この記事のポイント
- 2,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%です
- 決め手は買主と証明書の添付です
- 同じ土地では、5,000万円控除などの特別控除と併用できません
- 適用期限は令和10年12月31日の譲渡までです
まず結論:買主が条件に合えば、所得税が10%に下がります
国や自治体、宅地を造成する業者などに土地を売ると、税率が下がる特例があります。
個人が、昭和六十二年十月一日から令和十年十二月三十一日までの間に、その有する土地等でその年一月一日において前条第二項に規定する所有期間が五年を超えるものの譲渡をした場合において、当該譲渡が優良住宅地等のための譲渡に該当するときは
(租税特別措置法31条の2第1項)
使えるかは、売った土地ではなく「誰に、何のために売ったか」で決まります。
対象は土地と借地権などの土地の上の権利で、建物は入りません。
5年の数え方は短期と長期の判定の記事をご覧ください。

税率は、2,000万円までの部分が所得税10%・住民税4%です
下がるのは、課税長期譲渡所得金額のうち2,000万円以下の部分です。
課税長期譲渡所得金額とは、売った金額から取得費・譲渡費用・特別控除を引いた残りです。
| 区分 | 一般の長期 | この特例 |
|---|---|---|
| 所得税(2,000万円以下の部分) | 15% | 10% |
| 所得税(2,000万円を超える部分) | 15% | 15% |
| 住民税(2,000万円以下の部分) | 5% | 4% |
| 住民税(2,000万円を超える部分) | 5% | 5% |
住民税の4%は、道府県民税と市町村民税の合計です(地方税法附則34条の2)。内訳は1.6%と2.4%で、指定都市に住む方は0.8%と3.2%です。
令和8年分は、復興特別所得税として所得税額の2.1%が加わります(国税庁タックスアンサー No.3208)。令和9年分からは、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%です。
数字で見ると、差は最大で1,221,000円です
計算例
例:課税長期譲渡所得金額が3,000万円のとき
一般 所得税 30,000,000円 × 15% = 4,500,000円 復興特別所得税 4,500,000円 × 2.1% = 94,500円 住民税 30,000,000円 × 5% = 1,500,000円 合計 6,094,500円 特例 所得税 2,000,000円 + 10,000,000円 × 15% = 3,500,000円 復興特別所得税 3,500,000円 × 2.1% = 73,500円 住民税 800,000円 + 10,000,000円 × 5% = 1,300,000円 合計 4,873,500円 差額 6,094,500円 - 4,873,500円 = 1,221,000円2,000万円以上なら、差額は1,221,000円で頭打ちです。
1,000万円なら差額は610,500円です。例は目安です。
端数は、課税標準は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨てます(国税通則法118条1項・119条1項)。例は端数が出ない金額です。

対象になる買主は、条文の各号で決まっています
対象は、条文が列挙した相手と目的への売却だけです。令和8年12月4日までに施行される改正で、9号の2(地域経済牽引事業の用地を整備する者への譲渡)が加わる予定です。
前項に規定する優良住宅地等のための譲渡とは、次に掲げる土地等の譲渡に該当することにつき財務省令で定めるところにより証明がされたものをいう。
(租税特別措置法31条の2第2項)
- 1号 ― 国または地方公共団体に売ったとき(施行令20条の2第1項1号)
- 2号 ― 都市再生機構や土地開発公社などに、業務に直接必要な土地として売ったとき
- 4号 ― 収用や、収用に代わる買取りなど(収用交換等)で売ったとき
- 13号 ― 開発許可を受けて、原則1,000平方メートル以上の住宅用の宅地を造成する個人・法人に売ったとき
- 15号 ― 25戸以上の一団の住宅や一定規模のマンションを、知事などの認定を受けて建てる者に売ったとき
開発許可とは、宅地を造るために都市計画法に基づいて受ける許可です。
ポイント
ここに挙げたのは一部です。各号に細かい要件があります。該当するかは、買主が出す証明書で確かめます。
造成などが近く確実な土地を先に売る「確定優良住宅地等予定地」の扱いもあります(同条3項)。
証明書を確定申告書に添付しないと、使えません
買主が出す証明書の添付が、特例の条件です。
当該各号に定める書類を確定申告書に添付することにより証明がされた土地等の譲渡とする。
(租税特別措置法施行規則13条の3第1項)
国や自治体に売ったときは、買取りをする者の「買い取つた旨を証する書類」です(同項1号イ)。
開発許可の造成業者なら、開発許可の申請書や許可の通知の写しなどです(同項13号)。
書類は買主が用意するので、契約の段階で交付を約束してもらいます。
添付を忘れたときの救済は限られます。
確定申告書に当該書類の添付がない場合であっても、その添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときは、当該書類の提出があった場合に限り、措置法第31条の2第1項又は第3項の規定の適用を認めて差し支えない。
(租税特別措置法関係通達31の2-30)

