この記事のポイント
- 子会社等への債権放棄は、原則として寄附金です(法人税法37条)
- 整理・再建のためで相当な理由があれば寄附金に当たりません
- 回収不能による放棄は貸倒損失として別の通達で判断します
- 法人が100%を持つグループ内の寄附金は全額が損金不算入です
まず結論:子会社や取引先への債権放棄は、原則として寄附金です
貸付金や売掛金を放棄すると、相手に経済的な利益を無償で与えたことになります。
法人税法は、寄附金の範囲を名目ではなく中身で決めています。
寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与
(法人税法37条7項)
「支援金」「債権放棄」と名付けても、無償の供与なら寄附金として扱われるのが原則です。
無利息や低い利率での貸付けも、経済的な利益の供与として同じ枠組みで扱われます(同条7項・8項)。

寄附金になると、損金に入るのは限度額までです
一般の寄附金は、限度額を超える部分が損金になりません(法人税法37条1項)。
限度額は、資本金と資本準備金の合計額、所得の金額から計算します。
普通法人の限度額は、法人税法施行令73条1項1号で決まっています。
ここでいう所得は、寄附金を全額損金に入れないで計算した金額です(同条3項)。
計算例
例:資本金1,000万円・12か月決算。寄附金を損金に入れない所得3,000万円。貸付金1,000万円の放棄が寄附金とされた場合
資本基準 10,000,000円 × 12/12 × 2.5/1,000 = 25,000円 所得基準 30,000,000円 × 2.5/100 = 750,000円 損金算入限度額 (25,000円 + 750,000円)× 1/4 = 193,750円 損金不算入額 10,000,000円 - 193,750円 = 9,806,250円この例は、資本準備金なし・他の寄附金なしという一定の前提を置いた目安です。
1,000万円を放棄しても、損金になるのは約19万円にとどまります。
寄附金全般の仕組みは寄附金の損金算入の記事で扱っています。
整理・再建のためで「相当な理由」があれば、寄附金に当たりません
例外を定めるのが法人税基本通達9-4-1と9-4-2です。
9-4-1は子会社等の解散や経営権の譲渡に伴う損失負担、9-4-2は再建のための支援を扱います。
その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
(法人税基本通達9-4-2)
寄附金に当たらなければ限度額の制限はなく、支援した額が損金になります。
対象の「子会社等」は、資本関係のある会社だけではありません。
子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。
(法人税基本通達9-4-1(注))
重要な取引先や外注先への支援も、この枠組みで検討できます。

「相当な理由」は、7つの観点で総合的に見られます
国税庁の質疑応答事例は、経済合理性を次の点から総合的に検討するとしています。
- 支援を受ける者が「子会社等」に当たるか
- 子会社等が経営危機(倒産の危機)に陥っているか
- 支援者にとって支援する相当な理由があるか
- 支援額が過剰になっていないか
- 立ち直りに応じて支援額を見直す再建管理があるか
- 支援者の範囲に恣意性がないか
- 特定の債権者だけが不当に負担を重くし、または免れていないか
経営危機にない子会社等への再建支援は、やむを得ず行うものと認められず寄附金になります。
子会社等を整理する場合(9-4-1)は、倒産の危機までは求められません。放置すると今後より大きな損失になるのが明らかかを見ます。
ポイント
支援額は必要最低限で、子会社等の自己努力を加味した金額であることが求められます。自己努力の例は、遊休資産の売却や経費の節減です。過剰と認められると、単なる利益移転として寄附金課税の対象になります。
回収できないから放棄するなら、貸倒損失の問題です
「支援のための放棄」と「回収不能による放棄」は、根拠となる通達が違います。
(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額
(法人税基本通達9-6-1(4))
| 区分 | 根拠 | 中心となる要件 |
|---|---|---|
| 貸倒損失(書面による免除) | 通達9-6-1(4) | 債務超過の相当期間継続、弁済を受けられないこと、書面による免除 |
| 貸倒損失(回収不能) | 通達9-6-2 | 全額が回収できないことが明らか |
| 支援損(寄附金に当たらない) | 通達9-4-1・9-4-2 | 整理・再建のための相当な理由 |
| 寄附金 | 法人税法37条 | 上のいずれにも当たらない無償の供与 |
回収できるのに放棄した場合は、貸倒損失には当たりません。
その場合は、9-4-1・9-4-2で経済合理性を検討します。
貸倒れの要件は貸倒損失の記事で詳しく扱っています。
放棄を受けた側では、免除された額が益金になります
支援する側だけでなく、相手先の課税も同時に考える必要があります。
国税庁の質疑応答事例は、債権放棄を受けた金額は益金の額に算入されるとしています(法人税法22条)。
相手先に繰越欠損金があれば、その範囲で相殺できる場合があります。
注意
100%グループ(法人による完全支配関係)の子会社への寄附金は、限度額計算もなく全額が損金不算入です(法人税法37条2項)。受けた子会社側では受贈益が益金不算入になります(同法25条の2第1項)。社長個人が100%を持つ会社どうしには、この2つの規定は適用されません。
合理的な再建計画に基づく支援は寄附金に当たらないため、37条2項の対象外です。
これは質疑応答事例「完全支配関係にある内国法人間の支援損について」で示されています。
グループ内取引の全体像はグループ法人税制の記事をご覧ください。

