この記事のポイント
- 評価方式は取得した株主が同族株主等か否かで2つに分かれます
- 原則的評価方式では会社を大会社・中会社・小会社に区分します
- 同族株主以外の株主等が取得した株式は配当還元方式で評価します
- 特定の評価会社は、区分によらない別の方法で評価します
まず結論:自社株の評価は「誰が取得するか」で2つに分かれます
非上場の会社の株式には、市場価格がありません。
そこで相続税や贈与税の計算では、財産評価基本通達にそって株価を計算します。
評価方式は、その株式を取得した株主によって2つに分かれます。同族株主等に当たるかどうかが分かれ目です。
取引相場のない株式とは、上場株式および気配相場等のある株式以外の株式をいいます。中小企業の株式のほとんどが、これに当たります。
自社株の評価が必要になる場面は、大きく3つです。
社長に相続が起きたとき。後継者へ株式を贈与するとき。株式を誰かに買い取ってもらうときです。
いずれも、1株あたりの評価額を出すところから始まります。
株式は、現金のように分けられない財産です。評価額が大きいほど、相続税の負担も、相続人どうしの調整も重くなります。
| 取得した株主 | 評価方式 | 考え方 |
|---|---|---|
| 同族株主等 | 原則的評価方式 | 会社の規模に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・その併用で評価する |
| 同族株主以外の株主等 | 配当還元方式(特例的な評価方式) | 1年間の配当金額を一定の利率で還元して評価する |
どちらに当たるかの判定は、議決権の割合などによります。
根拠となる通達も示されています。タックスアンサーNo.4638が挙げるのは、評基通168、178〜180、185、188、188-2、189〜189-6です。

原則的評価方式 ― まず会社を大会社・中会社・小会社に区分します
原則的評価方式では、評価する会社を大会社・中会社・小会社のいずれかに区分してから評価します。
区分は、総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)・従業員数・取引金額によって判定します。
基準となる金額は、卸売業、小売・サービス業、それ以外という業種の別ごとに定められています。
区分が決まると、使う評価方式が決まります。
| 会社の区分 | 評価方式 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
| 小会社 | 純資産価額方式 |
ポイント
類似業種比準方式は、類似業種の株価を基にする方法です。評価する会社の配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つで比準して評価します。同じ業種の上場会社の株価に、自社の数値を当てはめていくイメージです。
この区分は、会社の実態を数字で切り分けるための入口です。
上場会社に近い規模の会社は、上場会社の株価に比準させます。
規模の小さい会社は、会社そのものが持つ純資産に着目して評価します。中会社は、その中間として2つの方式を併用します。
同じ会社でも、区分が変われば使う方式が変わり、株価も変わります。
注意
区分の基準となる金額や従業員数は、業種ごとに細かく定められています。決算書の数値をそのまま当てはめれば区分が決まる、というものではありません。従業員数の数え方や取引金額の範囲も含め、御社がどの区分に当たるかは個別の確認が必要です。

配当還元方式 ― 同族株主以外の株主等が取得したとき
同族株主以外の株主等が取得した株式は、配当還元方式という特例的な評価方式で評価します。
その株式を所有することで受け取る1年間の配当金額を基にします。これを一定の利率(10パーセント)で還元して評価します。
会社の利益の大きさや資産の含み益を、直接には見ません。
そのため、同じ会社の同じ1株でも、原則的評価方式による価額とは大きく開くことがあります。
実務では、社長のご家族以外の株主が残っている会社が少なくありません。
設立のときに名前を借りた親族。株式を持ったまま辞めた元役員。こうした例です。
その株式を後継者が買い集めるときにも、まず取得する人ごとの判定が必要になります。
補足
どちらの方式になるかは、株式を取得した人ごとに判定します。会社ごとに1つの株価が決まるわけではありません。同じ年に同じ株数を渡しても、渡す相手によって評価方式が変わることがあります。判定は議決権の割合などによります。
特定の評価会社 ― 規模の区分によらない別扱いがあります
資産の中身や設立からの年数によっては、会社規模の区分によらない別の評価方法をとります。
これを特定の評価会社といいます。次の類型が定められています。
- 比準要素数1の会社
- 株式等保有特定会社
- 土地保有特定会社
- 開業後3年未満の会社等
- 開業前または休業中の会社
- 清算中の会社
たとえば、資産が有価証券や不動産に偏っている会社です。
特定の評価会社に当たると、会社規模の区分より先に、その類型ごとの評価方法によることになります。
大会社であっても同じです。
そして、該当するかどうかは決算期ごとに変わり得ます。資産を買えば構成が動くためです。
注意
事業の中身を変えていなくても、資産の構成が変われば特定の評価会社に当たることがあります。含み益のある土地を持ち続けている会社、余剰資金で有価証券を買い増した会社。いずれも該当の可能性を確認する必要があります。設立して間もない会社も、開業後3年未満の会社等として別扱いです。

