法人税・節税

個人に払う報酬の源泉徴収
対象・税率10.21%と消費税・交通費の扱い

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 国内に住所がある個人などへの原稿料・デザイン料・講演料や弁護士・税理士などの報酬は源泉徴収します
  • 税率は原則1回100万円まで10.21%、超える部分20.42%で、令和9年以後も同じです
  • 消費税は請求書で区分されていれば除け、交通費は会社の直接払いで通常必要な額なら除けます
  • 差し引き忘れると会社が納め、本人から取り戻さないと割り戻した税額も生じます

まず結論:個人に払う原稿料や弁護士・税理士などの報酬は、払う会社が差し引いて納めます

原稿料や弁護士・税理士の報酬など一定の報酬を個人に払うとき、会社は所得税を差し引いて納めます。

これを源泉徴収といいます。税率は原則10.21%で、1回100万円を超える部分は20.42%です。

差し引き忘れても、納める義務は払った会社に残ります。

ここでは、居住者(国内に住所があるか、引き続き1年以上居所がある個人)への支払を扱います。

海外に住む人への支払は、非居住者への支払の記事をご覧ください。

デザイン料などの報酬は、払う会社が源泉徴収します
デザイン料などの報酬は、払う会社が源泉徴収します

対象になるのは、条文に挙がった種類の報酬です

源泉徴収が要るかは、報酬の種類で決まります。

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

(所得税法204条1項)

区分主な報酬根拠
1号(原稿・デザイン・講演など)原稿料、デザイン料、講演料、翻訳・通訳料、講師の謝金所得税法204条1項1号、同法施行令320条1項
2号(弁護士・税理士など)弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、建築士、経営コンサルタントなどの報酬同項2号、同法施行令320条2項、所得税基本通達204-15

「謝礼」「お車代」などの名目でも、報酬の性質があれば対象です(所得税基本通達204-2)。

税理士法人や弁護士法人に払う報酬は、源泉徴収が要りません(国税庁 No.2798の質疑)。

給与に当たる支払は、給与として源泉徴収します(所得税法204条2項1号)。

外注か給与かは、外注費と給与の区分の記事で解説しています。

税率は1回100万円までが10.21%、超える部分が20.42%です

所得税は10%で、同じ人への1回の支払が100万円を超える部分は20%です(所得税法205条1号)。

これに所得税の2.1%の復興特別所得税を加えます(復興財確法28条)。

合計の税率は10.21%と20.42%で、税額の1円未満は切り捨てます。

司法書士・土地家屋調査士・海事代理士は、計算が違います。

1回の支払から1万円を引き、10.21%をかけます(所得税法205条2号、同法施行令322条)。

計算例

例:講師に1回1,200,000円(消費税は区分)を払う場合

1,000,000円 × 10.21% + 200,000円 × 20.42% = 102,100円 + 40,840円 = 142,940円

一定の前提を置いた目安です。

補足

令和8年度改正で、所得税の1%の防衛特別所得税が創設されました。改正は、令和9年1月1日以後に生ずる所得に適用されます。復興特別所得税は1.1%に下がるため、合計2.1%は変わりません。国税庁は、計算方法に変更は生じないとしています(令和8年5月のあらまし)。

講演料や講師の謝金も、原則10.21%を差し引きます
講演料や講師の謝金も、原則10.21%を差し引きます

消費税は区分されていれば除けます。交通費は払い方で変わります

源泉徴収の対象は、原則として消費税を含めた金額です。

ただし、報酬・料金等の支払を受ける者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税及び地方消費税の額が明確に区分されている場合には、当該報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えない。

(平成元年1月30日付直法6-1「3」)

この請求書等は、インボイスでなくても構いません(国税庁 令和3年12月9日)。

計算例

例:デザイン料300,000円+消費税30,000円の請求

区分あり 300,000円 × 10.21% = 30,630円(振込299,370円) 区分なし 330,000円 × 10.21% = 33,693円(振込296,307円)

