この記事のポイント
- 会社の家賃は、事務所の実態と相場に合う額であることが損金の前提です
- 相場を超える家賃や使っていない部屋の家賃は、役員給与とみられるおそれがあります
- 同族会社から給与と家賃を受け取る役員は、還付の人を除き所得20万円以下でも申告が必要です
- 居住用部分がおおむね90%未満だと、住宅ローン控除や3,000万円控除に影響することがあります
まず結論:家賃は実態と相場に合う額が損金の前提で、社長は不動産所得を申告します
会社の家賃は、事務所として使う実態と、相場に合う額であることが損金の前提です。
社長が受け取る家賃は、不動産所得(不動産を貸して得る所得)になります。
同族会社から給与と家賃を受け取る役員は、所得20万円以下でも原則として申告が要ります。
例外は、確定申告をすれば税金が還付になる人です。

会社側:損金として説明できるよう「実態・面積・相場・契約と支払」をそろえます
事業に使う部屋の家賃は、損金(法人税の計算で差し引ける費用)になります(法人税法22条3項2号)。
貸主が社長なので、次の4点を書面で説明できるようにします。
- 実態 ― 事務所の部屋を決め、私生活と分けて使っている
- 面積 ― 自宅全体と事務所の床面積を、図面で示せる
- 相場 ― 近くの似た貸室の家賃と比べて説明できる
- 契約と支払 ― 契約書を作り、毎月会社の口座から振り込んでいる
家賃の額だけでなく、決めた根拠を書面で残すことが大切です。
補足
会社が住宅を借りて社長に貸す役員社宅は、お金の流れが逆の取引です。
高すぎる家賃や使っていない部屋の家賃は、役員給与とみられるおそれがあります
名目が家賃でも、中身が社長への給与と同じなら、給与として扱われるおそれがあります。
前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。
(法人税法34条4項)
通達は、役員から資産を高く買った差額などを経済的な利益に挙げています(法人税基本通達9-2-9)。
役員の個人的費用を会社が負担した額も挙げています(同(10))。
家賃の直接の例示はありませんが、相場を超える部分は同じ考え方で扱われるおそれがあります。
事務所として使っていない部屋の家賃は、社長の個人的費用の負担とみられるおそれがあります。
損金の扱いと源泉徴収は経済的利益の記事で解説しています。

社長側:家賃は不動産所得で、所得20万円以下でも申告が要ることがあります
社長が会社から受け取る家賃は、不動産所得です(所得税法26条1項)。
給与所得者は、給与以外の所得が20万円以下なら、原則として申告が要りません(同法121条1項1号)。
給与が年2,000万円以下で、1か所から受け、源泉徴収や年末調整を受けている場合です。
ところが、ただし書に例外があります。
同族会社の役員が、その同族会社から給与のほかに貸付金の利子や不動産の賃貸料などを受け取っている場合には、これらの所得金額が20万円以下であっても、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要になります。
(国税庁 タックスアンサー No.1901)
対象は同族会社の役員と、その親族などです(所得税法施行令262条の2)。
同族会社は、株主3人以下とその親族などで株式の50%超を持つ会社などです(法人税法2条10号)。
「20万円以下なら申告不要」は、同族会社から給与と家賃を受け取る社長には使えません。
必要経費は、家賃を得るのに直接必要で、家事上の経費と明確に区分できる費用です(No.1370)。
主なものは、固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費です(同)。
計算例
例:床面積100㎡の自宅のうち20㎡を、月20,000円で会社に貸す場合
事務所の割合 20㎡ ÷ 100㎡ = 20% 年間の家賃 20,000円 × 12か月 = 240,000円 固定資産税 自宅全体150,000円 × 20% = 30,000円 損害保険料 自宅全体30,000円 × 20% = 6,000円 減価償却費 建物全体250,000円 × 20% = 50,000円 不動産所得 240,000円 -(30,000円 + 6,000円 + 50,000円)= 154,000円154,000円は20万円以下でも、同族会社から給与も受けるなら、還付の人を除き申告が要ります。