否認されやすいのは、この5つの形です
現場でよく見る失敗です。
- 再建計画がなく、決算前に残高を消しただけ ― 相当な理由を説明する資料がありません
- 子会社等が自力で再建できる状態だった ― 経営危機でなければ寄附金です
- 放棄額が必要額より大きい ― 過剰と認められると、単なる利益移転として寄附金課税の対象です
- 取引先への免除で、相手は回収可能な状態だった ― 貸倒損失に当たりません
- 免除の書面がない、または交付が確認できない ― 質疑応答事例は受領書や内容証明郵便等を望ましいとしています
否認の中心は金額よりも、「なぜ放棄したか」を説明できるかどうかです。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
放棄を決める前に、ご自身で用意できるのは次の4点です。
- 相手先の直近の決算書と資金繰り表を取り寄せる
- 貸付金・売掛金の残高と、担保・保証の有無を一覧にする
- 他の債権者や金融機関の支援の状況を確認する
- 自社との関係(出資・取引・役員の兼任)を書き出す
貸倒損失か、支援損か、寄附金かの見極めは、ここから先の個別判断です。
支援額の算定や再建計画の組み立ても、会社ごとに異なります。

税理士が入ると変わるのは、区分の判定と計画の裏づけです
小松公認会計士・税理士事務所では、放棄を実行する前の段階から次の作業を行います。
ひとつめは、貸倒損失・支援損・寄附金のどれに当たるかの判定です。通達ごとの要件に当てはめます。
ふたつめは、相手先の財務内容から要支援額を試算し、必要最低限かを確かめることです。
みっつめは、再建計画書と再建管理の方法(報告の頻度や役員派遣)の整備です。
よっつめは、債務免除の通知書と受領書など、書面の準備です。
いつつめは、相手先の債務免除益と繰越欠損金の確認です。双方の税負担を並べて検討します。
補足
寄附金とされた場合の損金不算入額は、申告書の別表で計算します。放棄の時期と金額によって結果が変わるため、決算月より前の検討をおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 資本関係のない取引先への支援でも、寄附金に当たらない扱いは受けられますか?
受けられる場合があります。法人税基本通達9-4-1(注)は、子会社等に取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれるとしています。ただし相手先の経営危機や支援額の合理性など、他の観点も満たす必要があります。
Q2. 子会社にお金を無利息で貸しています。問題になりますか?
無利息での貸付けは経済的な利益の供与に当たり、寄附金とされる可能性があります(法人税法37条7項・8項)。業績不振の子会社等の倒産を防ぐための合理的な再建計画に基づくなど相当な理由があれば、寄附金に当たらない取扱いがあります(法人税基本通達9-4-2)。
Q3. 再建計画に基づいて、毎期少しずつ債権を放棄してもよいですか?
国税庁の質疑応答事例は、合理的な再建計画に基づき、毎期欠損を出さないことが倒産防止に必要な条件である場合、毎期の一部放棄も単純損金として認められるとしています。計画の合理性と毎期の見直しが前提です。
Q4. 100%子会社への債権放棄は、全額が損金不算入になりますか?
寄附金とされた場合は、全額が損金不算入です(法人税法37条2項)。合理的な再建計画に基づく支援で寄附金に当たらなければ、同項は適用されず損金になります(国税庁 質疑応答事例「完全支配関係にある内国法人間の支援損について」)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条・25条の2第1項・37条1項・2項・7項・8項、法人税法施行令73条1項1号・3項、法人税基本通達9-4-1・9-4-2・9-6-1・9-6-2、国税庁タックスアンサーNo.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」・No.5320「貸倒損失として処理できる場合」、国税庁の質疑応答事例(子会社等を整理・再建する場合の損失負担等、貸倒損失、特定調停による債権放棄等)の内容を扱っています。税率を掛けた法人税額の増減、国外関連者に対する寄附金、指定寄附金・特定公益増進法人等に対する寄附金、資本又は出資を有しない法人・公益法人等の限度額、企業再生税制(法人税法25条3項・33条4項・59条)と特定調停の個別論点、繰越欠損金の控除限度額の詳細、貸倒引当金、売掛債権の取引停止による貸倒れ(通達9-6-3)の詳細、保証債務の履行、無利息貸付けを受けた側の課税関係、寄附金の支出時期(仮払経理・手形払)、グループ通算制度、法人住民税・法人事業税・消費税、個人が債権放棄をした場合の所得税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は資本金等の額・所得の金額・放棄の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・25条の2・37条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(73条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第4節第1款「寄附金の範囲等」(9-4-1・9-4-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_04_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第6節第1款「金銭債権の貸倒れ」(9-6-1から9-6-3まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_06_01.htm
- 国税庁 質疑応答事例「合理的な整理計画又は再建計画とは」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/01.htm
子会社や取引先への債権放棄、実行する前に区分を確かめませんか
子会社や取引先への債権放棄は、原則として寄附金になり、損金に入るのは限度額までです。整理・再建のための支援で相当な理由があれば寄附金に当たりませんが、経営危機の有無、支援額の合理性、再建管理など複数の観点で見られます。回収不能による放棄なら貸倒損失の要件で判断し、法人が100%を持つグループでは、寄附金とされると全額が損金不算入です。代表税理士が、貸倒損失・支援損・寄附金の区分の判定、要支援額の試算、再建計画書と免除通知書の整備、相手先の債務免除益の確認まで通して対応します。放棄の書面を出す前にご相談ください。
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