特別控除を受ける土地には、この特例は使えません
特別控除と軽減税率は、同じ土地で重ねられません。
31条の2第4項は、次の控除などを受ける土地を対象外とみなします。
- 収用の5,000万円控除(33条の4)
- 特定住宅地造成事業等の1,500万円控除(34条の2)
- マイホームの3,000万円控除(35条)
収用について、通達も同じことを確認しています。
当該譲渡について、措置法第33条、第33条の2又は第33条の4の規定を適用する場合には、措置法第31条の2の規定は適用できないことに留意する。
(租税特別措置法関係通達31の2-5(注))
最初の買取りの申出から6か月を過ぎて売ると、5,000万円控除は使えません(租税特別措置法33条の4第3項1号)。
5,000万円控除が使えない一定の収用でも、この特例の4号には当たります(同通達31の2-5)。
控除の総枠は特別控除の5,000万円枠の記事で扱います。
マイホームの軽減税率(31条の3)を受ける譲渡も除かれます(31条の2第1項)。マイホームの軽減税率の記事をご覧ください。
適用期限は、令和10年12月31日までの譲渡です
令和8年度の税制改正で、期限が3年延びました(国税庁の改正のあらまし)。
住民税の特例は、令和11年度分までです(地方税法附則34条の2第1項・第4項)。
補足
令和10年1月1日以後の13号から15号の売却は、区域によって使えなくなります(同あらまし)。対象は地すべり防止区域・急傾斜地崩壊危険区域・土砂災害特別警戒区域・浸水被害防止区域です。
つまずくのは、だいたいこの5つです
- 証明書をもらわずに引渡しを終えた ― 後から買主に頼んでも出ないことがあります
- 不動産会社に売れば使えると思った ― 開発許可などの要件を満たす造成・建設が必要です
- 1,500万円控除と軽減税率を重ねた ― 同じ土地では併用できません
- 建物の分まで10%で計算した ― 対象は土地等だけです
- 予定地で適用したが、期間内に要件を満たさなかった ― 予定期間の経過から4か月以内に修正申告と納付が必要です(31条の2第8項)
注意
予定地の土地が期間内に要件を満たしたときも、買主から受け取った書類を税務署へ提出します(31条の2第5項・第6項)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確かめられるのは、次の4点です。
- 売った年の1月1日で、土地の所有期間が5年を超えているか
- 買主が国・自治体・公社か、宅地造成や住宅建設を行う事業者か
- 買主が開発許可や知事の認定を受けているか、証明書を出してもらえるか
- 同じ土地で、収用や1,500万円などの特別控除の話が出ていないか
どの号に当たるか、特別控除と軽減税率のどちらになるかは、個別判断です。
税理士が入ると変わるのは、号の当てはめと書類の確認です
ひとつめは、31条の2第2項の各号への当てはめです。
ふたつめは、証明書の中身と施行規則13条の3の書類との照合です。
みっつめは、収用や1,500万円控除など特別控除との関係の整理です。
よっつめは、住民税を含めた税額と手残りの試算です。
いつつめは、確定申告書への記載と証明書の添付です。
小松公認会計士・税理士事務所では、売買契約の前の確認から申告まで通して担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産会社に土地を売りました。この特例は使えますか?
買主が不動産会社というだけでは使えません。たとえば開発許可を受けて、原則1,000平方メートル以上の住宅用の宅地を造成する者への譲渡などが対象です(租税特別措置法31条の2第2項13号)。該当するかは、買主から交付される証明書で確かめます。
Q2. 税率はどれくらい下がりますか?
課税長期譲渡所得金額のうち2,000万円以下の部分が、所得税15%から10%、住民税5%から4%になります。2,000万円を超える部分は一般と同じです。記事の例では、2,000万円以上なら差は1,221,000円で頭打ちです。この差は、復興特別所得税と住民税を含めた額です。
Q3. 収用で5,000万円控除を受ける土地にも使えますか?
使えません。33条の4などの適用を受ける土地は、この特例の対象外とみなされます(租税特別措置法31条の2第4項)。ただし申出から6か月を過ぎたなど、5,000万円控除が使えない一定の収用は4号に当たります(措置法関係通達31の2-5)。
Q4. 証明書を添付し忘れて確定申告をしてしまいました。
原則は確定申告書への添付が条件です(施行規則13条の3第1項)。通達31の2-30は、添付がなかったことにやむを得ない事情があり、書類の提出があった場合に限り適用を認めて差し支えないとしています。早めに書類をそろえてご相談ください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条1項・31条の2第1項から第6項・第8項・33条の4第3項、租税特別措置法施行令20条の2第1項、租税特別措置法施行規則13条の3第1項、地方税法附則34条・34条の2、国税通則法118条1項・119条1項、租税特別措置法関係通達31の2-5・31の2-30、国税庁タックスアンサー No.3208・No.3223、国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度税制改正のあらまし」の内容を扱っています。租税特別措置法31条の2第2項のうち記事で紹介していない各号(3号・5号から12号・14号・16号)の内容、各号の面積・区域・認定の細目(施行令20条の2の各項)、施行規則13条の3が定める各号ごとの書類の全部、確定優良住宅地等予定地のやむを得ない事情や特定非常災害による予定期間の延長、公布済みで未施行の改正の詳細、特定住宅地造成事業等の1,500万円控除との選択の可否と税額比較、各特別控除の適用要件と申告手続、法人が土地を譲渡した場合の取扱い、譲渡損失や他の譲渡所得との通算、住民税の申告手続は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は譲渡価額・取得費・譲渡費用・住所地によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(31条・31条の2・33条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行規則」(13条の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000040015
- e-Gov法令検索「地方税法」(附則34条・34条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税庁 措置法第31条の2関係通達(31の2-21から31の2-32まで)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/05.htm
- 国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度税制改正のあらまし」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/r08aramashi.pdf
自治体や開発業者への土地の売却、軽減税率が使えるかを契約前に確かめませんか
国・地方公共団体や、開発許可を受けて宅地を造成する業者などに5年超持った土地を売ると、課税長期譲渡所得金額2,000万円以下の部分の所得税が10%、住民税が4%になります。ただし買主から証明書を受け取り、確定申告書に添付することが条件で、収用の5,000万円控除や1,500万円控除を受ける土地には使えません。代表税理士が、どの号に当たるかの当てはめ、証明書の中身の確認、特別控除との関係の整理、住民税を含めた税額の試算、申告書への記載まで通して対応します。証明書の交付は契約の段階で決まりますので、売買契約を結ぶ前にご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り