この記事のポイント
- 不動産所得の赤字は、原則として給与などの所得から差し引けます
- 土地を取得するための借入金の利子に当たる赤字などは、給与と差し引けません
- 土地と建物を同じ売主から1つの契約で買い、借入金を分けにくいときは建物から先に充てて計算できます
- 元本や生計を一にする家族への家賃を経費にすると、修正申告や加算税につながることがあります
まず結論:給与の税金が戻るのは、差し引ける赤字の分だけです
不動産所得(家賃収入から経費を引いた所得)の赤字は、原則として給与などから差し引けます。
これを損益通算といい、根拠は所得税法69条1項です。
源泉徴収された所得税が多すぎれば、申告でその分が戻ります(No.2030)。
ただし、赤字のすべてを差し引けるわけではありません。
土地を取得するための借入金の利子に当たる赤字などは、給与と差し引けません。
経費の入れ方を誤ると、戻った税金を後から納め直すことがあります。

給与と差し引けない赤字として、国税庁は4つを挙げています
次の赤字は、給与などと差し引けません(No.1391)。
- 別荘など、主に趣味・娯楽・保養などの目的で持つ不動産の貸付けの赤字
- 土地(借地権などの権利を含む)を取得するための借入金の利子に当たる部分
- 組合の事業や信託から生じた赤字のうち、一定の組合員・受益者に当たるもの
- 令和3年分以後の国外中古建物の赤字のうち、簡便法などで計算した償却費に当たる部分
根拠は所得税法69条2項と、租税特別措置法41条の4から41条の4の3までです。
国内の物件を借入金で買った方は、まず2つめの土地の分の利子を確かめます。
ポイント
土地の分の利子そのものは、不動産所得の経費に入ります。差し引けないのは、赤字のうちその利子に当たる部分です(No.2210)。
土地の分の利子は、赤字との大小で差し引けない額が決まります
差し引けない額は、土地の分の利子と赤字のどちらが多いかで決まります(措置法施行令26条の6第1項)。
- 利子が赤字より多いとき:赤字の全額を差し引けません
- 利子が赤字以下のとき:赤字のうち利子の額を差し引けません
土地と建物を同じ売主から1つの契約で買い、借入金を分けにくい場合があります。
このときは、借入金を建物の代金から先に充てたものとして計算できます(同条2項)。
土地の分の利子は、利子に「土地に充てた借入金÷借入金の合計」を掛けます(措置法通達41の4-3)。
計算例
例:借入金2,500万円で、その年の利子が50万円の場合
代金3,000万円=建物1,800万円+土地1,200万円(自己資金500万円) 土地に充てた借入金 2,500万円 − 1,800万円 = 700万円 土地の分の利子 50万円 × 700万円 ÷ 2,500万円 = 14万円 赤字80万円のとき 80万円 − 14万円 = 66万円を給与と差し引けます 赤字10万円のとき 利子14万円のほうが多いため、差し引ける赤字は0円です同じ売主から1つの契約で買い、借入金を分けにくい前提です。
金額は一定の前提を置いた目安です。
購入の年の費用の分け方は、物件を買った年の確定申告の記事で解説しています。

経費の入れ方を誤ると、差し引く赤字が大きくなりすぎます
次の5つは、給与と差し引く赤字が大きくなりすぎる入れ方です。
- ローンの返済額を全部経費にする ― 元本の部分は経費になりません(国税庁の収支内訳書の書き方)。
- 土地の分の利子を除かずに、赤字の全額を差し引く ― その部分は差し引けません(措置法41条の4)。
- 所得税・住民税・加算税などを経費にする ― いずれも経費になりません(同じ書き方)。
- 生計を一にする家族への家賃や給与を経費にする ― 原則として経費になりません(No.2210)。
- 事業的規模でない貸付けで取壊し損失を全額入れる ― 損失を引く前の不動産所得が限度です(No.1373)。
赤字が大きすぎると給与と差し引く額が増え、戻る税金も多すぎる状態になります。
修繕費と資本的支出の分け方は、不動産所得の確定申告の記事で扱っています。
代金の分け方が直され、加算税がかかった裁決があります
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の令和4年11月8日の裁決です。
アメリカの賃貸物件を、土地と建物の代金を分けずに買い、借入金で払った方の事案です。
審判所は、利子を土地と建物の取得の対価で分ける必要があるとしました。
代金は固定資産税評価額の割合で分け、本人が出した鑑定評価額の割合は採りませんでした。
減価償却費と土地の分の利子が、この割合で計算し直されました。
国外の物件でも、土地の分の利子の制限は措置法41条の4によります。
注意
この方は、以前の調査で取得価額を指摘されていませんでした。それでも、過少申告加算税がかからない「正当な理由」には当たらないとされています。

戻りすぎた税金は、修正申告で納め直します
還付される税金が多すぎたときは、修正申告で直します(No.2026)。
新たに納める税金は、修正申告書を出す日が納期限です。
納付の日までの延滞税も、あわせて納めます(同)。
過少申告加算税は、修正申告の時期で次のように変わります(同)。
| 修正申告・更正の時期 | 過少申告加算税 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に、自主的に修正申告 | かかりません |
| 事前通知の後、更正を予知する前に修正申告 | 新たに納める税金の5%(一定の額を超える部分は10%) |
| 調査を受けた後の修正申告・税務署の更正 | 新たに納める税金の10%(一定の額を超える部分は15%) |
還付を受ける申告も、過少申告加算税の対象です(国税通則法65条1項)。
計算例
例:上の例で、赤字80万円の全額を給与と差し引いて申告した場合
差し引きすぎた赤字 80万円 − 66万円 = 14万円 戻りすぎた所得税 14万円 × 20% = 28,000円課税される所得金額は、どちらの計算でも税率20%の区分にある前提です。この区分は330万円から694万9千円です(No.2260)。復興特別所得税・住民税などは含めていません。
金額は一定の前提を置いた目安です。
誤りに気づいたら、調査の事前通知の前に修正申告することが大切です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確かめられるのは、次の5つです。
- 売買契約書と精算書で、土地と建物の代金を確かめる
- 借入れの契約書と返済予定表で、借入金の額と1年分の利子を確かめる
- 借入金を、土地・建物・諸費用のどれに使ったかを書き出す
- 領収書を物件ごとに分け、元本・税金・家族への支払が混ざっていないか見る
- 前年の申告書の控えで、土地の分の利子をどう扱ったかを確かめる
代金が分かれていない物件の分け方と、建物から先に充てる計算を使えるかは個別判断です。
自宅と兼ねる物件や海外の物件も、事実によって扱いが変わります。

