不動産譲渡所得

土地を分筆して一部だけ売ったとき
取得費は面積で按分するのが原則です

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 一部だけ売った土地の取得費は面積の割合で按分するのが原則です
  • 売った部分と残りの時価が適正に算定できる場合は時価按分も認められます
  • 取得時の測量費は取得費、売るための費用は譲渡費用。分筆登記費用は個別判断
  • 残った土地の取得費は全体から配分した額を引いた残額。今回の按分が後日に響きます

まず結論:一部だけ売ったときの取得費は、面積の割合で分けるのが原則です

広い土地を分筆して、一部だけ売ることがあります。

分筆とは、一筆の土地を登記のうえで二つ以上に分けることです。

このとき迷うのが、売った部分の「取得費」をいくらにするかです。

取得費とは、その土地を買ったときにかかった金額のことです。

結論は、土地全体の取得価額を面積の割合で按分するのが原則です。

按分とは、一定の割合で金額を分けることをいいます。

所得税基本通達38-1の2が、このように定めています。

ただし、売った部分と残った部分の時価で按分する方法も認められています。

一部だけ売った土地の取得費は面積の割合で按分するのが原則です
一部だけ売った土地の取得費は面積の割合で按分するのが原則です

通達は「面積按分が原則、時価按分も差し支えない」と書いています

結論として、通達は面積按分を原則とし、時価按分を選べる方法として認めています。

出発点は所得税法38条1項です。

取得費は「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」とされています。

一部を売ったときは、この金額を売った部分に配分します。

一括して購入した一団の土地の一部を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、原則として当該土地のうち譲渡した部分の面積が当該土地の面積のうちに占める割合を当該土地の取得価額に乗じて計算した金額によるのであるが、当該土地のうち譲渡した部分の譲渡時の価額が当該土地の譲渡時の価額のうちに占める割合を当該土地の取得価額に乗じて計算した金額によっても差し支えない。

(所得税基本通達38-1の2)

前半が原則の面積按分、後半が時価按分です。

時価按分は「差し支えない」という書き方で、選べる方法として置かれています。

国税庁の質疑応答事例にも、同じ趣旨の回答があります。

1,485㎡のうち495㎡を売った事例で、売った部分の単価が残りより高いケースでした。

回答は面積按分を原則とし、時価按分も認めています。

条件は「譲渡部分と残部分の時価がそれぞれ適正に算定できる場合」です。

ポイント

時価按分は、常に選べる方法ではありません。売った部分と残った部分の時価が、それぞれ適正に算定できることが前提です。迷ったら面積按分が出発点と考えてください。

同じ売却でも、按分の方法で税額が45万円あまり変わります

結論として、按分の方法が違うと取得費が変わり、税額も変わります。

一定の前提を置いた目安として、次の例で確かめます。

計算例

例:1,000㎡を3,000万円で一括購入し、300㎡を分筆して1,500万円で売却(残り700㎡の譲渡時の時価は2,500万円・譲渡費用50万円・長期譲渡)

【面積按分】取得費 = 3,000万円 × 300㎡ ÷ 1,000㎡ = 900万円譲渡所得 = 1,500万円 - 900万円 - 50万円 = 550万円税額 = 550万円 × 20.315% = 1,117,325円【時価按分】取得費 = 3,000万円 × 1,500万円 ÷(1,500万円 + 2,500万円)= 1,125万円譲渡所得 = 1,500万円 - 1,125万円 - 50万円 = 325万円税額 = 325万円 × 20.315% = 660,237円差額 = 1,117,325円 - 660,237円 = 457,088円

20.315%は、長期譲渡所得の所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた税率です。

この例では売った部分の単価が高いため、時価按分のほうが取得費は大きくなります。

どちらが大きくなるかは土地ごとに違い、時価按分が常に有利とは限りません。

この数字は仮の前提による目安であり、実際の税額は資料により変わります。

按分の方法が違うと取得費が変わり税額も変わります
按分の方法が違うと取得費が変わり税額も変わります

測量・境界確定・分筆登記の費用は、取得費か譲渡費用かで扱いが分かれます

結論として、取得時の測量費は取得費、売るための費用は譲渡費用が基本です。

譲渡費用とは、土地を売るために直接かかった費用のことです。

所得税基本通達38-10(注)2は、土地の測量費を取得費に算入するとしています。

一方、No.3202は譲渡費用の例に「測量費」を挙げています。

所得税基本通達33-7(1)には、譲渡費用の例が書かれています。

「登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用」です。

つまり、同じ測量費でも「いつ・何のために」払ったかで行き先が変わります。

費用扱い根拠
土地を買ったときの測量費取得費所基通38-10(注)2・No.3252
売るために行った測量費譲渡費用No.3202・所基通33-7
分筆登記の費用売るために直接必要だったかで個別判断所基通33-7(1)
固定資産税・修繕費譲渡費用にならない所基通33-7(注)

注意

分筆登記の費用を名指しした通達やタックスアンサーは、当事務所が確認した範囲では見当たりません。「分筆費用は譲渡費用」と決めつけず、その分筆が売却のために直接必要だったかを個別に確かめます。また、事業所得や不動産所得の必要経費に入れた測量費は、取得費に重ねて入れません。

