この記事のポイント
- 税率は上がりません。住宅用地特例が外れるだけです
- 引き金は放置ではなく、市町村長の勧告です
- 管理不全空家等は特定空家等の一歩手前の段階です
- 相続した空き家の3,000万円控除には期限があります
まず結論:6倍の正体は、住宅用地特例が外れることです
空き家を放置すると固定資産税が6倍になる、とよく言われます。
ただし、税率が6倍になるわけではありません。
住宅の敷地に認められている課税標準の特例が、外れるだけです。
課税標準とは、税額を計算するもとになる金額をいいます。
そして、この特例が外れる引き金は「放置」ではありません。
市町村長からの勧告です。

条文で「除く」と書かれているのは、括弧の中です
根拠は、地方税法349条の3の2第1項の括弧書きです。
…空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等…に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く…(地方税法349条の3の2第1項)
本文は、住宅用地の課税標準を価格の3分の1としています。
同条2項は、200平方メートル以下の部分を6分の1としています(小規模住宅用地)。
勧告を受けた敷地は、この「住宅用地」の定義から抜けます。
都市計画税も同じです。702条の3の特例は、349条の3の2の適用を受ける土地が対象だからです。
補足
国土交通省・総務省の指針も、勧告により「固定資産税等(固定資産税及び都市計画税をいう。)」の住宅用地特例の対象から除外されると明記しています。固定資産税の標準税率は100分の1.4です(地方税法350条1項)。都市計画税は100分の0.3を超えられません(同702条の4)。
特定空家等と管理不全空家等は、別のものです
混同されがちですが、段階が違います。
特定空家等は、空家法2条2項が定める空家等です。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態などを指します。
管理不全空家等は、同13条1項が定める空家等です。
そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態を指します。
一歩手前にも、網がかかったということです。
| 区分 | 根拠 | 市町村長が取れる措置 |
|---|---|---|
| 管理不全空家等 | 空家法13条 | 指導 → 勧告 |
| 特定空家等 | 空家法22条 | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 |
管理不全空家等には、命令と代執行の定めがありません。
指針も「命令や代執行のような強い公権力の行使に係る措置は規定されていない」としています。
もっとも、住宅用地特例が外れる点は、どちらも変わりません。

勧告までの順番は、法律で決まっています
いきなり勧告は来ません。
- 市町村長が空家等の状態を調べます
- 管理不全空家等なら指導、特定空家等なら助言または指導が行われます
- それでも改善されないときに勧告が出ます(ここで特例が外れます)
- 特定空家等はさらに命令へ進み、従わなければ代執行になります
指針も、これらの手続を「順を経て行う必要がある」としています。
措置を実施すれば勧告は撤回され、特例の対象に戻ります。
注意
裏を返せば、勧告が撤回されない限り、除外された状態は続きます。勧告の後に状態が悪化し、特定空家等になった場合も同じです。指針は「その敷地について住宅用地特例の対象から除外された状態が継続する」としています。なお、特定空家等への命令に違反すると50万円以下の過料の対象です(空家法30条1項)。
数字で見る ― 翌年度にいきなり6倍にはなりません
ここが、いちばん誤解されている点です。
課税標準が価格の6分の1から価格そのものになれば、たしかに6倍です。
しかし地方税法附則18条は、宅地等について負担調整措置を定めています。
住宅用地から外れた土地は「商業地等」に変わります(同附則17条4号)。
課税標準は、段階的にしか上がりません。
計算例
例:土地の価格1,200万円・180平方メートル・税率1.4パーセントと仮定した場合の固定資産税
勧告前(小規模住宅用地) 12,000,000円 × 1/6 = 2,000,000円 → 28,000円 課税標準が価格そのものなら 12,000,000円 × 1.4% = 168,000円(28,000円の6倍) 勧告を受けた翌年度 12,000,000円 ×(1/6 + 5%)= 2,600,000円 → 36,400円 上限まで上がった場合 12,000,000円 × 6/10 = 7,200,000円 → 100,800円(3.6倍)当事務所が条文の率を当てはめて試算した目安で、一定の前提を置いたものです。実際の税額は、評価額・自治体の税率・負担水準によって変わります。
6倍は上限どうしを比べた数字で、実際は毎年度じわじわ上がります。
なお附則18条の負担調整措置は、令和6年度から令和8年度までの各年度分の定めです。

