この記事のポイント
- 届け出ないと、機械や備品などは原則として定率法で償却限度額を計算します
- 平成19年4月以後に取得した建物と、平成28年4月以後に取得した建物附属設備・構築物は定額法だけです
- 届出の期限は、設立第1期の確定申告書の提出期限などです
- 変更は使いたい期の開始日の前日までに申請し、採用から3年未満は却下されることがあります
まず結論:届け出なければ「法定償却方法」、変えるには期首の前日までの申請が要ります
機械や備品の代金は、何年かに分けて損金(税金の計算で差し引ける費用)にします。
分け方には、毎期同じ額の「定額法」と、初めに多く後で少なくなる「定率法」があります。
どちらを使うかは、税務署に出す「償却方法の届出」で選びます。
届け出なかったときは、機械や備品などは原則として定率法で計算することになります。
一度決めた方法を変えるには、新しい方法を使う期が始まる前日までの申請が要ります。

選べる方法は、資産の種類ごとに決まっています
平成19年4月1日以後に取得した資産の方法は、法人税法施行令48条の2が区分ごとに定めています。
建物などは定額法だけで、定率法も選べるのは機械や備品などです。
| 資産の区分 | 選べる方法 | 届け出なかったとき |
|---|---|---|
| 建物、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物 | 定額法だけ | 定額法 |
| 機械・装置、船舶、航空機、車両・運搬具、工具・器具・備品 | 定額法か定率法 | 定率法 |
| ソフトウエアなどの無形固定資産 | 定額法だけ | 定額法 |
平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備・構築物は、定率法も選べます。
「定額法だけ」の資産は届出不要で、定額法を選んだものとみなされます(同令51条2項ただし書・5項)。
区分ごとに選び、事業所が2つ以上あれば事業所ごとにも選べます(同令51条1項)。
鉱業用の資産とリース資産は、別の決まりです。
届け出なかったときは、定率法で償却限度額を計算します
届出がない機械や備品などは、定率法で計算した額が損金の上限です。
法人税法31条1項を受けて、施行令53条が「法定償却方法」を定めています。
平成19年4月1日以後に取得した機械や備品などは、定率法です(同条2号イ)。
ただし、同年3月31日以前から旧定額法を選んでいた区分は、定額法とみなされます(同令51条3項)。
定率法は、まだ損金にしていない残りの額に同じ率を掛け、途中から毎期同じ額に切り替えます。
耐用年数5年なら、償却率は定額法0.200、定率法0.400です(耐用年数省令の別表第八・第十)。
計算例
例:期首に100万円の備品(耐用年数5年と仮定)を買い、すぐ使い始めた場合
定額法 1,000,000円 × 0.200 = 200,000円(毎期) 定率法の1期目 1,000,000円 × 0.400 = 400,000円 定率法の2期目 (1,000,000円 - 400,000円)× 0.400 = 240,000円 5期の合計 どちらも 999,999円(最後の期に1円を残します)金額は一定の前提を置いた目安です。1円を残す決まりは、施行令61条1項2号イにあります。
期の途中で使い始めた資産は、月数で按分します(同令59条1項)。
合計は同じで、違うのは「いつ損金になるか」です。

届出の期限は「設立第1期の確定申告書の提出期限」などです
主な場面と期限は、次の3つです(施行令51条2項)。
- 会社を設立したとき ― 設立第1期の確定申告書の提出期限まで
- まだ方法を選んでいない区分の資産を初めて取得したとき ― 取得した期の確定申告書の提出期限まで
- 事業所を新設し、別の方法を選ぶとき ― 事業所を設けた期の確定申告書の提出期限まで
設立などの場面で仮決算の中間申告書を出すときは、その提出期限が締め切りです(同項)。
確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条1項)。
届出は、e-Taxか書面で所轄税務署長に出します(国税庁の手続案内C1-33)。
期限までに届け出ないと法定償却方法で計算することになり、変えるには税務署長の承認が要ります。
変えるときは、期首の前日までに変更承認申請書を出します
法定償却方法で計算している場合も含め、方法を変えるには税務署長の承認が要ります(施行令52条1項)。
前項の承認を受けようとする内国法人は、その新たな償却の方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(法人税法施行令52条2項)
今の方法の採用から「相当期間」がたっていないときなどは、申請が却下されることがあります(同条3項)。
相当期間の目安は、次の通達が示しています。
その現によっている償却の方法を採用してから3年を経過していないときは、その変更が合併や分割に伴うものである等その変更することについて特別な理由があるときを除き、同条第3項の相当期間を経過していないときに該当するものとする。
(法人税基本通達7-2-4)
採用から3年未満の変更は、特別な理由がない限り、却下できる場合に当たります。
3年を過ぎていても、変える合理的な理由がなければ承認されないことがあります(同通達の注)。
ポイント
新しい方法を使う期の末日までに処分がなければ、承認があったものとみなされます。中間申告書を出すべき法人は、期首から6か月を経過した日の前日が基準です(施行令52条5項)。
どちらを選ぶかは「損金をいつ出したいか」で考えます
比べるのは、損金が出る時期です。
- 初年度の損金 ― 例では、定率法の1期目は400,000円で、定額法の2倍です。
- 赤字の期 ― 所得がマイナスの期に損金を増やしても、その期の法人税は減りません。
- 将来の利益 ― 後の期に利益が増える見込みなら、毎期同じ額の定額法も候補です。
赤字の期に償却を抑える考え方は、法人の償却不足の記事で扱っています。
補足
少額の資産を一度に損金にできる特例があります(租税特別措置法67条の5)。対象は中小企業者等の青色申告法人で、年300万円までなどの要件があります。令和8年4月1日以後の取得等は、取得価額10万円以上40万円未満の資産です(以前は30万円未満)。個人事業の場合は、少額減価償却資産の記事で解説しています。

