この記事のポイント
- 措置法の特例で全額を損金にした資産も、償却資産の申告対象です
- 申告から外れるのは10万円未満の即時損金と一括償却資産だけです
- 評価額には取得価額の5パーセントという下限があり、ずっと残ります
- 免税点150万円は「課税」の線であって、「申告」の線ではありません
まず結論:法人税で全額落としても、償却資産の申告からは外れません
中小企業者等の少額減価償却資産の特例には、続きがあります。
取得価額の全額をその期の損金にしても、地方税では話が別です。
措置法の特例で落とした資産は、固定資産税(償却資産)の申告対象になります。
東京都主税局は、申告対象となる資産として次のものを挙げています。
租税特別措置法の規定を適用し、即時償却等をしているもの(例)中小企業者等の少額資産の損金算入の特例適用資産
法人税は減りますが、償却資産税は毎年かかり続けます。
特例そのものの要件は少額減価償却資産の特例で扱っています。

3つのルートのうち、償却資産から外れるのは2つだけです
少額の資産を経費にする方法は、法人税では3つあります。
このうち償却資産の申告対象から外れるのは、2つだけです。
| ルート | 根拠 | 法人税の損金 | 償却資産の申告 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満を一時に損金算入 | 法人税法施行令133条1項 | その期に全額 | 対象外 |
| 20万円未満を3年で一括償却 | 法人税法施行令133条の2第1項 | 3年で均等 | 対象外 |
| 少額減価償却資産の特例 | 租税特別措置法67条の5 | その期に全額 | 対象 |
| 通常の減価償却 | 法人税法31条 | 耐用年数で分割 | 対象 |
法人税でいちばん早く落とせるルートが、償却資産では不利になります。
特例の取得価額の基準は、令和8年4月1日以後に取得したものから引き上げられました。
国税庁は「取得価額基準が30万円未満のものから40万円未満のものに引き上げられ、その適用期限が3年延長されました」としています。
年間の合計額は、引き続き300万円が上限です。
根拠は地方税法施行令49条 ― 措置法は名指しされていません
この違いは、条文のつくりから生まれています。
地方税法341条4号は、償却資産から「取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産」を除いています。
その政令が、地方税法施行令49条です。
法第三百四十一条第四号に規定する政令で定める資産は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、法人税法施行令第百三十三条第一項若しくは第百三十三条の二第一項又は所得税法施行令第百三十八条第一項若しくは第百三十九条第一項の規定によりその取得価額の全部又は一部が損金又は必要な経費に算入される資産とする。
名指しされているのは施行令133条と133条の2だけで、措置法67条の5は入っていません。
東京都主税局は国税との違いを表で示し、この特例について「金額にかかわらず、認められません」としています。
圧縮記帳や特別償却・即時償却も、償却資産の評価では認められません。
補助金の圧縮記帳については圧縮記帳の仕組みをご覧ください。

数字で見る:29万円のパソコンを特例で落とすと
償却資産の評価額は、取得価額に減価残存率を掛けて求めます。
東京都主税局は、前年中に取得した資産は「取得価額 ×(1 − 減価率 ÷ 2)」、前年前に取得した資産は「前年度評価額 ×(1 − 減価率)」としています。
取得月にかかわらず、初年度は半年分の減価として計算します。
計算例
取得価額29万円・耐用年数4年(減価率0.438)のパソコン1台
1年目 290,000円 × 0.781 = 226,490円 2年目 226,490円 × 0.562 = 127,287円 3年目 127,287円 × 0.562 = 71,535円 4年目 71,535円 × 0.562 = 40,203円 5年目 40,203円 × 0.562 = 22,594円 6年目以降 下限に達し 14,500円(取得価額の5パーセント)が続く法人税では1年で終わった資産が、償却資産では耐用年数を過ぎても残ります。
評価額には取得価額の5パーセントという下限があり、そこから下がりません。
計算例
同じパソコンを10台買った初年度(他に償却資産がない場合)
評価額 226,490円 × 10台 = 2,264,900円 課税標準額(1,000円未満切捨て) 2,264,000円 2,264,000円 × 1.4% = 31,696円 → 31,600円(100円未満切捨て)同じ予算で19万円の機種を選び一括償却資産とすれば、償却資産の申告対象にはなりません。
免税点150万円は「課税」の線で、「申告」の線ではありません
償却資産には免税点があります。
地方税法351条は、課税標準となるべき額が償却資産で150万円に満たない場合は固定資産税を課すことができないとしています。
これは税額が出ないという意味であって、申告しなくてよいという意味ではありません。
申告義務は地方税法383条にあり、免税点で免除するという規定は置かれていません。
毎年一月一日現在における当該償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他…を一月三十一日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない。
東京都主税局は、償却資産を所有していない場合も「該当資産なし」として申告するよう求めています。
前年中に資産の増減がない場合も、申告書の提出が必要とされています。
補足
東京都主税局によると、正当な理由なく申告しないと、過料を科されることがあります(地方税法386条)。虚偽の申告は、刑罰(現行の条文では拘禁刑又は罰金)の対象になります(同法385条)。申告もれによる賦課決定は5年度分(不正の行為がある場合は7年度分)さかのぼるとも記載されています。納めた固定資産税の損金算入の時期は租税公課の損金算入をご覧ください。

