この記事のポイント
- 印紙税がかかるのは文書です。電磁的記録は文書に含まれません
- 領収書は5万円未満が非課税。消費税額等の区分記載で変わります
- 不動産の譲渡と建設工事の請負は令和9年3月31日まで軽減です
- 貼り忘れの過怠税は3倍。自主的な申出をすると1.1倍です
まず結論:印紙税がかかるのは「文書」です
印紙税は、文書にかかる税金です。
印紙税法2条は、こう定めています。
別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
電子契約が話題になるのは、この言葉が理由です。
国税庁は、質疑応答事例でこう回答しています。
印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。
紙の現物を渡せば課税、電磁的記録なら課税されない。これが出発点です。

課税文書に当たるかは、3つの条件で決まります
国税庁は、課税文書を次の3つすべてに当てはまる文書としています(No.7100)。
- 課税物件表の20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)の記載がある
- 当事者の間で課税事項を証明する目的で作成された文書である
- 印紙税法5条により課税しないとされた非課税文書でない
判定は、書類の題名では行いません。記載された文言について、当事者間の了解や慣習まで加味して総合的に判断します。
「覚書」でも「注文請書」でも、中身が課税事項を証明していれば課税文書です。
納める義務があるのは作成者です。共同で作成すると連帯して負います(3条)。
実務で当たるのは1号・2号・17号の3つです
第1号文書は不動産売買契約書、第2号文書は工事請負契約書、第17号文書は領収証やレシートです。
第1号と第2号は、記載された契約金額で税額が決まります。
不動産の譲渡と建設工事の請負の契約書は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成するものが軽減されます。
| 契約金額 | 1号(本則) | 1号の1 軽減後 不動産の譲渡 | 2号(本則) | 2号 軽減後 建設工事の請負 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 1万円 | 5千円 | 1万円 | 5千円 |
| 5,000万円 | 2万円 | 1万円 | 2万円 | 1万円 |
| 1億円 | 6万円 | 3万円 | 6万円 | 3万円 |
出典:No.7101・No.7102・No.7108。
軽減の対象は、不動産の譲渡と建設工事の請負だけです。
売上代金の受取書は、次のとおりです(No.7105)。
| 記載金額 | 税額 |
|---|---|
| 5万円未満のもの | 非課税 |
| 5万円以上 100万円以下のもの | 200円 |
| 100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 |
| 200万円を超え 300万円以下のもの | 600円 |
| 300万円を超え 500万円以下のもの | 1,000円 |
| 500万円を超え 1,000万円以下のもの | 2,000円 |
1,000万円超は、一覧表(その2)で確認します。
不動産の売却では、取得費と譲渡費用の記事もあわせてご覧ください。

消費税額等を分けて書くと、記載金額が変わります
国税庁は、消費税額等が区分記載されているときや、税込価格と税抜価格の両方が記載されているときは、その消費税額等を記載金額に含めないとしています。
使えるのは、第1号・第2号・第17号文書の3つだけです。
計算例
例1:広告の請負契約書(No.7124の例)
「請負金額1,100万円うち消費税額等100万円」→ 記載金額1,000万円 → 10,000円 「請負金額1,100万円(税込)」→ 記載金額1,100万円 → 20,000円例2:売上代金の領収書(同)
「代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」→ 記載金額48,000円 → 非課税 「合計52,800円」のみ → 記載金額52,800円 → 200円領収書に消費税額等を1行足すだけで、非課税になることがあります。
注意
免税事業者は別です。国税庁は、区分記載してもその金額を記載金額に含めるとしています(No.7124)。
電子契約とPDFメールを、国税庁はこう説明しています
電磁的記録は文書に含まれない。これが国税庁の説明です。
質疑応答事例は、注文請書を電磁的記録にしてメール送信する例について「おたずねの電磁的記録に印紙税は課税されません」と回答しています。
福岡国税局の文書回答事例(平成20年10月24日回答)は、次の照会者の見解を「貴見のとおりで差し支えありません」としました。
注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、(…)課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
分かれ目は、紙の現物を相手に交付したかどうかです。
注意
同じ回答は、送信した後に現物を持参するなどして相手方に交付した場合には「課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課される」としています。電子で送ったあとに紙を渡すと、その紙に印紙が要ります。
約束手形と小切手の取扱いも、紙をやめる動きとして別の記事で扱っています。

