この記事のポイント
- 代金が分割でも、譲渡所得は引渡しの年に全額課税されます
- 一定の契約なら5年以内の延納を申請できます
- 延納には担保と利子税が必要になります
- 申請の期限は納付の期限と同じ日です
まず結論:代金は分割でも、税金は売った年にまとめて来ます
譲渡所得は、代金を受け取った年ごとには分かれません。
所得税法36条1項は、収入金額を「その年において収入すべき金額」とします。
いつが収入すべき時期かは、通達が示しています。
山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものとする。
(所得税基本通達36-12)
頭金しか受け取っていなくても、売却代金の全額が引渡しの年の収入になります。
収入すべき時期は引渡日と契約日で扱っています。

数字で見ると、頭金だけでは納税資金が足りません
5,000万円で売った例で見ます。
計算例
例:土地建物を5,000万円で売却。取得費は概算取得費(5%)、譲渡費用150万円。長期譲渡で、他に所得はなく所得控除も考慮しない前提
譲渡所得 5,000万円 - 250万円 - 150万円 = 4,600万円 所得税 4,600万円 × 15% = 690万円 復興特別所得税 690万円 × 2.1% = 144,900円 住民税 4,600万円 × 5% = 230万円 税額の合計 7,044,900円 + 2,300,000円 = 9,344,900円 頭金1,000万円 - 譲渡費用150万円 = 手元850万円 不足 9,344,900円 - 8,500,000円 = 844,900円一定の前提を置いた目安です。税率はタックスアンサーNo.3208、概算取得費はNo.3258によります。
頭金を全部あてても、納税資金が84万円足りません。
住民税は譲渡後の住民税をご覧ください。
「延払条件付譲渡」に当たるのは、3つの条件を満たす契約です
延納を使えるのは、契約が条文の形に当てはまるときだけです。
所得税法132条3項は、次の要件に適合する条件を定めた契約に基づく譲渡としています。
月賦、年賦その他の賦払の方法により三回以上に分割して対価の支払を受けること。
その譲渡の目的物の引渡しの期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が二年以上であること。
3つめは政令です。
法第百三十二条第三項第三号(延払条件付譲渡の要件)に規定する政令で定める要件は、当該契約において定められているその譲渡の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその譲渡の対価の額の三分の二以下となつていることとする。
(所得税法施行令265条)
| 要件 | 内容 | 先ほどの例 |
|---|---|---|
| 賦払の回数 | 3回以上 | 頭金+年賦4回=5回 |
| 期間 | 引渡しの期日の翌日から 最後の支払期日まで2年以上 | 4年 |
| 引渡しまでの受取額 | 対価の3分の2以下 | 1,000万円(3,333万円以下) |
頭金を多く取りすぎると、3分の2の条件で外れます。

許可されるのは、税額が大きいときだけです
契約が当てはまっても、税額が小さいと使えません。
所得税法132条1項は、期限内に確定申告書を提出したうえで、次の2つを求めています。
延払条件付譲渡に係る税額が前号に規定する申告書に記載された第百二十条第一項第三号に掲げる所得税の額の二分の一に相当する金額を超えること。
延払条件付譲渡に係る税額が三十万円を超えること。
この「税額」は、翌年以後に支払期日が来る賦払金に対応する部分です(同条4項)。
計算例
例:先ほどの契約で、翌年以後に支払期日が来る賦払金が4,000万円の場合
割合 4,000万円 ÷ 5,000万円 = 0.80 控除する金額 4,600万円 × 0.80 = 3,680万円 残る所得税 (4,600万円 - 3,680万円)× 15% = 138万円 延払条件付譲渡に係る税額 690万円 - 138万円 = 552万円 判定 552万円 > 345万円(690万円の2分の1)かつ30万円超 → 要件を満たします延納できるのは最長5年です。全額ではなく一部だけの許可もあります。
所得税法132条2項は、延納する所得税の額に相当する担保を徴さなければならないとしています。
例外は、100万円以下で3年以下の場合と、3月以下の場合だけです。
申請の期限は、納付の期限と同じ日です
申告してから考えるのでは間に合いません。
所得税法133条1項は、確定申告による納付の期限までに提出することを求めています。
書くのは、延納を求める所得税の額と期間、分けて納めるときは各回の期間と額です。
納付の期限、つまり3月15日までに、申請書と担保の書類をそろえます。
復興財確法18条5項により、復興特別所得税もあわせて許可されます。
注意
担保が適当でないと認められたときは、税務署長が変更を求めます。応じなければ申請が却下されることがあります(所得税法133条3項)。

