法人税・節税

優良な電子帳簿とは?
過少申告加算税が5%軽減される要件と届出書

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 優良な電子帳簿で届出をすると、帳簿に記録した事項の過少申告加算税が5%軽減されます
  • 対象は仕訳帳・総勘定元帳と作成している一定の補助簿のすべてで、一部だけでは受けられません
  • 事業年度の初日から要件を満たし、届出書は法定申告期限までに出します
  • 隠蔽・仮装があると軽減されず、認証ソフトでも設定と運用の確認が要ります

まず結論:優良な電子帳簿で届出をすると、過少申告加算税が5%軽くなります

会計ソフトで付けた帳簿は、要件を満たせば印刷せずデータで保存できます。

そのうち、要件の厳しい帳簿を「優良な電子帳簿」といいます。

過少申告加算税は、申告した税額が少なかったときに上乗せされる税です。

その帳簿に記録した事項で申告漏れが見つかると、この加算税が軽くなります。

軽くなる額は、増えた税額の5%分です(電子帳簿保存法8条4項)。

ただし、対象の帳簿すべてが要件を満たし、あらかじめ届出書を出していることが前提です。

会計ソフトの帳簿が要件を満たし、届出書を出すと過少申告加算税が軽くなります
会計ソフトの帳簿が要件を満たし、届出書を出すと過少申告加算税が軽くなります

軽くなるのは「増えた税額×5%」で、原則10%の加算税が5%になります

税務署の更正(税額の訂正)などによる過少申告加算税は、原則10%です(国税通則法65条1項)。

増えた税額が、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超えることもあります。

その場合は、超えた部分にさらに5%が加わります(同条2項)。

期限内申告税額とは、期限内の申告に基づく税額です。

優良な電子帳簿の特例は、この加算税から「増えた税額×5%」を差し引きます。

計算例

例1:調査で指摘を受けて修正申告をし、法人税が100万円増えた場合(増えた額は期限内申告税額以下)

通常の加算税 1,000,000円 × 10% = 100,000円 優良な電子帳簿 100,000円 - 1,000,000円 × 5% = 50,000円

例2:増えた額が300万円、期限内申告税額が100万円の場合

超えた部分 3,000,000円 - 1,000,000円 = 2,000,000円 通常の加算税 3,000,000円 × 10% + 2,000,000円 × 5% = 400,000円 優良な電子帳簿 400,000円 - 3,000,000円 × 5% = 250,000円

金額は、調査で指摘を受けた修正申告で、隠蔽・仮装や端数の影響がないという、一定の前提を置いた目安です。

軽くなるのは増えた税額の5%分で、加算税が半分になるとは限りません。

法人税・地方法人税・消費税では、一般に増えた税額の全部が軽減の対象です。

根拠は、国税庁の一問一答(質疑応答集)の問38です。

軽くなるのは、増えた税額の5%分の過少申告加算税です
軽くなるのは、増えた税額の5%分の過少申告加算税です

対象は仕訳帳・総勘定元帳と、作成している一定の補助簿のすべてです

軽減の対象となる帳簿を「特例国税関係帳簿」といいます(電子帳簿保存法施行規則5条1項)。

法人税では、仕訳帳・総勘定元帳と、次の事項を記載する補助簿が対象です。

記載する事項帳簿の例
売上げその他収入売上帳
仕入れその他経費(賃金・給料手当・法定福利費・厚生費を除く)仕入帳・経費帳
売掛金/買掛金売掛帳/買掛帳
手形(融通手形を除く)上の債権債務受取手形記入帳・支払手形記入帳
その他の債権債務(当座預金の預入れ・引出しを除く)貸付帳・借入帳・未決済項目に係る帳簿
有価証券(商品であるものを除く)有価証券受払い簿
減価償却資産/繰延資産固定資産台帳/繰延資産台帳

