不動産譲渡所得

特定住宅地造成事業等の1,500万円控除
自治体・公社に土地を売るときの対象と注意

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

YouTubeチャンネルを見る →

この記事のポイント

  • 自治体や公社などへの売却で、譲渡益から最大1,500万円を控除できます
  • 所有期間は問いません。長期でも短期でも使えます
  • 申告するときは、買主が出す証明書の添付が必要です
  • 優良住宅地の軽減税率とは重ねて使えません

まず結論:対象の買取りなら、譲渡益から1,500万円を差し引けます

租税特別措置法34条の2は、特定の事業のために土地等が買い取られたときの特別控除です。

使えれば、譲渡益(売って得たもうけ)から最大1,500万円を差し引けます。

ただし、対象になる買取りは条文の各号で決められています。

自治体や公社に土地を売るときは、1,500万円の特別控除が使えるかを最初に確かめます
自治体や公社に土地を売るときは、1,500万円控除が使えるかを最初に確かめます

対象になる買取りは、条文の各号で決まっています

対象は、同条2項の第1号から第25号(枝番号を含む)です。

代表的なのは第1号です。

地方公共団体(その設立に係る団体で政令で定めるものを含む。第十二号において同じ。)、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人都市再生機構、成田国際空港株式会社、地方住宅供給公社又は日本勤労者住宅協会が行う住宅の建設又は宅地の造成を目的とする事業(政令で定める事業を除く。)の用に供するためにこれらの者に買い取られる場合

(租税特別措置法34条の2第2項第1号)

ただし、収用等の特例や2,000万円控除(34条2項1号)の対象になる買取りは、1号から除かれます。

ほかの主な号は次のとおりです。

  • 第2号 ― 収用を行う者が、収用の対償(代わりの土地)に充てるため買い取る場合など
  • 第3号 ― 土地区画整理事業として行う一団の宅地造成(面積5ヘクタール以上・公募で分譲など)
  • 第4号 ― 公有地の拡大の推進に関する法律6条1項の協議に基づく買取り
  • 第17号 ― 生産緑地地区内の土地が、自治体や土地開発公社などに買い取られる場合
  • 第25号 ― 農用地区域内の農用地が、農地中間管理機構に買い取られる場合

第3号は、令和8年12月31日までの買取りに限られます。

民間の開発業者が買主なら、第3号などの要件に当てはまるかを確かめます。

所有期間は問わず、控除は1年で1,500万円までです

この特例は、所有期間を問いません。

条文は、長期譲渡所得(5年超)と短期譲渡所得(5年以下)の両方を読み替えています。

買ってから5年以内の土地でも、要件を満たせば使えます。

所有期間の数え方は短期と長期の判定の記事で扱っています。

控除は、その年に該当した土地の全部を通じて1,500万円です。

譲渡益が1,500万円に満たないときは、譲渡益が限度です。

ポイント

ほかの特別控除と一緒に使うときは、その年の合計5,000万円が上限です(租税特別措置法36条)。条文は「通じて五千万円の範囲内において、政令で定めるところにより計算した金額とする。」と定めます。控除の順序は国税庁タックスアンサー No.3223に並んでいます。くわしくは特別控除の5,000万円の総枠の記事をご覧ください。

1,500万円の特別控除は所有期間を問わず、その年の合計で1,500万円が限度です
所有期間は問わず、控除はその年の合計で1,500万円までです

控除があると、税額はここまで変わります

長期譲渡所得の税率は、所得税15%と住民税5%です(国税庁タックスアンサー No.3208)。

令和8年分は、所得税額の2.1%の復興特別所得税もかかります。令和9年分からは、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%です。住民税も、控除後の金額に5%がかかります(地方税法附則34条)。

計算例

例:所有期間5年超の土地を30,000,000円で売ったとき

取得費+譲渡費用 5,000,000円 譲渡益 30,000,000円 - 5,000,000円 = 25,000,000円 【控除なし】所得税 25,000,000円 × 15% = 3,750,000円 復興特別所得税 3,750,000円 × 2.1% = 78,750円 住民税 25,000,000円 × 5% = 1,250,000円(合計 5,078,750円) 【控除あり】25,000,000円 - 15,000,000円 = 10,000,000円 所得税 1,500,000円+復興 31,500円+住民税 500,000円 合計 2,031,500円 差額 5,078,750円 - 2,031,500円 = 3,047,250円

