この記事のポイント
- 造成して宅地で売ると、原則は全部が事業所得か雑所得です
- 造成面積がおおむね3,000㎡以下なら譲渡所得のままでよい扱いです
- おおむね10年以上持つ土地は造成前の値上がり分を譲渡所得に分けられます
- 分離課税15%か累進5〜45%かで、税額が大きく変わります
まず結論:造成して分譲すると、原則は全部が事業所得・雑所得です
土地をそのまま売れば、ふつうは譲渡所得です。
譲渡所得とは、土地などの資産を売ったもうけのことです。
ところが、造成してから宅地として売ると扱いが変わります。
国税庁の通達33-4は、造成して売った所得の全部を事業所得か雑所得とします。
ただし、造成が小規模な場合と、おおむね10年以上持っていた土地には例外があります。
この記事は、所得税基本通達33-3〜33-5の原文に沿って、分かれ目を整理します。
譲渡所得にならない売却の全体像は譲渡所得にならない売却の記事で扱っています。

原則:造成は「商品づくり」とみられ、譲渡所得から外れます
造成した土地は、売るために手を加えた商品と同じ扱いになります。
所得税法33条2項は、次の所得を譲渡所得に含めないとしています。
次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
(所得税法33条2項1号)
たな卸資産とは、売るために持っている商品のことです。
通達33-4は、区画形質の変更を加えて宅地等として売った場合をこう扱います。
区画形質の変更とは、区画を割ったり道路を通したりして、土地の形や性質を変えることです。
その全部が事業所得又は雑所得に該当する。
(所得税基本通達33-4)
水道その他の施設を設けた場合や、土地に建物を建てて売った場合も同じです。
ポイントは「全部」です。昔からの値上がり分まで、事業所得・雑所得になります。

例外①:造成面積がおおむね3,000㎡以下なら、譲渡所得のままでよい扱いです
小規模な造成なら、土地はなお固定資産として扱ってよいとされています。
固定資産とは、売るためではなく、持ち続けるために持っている資産のことです。
通達33-4の(注)は、次のいずれかに当たれば固定資産でよいとします。
1 区画形質の変更又は水道その他の施設の設置に係る土地の面積(当該土地の所有者が2以上いる場合には、その合計面積)が小規模(おおむね3,000m²以下をいう。)であるとき。
(所得税基本通達33-4(注)1)
もうひとつは、土地区画整理法、土地改良法等の法律に基づく造成です(同(注)2)。
面積は、兄弟で共有しているなら全員の合計で見ます。
一部だけを分筆して売る場合の取得費は一部を売ったときの取得費の按分の記事をご覧ください。
例外②:おおむね10年以上持っていた土地は、造成前の値上がり分を譲渡所得に分けられます
長く持っていた土地なら、所得を2つに分けてよいとされています。
通達33-3は、極めて長期間を「おおむね10年以上」と定めています。
そのうえで通達33-5は、造成による利益の部分だけを事業所得・雑所得とします。
それ以外の部分は、譲渡所得として差し支えないという扱いです。
この場合において、譲渡所得に係る収入金額は区画形質の変更等の着手直前における当該土地の価額とする。
(所得税基本通達33-5)
造成を始める直前の土地の時価が、譲渡所得と事業所得等の境目になります。
(注) 当該土地、建物等の譲渡に要した費用の額は、すべて事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する。
(所得税基本通達33-5(注))
計算例
例:おおむね10年以上引き続き所有している4,000㎡の土地。取得費500万円、造成直前の時価1億円、分譲代金1億8,000万円、造成費5,000万円、仲介手数料等600万円
譲渡所得 1億円 - 500万円 = 9,500万円 事業・雑所得 1億8,000万円 - 1億円 - 5,000万円 - 600万円 = 2,400万円 所得税(譲渡) 9,500万円 × 15% = 1,425万円 所得税(事業・雑) 2,400万円 × 40% - 279万6,000円 = 680万4,000円 合計 2,105万4,000円全区画を同じ年に売り、ほかの所得・所得控除はないとした所得税だけの計算です。一定の前提を置いた目安です。