消費税では、消費税法に定める一定の帳簿が対象です(同項)。

例の帳簿をすべて作る必要はなく、作成している帳簿が対象です。

支店ごとの帳簿や、別の会計ソフトで作る固定資産台帳も対象に含まれます(問40・問41)。

一方、商品有高帳は一般に含まれません(問42)。

「優良以外の電子帳簿」との違いは、履歴・つながり・検索の3点です

電子帳簿には、最低限の要件で保存する「優良以外の電子帳簿」もあります。

どちらも、最初の記録から一貫してパソコンで作る帳簿が前提です(電子帳簿保存法4条1項)。

法人税の帳簿は、複式簿記で記録していることも前提です(施行規則2条1項)。

要件優良以外優良
システムの説明書などの備付け必要必要
ディスプレイ・プリンタ等の備付け必要必要
税務職員のダウンロードの求めに応じる必要不要
訂正・削除・追加入力の履歴―必要
帳簿間の相互関連性―必要
取引年月日・金額・取引先での検索―必要

ダウンロードの求めに応じるなら、範囲指定と組合せの検索は不要です(施行規則5条5項1号)。

訂正削除の履歴の要件は次のとおりです。

当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。

(電子帳簿保存法施行規則5条5項1号イ(1)。令和9年以後は4項)

直接は直せず、元の仕訳が分かる反対仕訳(取消しの仕訳)で直すシステムでも満たします(問26)。

相互関連性は、帳簿どうしの記録を伝票番号などでたどれることです。

最低限の要件を満たせば、優良でないことを理由に青色申告の取消し等の対象になりません(問49)。

届出書は法定申告期限までに出し、事業年度の初日から要件を満たします

届出書は「あらかじめ」出すと定められています(施行規則5条1項)。

国税庁は、適用を受けたい国税の法定申告期限までに出せばよいとしています(問43)。

ただし、帳簿は事業年度(課税期間)の初日から優良の要件を満たしている必要があります。

法人は、本店所在地の所轄税務署長に届け出ます(一問一答 問45)。

会計ソフトを乗り換えるときは、あらかじめ変更の届出書が要ります(同 問51)。

ポイント

軽減に要るのは次の3つです。①対象帳簿すべてが要件を満たす、②事業年度の初日から満たす、③法定申告期限までに届け出ることです。

補足

令和9年1月1日施行の改正後も、5%軽減の条文(8条4項)の文言は変わりません。同日の見直しは、電子取引データの重加算税の加重(同条5項)に関するものです。メールで受け取る請求書などは電子取引データの保存の記事をご覧ください。

届出書の期限と、事業年度の初日からの備付けを社内で確かめます
届出書の期限と、事業年度の初日からの備付けを社内で確かめます

届出漏れ・帳簿の一部・期の途中からでは、軽減を受けられません

ソフトが対応していても、届出・帳簿の範囲・運用のどれかが欠けると受けられません。

  • 届出書を出していない ― 以前に電子帳簿の承認を受けた会社でも、届出書は別に要ります(問46)。
  • 対象帳簿の一部が要件を満たさない ― 固定資産台帳だけ別に作り、要件を欠く場合などです(問39)。
  • 期の途中から要件を満たした ― 初日からの備付けが必要です(電子帳簿保存法施行令2条・問44)。期末後にメモから作った帳簿も、初日から備え付けたことになりません(問42)。
  • ソフトの設定が要件を満たさない ― 認証ソフトでも、初期設定や設定変更で外れることがあります(問55)。

条文のただし書は次のとおりです。

ただし、その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものがあるときは、この限りでない。

(電子帳簿保存法8条4項ただし書)

隠蔽・仮装(事実を隠したり偽ったりすること)があれば、優良な電子帳簿でも軽減されません。

注意

JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の認証は、ソフトの機能の確認です。システムの説明書の備付けなど、機能以外の要件も満たす必要があります(問55)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で確かめられるのは、次の4点です。

  1. 会計ソフトの説明書で、優良な電子帳簿の要件への対応を確かめる
  2. 訂正削除の履歴が残る設定になっているかを確かめる
  3. 作成している帳簿を書き出し、対象の帳簿を確かめる
  4. 届出書の控えで、出した日と届け出た帳簿の種類を確かめる

