この記事の答え
- 売買契約の前に、引渡しの年・期限・買主・内訳・取得費の資料の5点を確かめます。
- 年明けに売ると税率が下がる人もいれば、自宅の3,000万円の控除の期限を過ぎる人もいます。
- 利益1,000万円で5年の境目をまたぐ人は、税金が約193万円変わります(特例なしの目安)。
売買契約の前に、何を確かめますか

個人が不動産を売るときは、売買契約の前に次の5点を確かめます。引渡しの日と買主は契約書で決まり、税率や特例に関わるからです。
| 確かめる点 | 関わること |
|---|---|
| 1 引渡しの年と持っていた期間 | 税率 |
| 2 住まなくなった日からの期限 | 自宅の3,000万円の控除 |
| 3 買主が親子や夫婦などでないか | 3,000万円の控除、買主の贈与税 |
| 4 買ったときの土地と建物の内訳 | 建物の取得費 |
| 5 取得費の資料 | 売った利益の金額 |
取得費とは、買ったときの代金や手数料などの合計です。
引渡しの日で、税金はどう変わりますか

引渡しが年内か年明けかで、税金が下がる人と上がる人がいます。税金の計算で売った日は、原則として買主に引き渡した日だからです。
引き渡した日は、通常、登記に必要な書類などを渡し、代金を受け取り終えた日です。契約の効力が生じた日(一般的には契約を結んだ日)を、売った日として申告することもできます。
基本の税率は、売った年の1月1日に、持っていた期間が5年を超えるかで決まります。
自宅を売る人は、要件を満たせば利益から最高3,000万円を引けます。住まなくなった家を売る期限は、住まなくなった日から3年を経過する日が入る年の12月31日です。
計算例
例:令和8年12月か令和9年1月に売る、利益1,000万円のAさんとBさん
Aさんは令和3年に買った賃貸用の部屋を売ります。特例は使えません。
Bさんは平成30年に買った自宅に、令和5年3月から住んでいません。控除の期限は令和8年12月31日で、ほかの要件は満たします。
Aさんの12月(5年以下):1,000万円 × 39.63% = 約396万円 AさんとBさんの1月(5年超):1,000万円 × 20.315% = 約203万円 Bさんの12月:控除で利益が0円契約と引渡しを同じ月にした場合です。ほかの所得の税金は含みません。
これは一定の前提を置いた目安で、率は所得税などと住民税の合計です。令和9年分は所得税に上乗せする税の内訳が変わりますが、合計の率は同じです。Bさんは税金が0円でも、書類を添えた確定申告が必要です。
注意
12月に契約して1月に引き渡す人は、どちらの日で申告するかを選べます。選んだ日で、5年の判定や、控除の期限に間に合うかが変わることがあります。引渡日と契約日の記事をご覧ください。
買主が親子や夫婦だと、何が変わりますか

親子や夫婦などに売ると、自宅の3,000万円の控除は使えません。生計を一にする親族や、売った後にその家で同居する親族も同じです。内縁関係にある人や、特殊な関係のある法人なども含まれます。
個人に著しく安い値段で売ると、時価との差額は、原則として買主が贈与で受け取ったものとみなされます。時価とは、通常の取引価額です。著しく安いかどうかは、事案ごとに判定します。
買ったときの内訳と資料は、なぜ先に確かめますか