利子税がかかります。通常の延納とは別の制度です
延納を受けると、利子税が上乗せされます。
所得税法136条1項は、年7.3パーセントの割合としています。
ただし租税特別措置法93条1項により、利子税特例基準割合が年7.3パーセント未満の年はその割合です。
国税庁の公表では、令和8年の利子税特例基準割合は年1.3パーセントです。
計算例
例:延納税額5,635,920円(所得税552万円+復興特別所得税115,920円)を4回の年賦(初回1,411,920円・以後各1,408,000円)にした場合。令和8年の割合による目安
1回目 5,635,920円 × 1.3% = 73,266円 → 73,200円 2回目 4,224,000円 × 1.3% = 54,912円 → 54,900円 3回目 2,816,000円 × 1.3% = 36,608円 → 36,600円 4回目 1,408,000円 × 1.3% = 18,304円 → 18,300円 利子税の合計(100円未満切捨・通法119④) 183,000円利子税の割合は年ごとに定まります。
よく混同されるのが、確定申告の延納です。
| 比べる点 | 通常の延納(所法131) | 延払条件付譲渡の延納(所法132) |
|---|---|---|
| 手続 | 延納届出書 | 申請書+担保の書類・税務署長の許可 |
| 期間 | 5月31日まで | 5年以内 |
| 先に払う額 | 2分の1以上 | 要件を満たせば全部の延納も可 |
| 担保 | 不要 | 原則必要 |
通常の延納は届出だけで済みますが、5月31日までしか延びません。
納付が難しいときの猶予制度は税金が払えないときで整理しています。
指摘を受けるのは、だいたいこの5つです
現場で見かける形です。
- 頭金を対価の3分の2より多く取った ― 施行令265条の要件から外れます
- 支払を2回に分けただけ ― 3回以上でないと当てはまりません
- 最後の支払期日までが2年未満 ― 1年払いの分割は対象外です
- 申告後に延納を思いついた ― 申請は納付の期限までです
- 担保にする財産を決めていない ― 書類が間に合わず却下されます
多いのは、契約書を交わした後で要件に気づく形です。
注意
許可を受けた後も、条件に違反すると取り消されます。所得税法135条1項1号は「その延納に係る所得税の額(その所得税の額に係る次条の規定による利子税及び延滞税に相当する額を含む。)を滞納し、その他延納の条件に違反したとき。」を取消事由としています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 売買契約書で、引渡しの期日と各回の支払期日を書き出す
- 賦払の回数が3回以上か、最後の支払期日まで2年以上かを数える
- 引渡しの期日までに受け取る金額が、対価の3分の2以下かを計算する
- 担保に使える不動産や有価証券があるかを確かめる
ここから先は個別判断です。
延払条件付譲渡に係る税額は、施行令266条の割合で計算します。
親族間の売買では、価額そのものが論点になります(親族間売買)。
税理士が入ると変わるのは、契約書の条件設計と申請書です
ひとつめは、契約前の条件設計です。回数・期間・頭金の割合を要件に合わせます。
ふたつめは、税額の試算です。契約を結ぶ前に、引渡しの年の納税額を出します。
みっつめは、延払条件付譲渡に係る税額の計算です。
よっつめは、申請書の作成と担保の選定です。分納の額を賦払金に合わせます。
延納は、契約書を交わす前に決めておく制度です。
小松公認会計士・税理士事務所では、契約条件の確認から申請書の提出まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 代金を5年かけて受け取るのに、税金は最初の年に全部かかるのですか?
はい、かかります。所得税基本通達36-12は、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期を「資産の引渡しがあった日」によるものとしています。受け取った金額ではなく、売買代金の全額がその年の収入になります。そのため、頭金だけでは納税資金が不足することがあります。
Q2. 分割払いなら必ず延納できますか?
できるとは限りません。所得税法132条3項と施行令265条は、賦払が3回以上、引渡しの期日の翌日から最後の支払期日まで2年以上、引渡しの期日までに支払期日が来る賦払金が対価の3分の2以下、という3つを求めています。いずれかを欠くと延納の対象になりません。
Q3. 通常の延納と何が違いますか?
手続と期間が違います。通常の延納は延納届出書を出して5月31日まで延ばす制度です。延払条件付譲渡の延納は、申請書と担保の書類を出して税務署長の許可を受け、5年以内で分けて納める制度です。税額が所得税額の2分の1超かつ30万円超であることも必要です。
Q4. 延納すると利息はかかりますか?
かかります。所得税法136条1項は年7.3パーセントとしていますが、租税特別措置法93条1項により、利子税特例基準割合が年7.3パーセントに満たない年はその割合になります。国税庁の公表値では、令和8年の利子税特例基準割合は年1.3パーセントです。割合は年ごとに定まります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法36条・120条・128条・129条・131条・132条・133条・135条・136条、所得税法施行令265条・266条、所得税基本通達36-12・132-1、租税特別措置法31条・31条の4・93条、国税通則法64条・119条、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条・18条、国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3258、国税庁「延滞税の割合」、国税庁「手順5 延納の届出」の内容を扱っています。担保として提供できる財産の種類と提供手続の詳細(国税通則法50条)、延納の許可後に繰上げて納付した場合の利子税の精算、所得税法134条の延納条件の変更手続、所得税法137条の延滞税の特例の具体的な区分計算、換価の猶予および納税の猶予の要件、住民税の納付時期と分割の可否、法人税法63条の延払基準、山林所得に係る取扱い、非居住者の取扱いは扱っていません。延払条件付譲渡に係る延納の国税庁タックスアンサー番号および申請書の様式番号は、公表資料で確認できなかったため記載していません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は契約内容・他の所得・所得控除・適用する特例によって変わります。利子税の割合は年ごとに定まるため、令和9年以後の割合は含みません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(132条・133条・135条・136条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(265条・266条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁 所得税基本通達 法第132条《延払条件付譲渡に係る所得税額の延納》関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/19/02.htm
- 国税庁 所得税基本通達 〔収入金額〕(36-12)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
- 国税庁「延滞税の割合」(利子税特例基準割合)https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
分割払いで売る前に、引渡しの年の納税額を確かめませんか
代金を分割で受け取る契約でも、譲渡所得は引渡しの年に全額が課税されます。延払条件付譲渡の延納は使える制度ですが、賦払の回数、最後の支払期日までの期間、引渡しまでに受け取る割合という3つの条件を、契約書の段階で満たしておく必要があります。申請の期限は納付の期限と同じ日で、担保の準備も要ります。代表税理士が、契約条件の確認、税額の試算、延払条件付譲渡に係る税額の計算、申請書の作成まで通して対応します。契約を結ぶ前にご相談ください。
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