指摘を受けるのは、だいたいこの5つです
印紙の不足を指摘されるのは、次の形が多いです。
- 電子で送ったあと紙も渡している ― 現物の交付で課税文書の作成になります
- 2通作って1通にしか貼っていない ― 双方の署名押印がある副本も課税対象です
- 「税込」とだけ書いた ― 消費税額等が明らかでないため税込金額が記載金額です
- 請求書に「済」と書いて渡した ― 受取事実を証明する目的なら第17号文書です
- 貼ったが消印していない ― 印紙税法20条3項の過怠税の対象です
いちばん多いのは、電子と紙が混ざっている状態です。
ポイント
電子契約で結んだ工事を、あとから紙の変更契約書で増額する場合です。国税庁は、電磁的記録は文書に含まれないため、増加金額ではなく変更後の金額(当初と増加分の合計)が記載金額になるとしています。当初を電子にしたぶん、紙の印紙が重くなります。
貼り忘れは3倍、自主的な申出をすると1.1倍です
印紙税法20条1項は、納付しなかった印紙税の額とその2倍の合計額、つまり3倍の過怠税を徴収するとしています。
ただし、調査を予知せずに自分から申し出た場合は軽くなります。国税庁は、印紙税不納付事実申出書を提出すると「納付すべき印紙税の額の1.1倍に軽減されます」としています(No.7131)。
計算例
例1:3,000万円の建設工事請負契約書(軽減後10,000円)を貼り忘れた
調査で指摘された場合 10,000円 × 3 = 30,000円 自主的に申し出た場合 10,000円 × 1.1 = 11,000円(差 19,000円)例2:200円の印紙を貼り忘れた
3倍では600円ですが、印紙税法20条4項により 1,000円 自主的に申し出た場合は同条5項により切上げがなく 220円いずれも一定の前提を置いた目安です。消印していない印紙があると、同条3項の過怠税が加わります。
過怠税は、経費になりません。
国税庁は、過怠税は全額が損金にも必要経費にもならないとしています。損金になる税金とならない税金の区分は別の記事です。
逆に、貼りすぎたときは還付の対象になることがあります。印紙が過大なもの、課税文書でない文書に誤って貼ったもの、使用する見込みのなくなったものです。
文書の現物を添えて、印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書を所轄税務署長に提出します。請求権は5年で消滅します(No.7130)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 契約書・注文請書・領収書を書式ごとに数える
- 紙の現物を相手に渡しているか、電磁的記録だけかを書き分ける
- 紙のものは、契約金額と貼った印紙の額を並べる
- 領収書の書式に、消費税額等を区分記載する欄があるかを見る
ここから先は個別判断です。
何号文書に当たるか、記載金額をいくらと見るかは、文書ごとに変わります。国税庁の質疑応答事例も、照会の事実関係を前提とした回答です。
税理士が入ると変わるのは、文書を作る前に決めることです
ひとつめは、文書の棚卸しです。契約書と領収書の書式を集め、号数と税額を一覧にします。
ふたつめは、書式の手直しです。消費税額等の区分記載欄を設けます。
みっつめは、電子と紙の切り分けです。紙を渡す運用が残っていないかを確かめます。
よっつめは、過去分の点検です。貼り忘れには申出書、貼りすぎには還付申請と、行き先を分けます。
印紙税は、文書を作ったあとでは書き直せません。
小松公認会計士・税理士事務所では、書式の見直しから決算・申告まで続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 領収書に印紙が要るのは、いくらからですか?
記載金額5万円以上です。印紙税法別表第一は、第17号文書の非課税物件を「記載された受取金額が五万円未満の受取書」としています。売上代金の受取書は、5万円以上100万円以下で200円です。営業に関しない受取書は非課税です(No.7105・No.7125)。
Q2. 電子契約にすれば、印紙税はかからないのですか?
国税庁は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり「電磁的記録は文書に含まれません」としています。ただし、電子メールで送った後に現物を交付した場合は、その現物に印紙税が課されるとされています。照会の事実関係を前提とした回答です。
Q3. 消費税額を分けて書くと、印紙税は変わりますか?
変わることがあります。国税庁は、消費税額等が区分記載されているときはその金額を記載金額に含めないとしています。「48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」なら記載金額は48,000円で非課税です。対象は第1号・第2号・第17号文書です(No.7124)。
Q4. 印紙を貼り忘れると、いくら取られますか?
原則は3倍です。印紙税法20条1項は、納付しなかった印紙税の額とその2倍の合計額を過怠税として徴収するとしています。調査を予知せずに印紙税不納付事実申出書を提出した場合は1.1倍に軽減されます。過怠税は全額が損金・必要経費になりません(No.7131)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。印紙税法2条・3条・5条・8条・14条・20条および別表第一(第1号文書・第2号文書・第17号文書)、国税庁タックスアンサーNo.7100・No.7101・No.7102・No.7105・No.7108・No.7120・No.7124・No.7125・No.7130・No.7131、国税庁質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」「電磁的記録(電子契約)に係る契約金額等を記載した変更契約書の記載金額」、福岡国税局文書回答事例「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」(平成20年10月24日回答)の内容を扱っています。第3号文書(手形)・第4号文書(株券)・第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)をはじめ、本記事で扱った3種類以外の文書の税額は扱っていません。第17号文書のうち受取金額が1,000万円を超えるものの税額、印紙税額の一覧表(その2)の内容、災害に関する非課税措置、税印による納付や書式表示による納付といった印紙以外の納付方法、印紙税法基本通達の全文も扱っていません。国税庁の質疑応答事例および文書回答事例は、照会に係る事実関係を前提とした回答であり、事実関係が異なれば課税関係も異なることがあります。軽減措置の適用期限や税額は改正されることがあります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「印紙税法」https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000023
- 国税庁タックスアンサーNo.7101「不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7101.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.7105「金銭又は有価証券の受取書、領収書」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.7124「消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7124.htm
- 国税庁 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htm
契約書と領収書の書式を、いまの運用に合わせて見直しませんか
印紙税は、文書を作ったあとでは書き直せません。何号文書に当たるのか、記載金額をいくらと見るのか、電子と紙のどちらで相手に渡しているのか。このうち一つでもずれていると、貼りすぎか貼り忘れのどちらかが起きます。代表税理士が、契約書と領収書の書式の棚卸し、消費税額等の区分記載欄の設計、電子と紙の切り分け、過去分の点検と還付申請の要否まで、通して対応します。新しい書式を使い始める前にご相談ください。
無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り決算と申告だけのご依頼は、決算申告のみのプランをご覧ください。