注意したいのは、この4つの場面です
税務上の計算が想定とずれるのは、次のような場面です。
- 届出の出し忘れ ― 定額法のつもりで計上していても、税務上の限度額は定率法で計算します。
- 買い増し ― 届出の機会を逃した区分は、買い増しても届出の機会になりません(施行令51条2項5号)。
- 決算直前の変更 ― 期限は新しい方法を使う期の開始日の前日です。期の途中では間に合いません(同令52条2項)。
- 採用から3年未満の変更 ― 却下されることがあります(法人税基本通達7-2-4)。
注意
先の計算例の備品を、届出なしで毎期200,000円ずつ計上したとします。3期目までは、定率法の限度額(400,000円・320,000円・240,000円)の内側です。4期目の限度額は160,000円です。超えた40,000円はその期の損金にならず、翌期以後に持ち越します(法人税法31条1項・4項)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確かめられるのは、次の4点です。
- 固定資産台帳で、資産ごとの種類と取得日を書き出す
- 過去の届出書の控えで、区分ごとに選んだ方法を確かめる
- 次の事業年度が始まる日と、その前日を確かめる
- 今後数期の設備投資の予定と、利益の見込みを並べる
どちらの方法が合うかは、数期分の試算を並べて決める個別判断です。
変更した期の限度額は、期首の帳簿価額などから計算し直します(法人税基本通達7-4-3・7-4-4)。
定率法から定額法へ変えるときは、耐用年数の取り方も選べます(同通達7-4-4)。

税理士が入ると変わるのは、期限の管理と数期分の試算です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
ひとつめは、台帳と過去の申告書から、区分ごとの今の償却方法を特定することです。
ふたつめは、届出と変更承認申請の期限を、設備の取得予定から逆算して管理することです。
みっつめは、定率法と定額法で、数期分の償却費と損金の額を並べた試算です。
よっつめは、届出書と、変更しようとする理由を書いた変更承認申請書の作成です。
いつつめは、変更した期の償却限度額の計算と、申告書の明細書への反映です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 償却方法の届出を出さないと、どうなりますか?
施行令53条の「法定償却方法」で計算します。平成19年4月1日以後に取得した機械・車両・備品などは原則として定率法です(鉱業用などを除く)。平成19年4月1日以後に取得した建物、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物、無形固定資産は、もともと定額法だけです。
Q2. 定額法にしたい場合、いつまでに届け出ればよいですか?
会社を設立したときは、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。仮決算の中間申告書を出すときは、その提出期限までです。方法を選んでいない区分の資産を初めて取得したときは、その期の申告期限までです(施行令51条2項)。
Q3. 一度選んだ償却方法は、変えられますか?
新しい方法を使う期が始まる前日までに変更承認申請書を出します。税務署長の承認が要ります(施行令52条1項・2項)。採用から3年未満の変更は、特別な理由がない限り却下されることがあります(法人税基本通達7-2-4)。
Q4. 定率法と定額法は、どちらが有利ですか?
使い切るまでの損金の合計は同じで、損金になる時期が違います。定率法は初めの期に多く、定額法は毎期同じ額です。赤字の期の有無や将来の利益の見込みなどで変わるため、数期分の試算を並べて決めます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法31条1項・4項・74条1項、法人税法施行令48条の2・51条・52条・53条・59条1項・61条1項2号イ、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第八・別表第十、法人税基本通達7-2-4・7-4-3・7-4-4、租税特別措置法67条の5、国税庁の手続案内C1-33「減価償却資産の償却方法の届出」と「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」の内容を扱っています。平成19年3月31日以前に取得した資産の旧定額法・旧定率法、鉱業用減価償却資産・リース資産・生物の償却方法、特別な償却の方法と特別な償却率、償却方法を選ぶ区分を定める財務省令の細目、耐用年数の短縮、中古資産の耐用年数、資本的支出の償却方法、合併・分割などの組織再編に伴う償却方法、通算法人・公益法人等・外国法人の届出、申告期限の延長を受けている法人の届出期限、償却不足と償却超過の詳しい扱い、特別償却と税額控除、少額減価償却資産の特例と一括償却資産の要件の細目、個人事業者の償却方法の届出は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。実際の償却費は、資産の種類・取得日・事業に使い始めた日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(48条の2・51条・52条・53条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索「法人税法」(31条・74条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第2節「減価償却の方法」(7-2-4)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_02.htm
- 国税庁 税務手続の案内 C1-33「減価償却資産の償却方法の届出」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_21.htm
- 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2026/01.htm
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