この記事のポイント
- 3,000万円特別控除は申告書への記載と明細書の添付が適用の条件です
- 税額がゼロでも申告が必要です。書かなければ控除なしで計算されます
- 所得税法上の「確定申告書」には期限後申告書が含まれます(2条1項37号)
- 軽減税率や取得費加算にも同じ構造の申告要件が置かれています
まず結論:税額がゼロでも、申告書に書かなければ特例は使えません
マイホームを売っても、3,000万円の特別控除で税額がゼロになることがあります。
このとき「納める税金がないなら申告はいらない」と考える方が少なくありません。
けれども、この特別控除は確定申告書に書いて初めて使える仕組みです。
租税特別措置法35条12項が、そのように定めています。
申告書に「この特例を受けます」と書き、明細書を添える。
その2つがそろって、初めて特例が適用されます。
書かないままでいると、控除のない状態で税額が計算されることになります。
不動産の売却は、登記の情報などを通じて税務署に伝わります。
後日税務署から「お尋ね」が届くことも珍しくありません。

条文が求めているのは「記載」と「添付」の2つです
特例の条文には、適用の条件を定めた項が別に置かれています。
3,000万円特別控除の場合は、措置法35条12項がそれにあたります。
第一項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨その他の財務省令で定める事項の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
(租税特別措置法35条12項)
読みどころは、最後の「場合に限り、適用する」という書き方です。
条件を満たした場合だけ適用する、という限定の表現になっています。
住んでいた家であることなど、35条1項の要件を満たしていても同じです。
申告書に書かなければ、自動的に控除されるわけではありません。
この12項のような項を、実務では「申告要件」と呼んでいます。
特例の中身を定めた1項と、その使い方を定めた12項。条文は2つで1組です。
ポイント
必要なのは次の2つです。①譲渡した年分の確定申告書に、特例の適用を受けようとする旨を記載すること。②譲渡所得の金額の計算に関する明細書などを添付すること。どちらか一方が欠けても、条文の条件を満たしません。
申告しなかった場合、負担はどれだけ変わるのか
結論から言えば、控除の分がそのまま税額の差になります。
一定の前提を置いた目安として、簡単な例で見てみます。
計算例
例:所有期間5年超のマイホームを4,000万円で売却した場合
取得費(概算取得費・譲渡価額の5%)= 4,000万円 × 5% = 200万円譲渡費用 = 150万円譲渡所得 = 4,000万円 - 200万円 - 150万円 = 3,650万円【特例あり】3,650万円 - 3,000万円 = 650万円650万円 × 20.315% = 1,320,475円【特例なし】3,650万円 × 20.315% = 7,414,975円差額 = 6,094,500円20.315%は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた税率です。
同じ売却でも、申告書に書いたかどうかで600万円以上の差が出ます。
この金額は、取得費や譲渡費用を仮に置いた目安にすぎません。
実際の税額は、取得時の資料や所有期間によって変わります。

期限を過ぎてしまった場合はどうなるのか
まず押さえたいのは、「確定申告書」という言葉の定義です。
所得税法2条1項37号は、確定申告書について次のように定めています。
確定申告書 第二編第五章第二節第一款及び第二款(確定申告)(第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう。
(所得税法2条1項37号)
かっこ書きのとおり、確定申告書には期限後申告書が含まれます。
期限後申告書とは、申告期限を過ぎてから提出する申告書のことです。
なお期限後申告に伴う加算税などは、無申告のペナルティの記事で扱っています。
さらに、措置法35条13項には宥恕(ゆうじょ)の規定が置かれています。
補足
13項は、税務署長が「やむを得ない事情があると認めるとき」の定めです。想定しているのは、確定申告書の提出がなかった場合です。記載や添付のない申告書が提出された場合も含みます。そのようなときでも、35条1項を適用することができるとされています。ただし、必要な書類の提出があった場合に限られます。どのような事情が該当するかは、条文に例示がありません。
一方で、更正の請求はこれらとは別の手続です。
所得税法2条1項40号の2は、更正請求書を国税通則法23条3項に規定する更正請求書と定義しています。
つまり更正請求書は、確定申告書とは別の書類として定義されています。
注意
条文から確かめられるのはここまでです。「更正の請求で特例を使える」とも「使えない」とも、ここで断定することはできません。過去の申告を直して特例を適用したいという場面は、提出した書類の内容や経緯によって扱いが変わります。個別の確認が必要ですので、実際の書類を見ながらご相談ください。