この例は一定の前提を置いた目安です。

この例では、控除の有無で約305万円の差が出ます。

優良住宅地の軽減税率とは、重ねて使えません

同じ土地では、軽減税率と1,500万円控除を同時に使えません。

軽減税率は、長期譲渡所得の所得税を軽くする特例です(同法31条の2)。

2,000万円以下の部分の所得税が10%になります。

その年中に措置法第34条の2第2項に規定する特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合に該当することとなった土地等の譲渡につき同条第1項の規定を適用する場合には、措置法第31条の2第1項《優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》(同条第3項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定の適用はないことに留意する。

(租税特別措置法関係通達34の2-17)

条文でも、31条の2第4項が同じ関係を定めています。

計算例の土地で、所得税と復興特別所得税だけを比べます。

  • 1,500万円控除 ― 1,500,000円+31,500円=1,531,500円
  • 軽減税率 ― 2,000,000円+5,000,000円×15%=2,750,000円
  • 軽減税率の復興特別所得税 ― 57,750円(計2,807,750円)

この例では、1,500万円控除のほうが1,276,250円少なくなります(住民税は含めていません)。

どちらを使えるか、どちらが有利かは、買取りの根拠と金額で変わります。

軽減税率の要件は優良住宅地の軽減税率の記事をご覧ください。

同じ土地の譲渡で、優良住宅地の軽減税率と1,500万円の特別控除は重ねて使えません
軽減税率と1,500万円控除は、同じ土地で重ねて使えません

買主が出す証明書を、確定申告書に添付します

この特例は、原則として確定申告をして受けます。控除後に申告義務がない人は、申告しなくても控除されます(34条4項の準用)。

申告するときの手続は、次のとおりです。

第二項各号の買取りをする者から交付を受けた第一項の土地等の買取りがあつたことを証する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

(租税特別措置法34条4項。34条の2第5項で準用)

確定申告書には、特例を受ける旨も記載します。

証明書は、買主から受け取ります。

補足

証明書の中身は、同法施行規則17条の2第1項で号ごとに違います。第1号なら、施行者の「当該土地等を当該住宅建設又は宅地造成のために買い取つた旨を証する書類」です。買主も、支払に関する調書を税務署長に提出します(34条6項の準用)。

つまずくのは、だいたいこの5つです

  • 証明書をもらわずに引渡しを終えた ― 添付がないと特例は使えません
  • 同じ事業の買取りが翌年にも続いた ― 最初の年以外は使えません(34条の2第4項)
  • 一部の土地で買換えの特例を選んだ ― 37条などを一部でも受けると、その年は全部に使えません
  • 軽減税率と両方を使って計算した ― 通達34の2-17のとおり重ねられません
  • ほかの特別控除と足して5,000万円を超えた ― 超えた分は控除できません

注意

一つの事業の買取りが2年以上にわたることがあります。最初の年以外の買取りには、1,500万円控除が適用されません(同条第4項)。第1号〜第3号・第6号〜第16号などが対象です。売る時期を分ける前に、条文の対象の号かを確かめてください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身でできるのは、次の4点です。

  1. 買主の名称と、買取りの目的となる事業名を書面で確かめる
  2. 売買契約書で、引渡しの日と売買代金を確かめる
  3. 登記簿などで取得の日を確かめ、所有期間を数える
  4. 買主に、特例用の証明書を出してもらえるかを尋ねる

どの号に当たるか、軽減税率と比べてどちらを使うかは、事業の中身で決まる個別判断です。

買主の名称と事業名、売買契約書、取得の日を確かめてから、特例が使えるかを判断します
買主と事業名、契約書、取得の日をそろえてから判断します

税理士が入ると変わるのは、号の特定と特例の比較です

小松公認会計士・税理士事務所では、打診を受けた段階から申告まで通して担当します。

  • 買主と事業の内容から、第2項のどの号に当たるかを特定します
  • 号に応じて必要な証明書を、引渡し前に買主へ依頼します
  • 1,500万円控除と軽減税率などの特例を、税額で比べます
  • ほかの特別控除との5,000万円の総枠と、控除の順序を確かめます
  • 譲渡所得の内訳書と申告書に記載し、証明書を添付します