指摘を受ける典型は、この4つです
実務で問題になるのは、国税の処理だけを見て地方税を見ていない場合です。
- 特例で落とした資産を申告していない ― 帳簿から消えているため存在を忘れる
- 償却済みの資産を除いてしまう ― 耐用年数が過ぎても、使っていれば申告対象です
- 資本的支出を申告していない ― 改良費は新たな資産の取得とみなし、本体とは区分して扱います
- 遊休・未稼働の資産を除いてしまう ― 使っていなくても、事業の用に供することができる状態なら対象です
いちばん多いのは、全額を経費にした資産が台帳から消えてしまうことです。
固定資産台帳に載らないため、翌年の申告で拾えなくなります。
修繕費と資本的支出の分け方は修繕費と資本的支出で扱っています。
なお、ここで紹介した運用は東京都(23区)の手引きによるものです。
市町村によって取扱いが異なる場合があるため、所在地の窓口でご確認ください。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で進められるのは、次の4点です。
- 前年中に買った10万円以上の資産を、購入日と金額で一覧にする
- それぞれをどのルートで損金にしたかを、決算書と申告書で確認する
- 償却済み・遊休の資産が現物として残っていないかを見て回る
- 資産が所在する市町村の申告様式と提出期限を確認する
ここから先は個別判断です。
同じ資産でも、どのルートを選ぶかで数年分の税負担が変わります。
法人税の減り方だけで決めると、償却資産税が毎年ついてきます。
税理士が入ると変わるのは、ルートの選び方と台帳です
ひとつめは、購入前の試算です。3つのルートで、法人税と償却資産税の合計を比べます。
ふたつめは、固定資産台帳の整備です。全額を損金にした資産も台帳に残して追えるようにします。
みっつめは、申告対象の洗い出しです。償却済み・遊休・資本的支出を拾い上げます。
よっつめは、耐用年数と資産単位の判定です。1単位として取引される単位で金額を判定します。
いつつめは、決算対策との整合です。設備投資の時期を、期末の3か月前から組み立てます。
全額を落とすことが、いつも有利とは限りません。
決算前にできる打ち手は決算前3か月にできる法人の決算対策をご覧ください。
小松公認会計士・税理士事務所では、購入前の試算から申告まで続けて担当します。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 40万円未満の資産を全額経費にしたら、償却資産の申告はしなくてよいのですか?
いいえ。租税特別措置法の特例で損金にした資産は、償却資産の申告対象です。地方税法施行令49条が除外しているのは、法人税法施行令133条1項(10万円未満の即時損金)と133条の2第1項(一括償却資産)などであり、措置法67条の5は含まれていません。
Q2. 償却資産が150万円未満なら、申告しなくてよいですか?
免税点150万円は課税されるかどうかの基準であり、申告義務を免除するものではありません。申告義務は地方税法383条にあります。東京都主税局は、償却資産を所有していない場合も「該当資産なし」として申告するよう求めています。
Q3. 耐用年数が過ぎた資産も申告が必要ですか?
必要です。東京都主税局は申告が必要な資産として償却済資産(耐用年数が経過した資産)を挙げています。評価額には取得価額の5パーセントという下限があり、そこから下がりません。遊休・未稼働の資産も対象です。
Q4. 少額減価償却資産の特例は、いくらまでになりましたか?
国税庁は、令和8年4月1日以後に取得等をする資産について取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が3年延長されたとしています。年間の合計額は引き続き300万円が上限です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の公表資料に基づく一般的な解説です。地方税法341条4号・350条・351条・383条・385条・386条、地方税法施行令49条、法人税法施行令133条・133条の2、租税特別措置法67条の5、東京都主税局「令和8年度 固定資産税(償却資産)申告の手引き」、国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」、国税庁タックスアンサーNo.5403の内容を扱っています。申告書の様式・提出方法・課税標準の特例の適用関係、耐用年数の個別の判定、東京都(23区)以外の市町村における運用、令和9年度以降の取扱いは扱っていません。東京都主税局の手引きは令和7年9月末現在において作成されたものであり、少額減価償却資産の特例の取得価額基準に関する脚注は改正前の記載になっています。記事中の計算例は制度の理解のための設例であり、一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「地方税法」(341条4号・350条・351条・383条・385条・386条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- e-Gov法令検索「地方税法施行令」(49条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000245
- 東京都主税局「固定資産税(償却資産)の申告」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/shokyak_sis
- 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2026/01.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm
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少額減価償却資産の特例は、法人税をその期に減らせる強い制度です。ただし、その資産は固定資産税(償却資産)の申告対象から外れず、評価額には取得価額の5パーセントという下限があるため、耐用年数を過ぎても毎年の課税が続きます。10万円未満の即時損金や一括償却資産を選べば償却資産の申告対象にはなりません。代表税理士が、購入前の3ルートの比較試算、固定資産台帳の整備、申告対象となる償却済資産や資本的支出の洗い出しまで、通して対応します。
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