買ったときの資料がないと、取得費が少なくなり、利益が増えることがあります。利益は、売れた金額から取得費と売るための費用(仲介手数料など)を引いた金額です。
取得費が分からないときは、売れた金額の5%を取得費にできます。3,000万円で売る人なら150万円です。相続した不動産は、亡くなった人が買ったときの代金などを基に計算するので、その資料も探します。
建物だけは、持っていた間に目減りした分を取得費から引くので、土地と建物の内訳が要ります。買ったときの契約書に内訳も消費税額もない人は、買ったときの時価の割合で分けます。
どんな失敗があり、どこまでご自身でできますか
日付を数え、資料を探すところまでは、ご自身でできます。次の3人は失敗の例です。
- Cさん:年明けにずれた ― Cさんは、契約と引渡しが年明けにずれ、自宅の控除の期限を過ぎました。
- Dさん:息子に売った ― Dさんは、自宅の3,000万円の控除を見込んでいましたが、使えませんでした。
- Eさん:資料を後回しにした ― Eさんは、売った後に買ったときの資料を探しましたが、ありませんでした。
ご自身でできる
- 手に入れた年に6を足して、境目を確かめる
- 住まなくなった日から、控除の期限を数える
- 買ったときの契約書と領収書を探す
個別の判断が要る
- 相続やもらった不動産を売る
- 親族や自分の会社に売る
- 12月に契約して1月に引き渡す
- 買ったときの内訳や資料がない
売る前に税理士に見せると、何が変わりますか
税理士に買ったときの契約書と今回の条件を見せると、契約の前に税金の見込みが分かります。見込みが分かれば、引渡しの日や買主を決める材料になります。
小松公認会計士・税理士事務所では、次のことを行います。
- 税率と取得費を確かめて、税金の見込みを試算する
- 自宅の3,000万円の控除など、使える特例かどうかを判定する
- 資料がないときは、取得費の合理的な算定を検討する
- 売った後は、確定申告書と計算の明細書を作り、電子申告で提出する
ご相談から申告まで、全国どこからでもオンラインで完結します。売る前のご相談もお受けしています。申告を頼むかの判断の記事もご覧ください。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 期限の年の12月に契約し、翌年1月に引き渡すと、自宅の控除に間に合いますか?
売った日は原則として引渡しの日ですが、契約日で申告することもできます。国税庁は自宅の特例や空き家の特例の事例で、選んだ日を基に判断しています。期限そのものの事例ではないので、契約の前に税理士へ確かめましょう。
Q2. 売る契約書にも、土地と建物の内訳は必要ですか?
国税庁の手引きの記載例では、売った金額は土地と建物を合わせて1つの欄に書きます。ただし、土地と建物で持ち始めた時期が違う人は、5年の判定が別々です。この場合や、課税事業者が事業用の建物を売る場合は、代金の内訳も税額に関わることがあります。
Q3. 兄弟に売るときも、自宅の3,000万円の控除は使えませんか?
兄弟は、親子や夫婦と違い、一律に対象外ではありません。生計を一にしている兄弟や、売った後にその家で同居する兄弟に売ると使えません。それ以外は、ほかの要件を満たせば使える余地があります。
Q4. 売る前に税理士へ見せるものは何ですか?
買ったときの売買契約書と領収書、今回の買主・金額・引渡しの予定日が分かる資料です。住まなくなった自宅は、その時期も伺います。相続した不動産は、亡くなった人が買ったときの資料も見せてください。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法33条・38条・60条、租税特別措置法31条・32条・35条、同施行令20条の3・23条、相続税法7条、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の5・5条の6・5条の9(令和9年1月1日施行分)、所得税基本通達36-12、国税庁タックスアンサー No.3102・No.3202・No.3208・No.3211・No.3252・No.3258・No.3261・No.3270・No.3302・No.3305・No.4423、国税庁「令和7年分譲渡所得の申告のしかた」、国税庁の質疑応答事例「売買契約後に被相続人居住用家屋が取り壊される場合(契約日ベースで申告する場合)」「居住用財産の譲渡契約を締結した者が所有権移転登記及び代金決済を行う前に死亡した場合」の内容を扱っています。3,000万円の控除のほかの要件の全部、マイホームの軽減税率と買換えの特例、相続した空き家の特例、相続税の取得費加算の特例、売主が亡くなった場合や出国する場合、国外の不動産、不動産業として売買する場合、事業用の建物の売却にかかる消費税の計算、著しく低い価額の具体的な基準、法人に時価より安く売る場合の扱い、建物の目減り分の計算の式、内訳がないときの分け方の詳しい手順、取得費の合理的な算定の方法、売るための費用の範囲、税金の納め方、弊所の料金は扱っていません。記事中の計算例は令和8年12月または令和9年1月に売ることを前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・使う特例・ほかの所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3102 譲渡所得の申告期限https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm
- 国税庁 令和7年分譲渡所得の申告のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kisairei/joto/index.htm
売買契約の前に、税金の分かれ目を確かめませんか
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