この記事の答え
- 山の土地は譲渡所得、取得から5年を超える立木(立っている木)は山林所得で計算します。
- 売った年の15年前の年末以前から持つ山林は、昔の領収書がなくても概算で経費を計算できます。
- 立木3,000万円・伐採費など500万円の例で、立木の税金は約193万円です(一定の前提の目安)。
山を売ると、税金はどう分かれますか

山を売ったときの税金は、土地の部分と、立っている木の部分で別々に計算します。山に立っている木を「立木(りゅうぼく)」といいます。契約書が1通でも、代金は2つに分けて考えます。
土地の部分の利益は、家や宅地を売ったときと同じ「譲渡所得」です。立木の部分の利益は、原則として「山林所得」という別の種類の所得です。木を切ってから売っても、立ったまま売っても、扱いは同じです。
立木の5年は、取得した日から、木を切った日や売った日までで数えます。5年以内の売却は、事業として営んでいれば事業所得、そうでなければ雑所得です。限定承認をした相続などは別の扱いです。
土地の部分の税率は、売った年の1月1日の時点で、何年持っていたかで決まります。5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です(所得税と住民税などの合計)。数え方は長期と短期の判定の記事、相続した土地の資料の探し方は取得費の探し方の記事で説明しています。
立木の利益は、どう計算しますか

山林所得の金額は、売った金額から必要経費と50万円を引いて計算します。
計算の式
山林所得の金額 = 売った金額 − 必要経費 − 50万円
必要経費は、売った山林にかかった植林費や買ったときの費用、下刈りなどの育成費、管理費です。伐採費、運搬費、仲介手数料も入ります。50万円の控除は、経費を引いた残りが50万円より少ないときは、その残りの額までです。
古くから持っている山林は、昔の領収書がなくても、概算で必要経費を計算できます。この特例を「概算経費控除」といいます。
使えるのは、売った年の15年前の年の12月31日以前から持ち続けている山林です。令和8年に売る人なら、平成23年12月31日以前です。相続や贈与でもらった山は、原則として前の持ち主の期間を引き継ぎます。
計算は、売った金額から伐採費などを引き、その50%に伐採費などを足します。
計算例
会社員のAさんの例
Aさんは令和8年に、父から相続した山の立木を3,000万円で売りました。父が昭和の時代から持っていた山です。伐採費などは500万円でした。
概算の経費 (3,000万円−500万円)×50%=1,250万円 必要経費 1,250万円+500万円=1,750万円 山林所得 3,000万円−1,750万円−50万円=1,200万円父の代からの実際の植林費や管理費などが1,250万円を超えるなら、実際の額のほうが有利です。
税金はいくらになりますか

山林所得の所得税は、「5分5乗方式」という計算で、ふつうより軽くなることがあります。山林所得は、給料などほかの所得と合計せずに計算します。
5分5乗方式では、所得を5分の1にして税率を当てはめ、出た税額を5倍します。所得税は所得が多いほど税率が上がるので、5分の1にすると低い税率で計算できます。
計算例
Aさんの所得税(山林所得1,200万円)
5分の1 1,200万円÷5=240万円 税額 240万円×10%−97,500円=142,500円 5倍 142,500円×5=712,500円 復興特別所得税2.1%を足すと 727,462円「なし」は、ふつうの税率表で計算した比較用の額です。所得控除は給料から引ききる前提の目安です。合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除と配偶者特別控除は使えません。Aさんは山林所得だけで超えるので、年末調整で受けていても外します。令和9年分から復興特別所得税は1.1%になり、防衛特別所得税1%が加わります(合計の率は同じ)。土地の部分の税金は別にかかります。
住民税には5分5乗方式がなく、標準の税率は10%です。Aさんの住民税は約120万円で、所得税などと合わせて約193万円です。確定申告書を出せば、住民税の申告書を別に出す必要はありません。
どんな失敗がありますか