金額はすべて仮定で、一定の前提を置いた目安です。按分は床面積の割合によると仮定しました。
申告の流れは不動産所得の確定申告の記事をご覧ください。
借りている自宅を会社に貸す(転貸)なら、まず貸主の承諾が要ります
賃貸住宅の一室を会社に貸す転貸(又貸し)には、貸主の承諾が要ります(民法612条1項)。
承諾のないまま転貸すると、貸主は契約を解除できると定められています(同条2項)。
承諾を得て転貸したときも、会社から受け取る家賃は社長の不動産所得です。
所得税法26条1項は、他人に不動産等を使用させることも貸付けに含めています。
必要経費は、貸主に払う家賃のうち会社に貸した部分に当たる額などです(同法37条1項)。

消費税と、住宅ローン控除・3,000万円控除への影響も確かめます
消費税が非課税になる住宅の貸付けは、契約で住宅用とされたものなどに限られます(No.6226)。
事務所として貸す契約の家賃は、この非課税に当たりません(消費税法別表第二第13号)。
社長の納税義務は、基準期間の課税売上高やインボイス登録の有無などで決まります(同法9条1項)。
会社が家賃の消費税を差し引くには、原則として適格請求書などの保存が要ります(同法30条7項・9項)。
注意
住宅ローン控除を受けている自宅なら、控除額の計算に影響することがあります。居住用以外の部分があると、借入金を居住用部分の割合で計算します(措置法施行令26条7項1号)。自宅を売るときの3,000万円特別控除は、居住用部分が対象です(同令23条1項・20条の3第2項)。居住用部分がおおむね90%以上なら、全体を居住用として扱えます(措置法通達41-29・35-6)。計算例の自宅は、居住用部分が80%です。
失敗パターン:家賃をやめて、社長側の必要経費が認められなかった裁決
家賃を払わない状態にすると、社長側の経費も認められないことがあります。
平成14年1月17日裁決は、代表者が同族会社に店舗用の建物を貸していた事案です。
双方の合意で家賃を零円にし、会社は未払金にも計上していませんでした。
審判所は、無償の貸し借り(使用貸借)と判断しています。
対価を伴わない使用貸借の場合、その不動産は不動産等の貸付けによる所得を生ずべき業務の用に供された資産とはいえず、当該不動産に係る費用は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
(国税不服審判所 平成14年1月17日裁決)
建物と敷地の租税公課(税金など)と減価償却費は、必要経費から外されました。
調査の途中で家賃を計上する修正申告をしましたが、契約書も支払いもなく認められませんでした。
自宅ではなく店舗の事案ですが、同族会社に無償で貸した点は同じです。
ほかに注意したい形です。
- 家賃の所得が20万円以下だからと、確定申告をしない
- 使っていない部屋の分まで、家賃を払う
- 貸主の承諾なしに、借りている自宅を転貸する
- 住宅ローン控除などへの影響を確かめない
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
貸す前にご自身で整えられるのは、次の4点です。
- 事務所にする部屋を決め、床面積を図面で確かめる
- 近くの似た貸室の家賃を調べ、資料を残す
- 賃貸借契約書を結び、毎月決まった日に会社の口座から振り込む
- 固定資産税の通知書や火災保険の証券、建物の購入時の契約書をそろえる
家賃の水準と償却費の計算、控除への影響は、事実ごとに判断が分かれます。
貸し始めた日の未償却残高は、住んでいた期間の減価を引いて出します(所得税法施行令135条)。

税理士が入ると変わるのは、家賃の根拠と会社・社長の申告のつながりです
小松公認会計士・税理士事務所では、契約を結ぶ前から次の作業を行います。
ひとつめは、事務所部分の面積と使い方の確認です。
ふたつめは、周辺の相場資料と並べた家賃の水準の検討です。
みっつめは、賃貸借契約書の確認です。転貸なら貸主の承諾も確かめます。
よっつめは、会社の記帳・決算・法人税申告書への反映です。
いつつめは、社長の不動産所得の計算と確定申告書の作成です。
むっつめは、住宅ローン控除・3,000万円控除・消費税への影響の確認です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 自宅の一部を会社に貸した家賃の所得が20万円以下なら、確定申告は要りませんか?