一定の前提を置いた目安です。

交通費や宿泊費は、原則として報酬に含めます(タックスアンサー No.2795)。

ただし、会社が交通機関やホテルに直接払う、通常必要な範囲の額なら、含めなくて差し支えありません。

本人に渡す交通費は、この扱いの対象外です(所得税基本通達204-4)。

納付は翌月10日です。納期の特例の対象は弁護士・税理士などの2号の報酬です

差し引いた税金は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます(所得税法204条1項)。

2号の報酬は納期の特例の対象で、承認を受ければ7月10日と翌年1月20日にまとめて納められます。

原稿料・デザイン料・講演料など1号の報酬は対象外で、支払の翌月10日までに納めます(同法216条)。

給与を受ける人が常時10人未満などの要件は、納期の特例の記事にまとめています。

支払調書(だれにいくら払い、いくら差し引いたかの書類)も出します。

期限は翌年1月31日です(同法225条1項3号)。

同じ人への1月〜12月の支払が5万円以下なら、提出は要りません(所得税法施行規則84条2項4号)。

ポイント

支払調書は、税理士法人など法人への報酬も対象です(同規則84条1項)。前々年に出すべき報酬の支払調書が30枚以上なら、e-Tax等で出します(所得税法228条の4)。令和9年1月1日以後に出す分からの基準です。

差し引き忘れると会社が納め、本人から取り戻さないと税額が増えます

税務署は、納められていない所得税を払った会社から徴収します(所得税法221条1項)。

納め遅れには不納付加算税がかかり、原則10%です(国税通則法67条1項)。

調査による告知を予知する前に自主的に納めれば、5%です(同条2項)。

延滞税もかかり、どちらも法人税の計算で損金になりません(法人税法55条4項1号)。

会社は、納めた税額を本人に請求するか、後の支払から差し引けます(所得税法222条)。

どちらもしないと決めると、その税額を手取りで払ったものとして、割り戻した額に税がかかります。

この逆算をグロスアップといいます(所得税基本通達221-1(2))。

計算例

例:報酬500,000円を源泉徴収せずに払い、税額を取り戻さない場合

会社が納める税額 500,000円 × 10.21% = 51,050円 割り戻した額 51,050円 ÷(1 − 10.21%)= 56,854円(1円未満切捨て) 追加の税額 56,854円 × 10.21% = 5,804円

一定の前提を置いた目安で、加算税と延滞税は含みません。

手取りで約束した報酬も、同じ方法で税込みの額に戻します(同通達181〜223共-4)。

差し引き忘れた税額は、払った会社が納めます
差し引き忘れた税額は、払った会社が納めます

失敗パターン:源泉徴収の漏れや誤りにつながる5つの形

次の5つは、支払の前に区分と金額を確かめれば防ぎやすい誤りです。

  • 講師に「謝礼」として払う ― 報酬の性質があれば、名目にかかわらず対象です。
  • 交通費を本人に現金で渡す ― 会社の直接払いでなければ、報酬に含めます。
  • 1回200万円を10.21%だけで計算する ― 100万円を超える部分は20.42%です。
  • デザイン料の税額を7月10日にまとめる ― 1号の報酬は、納期の特例の対象外です。
  • 法人への報酬の支払調書を出さない ― 年5万円を超えれば、法人への報酬も対象です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で確かめられるのは、次の4点です。

  1. 支払先が個人か法人かを、請求書の名義で確かめる
  2. 報酬の種類を、条文の1号・2号に当てはめる
  3. 請求書で、報酬と消費税が分けて書かれているかを見る
  4. 同じ人への1月〜12月の支払額を集計する

業務委託か雇用か、どの号に当たるかは、契約と働き方の事実で判断が分かれます。

デザインと施工を一括で払うときの区分も、個別判断です(所得税基本通達204-8)。

漏れに気づいたときの直し方も、同じです。

支払先ごとに、報酬の種類と支払額を書き出します
支払先ごとに、報酬の種類と支払額を書き出します

税理士が入ると変わるのは、支払前の判定と期限・調書の管理です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

ひとつめは、支払先ごとに個人か法人かと報酬の号を付けた一覧づくりです。

ふたつめは、請求書と振込額の確認です。消費税の区分と交通費の払い方もそろえます。

みっつめは、毎月の納付と納期の特例を分けた期限の管理です。

よっつめは、支払調書の作成と提出です。

いつつめは、漏れが見つかったときの本人への請求と自主納付の段取りです。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. フリーのデザイナーの請求書に消費税があるとき、源泉徴収は税込みの額で計算しますか?