国税庁の「優良な電子帳簿の要件チェックシート」も確認に使えます。

対象帳簿の線引きや、要件を満たし始める時期は、事実に応じた個別判断です。

帳簿を何年残すかは、帳簿の保存期間の記事にまとめています。

対象帳簿の線引きと、要件を満たし始める時期は個別判断です
対象帳簿の線引きと、要件を満たし始める時期は個別判断です

税理士が入ると変わるのは、対象帳簿の洗い出しと届出の管理です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

ひとつめは、作成している帳簿の洗い出しです。対象になる帳簿を一覧にします。

ふたつめは、会計ソフトの設定の確認です。訂正削除の履歴・検索・帳簿間のつながりを見ます。

みっつめは、入力の手順の確認です。期末にまとめて入力していないかを月次で確かめます。

よっつめは、届出書の作成と期限の管理です。適用を始める期とソフトを替える時期をそろえます。

いつつめは、決算と申告への反映です。帳簿と申告書の数字を突き合わせます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 会計ソフトを使っていれば、優良な電子帳簿になりますか?

なるとは限りません。訂正削除の履歴・相互関連性・検索が要件です(電子帳簿保存法施行規則5条5項。令和9年以後は4項)。システムの説明書等の備付けも要ります。JIIMA認証のソフトでも、設定によっては要件を満たさないことがあります(一問一答 問55)。

Q2. 届出書はいつまでに出せばよいですか?

適用を受けたい国税の法定申告期限までに出せば、あらかじめ出したものと扱われます(一問一答 問43)。ただし、事業年度の初日から優良の要件を満たして備え付けていることが前提です。法人は本店所在地の所轄税務署長に出します。

Q3. 仕訳帳と総勘定元帳だけ要件を満たせば足りますか?

足りません。売上帳・経費帳・固定資産台帳など、作成している対象の補助簿もすべて対象です。いずれも要件を満たす必要があります(一問一答 問39)。法人税では賃金・給料手当などの記載は対象外ですが、消費税では対象になる帳簿もあります。

Q4. 軽減を受けられないのはどんな場合ですか?

税額の基礎となる事実に隠蔽・仮装があるときは軽減されません(電子帳簿保存法8条4項ただし書)。届出書を出していない、対象帳簿の一部が要件を欠く、期の初日から満たしていない場合も受けられません。やめる届出書を出した期以後も同じです。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律4条1項・8条4項・5項、同法施行令2条、同法施行規則2条1項・2項、5条1項・2項・3項・5項、国税通則法65条1項・2項、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」(令和8年7月)の問26・問38〜問46・問49・問51・問55、国税庁「優良な電子帳簿の要件」、届出書の記載要領、「優良な電子帳簿の要件チェックシート」、国税庁のパンフレット(令和6年9月・令和8年6月)の内容を扱っています。電子帳簿保存法施行規則5条5項の要件は、令和9年1月1日以後は同条4項に移ります(文言は同じです)。軽減の対象外となる税額の計算方法の細目(電子帳簿保存法施行令3条)、電子計算機出力マイクロフィルムによる保存、スキャナ保存、電子取引データの保存要件と重加算税の加重措置・令和9年1月1日以後の除外措置、帳簿の保存期間、個人事業者の取扱い(青色申告特別控除を含む)、期限内申告税額の計算の細目、更正の予知や調査通知の前にした修正申告の取扱い、帳簿の提示がない場合の加算税の加重、無申告加算税・重加算税・延滞税、地方税の過少申告加算金、令和3年度・令和5年度改正前の経過措置、組織変更や法人成りの際の届出書の効力、変更の届出書の要否の細目、個別の会計ソフトの対応状況は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の加算税の額は申告と調査の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

会計ソフトの帳簿が優良な電子帳簿の要件を満たすか、確かめませんか

過少申告加算税の5%軽減には、作成している対象帳簿のすべてが要件を満たすことが必要です。要件は事業年度の初日から満たし、届出書は法定申告期限までに出します。隠蔽・仮装があるときは軽減されません。代表税理士が、対象帳簿の洗い出しと、会計ソフトの設定・入力手順の確認を行います。届出書の作成と期限の管理、決算・申告への反映まで通して対応します。適用を始めたい事業年度が始まる前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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