税負担の違い:分離課税の15%か、累進税率の5〜45%かです
所得区分が変わると、税率のしくみそのものが変わります。
| 項目 | 譲渡所得(土地) | 事業所得・雑所得 |
|---|---|---|
| 課税の方法 | 分離課税(ほかの所得と分けて計算) | 総合課税(ほかの所得と合計) |
| 所得税率 | 所有期間5年超は15%(住民税5%) | 5%〜45%の7段階 |
| 根拠 | タックスアンサー No.3105・No.3208 | タックスアンサー No.3105・No.2260 |
長期譲渡所得は、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えるものです(No.3202)。
相続した土地の所有期間は、原則として被相続人の取得日から数えます(同)。
前の計算例で33-5を使わず、全部を事業・雑所得とすると、所得は1億1,900万円です。
所得税は1億1,900万円×45%-479万6,000円=4,875万4,000円です。
同じ分譲でも、区分の仕方しだいで所得税に2,770万円の差が出ます。
補足
所有期間5年以下の土地の事業所得等を重く課税する規定があります(租税特別措置法28条の4)。同条6項により、令和11年3月31日までの譲渡には適用されません。所有期間の判定は短期・長期の判定の記事で扱っています。
判断を誤りやすい5つの場面
造成分譲では、所得区分と金額の根拠が問われます。
- 3,000㎡を超える造成を、全部譲渡所得で申告した ― 原則は事業所得・雑所得です
- 共有者ごとの面積で3,000㎡以下と判断した ― 所有者全員の合計面積で見ます
- 造成直前の時価の根拠を残していない ― 譲渡所得の収入金額が説明できません
- 仲介手数料を譲渡所得から引いた ― 33-5では全部を事業・雑所得の経費にします
- 建物を建てて売ったのに譲渡所得とした ― 33-4は建物の建設も対象です
注意
33-5は「差し支えない」という扱いです。区分する場合は、造成に着手する前に土地の時価を示す資料を用意しておくことが大切です。造成が終わった後では、着手直前の状態を示すことが難しくなります。
造成を始めてからでは、選べる道が狭くなります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
売る前に、面積・保有期間・売り方の3点を整理しておくことが出発点です。
- 登記事項証明書で、土地の面積と共有者を確かめる
- 被相続人が土地を取得した時期と代金が分かる資料を探す
- 不動産会社から、一括売却と造成分譲の両方の見積りを取る
- 造成する面積が、所有者全員の合計でおおむね3,000㎡を超えるか確かめる
ここから先は、事情で結論が変わります。
事業所得と雑所得のどちらになるか、造成直前の時価の出し方が一例です。
相続前の期間を含めて10年以上と見られるか、造成費以外に何を経費にできるかも同じです。
ポイント
一括売却なら譲渡所得、造成分譲なら事業所得・雑所得が原則です。手取りの比較は、税額まで含めて行う必要があります。分譲代金が高くても、造成費と税額を引くと差が縮むことがあります。
税理士が入ると変わるのは、売り方の比較と区分の根拠づくりです
ひとつめは、一括売却と造成分譲のそれぞれで、所得区分と税額を試算することです。
ふたつめは、面積・共有関係・保有期間から、33-4(注)と33-5が使えるかを確かめることです。
みっつめは、造成に着手する前に、土地の時価の根拠となる資料をそろえる指示です。
よっつめは、分譲代金を譲渡所得と事業所得・雑所得に分ける計算と、経費の振り分けです。
いつつめは、その結果を確定申告書と譲渡所得の内訳書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、売り方を決める前の試算から適正申告までを担当します。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 土地を分筆して何区画かに分けて売るだけでも、事業所得になりますか?
通達33-4が対象とするのは、区画形質の変更を加え、または水道その他の施設を設けて宅地等として売る場合です。造成の有無と面積、売り方の継続性で判断が分かれるため、工事や販売の計画を具体的に確認して判断します。
Q2. 3,000㎡は、売る土地の面積で判断しますか?
通達33-4(注)1は、区画形質の変更又は施設の設置に係る土地の面積で見るとしています。所有者が2人以上いる場合は、その合計面積です。「おおむね」とあるため、境目に近い場合は個別に確認が必要です。
Q3. 33-5で区分すると、譲渡費用はどちらから引きますか?
通達33-5(注)は、土地・建物等の譲渡に要した費用の額は、すべて事業所得又は雑所得の必要経費に算入するとしています。仲介手数料などを譲渡所得の側から引くことはしません。
Q4. 造成せずに、不動産会社へ一括で売れば譲渡所得になりますか?
通達33-4は、ご自身で区画形質の変更等を加えて売る場合の扱いです。造成前の状態で売るなら、この通達の対象ではありません。ただし、相当の期間にわたり継続して土地を売っている場合は、事業所得等になり得ます(通達33-3)。おおむね10年以上持っていた土地(販売目的の取得を除く)なら、譲渡所得とされます(同)。契約前に売り方の条件を確認してください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法27条・33条2項1号・35条、租税特別措置法28条の4第6項、所得税基本通達33-3・33-4・33-5、国税庁タックスアンサー No.3105・No.3202・No.3208・No.2260の内容を扱っています。事業所得と雑所得の区分の基準、造成直前の土地の時価の算定方法、相続前の所有期間を「極めて長期間」に含めるかどうか、造成費以外の必要経費の範囲、借地権等を設定した場合(通達33-4の2)、交換分合や宅地造成契約による土地の交換、住民税・復興特別所得税の額、消費税、開発許可などの手続は扱っていません。記事中の計算例は、ほかの所得や所得控除がないものとした所得税のみの一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は売却代金・造成費・時価・ほかの所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- e-Gov法令検索 所得税法https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
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