同族会社の役員が会社から給与と家賃を受け取ると、所得20万円以下でも確定申告が必要です。根拠は所得税法121条1項ただし書と同法施行令262条の2です。確定申告をすれば税金が還付になる人は除きます(タックスアンサー No.1901)。役員の親族なども同じです。
Q2. 会社が払う家賃は、いくらにすればよいですか?
事務所部分の広さと近くの似た貸室の家賃を目安に決め、根拠を残します。相場を超える部分は、役員給与とみられるおそれがあります。役員給与には経済的な利益も含まれるためです(法人税法34条4項、法人税基本通達9-2-9)。使っていない部屋の分を払う場合も同様です。
Q3. 家賃を払わずに、会社に無償で使わせてもよいですか?
無償の使用貸借になると、社長側は不動産所得になりません。建物と敷地の租税公課や減価償却費も、必要経費にできません。代表者が同族会社に店舗を無償で貸した事案で、そう判断した裁決があります(平成14年1月17日裁決)。会社側にも家賃の損金は生じません。
Q4. 借りている賃貸住宅の一室を、会社に事務所として貸せますか?
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ転貸できません(民法612条1項)。無断で転貸すると、貸主は契約を解除できます(同条2項)。承諾を得て転貸すれば、会社から受け取る家賃は社長の不動産所得です。貸主に払う家賃のうち、会社に貸した部分などが必要経費になります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条10号・22条3項・34条4項、法人税基本通達9-2-9、所得税法26条1項・37条1項・121条1項、所得税法施行令135条・262条の2、民法612条、消費税法9条1項・30条7項・9項・別表第二第13号、租税特別措置法施行令20条の3第2項・23条1項・26条7項1号、租税特別措置法関係通達31の3-8・35-6・41-29、タックスアンサーNo.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」・No.1901「同族会社の役員で確定申告の必要な人」・No.6226「住宅の貸付け」、国税不服審判所の平成14年1月17日裁決の内容を扱っています。家賃の相場の具体的な算定方法、役員社宅の賃貸料相当額の算式、相場を超える家賃を役員給与とした場合の損金算入の可否と源泉徴収、寄附金としての扱い、低すぎる家賃に対する所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認)の適用、非業務用資産の償却費の具体的な計算、住宅ローンの利息を必要経費にする場合の計算、青色申告特別控除と損益通算、所得税・復興特別所得税・住民税の税額、免税事業者等からの仕入れに係る消費税の経過措置、住宅ローン控除の居住用割合の判定時期、不動産の貸付けが事業として行われているかの判定は扱っていません。紹介した裁決は、店舗用の建物を同族会社に貸した事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の家賃・必要経費・按分の方法は物件と契約の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・34条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「所得税法」(26条・121条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.1901「同族会社の役員で確定申告の必要な人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1901.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款「経済的な利益の供与」(9-2-9)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例「平14.1.17裁決、裁決事例集No.63 141頁」https://www.kfs.go.jp/service/JP/63/11/index.html
自宅の一部を会社に貸す前に、家賃の決め方と申告を確かめませんか
会社の家賃は、事務所の実態と相場に合う額であることが損金の前提です。社長が受け取る家賃は不動産所得です。同族会社から給与と家賃を受け取る役員は、還付の人を除き所得20万円以下でも申告が必要です。家賃をやめて使用貸借とされ、社長側の必要経費が認められなかった裁決もあります。代表税理士が、事務所部分と家賃の水準の確認から、賃貸借契約書の確認まで行います。会社の決算と社長の確定申告への反映、住宅ローン控除・消費税への影響の確認まで通して対応します。契約を結ぶ前の段階でご相談ください。
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