実際に起きている失敗は、この3つです
ご相談で多いのは、次の形です。
- 勧告が届いてから慌てる ― 令和6年度の勧告は管理不全空家等378件・特定空家等600件です
- 指導書を見ていない ― 相続した実家に市町村からの通知が届き、そのままになっている
- 先に取り壊す ― 住宅がなくなれば、その土地はそもそも住宅用地ではありません
件数は、国土交通省・総務省の調査によるものです。
そして、いちばん見落とされるのが次の点です。
注意
指針は「今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合」を挙げています。使用の見込みがなく取壊しを予定している場合などです。この場合は、管理不全空家等や特定空家等に該当するかどうかを問いません。そもそも住宅用地特例は適用されないとしています。
勧告は結果であって、判定はその前から始まっています。
持ち続けるか、売るか ― 期限のある特例があります
毎年の費用だけで決めないでください。
相続で取得した空き家には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
国税庁タックスアンサーNo.3306は、令和9年12月31日までの譲渡であることを求めています。
さらに、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
令和6年1月1日以後の譲渡は、控除額にも注意が必要です。
相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上のときは、2,000万円までとなります。
要件は老人ホーム入所後の実家を売ったときの空き家3,000万円特別控除で扱っています。
取り壊してから土地だけを売る場合は自宅を取り壊して土地だけを売るときの3つの要件をご覧ください。
ポイント
固定資産税を払い続ける年数と、特例が使える期限は、別の時間軸で進みます。迷っている間に期限が過ぎると、選べる道そのものが減ります。売却時に受け取る固定資産税の精算金の扱いは固定資産税の精算金も譲渡所得の収入金額ですで扱っています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 納税通知書の課税明細書で、その土地に住宅用地の特例が効いているかを見る
- 市町村から指導書・勧告書が届いていないかを確かめる
- 相続した家なら、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日を数える
- その家を今後だれかが住む形で使う見込みがあるかを、家族で決める
ここから先は個別判断です。
固定資産税の賦課期日は1月1日です(地方税法359条)。
売る・貸す・直す・壊すのどれを選ぶかで、税金も手取りも変わります。
税理士が入ると変わるのは、比較表が出てくることです
ひとつめは、保有し続けた場合の試算です。固定資産税と都市計画税を年単位で並べます。
ふたつめは、売った場合の譲渡所得の計算です。取得費・譲渡費用・税額まで出します。
みっつめは、期限の管理です。空き家の特例の期限を、逆算した日付で示します。
よっつめは、必要資料の指示です。登記事項証明書や売買契約書を先に洗い出します。
いつつめは、確定申告書への反映です。計算した内容を、そのまま申告まで持っていきます。
数字が並ぶと、放置という選択が高いかどうかが見えます。
小松公認会計士・税理士事務所では、保有コストの試算から売却後の確定申告まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 空き家を放置すると、本当に固定資産税は6倍になりますか?
自動的に6倍にはなりません。市町村長から勧告を受けると、地方税法349条の3の2の住宅用地特例が外れます。課税標準が価格の6分の1から価格そのものになれば6倍ですが、同法附則18条の負担調整措置により上がり方は段階的です。実際の増え方は評価額と自治体の税率によります。
Q2. 特定空家等と管理不全空家等は、どう違いますか?
段階が違います。特定空家等は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態などの空家等です(空家法2条2項)。管理不全空家等は、放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態です(同13条1項)。命令や代執行の定めはありませんが、勧告で特例が外れる点は同じです。
Q3. 修繕すれば、住宅用地特例は元に戻りますか?
戻り得ます。国土交通省・総務省の指針は、勧告に係る措置が実施されれば市町村は勧告を撤回するとし、撤回された場合は「当該特例の適用対象となる」としています。逆に、勧告が撤回されない限り、除外された状態は続きます。
Q4. 相続した空き家を売るなら、いつまでですか?
国税庁タックスアンサーNo.3306は、令和9年12月31日までの譲渡で、かつ相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることを求めています。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人の数が3人以上のときは、控除額が2,000万円までとなります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。地方税法349条の3の2・350条・359条・702条の3・702条の4および同法附則17条・18条、空家等対策の推進に関する特別措置法2条・13条・22条・30条、国土交通省・総務省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」、同「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」、国税庁タックスアンサーNo.3306の内容を扱っています。記事中の計算例は、土地の価格・面積・税率について一定の前提を置き、条文の率を当てはめて当事務所が試算した目安です。固定資産税の税率は市町村が条例で1.4パーセントと異なる税率を定めることができ、評価額・負担水準・条例による減免によって実際の税額は変わります。地方税法附則18条の負担調整措置は、令和6年度から令和8年度までの各年度分の定めです。都市計画税については住宅用地特例が外れることのみを扱い、負担調整措置や具体的な税額は扱っていません。また、空き家の3,000万円特別控除の個別の適用要件(家屋の建築時期・耐震基準・除却の証明など)、市町村ごとの条例・減免制度、空き家の除却や活用に対する補助制度、代執行に要する費用の額は扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- e-Gov法令検索「地方税法」https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国土交通省・総務省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019841.pdf
- 国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001984996.pdf
- 国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
空き家を持ち続ける費用と、売った場合の税額を並べてみませんか
空き家の固定資産税は、勧告を受けた時点で住宅用地特例が外れ、翌年度から上がり始めます。一方で、相続した空き家の3,000万円特別控除には譲渡の期限があります。持ち続ける費用は毎年積み上がり、使える特例は期限で消えます。代表税理士が、保有コストの年次試算、売却した場合の譲渡所得と税額の計算、特例の期限の逆算、必要資料の洗い出し、確定申告書への反映まで、通して対応します。判断する前の段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り