同じ構造の申告要件は、他の特例にもあります
申告書への記載と書類の添付を求める作りは、3,000万円特別控除だけのものではありません。
不動産の売却でよく使う特例にも、同じ形の項が置かれています。
| 特例 | 申告要件の条文 | やむを得ない事情の規定 |
|---|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 措法35条12項 | 措法35条13項 |
| 居住用財産を譲渡した場合の軽減税率 | 措法31条の3第3項 | 措法31条の3第4項 |
| 相続税額の取得費加算 | 措法39条2項 | 措法39条3項 |
軽減税率の31条の3第3項も、適用を受けようとする旨の記載と、書類の添付を求めています。
相続税額の取得費加算の39条3項は、確定申告書だけでなく修正申告書にも触れています。
また、相続した実家を売ったときの空き家の3,000万円特別控除も措置法35条の中にあります。
同じ条文の12項・13項が、この特例の申告要件にもかかってきます。
特例ごとに条文の場所は違いますが、考え方は共通しています。
使いたい特例があるなら、申告書に書いて書類を添える。それが出発点です。

添える書類と、ご自身でできるところ
3,000万円特別控除で必要な書類は、国税庁が示しています。
タックスアンサーNo.3302は、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要だとしています。
提出書類は、確定申告書に添える譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]です。
加えて、住所が物件の所在地と異なる場合には書類が増えます。
売買契約日の前日において住民票に記載されていた住所と、売った物件の所在地が違う場合です。
このときは、戸籍の附票の写しなどを併せて提出します。
売買契約書や登記事項証明書を集めるところまでは、ご自身でも進められます。
売ったときの資料と、買ったときの資料の両方をそろえるのが基本です。
難しくなるのは、取得費の組み立てと、どの特例をどう申告書に載せるかという判断です。
取得時の契約書が見つからないと、概算取得費を使うかどうかの検討も必要になります。
小松公認会計士・税理士事務所では、売却の資料を確認して内訳書の作成から申告まで対応します。
すでに期限を過ぎている場合も、まずは提出した書類の状況をお聞かせください。
手元の書類が一式そろっていなくても、分かる範囲でかまいません。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 特別控除で税額がゼロになります。それでも申告は必要ですか?
必要です。措置法35条12項は、譲渡した年分の確定申告書に適用を受けようとする旨の記載があり、かつ明細書などの添付がある場合に限り適用すると定めています。申告しなければ、控除のない状態で計算されます。
Q2. 申告期限を過ぎてしまいました。もう特例は使えませんか?
所得税法2条1項37号は、確定申告書に期限後申告書を含むと定義しています。また措置法35条13項には、やむを得ない事情があると認めるときの規定もあります。個別の状況によりますので、早めにご相談ください。
Q3. 特例を書かずに申告しました。更正の請求で直せますか?
断定はできません。更正請求書は所得税法2条1項40号の2で、確定申告書とは別の書類として定義されています。提出済みの申告書の内容や経緯によって扱いが変わるため、個別の確認が必要です。
Q4. 確定申告のときに添える書類は何ですか?
タックスアンサーNo.3302によれば、確定申告書に譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]を添えて提出します。契約日の前日の住民票の住所と物件所在地が異なる場合は、戸籍の附票の写し等も併せて提出します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法35条12項・13項、同法31条の3第3項・第4項、同法39条2項・3項、所得税法2条1項37号・38号・40号の2、国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」を扱っています。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は個別の事情により異なります。居住用財産の3,000万円特別控除そのものの適用要件、空き家の3,000万円特別控除(措置法35条3項)の要件(家屋の建築時期、譲渡対価が1億円以下であること、被相続人居住用家屋等確認書など)、軽減税率の税率および所有期間の要件、相続税額の取得費加算の計算方法、「やむを得ない事情」に該当する具体的な事例、更正の請求により特例の適用を受けられるかどうかの結論、無申告加算税・延滞税の税率や計算、買換えの特例や譲渡損失の特例の申告要件、確定申告書の提出期限および期限後申告の手続については扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(35条、31条の3、39条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索 所得税法(2条1項37号・38号・40号の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
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マイホームを売って特別控除で税額がゼロになる場合でも、申告書に書かなければ特例は適用されません。申告し忘れたまま期限を過ぎてしまったご相談も届きます。期限後申告書の扱いや宥恕の規定があるため、あきらめる前に書類の状況を確認する価値があります。代表税理士が売却の資料を拝見し、内訳書の作成から申告まで対応します。
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