この記事のポイント
- 市町村などが生産緑地法の規定で買い取ると、譲渡益から最大1,500万円を差し引けます
- 民間や農業者が買う場合はこの控除の対象外。ほかの特例は個別に確かめます
- 都市営農農地等(特定市の生産緑地など)の納税猶予は、買取りの申出でその農地の分が打ち切られます
- 計算例では、控除の有無で税額に約305万円の差が出ます(一定の前提を置いた目安)
まず結論:誰が買い取るかと、納税猶予の有無で税金が変わります
生産緑地は、市街化区域の農地のうち、都市計画で生産緑地地区に定めた土地です。
市街化区域は、市街地や優先的に市街化を図る区域です(都市計画法7条2項)。
市町村などが生産緑地法の規定で買い取ると、譲渡益から最大1,500万円を差し引けます。
譲渡益は、売った金額から取得費と売る費用を引いたもうけです。民間に売るときは、この控除を使えません。
相続税の納税猶予は、農業を続ける場合などに、相続税の一部の納付を待つ特例です。受けている方は、売却や買取りの申出で猶予が打ち切られることがあります。

宅地などに転用するには、まず市町村長への買取りの申出が必要です
申出ができるのは、告示から30年を経過した日以後か、主たる従事者の死亡・故障のときです(10条)。
告示の日から起算して三十年を経過する日(以下「申出基準日」という。)以後において、市町村長に対し、国土交通省令で定める様式の書面をもつて、当該生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができる。
(生産緑地法10条1項)
- 申出から1か月以内に、時価で買い取るかの通知があります(12条)
- 買い取らないときは、市町村長が農林漁業をしたい人へのあっせんに努めます(13条)
- 申出から3か月以内に所有権が移らなければ、建物を建てるなどの行為の制限が外れます(14条)
このほか、30年前でも、疾病などの特別の事情があれば「買取り希望の申出」ができます(15条1項)。14条の制限の解除は、10条の申出の場合です。
注意
申出基準日までに特定生産緑地に指定されると、申出できる時期が10年延びます(10条の2)。10年ごとに延長でき、30年を過ぎると指定できません。三大都市圏の特定市では、指定されないと、次の相続人は納税猶予を受けられません(国土交通省の手引き)。今の猶予は、営農を続ければ次の相続まで続きます。
1,500万円控除の対象は、地方公共団体などが生産緑地法の規定で買い取る場合です
控除が使えるかは、「誰が」「どの条文で」買い取るかで決まります。
生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)第六条第一項に規定する生産緑地地区内にある土地が、同法第十一条第一項、第十二条第二項又は第十五条第二項の規定に基づき、地方公共団体、土地開発公社その他政令で定める法人に買い取られる場合
(租税特別措置法34条の2第2項17号)
政令で定める法人は港務局・地方住宅供給公社・地方道路公社・都市再生機構です(措令22条の8第7項)。
控除額は1,500万円で、譲渡益がそれより少なければ譲渡益の額までです。
短期も使え、自治体へ売れば長期と同じ税率です(措法32条3項)。同じ年の特別控除は、合計5,000万円が限度です(措法36条)。
詳しくは特別控除の合計の記事、ほかの号は1,500万円控除の記事で扱っています。
ポイント
控除の後も申告が必要な方は、確定申告書に特例を受ける旨を書きます(措法34条4項を準用)。あわせて、買主から受け取る買い取ったことを証する書類を添付します(措規17条の2第1項19号)。

民間や農業者が買う場合は対象外。税率は所有期間で決まります
行為の制限が外れた後に民間へ売る場合は、17号に当たらず、この控除は使えません。
あっせんで農林漁業をしたい人が買う場合も、買主の要件を満たしません。
買主によって使える農地の特例は、農地を売ったときの譲渡所得の記事で扱っています。
税率は原則、売った年の1月1日の所有期間で決まります(措法31条・32条)。
相続した土地は、限定承認の場合を除き、亡くなった方の取得の時期を引き継ぎます(所得税法60条1項)。
| 区分(1月1日の所有期間) | 所得税等 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期(5年超) | 15.315% | 5% |
| 短期(5年以下) | 30.63% | 9% |
所得税等は、所得税と復興特別所得税(所得税の2.1%)の合計で、令和8年分の割合です。
取得費が不明な土地は、売った金額の5%を取得費にできます(タックスアンサー No.3258)。
数字で見ると、控除の有無で約305万円の差になります
この計算例では、控除の有無だけで税額が約305万円変わります。
計算例
例:相続した生産緑地を令和8年中に8,000万円で売る(長期・取得費は5%・譲渡費用なし)
譲渡益 8,000万円 − 400万円 = 7,600万円 A 市などが買取り 7,600万円 − 1,500万円 = 6,100万円 所得税等 6,100万円 × 15.315% = 9,342,150円 住民税 6,100万円 × 5% = 3,050,000円(合計 12,392,150円) B 民間に売却 7,600万円(控除なし) 所得税等 7,600万円 × 15.315% = 11,639,400円 住民税 7,600万円 × 5% = 3,800,000円(合計 15,439,400円) 差 15,439,400円 − 12,392,150円 = 3,047,250円(1,500万円 × 20.315%)金額は端数処理前の、一定の前提を置いた目安です。買取りと民間の価格は、同じとは限りません。
令和9年分以後は、復興特別所得税が1.1%になり、防衛特別所得税(1%)が加わります。