株価は決算を1期重ねるたびに動きます
利益が出ている会社ほど、自社株の評価額は上がりやすくなります。
類似業種比準方式が、配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つで比準するためです。
純資産価額方式でも、利益の蓄積は純資産を押し上げます。
つまり、業績のよい年が続くほど、相続や贈与のときの評価額は大きくなっていきます。
典型は、無借金で利益を積み上げてきた会社です。
通帳の残高が増えるほど、純資産は厚くなります。役員報酬を抑えて内部に残せば、なおさらです。
経営者ご本人の実感より、株価が高く出ることは珍しくありません。
検討できる方法も、そのときの会社規模の区分や資産構成によって変わります。
だからこそ、今の株価を早めに把握しておくことが大切です。
ポイント
自社株の評価が問題になるのは、相続のときだけではありません。後継者への贈与、株式の買取り、退職にあわせた持株の整理。いずれの場面でも、その時点の株価が出発点になります。
会社が自社の株式を買い取る方法もあります。この場合の課税関係は自社株を会社に買い取らせるときで整理しています。
また、役員退職金を支給すれば純資産と利益が動きます。株価にも影響します。

実務で確認すること ― 決算書と株主名簿から始めます
手元ですぐに確認できるのは、直近の決算書と株主名簿です。
総資産価額・従業員数・取引金額は、決算書と給与の資料から読み取れます。
株主が誰で、それぞれ何株持っているか。これは株主名簿で確認します。
ただし、株主名簿が最新でない会社もよくあります。
過去の相続で名義が分散したまま、更新されていないケースです。まずは現状を正確に写し取ることが、評価の第一歩になります。
- 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)を用意する
- 株主名簿で、株主ごとの持株数と議決権の状況を確認する
- 会社の業種と、資産に占める不動産・有価証券の割合を確認する
小松公認会計士・税理士事務所では、この3点を起点に自社株の評価を組み立てます。
ここまではご自身でも準備できます。
ここから先、どの評価方式によるかの判定は個社ごとに異なります。
会社規模の区分、特定の評価会社に当たるかどうか、株主ごとの判定。いずれも決算書の数値をそのまま当てはめて済むものではありません。
資料をお持ちいただければ、現状の評価と、そこから何を検討できるかを整理してご説明します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 自社株の評価額を知るには、まず何を用意すればよいですか?
直近の決算書と株主名簿です。総資産価額・従業員数・取引金額で会社規模を区分し、株主ごとに同族株主等かどうかを判定します。基準は業種ごとに定められているため、当てはめには個別の確認が必要です。
Q2. 同じ会社の株なのに、人によって評価額が変わることはありますか?
あります。評価方式は株式を取得した株主ごとに判定するためです。同族株主以外の株主等が取得した株式は配当還元方式で評価するため、原則的評価方式による価額と大きく開くことがあります。
Q3. 業績がよいと、自社株の評価額は上がりますか?
上がりやすくなります。類似業種比準方式は配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つで比準するためです。純資産価額方式でも、利益の蓄積は純資産を押し上げます。株価は決算のたびに動きます。
Q4. 不動産や有価証券を多く持つ会社は、評価が変わりますか?
土地保有特定会社や株式等保有特定会社に当たる場合は、会社規模の区分によらない別の方法で評価します。該当するかどうかの割合の基準は本記事では扱っていないため、資産構成をもとに個別に判定します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」および財産評価基本通達第1節「株式及び出資」の範囲を扱っています。会社規模(大会社・中会社・小会社)を判定する具体的な数値基準(従業員数・総資産価額・取引金額の金額基準)、類似業種比準価額の算式と斟酌率、純資産価額方式の法人税額等相当額、同族株主に当たるかどうかの議決権割合の基準、特定の評価会社に該当するかどうかの割合の基準、事業承継税制(納税猶予)の要件、株価の具体的な計算例は扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm
- 国税庁 財産評価基本通達 第1節「株式及び出資」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/02.htm
- e-Gov法令検索 相続税法https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
自社株がいくらと評価されるのか、まず把握しませんか
自社株の評価は、会社規模の区分・資産の中身・株主ごとの判定という3つの軸で結論が変わります。株価は決算を1期重ねるたびに動きます。相続や贈与が現実になってからでは、選べる方法が限られます。代表税理士が、御社の決算書と株主構成を踏まえて現状の評価を整理します。
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