原則は、消費税を含めた額で計算します(平成元年直法6-1)。ただし、請求書等で報酬と消費税が明確に区分されていれば、報酬の額だけで計算できます。国税庁は、この請求書等はインボイスでなくてもよいとしています。登録していない事業者の請求書でも同じです。

Q2. 講師の交通費やホテル代も、源泉徴収の対象になりますか?

旅費や宿泊費も、原則として報酬に含めて源泉徴収します。ただし、会社が交通機関やホテルに直接払う、通常必要な範囲の金額なら、含めなくて差し支えありません。本人に渡す交通費や宿泊費は、この扱いの対象外です(所得税基本通達204-4)。

Q3. 税理士法人や弁護士法人に払う報酬も、源泉徴収が要りますか?

内国法人である税理士法人や弁護士法人への報酬は、源泉徴収が要りません(No.2798の質疑)。ただし、支払調書は法人への報酬も対象です。同じ法人への1月〜12月の支払が5万円を超えれば提出します(所得税法施行規則84条)。期限は翌年1月31日です。

Q4. 令和9年から防衛特別所得税が始まると、報酬の源泉徴収の税率は変わりますか?

合計の税率は変わりません。令和9年1月1日以後に生ずる所得から、所得税の1%の防衛特別所得税が加わります。復興特別所得税は2.1%から1.1%に下がり、合計は2.1%のままです。10.21%・20.42%の計算方法に変更はないとされています(国税庁)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条1項3号・204条1項・2項1号・205条・216条・221条1項・222条・225条1項3号・228条の4、所得税法施行令320条1項・2項・322条、所得税法施行規則84条、所得税基本通達204-2・204-4・204-8・204-15・181〜223共-4・221-1、平成元年1月30日付直法6-1、国税庁「インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収」(令和3年12月9日)、国税通則法60条1項5号・67条1項・2項、法人税法55条4項1号、復興財確法28条、防衛財確法5条の26、タックスアンサー No.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」・No.2798「弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」と同No.2798の質疑、国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」(令和8年5月)の内容を扱っています。非居住者・外国法人への支払、給与と報酬の区分の判定、外交員・ホステス・芸能人・プロスポーツ選手・モデルへの報酬と契約金・賞金、条文に挙がっていない業務の報酬の個別の当てはめ、士業に預ける登録免許税・手数料の扱い、納期の特例の申請と要件の細目、不納付加算税を課さない場合の要件と加算税・延滞税の額の計算、手取額が897,900円を超える場合の割戻しの式、会社が負担した税額の法人税・消費税上の扱い、所得税徴収高計算書(納付書)の様式、報酬を受け取った個人側の確定申告、租税条約は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

個人に報酬を払う前に、源泉徴収の要否と税額を確かめませんか

国内に住所がある個人などに原稿料や弁護士・税理士などの報酬を払うときは、源泉徴収が要ります。税率は原則10.21%で、1回100万円を超える部分は20.42%です。差し引いた税金は、原則として翌月10日までに納めます。消費税は、請求書で区分されていれば除くことができます。交通費は、会社が交通機関などに直接払う通常必要な額なら含めなくて差し支えありません。差し引き忘れると会社が納め、本人から取り戻さなければ割り戻した税額も生じます。代表税理士が、支払先ごとの区分の判定と請求書の確認を行います。納付期限と支払調書の管理、漏れが見つかったときの是正まで通して対応します。最初の報酬を払う前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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