売買契約の前に動くほど、選べる手が増えます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

小松公認会計士・税理士事務所 代表

小松 優馬公認会計士・税理士

  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
  • 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
  • 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます

YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる

初回相談は無料です。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 市役所から土地を売ってほしいと言われました。必ず1,500万円控除が使えますか?

必ずではありません。対象は租税特別措置法34条の2第2項の各号に当たる買取りに限られます。第1号なら、地方公共団体などが行う住宅の建設又は宅地の造成を目的とする事業のための買取りです。収用等の特例や2,000万円控除の対象になる買取りは、1号から除かれます。事業名と根拠を買主に確かめてください。

Q2. 相続で取得してまだ3年の土地でも使えますか?

所有期間は問いません。条文は長期譲渡所得(31条)と短期譲渡所得(32条)の両方を読み替えており、5年以下の短期でも使えます。一方、優良住宅地の軽減税率(31条の2)は所有期間5年超が要件です。相続した土地は、亡くなった方の取得時期から所有期間を数えます(タックスアンサー No.3270)。3年前の相続でも、長期譲渡所得になることがあります。

Q3. ほかの特別控除と一緒に使えますか?

一緒に使えますが、特別控除の合計はその年を通じて5,000万円が上限です(租税特別措置法36条)。控除は国税庁タックスアンサー No.3223に並ぶ順に行い、1,500万円控除は4番目です。

Q4. 証明書をもらい忘れて申告してしまいました。

原則として、証明書などの添付がある場合に限り適用されます(34条4項の準用)。ただし、添付がなかったことにやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、書類の提出を条件に適用できる規定があります(同条5項の準用)。早めにご相談ください。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条の2・34条4項から6項(34条の2第5項で準用)・34条の2・36条、同法施行規則17条の2、租税特別措置法関係通達34の2-3・34の2-14・34の2-17・36-1、国税庁タックスアンサー No.3208・No.3223の内容を扱っています。34条の2第2項のうち紹介していない各号(第5号から第16号、第18号から第24号)の要件、第3号以外の号の適用期限の有無、施行令22条の8が定める法人・事業・面積の細目、号ごとの証明書の具体名と発行者、優良住宅地の軽減税率を使う場合の住民税の税率、所得税の端数処理、収用等の5,000万円控除や代替資産の特例・買換えの特例の要件、2以上の年にわたる場合の措置法34条との関係(通達34の2-19)、「一の事業」の判定(通達34の2-22)、譲渡損失の扱い、法人が土地を売る場合は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・ほかの所得や特例の有無によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

土地の買取りを打診されたら、売買契約の前にご相談ください

自治体や公社、都市再生機構などへの土地の売却では、譲渡益から最大1,500万円を差し引ける特例が使える場合があります。ただし対象は条文の各号に当たる買取りに限られ、申告するときは買主が出す証明書の添付が必要です。同じ事業の買取りが翌年に続くと2年目以後は使えず、優良住宅地の軽減税率とは重ねられません。代表税理士が、どの号に当たるかの特定、証明書の依頼、軽減税率との税額比較、5,000万円の総枠の確認、申告書への記載まで通して対応します。買取りの打診を受けた段階でお知らせください。

無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り

小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

関連記事

不動産譲渡所得の料金
令和8年分 確定申告 お引き受け開始中

不動産売却の料金を約60秒で確認

譲渡対価規模・特例適用を選ぶだけ。令和8年12月31日までのお申込みで10%OFF。割引後の料金がその場で分かります

個人 60秒見積り

自治体・公社への土地売却と1,500万円控除のご相談

初回相談は無料です。代表が直接ご対応します。

不動産売却の確定申告サポートを見る
法人60秒見積り 個人60秒見積り または自動見積りをせずに無料相談を申し込む