁インボイスQ&A問113-3)。3月決算の令和9年3月期なら、令和8年9月30日までの仕入れは80%、10月1日以後は70%です。サービスは原則として完了した日、商品は原則として引渡しの日で判断します。

Q2. 帳簿には何と書けばよいですか?

相手の名称・年月日・内容・支払額に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を書きます。国税庁のQ&Aは「80%控除対象」「免」などの例を挙げています(問113)。請求書等には、区分記載請求書等と同じ記載事項が必要です。

Q3. 簡易課税で申告する会社にも関係がありますか?

簡易課税は、売上の消費税額を基に仕入れの税額を計算します(タックスアンサーNo.6505)。財務省・公正取引委員会などのQ&Aは、簡易課税ならインボイスがなくても控除できるとしています。2割特例も同様です。経過措置は、本則課税で申告する期に使うものです。

Q4. 1億円の上限は、いつから、どう判定しますか?

令和8年10月1日以後に開始する課税期間からです(令和8年法律第12号附則90条3項)。同じ相手からの税込の仕入れが事業年度で1億円を超えた部分は対象外です。令和6年10月1日〜令和8年9月30日に始まった期は10億円です(国税庁Q&A問113)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則52条1項・53条1項・53条の2、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則1条3号・90条3項、地方税法72条の77・72条の82・72条の83、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)問84・問113・問113-3・問114、国税庁「令和8年度税制改正特集」、タックスアンサーNo.6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」・No.6505「簡易課税制度」、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和8年1月30日改正)Q5・Q7の内容を扱っています。登録番号のない請求書等への経過措置の一律適用(問113-2)、短期前払費用の扱い(問113-4)の細目、仕入れに係る対価の返還等と棚卸資産の調整の扱い、積上げ計算と割戻し計算・端数処理、1億円の上限の判定の細目(課税期間の特例や1年未満の事業年度など)、帳簿のみの保存で控除できる他の特例、少額特例・簡易課税制度・2割特例の要件と届出、飲食料品の消費税率の引下げ、取適法・独占禁止法・建設業法の対象取引と手続の細目、法人税での控除できない消費税の処理、加算税・延滞税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の控除額は取引の内容と仕入れの時期によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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本則課税の会社では、未登録の相手からの仕入れは、令和8年10月1日以後の分から70%控除です。令和8年10月1日以後に始まる期からは、同じ相手からの税込1億円を超える部分が対象外です。経過措置には、対象である旨を書いた帳簿と、区分記載請求書等の保存が必要です。代表税理士が、登録状況の確認、負担増の試算、税区分と帳簿の点検を行います。請求書の確認、本則と簡易の比較、申告書への反映まで通して対応します。取引条件を見直す前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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