生産緑地の納税猶予は、申出や売却で打ち切られることがあります
納税猶予中の生産緑地を売ると、原則として猶予税額の全部か一部と利子税を納めます。
三大都市圏の特定市にある一定の生産緑地など(都市営農農地等)は、次の場合に期限が来ます。
都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合(生産緑地法の規定による特定生産緑地の指定の解除があった場合を含みます。)
(国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」)
都市営農農地等は、売る前の申出の時点で、その農地の分の猶予が打ち切られます。期限は申出の日の翌日から2か月を経過する日です(措法70条の6第8項)。
売却も打ち切りの理由です(同条1項・7項)。特例を受けた農地の面積の20%を超えると全額、20%以下ならその割合に応じた額と利子税を納めます。
利子税は、申告期限の翌日から猶予の期限までの期間に応じてかかります(措法70条の6第40項)。
割合は年3.6%などで、利子税特例基準割合が7.3%未満の年は下がります(措法93条5項)。
補足
申出から1年以内に売り、代金で1年以内に農地を取得する見込みなら、税務署長の承認を申請できます。承認を受けて農地を取得すれば、申出と売却はなかったものとみなされます(措法70条の6第21項)。

注意したいのは、この4つの場面です
売る前の確認を飛ばすと、控除が使えず、猶予も早く打ち切られることがあります。
- 民間に売ったのに1,500万円控除を使った ― 17号の買取りに当たりません
- 買主の証明書類を添付しなかった ― 控除を受けられないおそれがあります
- 納税猶予の確認をせずに申出をした ― 都市営農農地等は申出で猶予の期限が来ます
- 相続の日から所有期間を数えた ― 亡くなった方の取得の時期を引き継ぎます
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
事実の確認はご自身でできますが、申出の時期と税額の試算は個別の判断です。
- 市町村で、申出基準日と特定生産緑地の指定の有無を確かめる
- 相続税の申告書の控えで、納税猶予を受けているかを確かめる
- 土地を相続したか買ったかと、その時期の資料をそろえる
申出をするかと時期、打ち切られる猶予税額と利子税、取得費と特例の比較は、事情で変わります。
申出の後に売ったとき、猶予がどこまで打ち切られるかも個別に確かめます。
税理士が入ると変わるのは、申出の前の試算と申告書の記載です
1つめは、相続税の申告書の控えから、打ち切られる猶予税額と利子税を試算することです。
2つめは、買取りと民間への売却で、税額と手取りを同じ前提で比べることです。
3つめは、17号の要件と買主の証明書類を売る前に確かめ、申告書に正しく反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、申出の前の試算から適正申告までを担当します。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 生産緑地を不動産会社に売っても、1,500万円控除は使えますか?
使えません。17号の対象は、地方公共団体・土地開発公社・政令で定める法人が、生産緑地法11条1項・12条2項・15条2項に基づいて買い取る場合です。行為の制限が外れた後に民間へ売る場合は当たりません。ほかの特例は個別に確かめます。
Q2. 指定から30年たてば、すぐに宅地として売れますか?
すぐにではありません。申出基準日以後に、市町村長へ時価での買取りを申し出ます(生産緑地法10条1項)。申出から3か月以内に所有権が移らなければ、行為の制限が外れます(14条)。特定生産緑地は、申出できる時期が10年延びます。
Q3. 納税猶予を受けている生産緑地で買取りの申出をすると、どうなりますか?
都市営農農地等(三大都市圏の特定市にある一定の生産緑地など)は、申出の日の翌日から2か月を経過する日が、その農地の分の猶予の期限になります(措法70条の6第8項)。猶予税額とあわせて、期間に応じた利子税も納めます。
Q4. 相続した生産緑地を売ると、長期と短期のどちらになりますか?
限定承認の場合を除き、相続で取得した土地は亡くなった方の取得の時期を引き継ぎます(所得税法60条1項)。売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば長期です。令和8年分の税率は、所得税等15.315%と住民税5%です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法34条の2第1項・第2項17号・第5項(34条4項の準用)、31条、32条、36条、70条の4第2項、70条の6(第8項・第21項・第40項ほか)、93条5項、租税特別措置法施行令22条の8第7項、租税特別措置法施行規則17条の2第1項19号、生産緑地法10条から15条、都市計画法7条2項、所得税法60条1項、地方税法附則34条・35条、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条と令和8年法律第12号附則88条1項、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の5・5条の9(令和9年1月1日施行)、国税庁タックスアンサー No.3223・No.3258・No.3270・No.4147、国税庁「農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(相続税の申告のしかた(令和8年分用)(抜粋))」、国土交通省「特定生産緑地指定の手引き(令和8年4月版)」の内容を扱っています。農地等の納税猶予の適用要件と猶予税額・利子税の具体的な計算、各年の利子税特例基準割合の値、申出の後に売った場合に猶予が打ち切られる範囲、特定生産緑地の指定と延長の手続、生産緑地の相続税評価と固定資産税、農地法の許可・届出、ほかの特別控除(農地保有の合理化等の800万円控除など)や優良住宅地等の軽減税率・買換えの特例との選択、相続税の取得費加算(措法39条)、法人が売る場合、令和9年分以後の税額の計算、住民税の申告手続は扱っていません。記事中の計算例は令和8年分の税率による一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は売却価格・取得費・譲渡費用・所有期間によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索 生産緑地法https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000068
- 国税庁 農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(相続税の申告のしかた(令和8年分用)(抜粋))https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0024006-169_02.pdf
- 国土交通省 特定生産緑地指定の手引き(令和8年4月版)https://www.mlit.go.jp/common/001282537.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.3223 譲渡所得の特別控除の種類https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3223.htm
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生産緑地の売却は、市町村などの買取りか民間への売却かで、1,500万円控除が使えるかが分かれます。都市営農農地等で納税猶予を受けていれば、買取りの申出の時点でその農地の分の猶予が打ち切られます。代表税理士が、相続税の申告書の控えと土地を取得した資料から、猶予税額と利子税、売り方ごとの税額を試算し、確定申告まで一貫して担当します。申出の前の段階でご相談ください。
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