不動産譲渡所得

不動産を売った年に親が亡くなったら
譲渡所得の準確定申告と相続税の関係

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 引渡し後に亡くなったら、譲渡所得は亡くなった方の準確定申告で申告します
  • 期限は知った日の翌日から4か月。前年分が未提出で翌年の申告期限前に亡くなれば、前年分も同じです
  • 住んでいた家の3,000万円控除は申告書への記載と書類の添付も要件です
  • 納める所得税等は債務控除の対象。残っていた売却代金は相続財産です

まず結論:引渡し後に亡くなったら、譲渡所得は亡くなった方の準確定申告で申告します

親が家や土地を売り、引渡しも終えたあとに亡くなることがあります。

売った日は原則として、資産を引き渡した日です(所得税基本通達36-12)。

引渡しが亡くなる前なら、売却のもうけ(譲渡所得)は亡くなった方の所得です。

その所得税は、相続人が代わりに申告します。これを準確定申告といいます(国税庁タックスアンサー No.2022)。

売却のもうけは準確定申告で、残った売却代金は相続税の計算で扱います。

引渡しの前に亡くなった場合は扱いが違います。引渡し前に売主が亡くなった場合の記事をご覧ください。

引渡し後に売主が亡くなったら、準確定申告で申告します
引渡し後に売主が亡くなったら、準確定申告で申告します

期限は「知った日の翌日から4か月」。翌年の申告期限前に亡くなれば前年分も同じです

準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です(所得税法125条1項)。

翌年の申告期限の前に、前年分を出さずに亡くなった場合も、同じ期限です(同法124条1項)。

確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限(原則として翌年3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合、この場合の準確定申告の期限は、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

(国税庁タックスアンサー No.2022)

亡くなった日(例)申告する年分期限の例
売った年の途中(令和8年10月10日)売った年分令和9年2月10日
翌年の申告期限前で、前年分は未提出(令和9年2月1日)前年分(売った年分)と、必要なら本年分令和9年6月1日

亡くなった日に相続の開始を知った場合の例です。

ポイント

相続税の申告が要る場合、その期限は知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。準確定申告の期限は、それより6か月早く来ます。

準確定申告の全体の流れは、亡くなった方の確定申告の記事にまとめています。

準確定申告の期限は、知った日の翌日から4か月です
準確定申告の期限は、知った日の翌日から4か月です

申告書は相続人の連署で出し、3,000万円控除は記載と添付も要件です

相続人が2人以上いるときは、全員が名前を連ねた1通の申告書で出すのが原則です。

前項の申告書を提出する場合において、相続人が二人以上あるときは、当該申告書は、各相続人が連署による一の書面で提出しなければならない。

ただし、他の相続人の氏名を付記して各別に提出することを妨げない。

(所得税法施行令263条2項)

各相続人の氏名・住所・続柄などを書いた付表も添えます(No.2022)。

亡くなった方が住んでいた家なら、親子間の売買でないかなど3,000万円控除の要件を確かめます。

以前に住んでいた家も対象です(No.3302)。

ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。

準確定申告書も、所得税法の「確定申告書」に当たります(所得税法2条1項37号)。

3,000万円控除は、申告書への記載と書類の添付が条件です(租税特別措置法35条12項)。

控除で税金が0円になる場合でも、控除を使うには申告が必要です。

注意

記載や添付がないときに後から適用を受けられるのは、例外です(同条13項)。やむを得ない事情があると税務署長が認め、書類を出した場合に限ります。売買契約日の前日の住民票と売った家の住所が違えば、戸籍の附票の写しなども添えます(No.3302)。

納める所得税は債務として差し引き、残っていた売却代金は相続財産に入れます

準確定申告で納める所得税などは、相続税の計算で債務として差し引けます。

亡くなった時に確定していない税金でも、差し引けます(No.4126、相続税法14条2項)。

ただし、相続人の責任で生じた延滞税や加算税は差し引けません(No.4126)。

一方、亡くなった時に残っていた売却代金は、預金などとして相続財産に入ります(No.4105)。

計算例

例:親が令和8年中に、住まいではない土地を4,000万円で売った場合

前提 所有期間5年超・取得費1,800万円・譲渡費用200万円・引渡し後に死亡 課税長期譲渡所得 4,000万円 - 1,800万円 - 200万円 = 2,000万円 所得税 2,000万円 × 15% = 3,000,000円 復興特別所得税 3,000,000円 × 2.1% = 63,000円 準確定申告で納める額 = 3,063,000円 相続税では 預金4,000万円を財産に、3,063,000円を債務に入れる

譲渡費用は別に払い、売却代金が預金に残っていた、一定の前提を置いた目安です。

税率は令和8年分で、所得控除はほかの所得から引ききるものとし、住民税は含めていません。

税金は債務に、売却代金は財産に、両方を入れます。

補足

住民税は、1月1日に住所がある人に課されます(地方税法24条1項・39条・294条1項・318条)。売った年の途中で亡くなった方には、その年の所得に対する翌年度の住民税は課されないことになります。

相続財産になるのは、残っていた売却代金です
相続財産になるのは、残っていた売却代金です

相続人が売った場合と違い、取得費加算の特例は使えません

取得費加算は、相続税額の一部を、売った財産の取得費に足せる特例です。

対象は、相続や遺贈で財産を取得し、相続税を課された人です(No.3267)。

その人が、その財産を一定の期間内に売った場合に使えます(租税特別措置法39条1項)。

親が亡くなる前に引渡しまで終えた不動産は、相続人が相続して売ったものではなく、対象外です。

比べる点引渡し後に親が亡くなった相続後に相続人が売った
申告する人相続人が親の準確定申告で売った相続人が自分の申告で
申告の期限知った日の翌日から4か月原則、売った年の翌年3月15日
取得費加算使えない要件を満たせば使える
相続税の財産残っていた売却代金その不動産