取得時と売却時の費用の線引きは、測量費や取壊し費用の記事で詳しく扱っています。

残った土地の取得費は、全体から配分した額を引いた残りになります

結論として、残った土地の取得費は、全体の取得価額から売った部分に配分した額を引いた残額です。

先ほどの例なら、面積按分では3,000万円-900万円=2,100万円が残ります。

時価按分では3,000万円-1,125万円=1,875万円です。

今回の按分方法が、残った土地を後日売るときの取得費まで決めてしまいます。

今回の按分の計算と根拠は、資料として残しておく必要があります。

補足

共有者どうしで土地を分ける場合や、取壊し後に敷地を売る場合は、別の論点があります。共有物分割の記事取壊し後の敷地の記事をご覧ください。

残った土地の取得費は全体から配分した額を引いた残額です
残った土地の取得費は全体から配分した額を引いた残額です

申告で指摘を受けやすい失敗パターン

結論として、失敗の多くは按分の根拠と費用の区分にあります。

  • 取得価額を全額引いてしまう。300㎡しか売っていないのに、3,000万円全額を取得費にする例です。申告漏れの指摘につながります。
  • 時価按分を使ったが、時価の根拠がない。「道路に面して高い」という感覚だけでは、適正に算定できる場合かを説明できません。
  • 必要経費に入れた測量費を取得費にも入れる。不動産所得などで経費にした測量費を取得費に重ねると、二重計上になります。
  • 残った土地の取得費を記録していない。数年後に残りを売るとき、取得費の説明ができなくなります。

いずれも、按分の計算過程と根拠資料を残していれば防げるものです。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

結論として、資料集めと面積按分の計算までは、ご自身で進められます。

  1. 土地全体を買ったときの売買契約書と領収書をそろえる
  2. 分筆前後の登記事項証明書で、全体の面積と売った部分の面積を確かめる
  3. 面積の割合を取得価額に掛け、原則の取得費を計算する
  4. 測量・境界確定・分筆登記・仲介手数料の領収書を、時期と目的ごとに分ける

ここから先は、個別判断になります。

時価按分を使えるか、時価をどう示すか、分筆登記の費用をどこに入れるかです。

この3点は土地の形状や売却の経緯で答えが変わるため、一般論では決められません。

ここで手を止めて、資料とともにご相談ください。

資料集めと面積按分の計算まではご自身で進められます
資料集めと面積按分の計算まではご自身で進められます

税理士が入ると何が変わるか

結論として、税理士は按分の計算と根拠づけ、申告書への反映までを担います。

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • 売買契約書と登記事項証明書から、全体の取得価額と面積を確定する
  • 面積按分と時価按分の両方で試算し、差額と前提を一覧にする
  • 時価按分を検討する場合、適正に算定できる場合にあたるかを資料で確かめる
  • 測量費・登記費用・仲介手数料を、取得費・譲渡費用・対象外に仕分ける
  • 確定申告書に添える計算明細に按分の過程を反映し、根拠資料を整える
  • 残った土地の取得費を計算書として残し、後日の売却に備える

試算を並べて前提を示すことで、どの方法を選んだかを後から説明できる状態にします。

契約書や登記の資料が手元にそろっていなくても、分かる範囲でお聞かせください。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 一括で買った土地の一部だけを売りました。取得費はどう計算しますか?

土地全体の取得価額に、売った部分の面積が全体に占める割合を掛けるのが原則です(所得税基本通達38-1の2)。売った部分と残った部分の時価がそれぞれ適正に算定できる場合は、時価の比で按分することもできます。

Q2. 売った部分は道路に面していて単価が高いです。時価で按分したほうがよいですか?

一概には言えません。国税庁の質疑応答事例は、時価がそれぞれ適正に算定できる場合に限り時価按分を認めています。時価をどう示すかは土地ごとの個別判断です。試算のうえで、根拠を用意できるかを含めてご相談ください。

Q3. 分筆登記や測量の費用は、取得費と譲渡費用のどちらですか?

土地を買ったときの測量費は取得費です(所得税基本通達38-10(注)2・No.3252)。売るために行った測量費は譲渡費用の例に挙げられています(No.3202)。分筆登記の費用は、売却のために直接必要だったかで個別判断になります。

Q4. 残った土地を後日売るとき、取得費はどうなりますか?

全体の取得価額から、今回売った部分に配分した額を差し引いた残額が残った土地の取得費です。今回の按分方法がそのまま後日に影響しますので、按分の計算過程と根拠資料を保管しておいてください。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法38条1項、所得税基本通達38-1の2・38-10(注)2・33-7、国税庁質疑応答事例「一括して購入した土地の一部を譲渡した場合の取得費」、国税庁タックスアンサーNo.3252「取得費となるもの」・No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」を扱っています。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は個別の事情により異なります。時価按分を用いる際の時価の算定方法や不動産鑑定の要否、分筆登記費用が取得費・譲渡費用のいずれに当たるかの結論、相続や贈与で取得した土地の取得費(概算取得費・取得費加算を含む)、借入金の利子の取得費算入、共有物分割の課税関係、建物を取り壊した後の敷地に係る特例の要件、残った土地を後日売却したときの税額、居住用財産の特別控除や軽減税率の適用要件については扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

土地の一部を売る前に、按分の方法と残った土地への影響をご確認ください

一括で買った土地の一部を分筆して売ると、取得費の按分方法によって税額が変わり、その結果は残った土地を売る年まで引き継がれます。面積按分と時価按分の両方で試算し、測量費や分筆登記費用の行き先を資料に基づいて整理したうえで、確定申告書に添える計算明細まで代表税理士が作成します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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