税理士に頼むと変わるのは、差し引ける赤字の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、家賃収入が赤字の年の申告で次の作業を行います。
- 売買契約書と借入れの資料から、土地と建物の代金と借入金の使いみちを整理します
- 建物から先に充てる計算を使えるかを確かめ、土地の分の利子を計算します
- 元本・税金・家族への支払など、経費にならないものを分けます
- 収支内訳書または青色申告決算書と確定申告書を作り、e-Taxで提出します
- 計算の根拠を保管し、翌年以後の申告に引き継ぎます
- 申告後に誤りが分かったときは、修正申告や更正の請求の書類を作ります
全国どこからでも、オンラインで完結します。
1月から出すための段取りは、会社員大家の還付申告の記事にまとめています。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。修正申告と更正の請求も、同じ料金体系です。
通常料金での計算例です。会社員の方が、家賃収入(経費を引く前の1年分)300万円までの物件を1つ持つ場合です。給与所得と、その他控除セット(社会保険料など)が各6,000円です。不動産所得は35,000円です。合計は32,000円+6,000円+35,000円+6,000円=79,000円です。税込では86,900円です。消費税の申告と記帳代行はない前提で、計算例は一定の前提を置いた目安です。
ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産投資の赤字があれば、給与から引かれた税金は戻りますか?
不動産所得の赤字は、原則として給与などの所得と差し引けます(所得税法69条1項)。ただし、土地を取得するための借入金の利子に当たる部分などは差し引けません。別荘などの貸付けの赤字も同じです(No.1391)。戻る額は、差し引ける赤字の額や給与の額によって変わります。
Q2. 土地と建物をまとめて買い、ローンを分けられません。土地の分の利子はどう出しますか?
同じ売主から1つの契約で買い、借入金を分けにくいときの定めがあります。借入金を建物の代金から先に充てたものとして計算できます(措置法施行令26条の6第2項)。土地の分の利子は、利子に「土地に充てた借入金÷借入金の合計」を掛けます(措置法通達41の4-3)。
Q3. ローンの返済額は、全額を経費にできますか?
経費になるのは利子の部分です。元本に当たる部分は経費になりません(国税庁の収支内訳書の書き方)。土地を取得するための借入金の利子も経費に入ります。ただし、赤字のときはその利子に当たる赤字を給与と差し引けません(措置法41条の4)。
Q4. 還付を受けた後で、土地の分の利子を除いていなかったと気づきました。どうなりますか?
戻る税金が多すぎたときは修正申告で直し、納付の日までの延滞税も納めます(No.2026)。調査の事前通知の前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。調査の後の修正申告や更正では、新たに納める税金の10%がかかります。一定の額を超える部分は15%です。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法69条1項・2項、所得税法施行令178条1項2号、租税特別措置法41条の4・41条の4の2・41条の4の3、租税特別措置法施行令26条の6第1項・2項、国税通則法65条1項、租税特別措置法関係通達41の4-3、タックスアンサーNo.1373「事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」・No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」・No.2026「確定申告を間違えたとき」・No.2030「還付申告」・No.2210「必要経費の知識」・No.2250「損益通算」・No.2260「所得税の税率」、国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」、国税不服審判所の令和4年11月8日裁決、弊所の料金表の内容を扱っています。損益通算の順序、純損失の繰越控除と青色申告の要件、土地と建物の代金を分ける方法の選び方(固定資産税評価額以外の方法を含む)、自宅と兼ねる建物の計算、借換えをした場合や付随費用を借入金で払った場合の扱い、別荘等・特定組合員・国外中古建物の判定と計算の細目(ほかの物件の黒字との差引きの制限や、売却時の取得費の調整を含む)、事業的規模の判定、減価償却費と耐用年数の計算、修繕費と資本的支出の区分、購入の年の費用の扱い、家事関連費の按分、過少申告加算税の基準額の細目と帳簿の提示がない場合などの加算、延滞税の割合と計算、重加算税、住民税・復興特別所得税・防衛特別所得税、消費税、還付申告の時期と必要書類、令和8年分の確定申告期間の日付、申告書第一表への記入方法は扱っていません。紹介した裁決は、アメリカの物件について平成28年分から平成30年分を争った事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(41条の4・41条の4の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」(26条の6)https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043
- 国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例等の紹介(令和4年11月8日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/129/03/index.html
土地の分の利子を計算してから、還付の申告を出しませんか
不動産所得の赤字は、原則として給与などと差し引けます。ただし、土地を取得するための借入金の利子に当たる部分などは差し引けません。元本や生計を一にする家族への家賃などを経費に入れると、修正申告になることがあります。その場合は、延滞税や加算税もかかることがあります。代表税理士が、売買契約書と借入れの資料から土地の分の利子を計算します。経費を確かめたうえで、申告書の作成とe-Taxでの提出まで行います。全国どこからでもオンラインで完結します。還付の申告を出す前に、ご依頼ください。
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