相続人が売る場合は、相続した実家を売るときの記事で扱っています。

つまずきやすいのは、この5つの場面です

  • 期限を相続税の10か月と取り違える ― 無申告加算税や延滞税がかかることがあります(No.2024)
  • 3,000万円控除の記載や添付を忘れる ― 控除の条件を満たしません
  • 契約書を探さず、5%で申告する ― 実際の取得費より小さくなることがあります(No.3258)
  • 仲介手数料や印紙代を入れ忘れる ― 売るために直接かかった譲渡費用です(No.3255)
  • 納めた所得税や売却代金の預金を、相続税で漏らす ― 相続税の申告がずれます

計算例

例:上の例で、購入時の書類が見つからなかった場合

5%で申告 4,000万円 × 5% = 200万円が取得費 → 納める額 5,513,400円 取得費1,800万円で申告した場合との差 2,450,400円 譲渡費用200万円を入れ忘れた場合 3,369,300円(差 306,300円)

いずれも同じ前提を置いた目安です。

亡くなった方の書類は、相続人が探すことになります
亡くなった方の書類は、相続人が探すことになります

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

書類を集めて事実を書き出すところまでは、ご自身で進められます。

  1. 売却時の売買契約書・精算書・仲介手数料などの領収書を探す
  2. 購入時の契約書・領収書を探す(なければ登記の資料も)
  3. 通帳で、売却代金の入金とその後の出金を確かめる
  4. 相続人全員の氏名・住所と、亡くなった日・知った日を書き出す

取得費の組み立て、3,000万円控除の要件、相続税との整合は、資料と事情で結論が変わります。

なお、国税庁の案内では、確定申告書等作成コーナーで準確定申告書は作れません。

e-Taxソフト等を使うよう案内されています。

税理士に頼むと変わるのは、期限の管理と取得費の根拠です

小松公認会計士・税理士事務所では、売却後に亡くなった方の申告で次の作業を行います。

  • 準確定申告と相続税の期限を並べた日程の作成と、探す書類のご案内
  • 取得費と譲渡費用の根拠の整理と、5%で申告する場合との比較
  • 3,000万円控除などの要件の確認と、記載・添付書類の準備
  • 準確定申告書と付表の作成、相続人全員の確認のとりまとめと提出
  • 納めた所得税と残っていた売却代金を、相続税の申告に反映する整理

相続人が2人以上のe-Taxの申告では、各相続人が署名した確認書も送ります。

税理士の代理送信なら、相続人代表の電子証明書を省略できます。

全国どこからでも、資料をオンラインで共有して進められます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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よくある質問(FAQ)

Q1. 親が売った家の譲渡所得は、誰がいつ申告しますか?

引渡しが亡くなる前に済んでいれば、亡くなった方の譲渡所得です(所得税基本通達36-12)。相続人が、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をします(所得税法125条1項)。相続人が2人以上なら、原則として連署した1通の申告書で出します。

Q2. 前年に売って、翌年の申告前に亡くなった場合はどうなりますか?

売った年分を申告しないまま、翌年1月1日から申告期限までに亡くなった場合です。前年分の期限も、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内になります(所得税法124条1項、No.2022)。本年分も申告が要るときは、同じ期限です。

Q3. 準確定申告で納めた所得税は、相続税で差し引けますか?

差し引けます。亡くなった後に相続人が納める所得税などは、亡くなった時に確定していなくても債務になります(No.4126)。ただし、相続人の責任で生じた延滞税や加算税は差し引けません。残っていた売却代金は、預金などとして相続財産に入ります。

Q4. 引渡し後に親が亡くなり、相続税がかかるなら、取得費加算の特例は使えますか?

使えません。取得費加算は、相続や遺贈で財産を取得した人が、その財産を一定の期間内に売った場合の特例です(租税特別措置法39条1項、No.3267)。親が亡くなる前に引渡しまで終えた不動産は、相続人が相続して売ったものではなく、対象外です。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条1項37号・124条1項・125条1項、所得税法施行令263条2項、所得税基本通達36-12、相続税法14条2項・27条1項、相続税法施行令3条1項、租税特別措置法35条12項・13項・39条1項、地方税法24条1項・39条・294条1項・318条、国税庁タックスアンサー No.2022・No.2024・No.3255・No.3258・No.3267・No.3302・No.4105・No.4126、国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」の内容を扱っています。契約後・引渡し前に売主が亡くなった場合、契約の効力発生の日を選ぶ申告(所得税基本通達36-12ただし書)、3,000万円控除のその他の要件と添付書類の細目、軽減税率の特例、建物の取得費の計算、短期譲渡所得、相続税の財産評価と小規模宅地等の特例、相続放棄・限定承認、還付となる準確定申告と所得控除の扱い、期限が休日に当たる場合の扱い、翌年に亡くなった場合の住民税の計算と手続、令和9年分以後の復興特別所得税(税率1.1%)と防衛特別所得税(税率1%)、無申告加算税・延滞税の計算、弊所の料金は扱っていません。記事中の計算例は令和8年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・使う特例・ほかの所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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親が不動産を売り、引渡しを終えたあとに亡くなったら、その譲渡所得は相続人が準確定申告で申告します。期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月で、相続税の申告より先に来ます。住んでいた家の3,000万円控除は、申告書への記載と書類の添付も要件です。相続人が相続後に売る場合に使える取得費加算は、この場合は使えません。代表税理士が、探す書類のご案内から、取得費と譲渡費用の根拠の整理、準確定申告書と付表の作成・提出、相続税の申告に反映する整理まで担当します。売買契約書と通帳をお手元に、お早めにお申し込みください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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