山の売却では、代金の分け方と申告書の書き方で、税金が変わります。
失敗の例
- 土地と立木を分けなかった例。Bさんは、山の代金の全部を山林所得で計算しました。土地の部分は譲渡所得なので、誤りです。
- 5年以内だった例。Cさんは、3年前に買った山の木の利益を山林所得で計算しました。5分5乗方式も50万円の控除も使えません。
- 特例を書き忘れた例。Dさんは概算で経費を計算しましたが、確定申告書の第三表に特例を使うことを書きませんでした。記載がないと、概算経費控除は使えません。
どこまで自分で判断できますか
資料を集めて日付を確かめるところまでは、ご自身でできます。
ご自身でできること
- 契約書で土地と立木の代金を確かめる
- 山を取得した時期を調べる
- 伐採費や仲介手数料の領収書を集める
個別の判断が必要なこと
- 契約書に代金の内訳がない
- 概算と実際の額のどちらが有利か
- 相続した山の5年・15年の数え方
- 森林経営計画や収用の特例を使う
国税庁の令和7年分の案内では、山林所得がある人は「確定申告書等作成コーナー」を使えません。申告書は、e-Taxソフトか用紙で作り、「山林所得収支内訳書」も一緒に提出します。
税理士が入ると変わること
小松公認会計士・税理士事務所では、契約書と取得の資料から、代金の分け方と持っていた期間を確かめます。概算と実際の額の両方で税額を計算して比べ、申告書と山林所得収支内訳書を作成します。
売買契約の前なら、買主と話し合って、土地と立木の価値に見合う代金を契約書に分けて書けます。山を売る予定の方は、契約の前にご相談ください。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 山と一緒に立っている木も売りました。全部が山林所得になりますか?
いいえ。土地の代金は譲渡所得で、立木の代金は山林所得か、取得から5年以内なら事業所得か雑所得です。契約書で代金の内訳が分かるようにしておいてください。
Q2. 自分で植えた木は、いつから5年を数えますか?
自分で植林した木は、植林が完了した日からです。人に頼んで植えた木は、引渡しを受けた日からです。どちらも、ひとまとまりの立木の区画ごとに判定します。買った山林は、原則として引渡しを受けた日からです。
Q3. 森林経営計画があると、税金は変わりますか?
認定を受けた計画に基づく売却は、令和10年分まで、森林計画特別控除を使えることがあります。上限は、収入から伐採費などを引いた額の20%です(2,000万円を超える部分は10%)。申告書への記載と添付書類が必要で、交換や収用などは対象外です。
Q4. 公共事業で山林を買い取られたときは、どうなりますか?
買取りの申出から6か月以内に売るなどの要件を満たせば、5,000万円の特別控除を使えます。土地と立木の合計で5,000万円までです。50万円の控除の前に、山林所得から差し引きます。補償金で代わりの山林を買う特例とは、どちらか一方を選びます。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。記事中の計算例は、令和8年分の税率で、概算経費控除を使い、所得控除を給料から引ききり、住民税を標準の税率で計算するなど、一定の前提を置いた目安です。実際の税額は、所有期間・経費の実額・所得控除の額などによって変わります。青色申告特別控除、事業専従者に関する取扱い、被災事業用資産の損失、昭和27年12月31日以前から所有する山林の必要経費の特例、法人に対する贈与・低額譲渡などのみなし譲渡、限定承認、分収造林・分収育林、貸倒れや保証債務の特例、課税されない山林所得、消費税、事業税は扱っていません。具体的な判断は税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1480「山林所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1480.htm
- 国税庁「令和7年分 山林所得の申告のしかた」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kisairei/sanrin/index.htm
- 国税庁「山林所得収支内訳書(計算明細書)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/pdf/r07_joto_23.pdf
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー 令和7年分よくある質問「山林所得とは」https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/cat2/cat21/cat21b/cid110.html
- 国税庁 所得税基本通達「法第32条《山林所得》関係」(32-1〜32-3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/06.htm
- 国税庁 所得税基本通達36-12(山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1191「配偶者控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1195「配偶者特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁「<記入要領>令和8年9月24日以降に提出する申告書について(申告書第三表)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1-1.pdf
- e-Gov法令検索「所得税法」(2条・22条・32条・33条・37条・59条・60条・83条・83条の2・87条・89条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(30条・30条の2・31条・32条・33条・33条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」(19条の6)https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043、「租税特別措置法施行規則」(12条・13条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000040015
- e-Gov法令検索「地方税法」(35条・314条の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条(令和8年法律第12号による改正後の率は令和9年分以後の所得税に適用)e-Gov法令検索
- 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の5・5条の9(令和8年法律第12号による改正後。令和9年1月1日施行)e-Gov法令検索
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